ページトップ
  • 平成8年度|
  • 第3章 特定検査対象に関する検査状況

国庫補助事業に係る事務費の執行について 


第3 国庫補助事業に係る事務費の執行について

(1) 本院が、平成7年、農林水産省、運輸省及び建設省所管の公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査した結果、これら3省では、本院の指摘に基づき、都道府県に対し食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる改善の処置を講じるとともに、非公共事業についてもこれに準じて改善の処置を講じた。そして、上記の3省以外の省庁においても、3省と同様に改善の処置が講じられているものと認められた。したがって、今後は、都道府県において改善の趣旨の徹底が図られているか見守っていくこととした。

 また、事務費のうちの旅費等の執行に関し、一部の都道府県において、架空の名目による経理処理が行われていた問題が提起され、これを契機に当該都道府県による内部調査が行われるなど、旅費等の執行については、社会的関心が高いものとなっている。

(2) このようなことを踏まえ、本院が実施した検査の状況は、次のとおりである。

(ア) 食糧費については、各省庁が所管する公共事業及び非公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査を行ったが、特に不適切な事態は見受けられなかった。

(イ) 旅費等の執行については、47都道府県からの内部調査の取組状況などの報告によれば、北海道ほか17府県において不適正な経理処理が行われていた。そして、北海道ほか4府県については、なお内部調査が継続して行われており、また、上記の18道府県以外の県においても内部調査が行われているものがあった。したがって、本院としては、今後、都道府県における内部調査による実態解明の推移を注視するとともに、これに関連する国庫補助事業について、都道府県及び所管省庁から報告を受けたうえでその内容を調査検討することとする。

(3) 本院では、食糧費及び旅費等の事務費の執行については、社会的関心が高く、厳正な経理処理が求められているので、今後とも、国庫補助事業に係る事務費の執行について、十分留意して検査に努めることとする。

1 検査の背景

(1) 食糧費について

 本院では、平成7年、食糧費を巡る問題について社会的関心も高かったことから、農林水産省、運輸省及び建設省所管の公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査を実施した。その結果、これら3省では、本院の指摘に基づき、都道府県に対し通達を発するなどして、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととするなど食糧費の使用及び経理処理を適切に行わせる改善の処置を講じるとともに、非公共事業についてもこれに準じて改善の処置を講じた。そして、これら3省以外の省庁(注1) においても、7年の本院の指摘などを踏まえ、3省と同様の処置を執っており、改善の処置が講じられているものと認められた。

 したがって、本院としては、都道府県において、通達等の趣旨に沿った食糧費の適切な使用及び明確な経理処理の徹底が図られているか厳正に見守っていくこととした。

(2) 旅費等の執行について

 国庫補助事業の事務費のうちの旅費等の執行に関し、一部の都道府県において、架空の名目で旅費等を支出するなどの経理処理が行われていた問題が提起され、これを契機に当該都道府県による内部調査が行われた。本院では、昨年、47都道府県から、旅費等の執行に関する内部調査の取組状況などについて報告を受けたが、これらによれば、北海道ほか5県(注2) において旅費等の執行に関して不適正な経理処理が行われており、旅費等の執行については、社会的関心が高いものとなっている。

 したがって、本院としては、都道府県による実態解明の推移を引き続き注視するとともに、これに関連する国庫補助事業について、都道府県及び所管省庁から報告を受けたうえでその内容を調査検討することとした。

 このような状況を踏まえ、本院では、国庫補助事業に係る事務費の執行について、検査を実施した。

2 検査の観点

(1) 食糧費については、都道府県において、所管省庁の通達等の趣旨に沿った食糧費の適切な使用及び明確な経理処理の徹底が図られているかという観点から検査した。

(2) 旅費等の執行については、国庫補助事業に係る旅費等の経理処理が適正に行われているかという観点から、引き続き、都道府県における内部調査の取組状況などについて報告を求め、国庫補助事業に関連するものについては所管省庁から報告を受けるなどして、旅費等の執行状況を把握することとした。

3 検査の状況

(1) 食糧費について

 都道府県において、各省庁が所管する公共事業及び非公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について、その一部を抽出し、実績報告書、経理関係書類等に基づき、懇談会の経費は原則として補助の対象に含めないこととしているか、国庫補助対象事業費と都道府県の単独事業費の経理は明確に区分されているかなどについて検査を行った。その結果、特に不適切な事態は見受けられなかった。

(2) 旅費等の執行について

 47都道府県から、旅費等の執行に関する内部調査の取組状況などについて報告を受けた。これらの報告によれば、北海道ほか17府県(注3) において旅費等の執行に関して不適正な経理処理が行われていた。

 これら18道府県については、9年10月末現在で、次のような状況となっている。

(ア) 北海道ほか9府県(注4) については、各道府県の報告によれば、4年4月から9年3月までの旅費、賃金等の執行に関して計141億7486万余円の不適正な経理処理が行われていた。そして、これに関連する4年度から8年度までの国庫補助事業(事業費計46億4162万余円(交付金及び委託費を含む。))について、国庫補助金計26億0274万余円が返還又は減額されたほか、8661万余円が返還又は減額されることになっている。また、これらの国庫補助事業の所管省庁(注5) からも上記の道府県の報告と同様の報告を受けた。

(イ) 青森県ほか7県(注6) については、各県の報告によれば、4年4月から9年3月までの旅費、需用費等の執行に関して計130億7762万余円の不適正な経理処理が行われ、各県においては、国庫補助事業との関連を検討したり、国庫補助金の返還額を検討したりしている。

 そして、北海道ほか4府県(注7) については、なお内部調査が継続して行われており、また、上記の18道府県以外の県においても旅費等の執行に関して内部調査が行われているものがあった。

 したがって、本院としては、このような動向を踏まえ、今後、都道府県における内部調査による実態解明の推移を引き続き注視するとともに、これに関連する国庫補助事業について、都道府県及び所管省庁から報告を受けたうえでその内容を調査検討することとする。

 本院では、食糧費及び旅費等の事務費の執行については、社会的関心が高く、厳正な経理処理が求められているので、今後とも、国庫補助事業に係る事務費の執行について、十分留意して検査に努めることとする。

(注1) 3省以外の省庁 総理府(総務、防衛(防衛施設)、科学技術、環境、国土各庁)、文部、厚生、通商産業、労働、自治各省
(注2) 北海道ほか5県 北海道、宮城、秋田、新潟、三重、鹿児島各県
(注3) 北海道ほか17府県 北海道、大阪府、青森、岩手、宮城、秋田、群馬、埼玉、新潟、富山、山梨、三重、和歌山、島根、高知、福岡、大分、鹿児島各県
(注4) 北海道ほか9府県 北海道、大阪府、宮城、秋田、群馬、新潟、富山、三重、高知、福岡各県
(注5) 所管省庁 総理府(総理本府、総務、防衛、経済企画、科学技術、環境、国土各庁)、法務、外務、大蔵、文部、厚生、農林水産、通商産業、運輸、労働、建設、自治各省
(注6) 青森県ほか7県 青森、岩手、埼玉、山梨、和歌山、島根、大分、鹿児島各県
(注7) 北海道ほか4府県 北海道、大阪府、岩手、秋田、新潟各県