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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 第11 日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

加入電話契約者への通知書の送付方法を経済的なものとするよう改善させたもの 


(3) 加入電話契約者への通知書の送付方法を経済的なものとするよう改善させたもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
業務の概要 加入電話契約者に対する停止予告書、解除予告書及び利用休止通知書の送付等の事務処理
郵送に係る費用 1,494,945,071円
節減できた郵送に係る費用 8310万円
<検査の結果>
 加入電話契約者への通知書の送付に当たり、その方法を経済的なものとすることにより、郵送に係る費用を約8310万円節減できたと認められた。
 このような事態が生じていたのは、本社において、各支社に対し通知書の経済的な送付方法について明確にしていなかったこと、マニュアル等の趣旨の周知徹底が十分でなかったことなどによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、日本電信電話株式会社では、平成9年10月に、各支社に対して指示文書を発し、通知書の送付方法を経済的なものにするよう改めることとするなどの処置を講じた。

1 加入電話契約者への通知書の送付の概要

(通知書の送付)

 日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)では、加入電話契約者(以下「契約者」という。)に対し各種の通知書を送付している。そして、電話料金等の支払期限が過ぎた場合には、料金の回収を促進するため、電話回線の利用の停止を予告する通知書(以下「停止予告書」という。)及び加入電話契約解除予告通知書(以下「解除予告書」という。)を送付している。また、契約者からの請求に基づき、契約者回線を一時的に休止する場合には、「利用休止のお知らせ」(以下「利用休止通知書」という。)を送付している。

 これら通知書の送付方法は、次のとおりとなっている。

(1) 停止予告書等の送付について

 電話料金等の未納の状態が一定期間継続した場合、電話サービス契約約款(以下「契約約款」という。)及び料金回収マニュアル(以下「マニュアル」という。)により、電話回線の利用を停止することとなっている。この場合、NTTの支店等では、電話料金等が未納となっている契約者に対してあらかじめその旨を文書又は電話により通知することとなっている。そして、これまでの電話料金等の収納において未納を繰り返した者については、料金の回収を促進するため、支払期限後16日目以降に、停止予告書により料金の催促及び利用の停止の予告を行うこととなっている。

 そして、未納を繰り返した者について、支払期限に金融機関等で口座振替により電話料金等の引き落としができない場合(以下、その者を「口座振替利用の未納繰返し者」という。)には、その者に対して、さらに、未納の料金を支払うための請求書(以下「再発行請求書」という。)を停止予告書の送付とほぼ同時期の支払期限後16日目頃に封書により送付している。

(2) 解除予告書の送付について

 契約約款及びマニュアルによると、電話料金等の未納により電話回線の利用の停止を受けた契約者が一定の期限まで未納の状態を継続した場合には、加入電話契約を解除することとなっており、この場合には、事前にその旨を通知することとなっている。この通知は、支店等において解除予告書により封書で送付することとなっている。そして、マニュアルにおいて、その送付は原則として簡易書留郵便(郵便料1通当たり430円)で行うこととしていた(注) が、訴訟等トラブルの発生のおそれがある場合は、例外的な措置として、配達証明付内容証明郵便(郵便料1通当たり1,220円)で行うこととなっている。

(注)  NTTでは、平成9年4月に文書を発し、9年度から簡易書留郵便で送付する解除予告書については、配達記録郵便(郵便料1通当たり290円)により送付するよう変更した。

(3) 利用休止通知書の送付について

 契約約款によると、契約者が電話を長期間使用しない場合には、契約者からの請求に基づき、契約者回線を一時的に利用できないようにする(以下「利用休止」という。)ことができることとなっている。

 そして、契約者から利用休止の請求を受けた支店等では、契約者に、休止番号、休止満了月日等を記した利用休止通知書を交付することとし、郵送による場合は、社内規程により封書によることとしている。

2 検査の結果

(調査の観点)

 NTTでは、多量の通知書を送付しており、これに要する費用の総額も多額に上っている。このため、通知書の送付方法が、送付の目的、通知内容などを考慮した合理的で、しかも経済的なものとなっているかに着目して調査することとした。

(調査の対象)

 平成8年度において支店等が送付したもののうち、262支店等が送付した停止予告書(送付通数年間延べ1406万余通、郵送に係る費用9億2821万余円)、129支店等が送付した解除予告書(同89万余通、同3億6385万余円)及び204支店等が送付した利用休止通知書(同234万余通、同2億0288万余円)の送付状況(これら各通知書の郵送に係る費用計14億9494万余円)について調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、上記各通知書の送付について、次のような事態が見受けられた。

