科目 | 電気通信事業雑収入 |
部局等の名称 | エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 |
契約名 | 資材調達業務委託契約 |
契約の概要 | エヌ・ティ・ティ東海移動通信網株式会社ほか7会社が必要とする携帯電話機等の端末機器、交換機等の物品をエヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社の分とともに一括して調達するもの |
契約の相手方 | エヌ・ティ・ティ東海移動通信網株式会社ほか7会社 |
契約 | 平成5年7月(毎年自動更新) |
収受した受託業務料 | 2億6499万余円(平成8年度) |
過小となっていた受託業務料 | 6190万円(平成8年度) |
1 資材調達業務委託契約等の概要
エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(以下「NTTドコモ」という。)では、平成5年7月に、それまでの全国1社による移動体通信事業の運営から、地域に密着した経営体制を確立するなどのため、エヌ・ティ・ティ東海移動通信網株式会社ほか7会社(注) (以下「地域ドコモ」という。)に営業の一部を譲渡し、NTTドコモ及び地域ドコモ各社はそれぞれの業務区域において、移動体通信事業を運営している。そして、NTTドコモでは、地域ドコモが必要とする携帯電話機等の端末機器、交換機等の物品について、資材調達業務を集約化して効率的な運営を行うことができるようにするなどのため、地域ドコモ各社から委託を受け、自社分とともに一括して調達している。
本件業務の実施に当たり、NTTドコモでは、5年7月に、地域ドコモ各社との間で、資材調達業務委託契約を締結し、毎年自動更新している。この契約によると、NTTドコモが地域ドコモ各社から収受する受託業務料については、NTTドコモと地域ドコモ各社との間で協議のうえ定めることとなっており、8年度に収受した受託業務料は、計2億6499万余円となっている。
NTTドコモでは、上記の契約に基づき、携帯電話機等の端末機器、交換機等の調達物品についての契約事務、配送等の業務を資材部で行っている。この資材部は、NTTドコモ及び地域ドコモが必要とする物品の契約事務、調達物品の配送等を担当する購買担当部門、資材調達業務に使用されるシステムの運用、開発等を担当する業務開発担当部門等から構成されている。
そして、受託業務料は、購買担当部門においてNTTドコモ及び地域ドコモの物品を一括して調達する購買業務(以下「一括購買業務」という。)を担当する社員(以下「一括購買要員」という。)の人件費と、購買担当部門及び業務開発担当部門(以下「購買担当部門等」という。)で発生する一括購買業務に係る委託費、消耗品費等の物件費から構成され、次により算定している。
(ア) 人件費については、地域ドコモ各社との取引に適用するNTTドコモの日額労務単価に一般管理費相当額を加算し、これを基に算出した月額労務単価に各月の一括購買要員数を乗じて算出する。
(イ) 物件費については、購買担当部門等で発生する各月の委託費、消耗品費等の合計額に、購買担当部門等の社員数に対する一括購買要員数の比率を乗じて算出する。
(ウ) (ア)、(イ)の合計額に、前年のNTTドコモ及び地域ドコモに係る物品調達実績の合計額に対する地域ドコモ各社に係る物品調達実績額の割合を乗ずるなどして地域ドコモ各社ごとに毎月の受託業務料を算定する。
2 検査の結果
近年、移動体通信市場が拡大したこともあって、NTTドコモ及び地域ドコモ各社はいずれも加入者数が急激に増加してきており、それに伴う物品の調達額も多額に上っている。
そこで、NTTドコモが収受する受託業務料の算定について着目し、地域別に自主独立的に事業運営を行っている地域ドコモヘの費用負担を適正に行わせているかについて調査した。
調査したところ、受託業務料の算定に当たり、一括購買要員の人件費及び一括購買業務に係る物件費の算出について、次のような事態となっていた。
(1) 一括購買要員の人件費の算出について
購買担当部門で一括購買業務を担当する管理職(担当課長)3人を一括購買要員数に含めていなかった。しかし、この3人は、専ら一括購買業務に従事していることから、一括購買要員数に含めて人件費を算出すべきであると認められた。
(2) 一括購買業務に係る物件費の算出について
(ア) 物件費の算出に当たり、一般管理費を計上していなかった。しかし、本件業務の実施に当たっては、NTTドコモにおいて管理業務に係る諸費用が発生しており、この費用についても地域ドコモ各社に負担させる必要があることから、一般管理費相当額を加算して一括購買業務に係る物件費を算出すべきであると認められた。
(イ) 委託費のうち資材調達業務に使用されるシステムの開発等に係る費用(以下「システム開発費」という。)に購買担当部門等の社員数に対する一括購買要員数の比率を乗じていた。しかし、このシステム開発費は一括購買業務のみに使用されるシステムに係る費用であるので、この比率を乗じる必要はないと認められた。
本件受託業務料の算定に当たり、上記により、一括購買要員の人件費及び一括購買業務に係る物件費を適切に算出したとすれば、8年度の受託業務料は計3億2698万余円となり、前記の受託業務料計2億6499万余円との差額約6190万円が過小となっていると認められた。
このような事態が生じていたのは、NTTドコモにおいて、地域ドコモ各社と協議のうえ定めることとしている受託業務料に計上する費用の範囲が明確になっていなかったことなどによると認められた。
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、NTTドコモでは、地域ドコモ各社と協議のうえ、9年10月に、受託業務料に計上する費用の範囲を明確にした算定方法を定め、同年4月に遡及して適用することとする処置を講じた。
(注) エヌ・ティ・ティ東海移動通信網株式会社ほか7会社 エヌ・ティ・ティ東海、同北陸、同関西、同中国、同四国、同九州、同東北、同北海道各移動通信網株式会社