独立行政法人の会計は、通則法において、主務省令で定めるところにより、原則として企業会計原則によることとされているが、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算制を前提としないなどの独立行政法人が有する特殊性を踏まえて、中央省庁等改革の推進に関する方針(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)に基づき行われた独立行政法人の会計に関する研究の成果として、企業会計原則に必要な修正を加えた独立行政法人会計基準(以下「会計基準」という。)及び独立行政法人会計基準注解(以下「注解」という。)が12年2月に策定 (15年3月、17年6月改訂)されている。
そして、会計基準は、各独立行政法人の業務運営並びに財務及び会計に関する事項を定めた個別の省令により、当該省令に準ずるものとして、独立行政法人がその会計を処理するに当たって従わなければならないとされている基準であって、独立行政法人の会計に関する認識、測定、表示及び開示の基準を定めるものであるとされている。また、そこに定められていない事項については一般に公正妥当と認められる企業会計原則に従うものとされている。
独立行政法人の事業年度は、通則法により、毎年4月1日から翌年3月31日までとされており、毎年度、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他主務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該年度の終了後3箇月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならないこととされている。
独立行政法人の支出は、公共的な事務及び事業を確実に実施するためになされるものであり、独立採算制を前提としていないことから、国は、独立行政法人の業務運営のために必要な財源措置を講ずることとしており、独立行政法人に対して運営費交付金を交付している。
(ア)運営費交付金の算定方法の設定
独立行政法人は、中期計画において、中期目標の期間全体に係る運営費交付金の総額(以下「中期計画額」という。)を算定しており、また、毎年度の開始前に作成する年度計画において、当該年度分の運営費交付金(以下「年度計画額」という。)を算定している。そして、独立行政法人に対する運営費交付金に係る国の予算措置については、主務大臣が予算要求を行うこととされており、毎年度の予算編成の中で運営費交付金の交付額が決定される。
運営費交付金の算定については、中央省庁等改革推進本部事務局が12年4月に示した「独立行政法人・中期計画の予算等について」において、算定式が例示されており、具体的な算定方法の設定に当たっては、各独立行政法人の業務内容や財務構造等に即して適当な方法を定めることとされている。
(イ)運営費交付金の会計処理
運営費交付金は独立行政法人に対して国から負託された業務の財源であり、運営費交付金の交付をもって直ちに収益と認識することは適当ではないため、会計基準において、独立行政法人の会計に特有の勘定として、運営費交付金受領時に発生する義務を表す、流動負債に属する「運営費交付金債務」勘定が設けられており、国から運営費交付金を受領したときは、その相当額を同勘定で整理することとされている。
そして、運営費交付金を業務費、一般管理費、人件費等の費用に充てる際には、運営費交付金債務を業務の進行に応じて一定の基準に基づき収益化を行うこととされており、その際には当該収益化に相当する額を「運営費交付金債務」勘定から収益に属する「運営費交付金収益」勘定に振り替えることとされている。ただし、固定資産等を取得した際には、その取得額のうち運営費交付金に対応する額について「資産見返運営費交付金」勘定や「資本剰余金」勘定に振り替えることとされている。
このように、何らかの形で運営費交付金が使用されると、その相当額が「運営費交付金債務」から振り替えられることとされている。
なお、会計基準では、中期目標の期間の終了時点に、期間中に交付された運営費交付金を精算するものとされており、このため、中期目標の期間の最後の年度(以下「中期目標最終年度」という。)末において、なお運営費交付金債務が残る場合には、別途、精算のための収益化を行うこととされている。
(ウ)運営費交付金債務の収益化の基準
上記のとおり、運営費交付金債務は、業務の進行に応じて一定の基準に基づき収益化されるが、注解において、運営費交付金債務を収益化する際の基準(以下「収益化基準」という。)として、表2-1のとおり、主なものとして3つの基準が示されており、法人の業務内容からみてその業務の進ちょく状況を最も適切に反映し、法人にできるだけ成果達成への動機付けを与える手法を法人ごとに定める必要があるとされている。
成果進行基準 | 一定の業務と運営費交付金との対応関係が明らかにされている場合に、当該業務の達成度に応じて、財源として予定されている運営費交付金債務の収益化を行うもの。例えば、一定のプロジェクトの実施や退職一時金の支払について、交付金財源との対応関係が明らかにされている場合等がこれに該当する。 |
期間進行基準 | 業務の実施と運営費交付金財源とが期間的に対応している場合に、一定の期間の経過を業務の進行とみなし、運営費交付金債務の収益化を行うもの。例えば、管理部門の活動等がこれに該当する。 |
費用進行基準 | 上記のような業務と運営費交付金との対応関係が示されない場合に、業務のための支出額を限度として、運営費交付金債務の収益化を行うもの。 |
独立行政法人は、通則法により、毎年度、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額は、原則として積立金として整理しなければならないこととされている。そして、上記の残余があるときは、通則法第44条第3項の規定に基づき、主務大臣の承認を受けて、その残余の額の全部又は一部を中期計画に定められた剰余金の使途に充てるための積立金(以下「目的積立金」という。)として積み立てることができることとなっている。この主務大臣の承認に当たっては、中央省庁等改革の推進に関する方針において、法人の経営努力により生じた額を承認することとされており、また、通則法により、財務大臣に協議しなければならないこととされている。
なお、上記の両積立金の中期目標最終年度における処分については、個別法により、主務大臣の承認を得て次の中期目標の期間における業務の財源に充てることができるとされた金額を控除して、なお残余があるときは、その残余の額を国庫に納付しなければならないとされている。