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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

海上自衛隊の艦艇が利用しているインマルサットサービスについて、通話等料金の割引を受けることにより、その節減を図るよう改善させたもの


(3)海上自衛隊の艦艇が利用しているインマルサットサービスについて、通話等料金の割引を受けることにより、その節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)防衛本庁
(項)装備品等整備諸費
部局等の名称
横須賀地方総監部ほか3地方総監部
契約の概要
日本国外に派遣されている海上自衛隊の艦艇と各部隊等との通信手段を確保するなどのため、インマルサットサービスを利用するもの
契約の相手方
KDDI株式会社
通信料等の支払額
5億5417万余円
(平成16、17両年度)
上記のうち通話等料金
8049万余円
 
節減できた通話等料金
1482万円
(平成16、17両年度)

1 インマルサットサービスの概要

(1)海上自衛隊におけるインマルサットサービスの利用

 海上自衛隊では、遠洋練習航海、米国派遣訓練、インド洋での協力支援活動等のため、国外に護衛艦、補給艦、輸送艦等の艦艇を派遣している。そして、これらの派遣海域では日本周辺海域で使用している通信手段が利用できないことから、各艦艇では、海上幕僚監部及び海上自衛隊の各部隊、在外公館、派遣先の港湾当局等との間において、高速データ通信を中心に、電話、ファックス等の通信手段を確保するなどのため、インマルサット静止衛星を使用した通信サービス(以下「インマルサットサービス」という。)を利用している。
 インマルサットサービスは、各国の電気通信事業者が、インマルサット社(注1) と衛星利用契約を締結した上で各利用者に提供するもので、日本国内では、KDDI株式会社(以下「KDDI」という。)が、インマルサット静止衛星と通信を行う地上設備の運営及び各種インマルサットサービスの提供を行っている。そして、インマルサットサービスの利用に当たっては、利用者は、船舶にアンテナ、電話機等の機器を設置し、KDDIとの間で海事衛星通信サービス使用契約等(以下「インマルサットサービス使用契約」という。)を締結することになっている。

(2)各地方総監部のインマルサットサービス使用契約

 海上幕僚監部では、各地方総監部に対しインマルサットサービスの運用、契約に関する指示を行っており、これに基づき各地方総監部では、それぞれの地方総監部に在籍する艦艇についてKDDIとの間でインマルサットサービス使用契約を締結し、その利用に応じた通信料等を毎月支払っている。

 インマルサット社 「国際海事衛星機構に関する条約」に基づき設立された国際海事衛星機構(平成6年に国際移動通信衛星機構と名称変更)から11年に同機構の通信衛星等を移管された民間の国際衛星通信事業者


(3)インマルサット割引サービス

 KDDIは、平成16年2月から船舶に係るインマルサットサービス使用契約を対象として割引サービスを開始している。この割引サービスは、使用契約者が申込みを行って定額料(月額5,250円)を支払えば、高速データ通信等の料金を除く電話、ファックス等の料金(以下「通話等料金」という。)が月額10万円以上である場合、その額に応じて段階的に12%〜20%の割引を受けることができるとするものである。そして、同一使用契約者が複数の船舶に係るインマルサットサービス使用契約を締結している場合は、使用契約者ごとに上記の定額料を支払えば、各船舶の通話等料金を合算して割引を受けることができることとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 海上自衛隊では、近年、インド洋での協力支援活動により国外での洋上活動が増加しており、インマルサットサービスに係る通信料等が毎年多額に上っている。そこで、経済性・効率性等の観点から、これに係る通信料等の支払が経済的なものとなっているかに着眼して、各地方総監部においてKDDIからの請求書等の内容を検査した。

(検査の対象)

 海上自衛隊横須賀地方総監部ほか4地方総監部(注2) が、インマルサットサービス使用契約に基づいて支払った通信料等16年度3億0826万余円、17年度2億5842万余円、計5億6669万余円を対象として検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記の各地方総監部のうち、横須賀地方総監部ほか3地方総監部(注3) (以下「4地方総監部」という。)においては、通信料等16年度3億0218万余円、17年度2億5198万余円、計5億5417万余円のうち前記の割引サービスの適用を受けることが可能であるものについて、これを受けていなかった。
 すなわち、4地方総監部における16、17両年度に係る各艦艇の通話等料金の月ごとの合算額を算出したところ、各年度の6〜12箇月分の通話等料金について割引サービスを受けることができる額に達していた。このため、4地方総監部において割引サービスの申込みを行えば、多くの月で割引を受けることができ、前記の定額料を支払ったとしても、通話等料金を節減することが可能であったと認められた。

(節減できた通話等料金)

 4地方総監部が締結しているインマルサットサービス使用契約について、16年4月から割引サービスの適用を受けていたとすると、毎月の定額料が16年度で25万余円、17年度で25万余円、計50万余円増加するものの、通話等料金の支払額16年度4751万余円、17年度3298万余円、計8049万余円は、16年度3831万余円、17年度2684万余円、計6516万余円となり、差し引き16年度894万余円、17年度588万余円、計1482万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部において、各地方総監部に対しインマルサットサービス使用契約に係る経済的な支払を行うよう十分指導していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、海上幕僚監部では、18年6月に各地方総監部に対して、割引サービスの適用を受けることで通話等料金の節減を図ることが可能となる場合は、割引サービスの申込みを行うよう事務連絡を発し、これに基づき、4地方総監部では、同月にKDDIに対して割引サービスの申込みを行い、同月の利用に係る通話等料金から割引サービスの適用を受ける処置を講じた。

 横須賀地方総監部ほか4地方総監部 横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各地方総監部
 横須賀地方総監部ほか3地方総監部 横須賀、呉、佐世保、舞鶴各地方総監部