ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成10年9月

公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果について


(1)施設の設置・運営の趣旨・目的

 公的宿泊施設は、社会保険各制度の被保険者等の福祉の増進や、郵便貯金の普及等、それぞれの施設種別ごとに法律上定められた目的にしたがって設置・運営されることになっている。これを設置者別に示すと次のとおりである。

(ア)厚生省所管の健康保険保養所及び健康保険保健福祉センター(以下「健康保険保養所等」という。)は、健康保険法(大正11年法律第70号)に、船員保険保養所及び船員保険福祉センター(以下「船員保険保養所等」という。)は、船員保険法(昭和14年法律第73号)に、厚生年金会館、厚生年金休暇センター及び厚生年金健康福祉センター(以下「厚生年金会館等」という。)は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)に、国民年金健康保養センター、国民年金会館及び国民年金健康センター(以下「国民年金健康保養センター等」という。)は、国民年金法(昭和34年法律第141号)にそれぞれ基づき、社会保険の被保険者又は年金受給者等の福祉を増進することなどを目的として設置・運営されているものである。

(イ)郵政省所管の郵便貯金会館及び郵便貯金総合保養施設(以下「郵便貯金会館等」という。)は、郵便貯金法(昭和22年法律第144号)に基づき、郵便貯金の普及を目的とし、その周知宣伝に必要な施設として設置・運営されているものである。

(ウ)雇用促進事業団が設置する勤労者職業福祉センター、勤労者福祉センター、勤労者野外活動施設(B型)、勤労総合福祉センター、全国勤労青少年会館及び中小企業レクリェーションセンター(以下「勤労者職業福祉センター等」という。)は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、雇用保険の被保険者等の福祉の増進、雇用の安定及び勤労意欲の向上に資することを目的として設置・運営されているものである。

(エ)簡易保険福祉事業団が設置する簡易保険保養センター及び簡易保険会館(以下「簡易保険保養センター等」という。)は、簡易生命保険法(昭和24年法律第68号)に基づき、簡易生命保険の保険契約者、被保険者及び保険金受取人の健康の増進及び福祉の充実を図ることを目的として設置・運営されているものである。

(オ)年金福祉事業団が設置する大規模年金保養基地は、厚生年金保険法、国民年金法等に基づき、厚生年金保険及び国民年金の年金受給者が生きがいのある有意義な老後生活を送るための場を提供するとともに、これら年金制度の加入者及びその家族等の健全、かつ、有効な余暇利用に資することを目的として設置・運営されているものである。

 これら施設の施設種別ごとの設置・運営の趣旨・目的、経緯等は表1-1のとおりである。

 

(表1-1)施設種別ごとの設置・運営の趣旨・目的、経緯等
省庁等 施設の種別・設置根拠 設置・運営の趣旨・目的、経緯
厚生省
(社会保険庁)
健康保険保養所
 
 ・ 健康保険法
  第23条
 病後の保養や心身の休養をその目的として、昭和24年に創設された。その後財政状況等に応じて改廃が行われているが、近年既存施設を建替える場合には健康増進機能等を付加した施設への転換を図っている。
健康保険保健福祉センター
 
 ・
同上

 病院を退院した者などに対して栄養指導等を行い日常生活への早期復帰、再入院の防止などにより医療費の削減に資することを目的として、昭和59年に創設された。
船員保険保養所
 ・ 船員保険法
  第57条の2
 船員の保養と病後の静養を目的として、昭和19年に創設された。近年は施設の経営状況等により施設の統廃合が行われている。
船員保険福祉センター
 ・
同上

 船員の海上労働という特殊環境における疲れを癒すため、家族とともに自然環境の中で、健康的な余暇を過ごすための機会を提供するとともに、健康増進機能を併せもつ保養施設として昭和46年に創設された。
厚生年金会館
 ・ 厚生年金保険法
  第79条第1項
 
 厚生年金保険の被保険者等に対して、教養文化の向上を図るための施設として昭和36年に創設された。
厚生年金休暇センター
 ・
同上

 長期入居を目的とした老人ホームとしての役割にとどまらず、年金受給者等の生きがいや余暇利用等にも着目し、併せて老人の家族・地域住民との交流の場として、また被保険者の健康増進にも役立つ施設として昭和49年に創設された。
厚生年金健康福祉センター
 ・
同上