(1) 口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書について

 再発行請求書を送付している口座振替利用の未納繰返し者に対する停止予告書の送付状況についてみると、262支店等のうち71支店等では、停止予告書を再発行請求書に同封しないで別途に通常はがき(郵便料1通当たり50円)により送付していた(送付通数延べ17万余通、郵送に係る費用1177万余円)。また、34支店等では、停止予告書を再発行請求書に同封して送付し、更に別途に同旨の停止予告書を通常はがきにより重複して送付していた(送付通数延べ11万余通、郵送に係る費用720万余円)。

 しかし、口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書は、再発行請求書とほぼ同時期に送付されていることから、これに同封して一括送付すればその旨は通知されるので、別途に送付する必要はないと認められた。

 現に、262支店等のうち157支店等では、停止予告書を再発行請求書に同封して送付しているが、特に支障となる事態は見受けられない状況であった。

 したがって、口座振替利用の未納繰返し者に対する停止予告書については、再発行請求書に同封して送付し、別途の通常はがきによる送付を行わないことにより郵送に係る費用の節減を図る要があると認められた。

(2) 解除予告書について

 解除予告書の送付状況についてみると、129支店等のうち46支店等では、送付通数の全部又は一部を例外的な措置としている配達証明付内容証明郵便、これに準じる配達証明郵便(郵便料1通当たり800円)等(以下、これらの郵便種別を「配達証明郵便等」という。)により送付していた(配達証明郵便等の送付通数は延べ13万余通、その郵送に係る費用は1億1038万余円)。このような例外的な措置を執っているのは、訴訟等トラブルが発生した場合においても送付の事実等を容易に立証できるためであるなどとしている。

 しかし、マニュアルには訴訟等トラブルの発生のおそれがあると認められる範囲が明確に示されておらず、上記46支店等が配達証明郵便等により送付したもののうち、訴訟等トラブルの発生のおそれがあると認められるものはわずか2%程度に過ぎない状況となっていた。また、料金の支払等に関する訴訟で解除予告書を簡易書留郵便等で送付したために不利益となる事態は見受けられなかった。

 したがって、配達証明郵便等による送付については、訴訟等トラブルの発生のおそれがあると認められる範囲を明確にし、例外的な措置の適用を限定することにより郵送に係る費用の節減を図る要があると認められた。

(3) 利用休止通知書について

 利用休止通知書の送付については、社内規程により封書によることとしているのに、前記の204支店等のうち5支店等において、送付通数の全部又は一部を簡易書留郵便等により送付していた(簡易書留郵便等による送付通数は延べ4万余通、その郵送に係る費用は1918万余円)。

 しかし、利用休止通知書を社内規程で封書により送付することとしているのは、休止内容が第三者に漏洩しないようにするためであり、この場合の郵便種別は普通郵便によることを想定しているものであった。そして、上記5支店等以外の大多数を占める支店等では、利用休止通知書を普通郵便で送付しているが、特に支障を生じていなかった。

 したがって、利用休止通知書の送付は、簡易書留郵便等による必要はないことから、普通郵便により送付することとして郵送に係る費用の節減を図る要があると認められた。

(節減できた経費)

 本件各通知書について、次のような方法により送付したとすれば、郵送に係る費用を合計で約8310万円節減できたと認められた。

(1) 口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書について

 前記の105支店等において、停止予告書を別途に送付しないで、再発行請求書に同封して送付することとすれば、同封に伴い必要となる停止予告書に係る通知用紙の購入費を考慮しても約1760万円が節減できた。

(2) 解除予告書について

 前記の46支店等において、訴訟等トラブルの発生のおそれがないと認められるものについて簡易書留郵便により送付することとすれば、約4980万円が節減できた。

(3) 利用休止通知書について

 前記の5支店等において、利用休止通知書を普通郵便により送付することとすれば、約1550万円が節減できた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

(1) 口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書について

 本社において、支社に対し口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書の経済的な送付方法について明確にしていなかったこと

(2) 解除予告書について

 本社において、支社に対し訴訟等トラブルの発生のおそれがあると認められる範囲を明確にしていなかったこと、及び支店等において、マニュアルの規定の趣旨について十分に理解していなかったこと

(3) 利用休止通知書について

 本社において、利用休止通知書については普通郵便により送付することを想定しているのに、支社に対し、この趣旨の徹底を十分に図っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTTでは、9年10月に、各支社に対して指示文書を発し、次のことを周知徹底することにより、通知書の経済的な送付を行うこととするなどの処置を講じた。

(1) 口座振替利用の未納繰返し者への停止予告書については、再発行請求書に同封して送付するとともに、別途の通常はがきの送付を行わないこと

(2) 解除予告書については、例外的な措置の根拠となっている訴訟等トラブルの発生のおそれがあると認められる範囲を明確にして、その適用を限ること

(3) 利用休止通知書については、普通郵便により送付すること