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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書

独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果について


(4)損益及び目的積立金

ア 損益

(ア)損益の状況

 独立行政法人の中期計画及び年度計画においては、費用と収益に関する収支計画が定められている。検査の対象とした45法人では、収支計画上は、すべて費用と収益に同額が計上されており、利益も損失も発生しないこととなっている。これは、独立行政法人が公共性を有し利益の獲得を目的としていないことなどから、運営費交付金、自己収入等に見合った業務を行うことが予定されていることなどによるものであると考えられる。
 一方、13年度から16年度までの各独立行政法人の財務諸表上の損益の状況をみると、表2−9のとおりであり、ごく一部を除き、各独立行政法人は毎年度利益又は損失を計上している。これは、計画と比べて自己収入等の収益や費用が増減していること、また、費用進行基準を採用している独立行政法人において、自己収入の全部又は一部について「全額費用化型」以外の方法を採用していることなどによるものである。

表2−9 損益の状況(13年度〜16年度)

(単位:千円)

法人名 純利益又は純損失(13年度) 純利益又は純損失(14年度) 純利益又は純損失(15年度) 純利益又は純損失(16年度)
消防研究所 312,882 44,417 6,384 △ 123,524
酒類総合研究所 344,986 45,354 20,587 17,745
国立特殊教育総合研究所 67,081 11,004 526 △ 15,335
大学入試センター 232,732 463,465 212,168 554,931
国立オリンピック記念青少年総合センター 571,437 108,676 105,188 73,409
国立女性教育会館 167,771 1,018 △ 11,117 13,299
国立青年の家 14,433 343 766 771
国立少年自然の家 774 9,017 723 3,386
国立科学博物館 4,722 1,681 △ 11,984 10,481
物質・材料研究機構 2,512,859 351,381 1,012,311 △ 153,718
防災科学技術研究所 1,047,172 236,596 674,752 121,872
放射線医学総合研究所 42,290 38,129 83,002 225,390
国立美術館 1,316,543 217,485 109,670 216,407
国立博物館 127,886 345,306 292,869 △ 295,104
文化財研究所 230,384 21,478 △ 59,530 64,984
産業安全研究所 9,427 4,953 4,462 8,682
産業医学総合研究所 7,720 6,115 18,524 6,802
農林水産消費技術センター 1,916 4,859 1,188 1,360
種苗管理センター 178,503 790 △ 89,680 6,265
家畜改良センター 169,355 1,088,392 △ 26 11,289
肥飼料検査所 △ 7,047 5,681 △ 14,435 45,054
農薬検査所 14,300 270 △ 84,537 84,613
農業者大学校 3,522 △ 1,465 361 533
林木育種センター 81,469 107 2,407 △ 2,914
さけ・ます資源管理センター 231,502 2,785 663 303
水産大学校 35,467 1,748 3,214 2,150
農業生物資源研究所 1,317,949 361,611 △ 95,980 △ 94,633
農業環境技術研究所 430,128 194,156 38,436 2,718
農業工学研究所 261,823 52,224 15,761 24,323
食品総合研究所 338,094 271,788 90,713 160,839
国際農林水産業研究センター 183,225 2,809 920 5,043
森林総合研究所 881,242 125,045 67,019 △ 47,274
製品評価技術基盤機構 418,888 △ 9,653 114,028 357,233
土木研究所 617,919 42,878 70,672 55,116
建築研究所 631,911 28,063 36,999 33,834
交通安全環境研究所 227,678 808,517 457,875 96,618
海上技術安全研究所 11,948 310,764 422,804 97,649
港湾空港技術研究所 430,212 90,091 86,775 46,718
電子航法研究所 20,474 8,804 15,848 14,316
北海道開発土木研究所 117,593 17,188 7,040 9,937
海技大学校 △ 2,019 △ 1,058 △ 141 8,242
航海訓練所 222,725 53,656 44,170 245,598
海員学校 - - - △ 397,362
航空大学校 △ 52 △ 10 △ 260 22
国立環境研究所 414,110 413,563 359,184 △ 61,078

(イ)損益の発生元

 損益が発生している独立行政法人について、その発生元を調査したところ、図2−7のとおり、各年度とも「運営費交付金以外の収入によるもの」が大半を占めている。「運営費交付金によるもの」がほとんどないのは、多くの独立行政法人が運営費交付金債務の収益化基準として費用進行基準を採用していることなどによると思料される。

図2−7 損益の発生元(13年度〜16年度)

図2−7損益の発生元(13年度〜16年度)

 そして、「運営費交付金以外の収入」から生じた損益の内訳について調査したところ、図2−8のとおり、13年度は「消費税等還付金によるもの」が大宗を占めており、14、15両年度は「受託収入によるもの」、16年度は「その他の自己収入によるもの」の割合が大きくなっている。
 13年度に「消費税等還付金によるもの」が100億円を超えているのは、独立行政法人の設立に伴う国からの現物出資によって当時の消費税法施行令(昭和63年政令第360号)の適用による多額の還付金が発生し、当該還付金による収入を「非費用化型」で処理していることによるものである。なお、14年度以降において「消費税等還付金によるもの」が大幅に減少しているのは、国からの追加の現物出資が少額となっていることなどのためである。
 また、16年度に「受託収入によるもの」が大幅に減少したのは、農業生物資源研究所、物質・材料研究機構等で、受託事業において前期までに取得した償却資産の減価償却費を費用として計上したことなどによると思料される。

