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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 帝都高速度交通営団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

車両清掃業務委託契約における労務単価の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの


車両清掃業務委託契約における労務単価の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業費 (項)車両保存費
部局等の名称 帝都高速度交通営団本社
契約名 車両清掃業務委託契約
契約の概要 旅客サービスの一環として車両の清掃業務を実施するもの
契約の相手方 財団法人地下鉄互助会
契約 平成7年4月〜9年3月 特命随意契約
支払額 1,875,248,658円(平成7、8両年度)
節減できた委託費 2,750万円(平成7、8両年度)
<検査の結果>
 上記の業務委託契約において、作業環境等手当による労務単価の割増しについての積算を清掃作業の実態に適合させることにより、委託費を約2750万円節減できたと認められた。
  このような事態が生じていたのは、清掃作業の実態等について把握が十分でなく、積算要領において、作業環境等手当の対象となる時間について明確に定めていなかったことによると認められた。
<当局が講じた改善の処置>
 本院の指摘に基づき、帝都高速度交通営団では、平成9年11月に、車両清掃業務委託契約における労務単価の積算が清掃作業の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。

1 業務委託の概要

(車両清掃業務委託契約の概要)

 帝都高速度交通営団(以下「営団」という。)では、多数の車両を保有し、これらの安全運行に努めるとともに、旅客サービスの一環として、定期的に車両の清掃を実施している。

 そして、営団では、平成7、8両年度に、車両清掃業務を財団法人地下鉄互助会と業務委託契約を締結し実施しており、この委託費の支払額は、7年度927,748,980円、8年度947,499,678円、計1,875,248,658円となっている。

(車両清掃業務)

 車両清掃業務は、銀座線上野検車区ほか12検車区(注) において、営団が保有する2,401両(9年3月末現在)の車体の内部及び外部を清掃するもので、特別大清掃、大清掃、中清掃、床ワックス清掃、天井清掃、床清掃及び気吹(フィルター)清掃の各清掃種別に清掃を行う標準的な周期が定められている。

(車両清掃業務委託費の積算)

 営団では、車両清掃業務委託費については、本社制定の「車両清掃委託積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて、路線別、清掃種別に算定される車両1両当たりの清掃料単価(以下「1両当たり単価」という。)にそれぞれの清掃実施車両数を乗じて合算し算定することとしている。そして、1両当たり単価は次のように算定することとなっている。

(ア) 過去の実績等を基に各検車区別に定められた1日当たり所要人工数に、年間作業日数を乗じて年間の所要人工数を算出する。

(イ) 農林水産省、運輸省及び建設省の三省連絡協議会が定めている公共工事設計労務単価を準用した日額の労務単価(以下「準用単価」という。)に、(ア)の所要人工数を乗ずることにより、人件費を算出する。また、特別大清掃、大清掃、中清掃、床ワックス清掃及び天井清掃(以下「大清掃等」という。)については、水洗いや消毒、上向き作業等を伴うことから、積算要領により作業環境等手当として労務単価の割増しを行うことができるとされており、その割増率は時給の20%とされている。

(ウ) (イ)の人件費を、年間の清掃作業実施予定車両数を基に算定された年間の総予定清掃時間で除するなどして、1分当たり単価を算出する。

(エ) (ウ)の1分当たり単価に過去の実績等を基に路線別、清掃種別に定められた1両当たりの作業時分を乗ずるなどして、1両当たり単価を算定する。

2 検査の結果

(調査の観点)

 営団の年間輸送人員は、高齢化、少子化の影響などにより大幅な増加は望めず、その結果、旅客収入も大幅な増収は見込めない状況にある。そして、営団では、新線建設等に伴う資本費及び営業線の修繕費等が増大するなかで、経費の節減に取り組んでいることから、多額の経費を要して、毎日継続して行われている車両清掃業務について、経費の算定は作業の実態に適合したものとなっているかなどについて調査した。

(調査の結果)

 調査したところ、清掃の対象となる車両は、朝の混雑時の運行を終えた9時前後から逐次検車区に入庫し、夕方の混雑に向け17時前後に多くが出庫しており、この間に清掃作業を終える必要があることから、大清掃等の清掃作業については、9時から17時までの8時間から休憩時間を除いた7時間を1日の実働時間としていた。

 そして、営団では、大清掃等については、作業環境等手当として労務単価の割増しを行うことができるとされていることから、準用単価を20%割増しするなどして労務単価を算定していた。

 しかし、作業環境等手当は、水洗いや消毒、上向き作業等を伴う作業に対するもので、その実働時間は7時間であるから、労務単価の割増しは、この実働時間を対象として行われるべきであった。

 したがって、大清掃等に係る労務単価については、前記の公共工事設計労務単価は、1日の実働時間を8時間として設定されていることから、準用単価を8時間で除した1時間当たりの単価の20%に7時間を乗ずるなどした額を割増しして算定すべきであると認められた。

(節減できた委託費)

 本件車両清掃業務委託契約における作業環境等手当を清掃作業の実態に即して積算したとすれば、車両清掃業務委託費7年度927,748,980円、8年度947,499,678円は、7年度913,898,989円、8年度933,759,067円となり、委託費を7年度約1380万円、8年度約1370万円、計約2750万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、清掃作業の実態等について把握が十分でなく、積算要領において、作業環境等手当の対象となる時間について明確に定めていなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、営団では、9年11月に、車両清掃業務委託契約における労務単価の積算が清掃作業の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同月以降締結する契約から適用することとする処置を講じた。

(注)  銀座線上野検車区ほか12検車区銀座線上野、渋谷、丸ノ内線小石川、中野、日比谷線千住、竹ノ塚、東西線深川、行徳、千代田線綾瀬、有楽町線和光、新木場、半蔵門線鷺沼、南北線王子各検車区