独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果について
独立行政法人は、国から多額の出資、運営費交付金及び施設整備費補助金の交付等を受けて運営されており、明確な中期目標の下で、自主的・機動的な組織運営と弾力的な財務運営に努めることなどにより、国民のニーズに即応した効率的な行政サービスを提供することが要請されている。そして、主な業務実績についてはこれを広く公表することが義務づけられるとともに、厳格な評価を受けることも求められている。 今般、参議院からの要請を受けて、独立行政法人の組織、財務、業務実績等の業務運営等の状況について、各法人を横断的に検査したところ、以下のような事態が見受けられた。 ア 組織運営の状況については、法人による自主的な組織運営の仕組みが導入された中で、業務の効率化等のための組織改編、常勤職員の削減に伴う非常勤職員や外部委託の活用等は適宜行われていると思料されるものの、多くの法人においては、役職員の報酬・給与の支給額等は国家公務員に準拠したものとなっていて、業績等の給与への反映も限られた状況となっている。 イ 財務の状況については、自己収入の運営費交付金算定上の取扱いにおいて、運営費交付金の算定の際に自己収入を控除している独立行政法人がある一方で、同種の自己収入であるのにこれを控除していない独立行政法人が見受けられたり、運営費交付金の算定の際に控除した自己収入の額が実績額と相当かい離しているものが見受けられたりしていて、独立行政法人によっては、結果的に法人運営に要する資金に余裕が生じる場合があると思料される。 運営費交付金債務の収益化の方法として大部分の法人は費用進行基準を採用しており、運営費交付金を効率的に使用した場合、節減分は運営費交付金債務に残されることとなり、中期目標最終年度を除いた各年度の財務諸表には利益として計上されない状況にある。また、自己収入の会計処理の方法について「全額費用化型」を採用した場合には、自己収入からも利益が計上されないことから、財務諸表において法人の経営努力の成果が表示されていない状況となっている。そして、運営費交付金債務に占める「効率化により生じた額」も少額にとどまっている。 ウ 業務実績の状況について業務類型別にみると、試験研究法人においては、常勤正職員研究者が減少している一方で、非常勤研究員等が増加しており、また、人件費の伸び率に比して、発表論文数の伸び率が低くなっている法人や、発表論文数は顕著に伸びているが、原著論文の比率が低くなっている法人が見受けられる。そして、論文総数に占める査読付論文及び原著論文の比率は平均で5割程度となっている。 文教研修法人のうち、学校施設法人では1人当たり教育・養成経費が多額に上っているが、法人の中には、就学希望者や入学者が定員を大きく下回っていたり、中途退学者の比率が高くなっていたり、法人の設立目的に必ずしも関係のない分野に就職する卒業者が多くなっていたりしている状況となっている。また、既に民間、国立大学法人等において同様の業務が実施されている状況も見受けられる。 研修施設法人は、独立行政法人移行前に比べて利用者は増加傾向を示しているものの、法人が重要な事業と位置付けて自ら主導して行う主催事業参加者の利用者全体に占める割合が低い一方で、主催事業以外では法人の目的には直接関係がないと思料される利用者が多い法人も見受けられ、また、宿泊施設の稼働率も必ずしも高い水準とはなっていない状況となっている。 また、業務運営の効率化に関して定量的に定められた目標に対する実績値の算出方法が区々となっていて、各独立行政法人の効率化の状況をそのまま比較することができない状況となっている。 エ 情報の公表状況については、通則法、公開法等により公表することとされている情報について公表していない独立行政法人があるほか、インターネット閲覧の利便性に工夫を要する独立行政法人が見受けられる。 検査の対象とした45法人の中期目標の期間は、18年3月で終了することとなっており、今後、次期の中期目標、中期計画等が作成されることとなっている。したがって、以上の検査結果を踏まえ、各法人が独立行政法人制度を導入した所期の目的を果たすよう、今後の業務運営等に当たっては、次の点に留意することが望まれる。 (ア)中期計画においてあらかじめ定められた人件費総額などに留意しつつ、一層、自主的かつ機動的な組織運営に努めること (イ)運営費交付金の算定に当たり、自己収入の控除の適否について自己収入の種類等を勘案して十分に検討するとともに、算定に用いられた自己収入の額が実績額と相当かい離している場合などには、法人における自己収入増加に対する動機付けにも留意しつつ、適切な自己収入の額を設定するよう努めること (ウ)各独立行政法人が行う事務及び事業について、引き続き効率的な執行に努めるとともに、会計処理に当たっては、運営費交付金債務の収益化の基準も念頭に置きながら、自己収入処理方法について当該自己収入の性格に応じた適切な方法をあらかじめ示すなど、法人経営の効率化の成果をより明確化する方策がないか、各独立行政法人において検討すること (エ)試験研究法人においては、研究者人件費の上昇に留意しつつ、研究の中核であり、他の研究者を指導する立場にある常勤正職員研究者を最低限確保するとともに、高度な専門的能力を有する常勤任期付研究員、非常勤研究員を活用するなどして、研究成果の質を一層高めることに努めること、学校施設法人においては、求められている業務成果の達成、教育・養成業務に要する経費の節減に引き続き努めるとともに、統廃合など組織の再編成に当たっては、独立行政法人としての設立目的を念頭に置きつつ、社会的なニーズや同種学校の状況等を十分考慮して行うこと、研修施設法人においては、同種施設に対するナショナルセンター等としての役割を果たすため、積極的に先導的・モデル的事業を実施し、そこから得た知見等を地方公共団体等が設置している各種の教育施設に今後一層還元していくこと (オ)業務運営の効率化に関して定量的に定められた目標の達成度について、法人間の比較が可能となるような方策を検討すること (カ)業務の透明性を一層高めるため、情報の公表を適切に行うとともに、より積極的で分かりやすい情報の公表に努めること
なお、本院としては、今回検査した独立行政法人の状況について今後とも注視していくとともに、特殊法人等から移行した独立行政法人の状況についても、数年後には中期目標の期間が終了することとなることから、注視していくこととする。