 労働時間の短縮が進展するなかで、被保険者等における健康の保持増進及び余暇利用の推進のため健康増進等の機能を持つ施設として昭和55年に創設された。
国民年金健康保養センター
 ・ 国民年金法
  第84条第1項
 
 当初国民年金保養センターの名称で被保険者等の保養・休養の場を提供する施設として昭和47年に創設された。その後は、58年閣議決定等を受けて国民年金健康保養センターとして、健康づくり・体力づくりを主体とした施設となった。
国民年金会館
 ・
同上

 被保険者等の福祉の増進と教養文化の向上を図るための施設として、昭和54年に東京に、また、59年に京都に建設された。
国民年金健康センター
 ・
同上

 被保険者等の健康づくり・体力づくりを主体とした健康の増進及び福祉の向上を図るなどのため、平成4年に創設された。
郵政省 郵便貯金会館
 ・ 郵便貯金法
  第4条第1項
 郵便貯金の普及を目的とし、その周知宣伝に必要な施設として昭和45年に創設された。
郵便貯金総合保養施設
 ・
同上

 昭和62年に総合保養地域整備法が制定されたことを契機に、同法の方針に貢献すべきとする観点から、同法の重点整備地区内にスポーツ、健康増進機能を中心として平成9年に創設された。
雇用促進事業団 全国勤労青少年会館
 ・ 雇用保険法
  第64条第1項第3号
 ・ 雇用促進事業団法
  第19条第1項第5号
 心身の成長過程にある勤労青少年が有為な職業人としてすこやかに成長することを促進するとともに、勤労青少年の雇用の安定と福祉の増進に資することを目的として、昭和48年に創設された。
勤労者職業福祉センター
 ・
同上

 大都市における勤労者に、職業相談等各種の相談及び職業情報の提供をはじめ、教養・文化、研修ならびにスポーツ等の活動の場を提供し、大都市勤労者の福祉の充実と勤労意欲の向上を図り、もって雇用の促進と職業の安定に資するとともに、併せて地域ブロックの福祉施設の中核的機能を果たすことを目的として、昭和60年に創設された。
勤労者福祉センター
 ・
同上

 大都市における勤労者に、教育研修・教養・娯楽ならびに集会、スポーツ等の活動の場を提供し、大都市勤労者の福祉の充実と勤労意欲の向上を図り、もって雇用の促進と職業の安定に資するとともに、併せて地域ブロックの福祉施設の中核的機能を果たすことを目的として、昭和54年に創設された。
中小企業レクリェーションセンター
 ・
同上

 中小企業に雇用される労働者に保養、スポーツ及び研修のための施設を提供し、もって労働者の福祉の増進と勤労意欲の高揚に資することを目的として、昭和42年に創設された。
勤労総合福祉センター
 ・
同上

 新産業都市又は工業整備特別地域等開発地域における勤労者の福祉施設を充実し、もって雇用の促進と職業の安定を図るとともに地域開発に寄与することを目的として、昭和45年に創設された。
勤労者野外活動施設
(B型)
 ・
同上

 勤労者が週休2日等の余暇を利用して自然に親しみながら、健康増進、人間性の回復、生活の充実感増大等を図るための施設を提供し、もって雇用の促進、職業の安定に資することを目的として、昭和50年に創設された。
勤労者リフレッシュセンター
 ・
同上

 労働者の多様なニーズに応じて、心身の健康をチェック、健康状態に応じた生活指導、職業生活に関するコンサルティング、教養・スポーツ活動の実践を通じて心身ともにリフレッシュすることを目的として、平成10年に創設された。
簡易保険福祉事業団 簡易保険保養センター
簡易保険会館
 ・ 簡易生命保険法
  第101条第1項
 簡易生命保険の保険契約者、被保険者及び保険金受取人の福祉を増進することを目的として、昭和38年に創設された。
年金福祉事業団 大規模年金保養基地
 ・ 厚生年金保険法
  第79条第2項
 ・ 国民年金法
  第84条第2項
 ・ 年金福祉事業団法
  第17条第1項第1号
 厚生年金保険及び国民年金の受給者が生きがいのある有意義な老後生活を送るための場を提供するとともに、これら年金制度の加入者及びその家族等の健全、かつ、有効な余暇利用に資することを目的として、昭和55年に創設された。

(2)公的宿泊施設に関する閣議決定等の状況

 公的宿泊施設の設置・運営に関しては、昭和50年代後半以降、臨時行政調査会(第2次)の答申において言及されたほか、数次にわたって関連する閣議決定がなされているが、民間同種施設の充実を背景とした新規建設の抑制、民間委託の推進による運営の効率化などがその基調となっている。その概要は表1-2、表1-3のとおりである。