図2−8 「運営費交付金以外の収入」から生じた損益の内訳(13年度〜16年度)

図2−8「運営費交付金以外の収入」から生じた損益の内訳(13年度〜16年度)

イ 目的積立金

(ア)目的積立金の状況

 積立金の期末残高は、表2−10のとおり、14年度133億円、15年度185億円、16年度223億円と毎年度増加している。
 また、経営努力の成果として積み立てられた目的積立金は、14年度5.6億円、15年度6.1億円、16年度3.3億円、合計15.2億円となっている。さらに、目的積立金が各年度にどの程度取り崩されているかについてみたところ、14年度0.8億円、15年度1.4億円、16年度8.1億円となっており、17年3月末における目的積立金の残高は4.8億円となっている。

表2−10 積立金及び目的積立金の状況(13年度〜16年度)

(単位:千円)

13年度 14年度 15年度 16年度 累計額
積立金期末額
(A)

- 13,355,967 18,519,659 22,337,305 -
目的積立金期首額
(B)

- - 488,750 960,364 -
目的積立金期中増加額
(C)

- 569,922 615,238 337,587 1,522,747
目的積立金取崩額
(D)

- 81,172 143,624 811,015 1,035,811
目的積立金期末額
(E)

- 488,750 960,364 486,936 -
目的積立金と積立金の比率
(E)/(A)
- 3.7% 5.2% 2.2% -
目的積立金取崩率
(D)/((B)+(C))
- 14.2% 13.0% 62.5% -

(イ)目的積立金の発生元

 運営費交付金債務の収益化基準として費用進行基準を採用している法人と、複数の基準を併用している法人に区分して目的積立金の発生元をみると、表2−11のとおりとなっており、費用進行基準を採用している法人においては、中期目標最終年度を除いた各年度の財務諸表には運営費交付金の収益化による利益が計上されないため、運営費交付金からは経営努力の成果としての目的積立金が積み立てられていない。
 一方、成果進行基準又は期間進行基準を採用している法人においては、計画額の適正性等は求められるものの、あらかじめ計画した額に比べ効率的に運営費交付金を使用すると、計画額と実際の使用額との差額が利益として計上され、このうち法人の経営努力により生じたものとして承認された額については、目的積立金として積み立てられている。

表2−11 目的積立金の発生元(13年度〜15年度)

(単位:千円)

13年度 14年度 15年度
費用進行基準を採用している法人(40法人) 運営費交付金によるもの - - -
運営費交付金以外の収入によるもの 275,927 444,032 265,857
計(A) 275,927 444,032 265,857
複数の基準を併用している法人(5法人) 運営費交付金によるもの 209,835 16,741 34,889
運営費交付金以外の収入によるもの 84,158 154,464 36,839
計(B) 293,994 171,205 71,729
合計(A)+(B) 569,922 615,238 337,587

(ウ)目的積立金の申請・承認状況

 目的積立金の申請状況についてみると、表2−12のとおり、13年度から14年度にかけての申請法人数は15法人から16法人に、申請額の合計は6.7億円から7.2億円に増加しているが、15年度以降は、申請法人数及び申請額の合計とも減少傾向を示しており、16年度では、申請法人数は7法人、申請額の合計は3.3億円となっている。そして、申請額の合計に対する承認額の合計の割合は、13、14両年度は80%を超えているが、15年度は約60%となっている。
 また、目的積立金の申請がある法人が利益処分案を提出してから主務大臣の承認を得るまでに要した日数の平均は、13年度209日、14年度239日、15年度164日となっており、目的積立金の申請がない法人が利益処分案の承認を得るまでに要した日数の平均の1.7倍から2.7倍程度となっている。このことから、独立行政法人において実際に目的積立金を取り崩して使用することができるまでに長期間を要することになっている。

表2−12 目的積立金の申請・承認等の状況(13年度〜16年度)
目的積立金の申請あり 目的積立金の申請なし (A)/(B)
法人数 申請合計額
(千円)
平均申請額
(千円)
承認合計額
(千円)
平均承認額
(千円)
承認合計額の申請合計額に占める割合 利益処分案提出から大臣承認が得られた日までの平均日数(日)
(A)
法人数 利益処分案提出から大臣承認が得られた日までの平均日数(日)
(B)
13年度 15 678,473 45,231 569,922 37,994 84.0% 209 30 117 1.79
14年度 16 727,994 45,499 615,238 38,452 84.5% 239 29 87 2.75
15年度 12 564,994 47,082 337,587 28,132 59.8% 164 33 89 1.84
16年度 7 337,442 48,206 - - - - 38 - -