(表1-2)公的宿泊施設に関する臨時行政調査会の答申
臨調答申年月日 答申の要旨 対象の省庁等
昭和57年
7月30日
(3次答申)
・会館、宿泊施設等については、民間の施設を含め全国的に同種の施設の整備が進んでおり、また公的施設相互及び民間との競合が発生しつつあることから、原則として新設を行わない。 ・全般
・会館、宿泊施設、教育文化施設等については、利用の増進、経営の効率化等の見地から、運営の民間への委託等を進める。 ・全般
58年
3月14日
(最終答申)
・郵便貯金会館については、郵便貯金特別会計の負担において今やこのような施設を提供する必要性に乏しいので、次のとおり措置する。郵便貯金振興会については、原則として会館の新設を行わないこととするとともに、会館運営については利用料金の見直し及び経営の効率化を推進し、自立化の原則(注) に従い民間法人化する。 ・郵政省
・保養センター等については、簡易生命保険事業で行う必要性は薄くなっていると考えられるので、次のとおり措置する。簡易保険郵便年金福祉事業団については、原則として会館、宿泊施設等の新設を行わないこととするとともに、今後は、各種施設の民間委託を推進する等、経営の一層の効率化を図ることによって、交付金を縮減する。 ・簡易保険郵便年金福祉事業団
・施設関係法人については、民間と競合する会館、宿泊施設等の施設の新設を原則的に中止するとともに、既存施設については、運営の民間委託を進める等経営の効率化を進める。 ・全般
・大規模年金保養基地の新設を原則として中止し、運営の民間等への委託を行う。 ・年金福祉事業団
・原則として会館、宿泊施設等の新設を行わないこととする。 ・簡易保険郵便年金福祉事業団
・原則として会館、宿泊施設等の新設を行わないこととする。 ・雇用促進事業団
「自立化の原則」:特殊法人等は、政府資金等に依存する体質から脱却し、自立的に経営を行うよう努めなければならない。自立できることとなつた法人は、民間法人化することを原則とする。
なお、郵便貯金振興会については、昭61年4月に民間法人化されている。

(表1-3)公的宿泊施設に関する主な閣議決定
閣議決定年月日 閣議決定内容 対象の省庁等
58年
5月24日
・郵便貯金会館及び簡易保険郵便年金保養センター等の施設については、原則として新設を行わないこととするとともに、経営の効率化を推進するものとする。 ・郵政省
・簡易保険郵便年金福祉事業団
・施設関係法人については、民間と競合する会館、宿泊施設等の新設を原則的に中止するとともに、既存施設の運営の民間委託等を進める。 ・全般
59年
1月25日
・大規模年金保養基地について、建設中の基地以外の新設は今後行わず、かつ、その運営をすべて民間又は地方公共団体に委託する。 ・年金福祉事業団
・原則として、会館、宿泊施設等の新設を行わないこととするとともに、各種施設の民間委託を推進する等経営の一層の合理化を図る。 ・簡易保険郵便年金福祉事業団
・原則として会館、宿泊施設等の新設を行わないこととする。 ・雇用促進事業団
59年
12月29日
・大規模年金保養基地については、既定の方針に沿って、建設中の基地以外の新設は行わず、昭和60年度に開設する施設についても、その運営をすべて民間又は地方公共団体に委託する。 ・年金福祉事業団
・引き続き、原則として、会館、宿泊施設等の新設は行わない。また、各種業務の民間委託、事務の総合機械化を推進する等経営の一層の合理化を図り、昭和60年度において、事業団交付金を極力抑制する。 ・簡易保険郵便年金福祉事業団
・引き続き、原則として会館、宿泊施設等の新設は行わないこととする。 ・雇用促進事業団
60年
12月28日
・大規模年金保養基地については、既定の方針に沿って、建設中の基地以外の新設は行わず、昭和61年度に開設する施設についても、その運営をすべて民間又は地方公共団体に委託する。 ・年金福祉事業団
平成7年
2月24日
・大規模年金保養基地については、地元の意向を踏まえつつ県に運営委託している施設の県への譲渡等地域利用を図る。 ・年金福祉事業団
9年6月6日 ・大規模年金保養基地業務からは撤退する。 ・年金福祉事業団