ページトップ
  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

市町村合併により遊休化している、地域イントラネット基盤施設整備事業等で整備した設備等について効率的な利活用を図るよう改善させたもの


市町村合併により遊休化している、地域イントラネット基盤施設整備事業等で整備した設備等について効率的な利活用を図るよう改善させたもの

会計名及び科目
総務省所管
一般会計
(組織)総務本省
  (項)総務本省
  (項)情報通信格差是正事業費
財務省所管
産業投資特別会計(社会資本整備勘定)
 
  (項)
改革推進公共投資電気通信格差是正施設整備資金貸付金

 
  (項)
改革推進公共投資情報通信格差是正事業資金貸付金

部局等の名称
総務本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
(事業主体)
市3、町42、村10、連携主体4、計59事業主体
補助事業
情報通信格差是正、電気通信格差是正、地域公共ネットワーク基盤整備、情報通信システム整備促進
補助事業の概要
地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、高度情報通信ネットワーク等先導的な情報通信基盤の施設等を整備するもの
事業費の合計
50億3675万余円
(平成13年度〜15年度)
上記に対する国庫補助金交付額
20億2518万余円
 
遊休している設備等の残存価額
2億3550万余円
(平成13年度〜15年度)
上記に対する国庫補助金交付額
9250万円
 

1 事業の概要

 総務省では、地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、IT関連施策としての情報通信格差是正事業、電気通信格差是正事業、地域公共ネットワーク基盤整備事業、情報通信システム整備促進事業等を行う都道府県、市町村、連携主体(複数の市町村にまたがる区域において市町村等で構成される事業の実施主体)等(以下、これらを「事業主体」という。)に対し、その事業に要する経費の一部として情報通信格差是正事業費補助金等を交付し又は無利子貸付金(注1) を貸し付けている。
 上記の情報通信格差是正事業費補助金等の交付又は無利子貸付金の貸付けを受けて事業主体が実施する事業のうち、地域におけるLAN(地域イントラネット)等の施設、設備及びソフトウェア(以下「設備等」という。)を整備するものは、〔1〕情報通信格差是正事業のうちの地域イントラネット基盤施設整備事業、〔2〕情報通信格差是正事業のうちの広域的地域情報通信ネットワーク基盤施設整備事業、〔3〕電気通信格差是正事業のうちの地域インターネット導入促進基盤整備事業、〔4〕地域公共ネットワーク基盤整備事業及び情報通信システム整備促進事業の5事業である(以下、これらを「公共ネットワーク事業」という。)。
 事業主体は、総務省所管補助金等交付規則(平成12年総理府・郵政省・自治省令第6号)のほか、上記の情報通信格差是正事業等の各事業ごとに総務省が定めている補助金交付要綱に基づき事業を実施することとなっている。
 そして、上記の補助金交付要綱によると、事業主体は、公共ネットワーク事業により整備した設備等について、事業完了後においても善良なる管理者の注意をもって管理するとともに、補助金の交付の目的に従って効率的な運営を図ることとされている。また、事業主体が、取得価格が単価50万円以上の設備等について、補助金の交付の目的に反して使用したり譲渡したりなどするときは、あらかじめ総務省の承認を受けることとされている。
 ただし、内閣に設置された市町村合併支援本部が平成13年8月に決定し、14年8月に改定した「市町村合併支援プラン」では、合併前の旧市町村が国庫補助金等により整備した施設(補助施設)について、合併後の新市町村において類似施設が複数あり、当該補助施設を他の公共又は公用施設に転用したとしても、類似施設の活用により当該補助施設に係る行政需要への対応が十分可能な場合には、当該補助金等の所管省庁は、当該補助施設の有効活用を図るため、他の公共又は公用施設への転用に係る承認の判断に当たり、合併という事情について十分考慮するものとされている。

2 検査の結果

(検査の対象、観点、着眼点及び方法)

 地方分権を目指し、少子高齢化、広域行政、構造改革等に対処できるよう行財政基盤を強化するため、11年に市町村の合併の特例に関する法律(昭和40年法律第6号)が一部改正され、地方行財政上の支援策を拡充するなどの措置が執られた。その結果、市町村合併が促進され、市町村数は、上記法律の一部改正法が施行される前の11年3月末日現在の3,232団体から、18年3月末日には1,821団体にまで1,411団体(43.6%)減少している。
 このような近年における市町村合併に伴い、公共ネットワーク事業により整備した設備等が不要となるなどの事態が生じることが考えられ、この場合には、事業主体は、当該設備等を補助金の交付の目的に従って使用することができなくなることとなる。
そこで、秋田県ほか12県(注2) における、合併を行った市町村に係る139事業主体が13年度から17年度までの間に実施した公共ネットワーク事業197事業(補助対象事業費240億2312万余円、国庫補助金107億1702万余円)を対象として、経済性・効率性等の観点から、市町村合併前に整備した設備等が市町村合併後においても利活用が図られているかなどに着眼し、市町村等において、実績報告書等に基づき、設備等の使用状況を確認するなどして検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、秋田県ほか11県(注3) の59事業主体による73事業(補助対象事業費50億3657万余円、国庫補助金20億2518万余円)において、合併前に旧市町村でそれぞれ作成・管理されていたホームページが新市町村で1つに統合されたり、市町村におけるイントラネットの方式が合併の前と後とで異なったり、旧市町村の議会が廃止され議会中継用の装置が不要になったりなどしたことから、公共ネットワーク事業により整備した設備等が使用されなくなり、その後も利活用が図られていない事態が見受けられた。そして、取得価格が単価50万円以上の288件の設備等(残存価額2億3550万余円(国庫補助金相当額9250万余円))については、他の公共又は公用の設備等に転用するなどして、効率的な利活用を図ることが可能であったのに、その検討が十分に行われず、遊休化したままとなっていた。
 上記の事態について一例を示すと次のとおりである。

<事例>

 A村では、平成14年度に、住民に対して役場との双方向の行政サービスを提供するなどのため、地域インターネット導入促進基盤整備事業(補助対象事業費2625万円、国庫補助金1312万余円)により役場庁舎への各種サーバの設置や公共施設等への情報端末の配備等を行うとともに、情報通信システム整備促進事業(補助対象事業費525万円、国庫補助金175万円)により同村の行政情報提供用ソフトウェア等の整備を行っていた。
 そして、A村は、16年8月に近隣の3町村と合併してB町になったことにより、同村のホームページを廃止するなどしていた。このため、上記の事業により整備した設備等のうち住民用情報端末、ホームページ用のサーバ等(残存価額900万余円(国庫補助金相当額394万余円))が不要となり、使用されないままとなっていた。しかし、これらの設備等については、住民用情報端末を町立美術館に移設したり、ホームページ用のサーバを管理用のサーバとして転用したりなどして利活用を図ることが可能であったと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、総務省において、補助事業により整備した設備等が市町村合併により使用されなくなった場合に、当該設備等の利活用を図ることについての取扱いを定めていなかったこと、また、事業主体において、補助事業により整備した設備等で市町村合併により使用されなくなったものについて、利活用を図ることの認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、総務省では、18年10月に管下の各総合通信局等及び都道府県に対して通知を発し、補助事業により整備した設備等を遊休化させることなく、効率的に利活用するよう、次のような処置を講じた。
ア 市町村合併により当初の目的どおり使用されなくなった設備等の利活用について、具体的な利活用の範囲や利活用する際の手続等を、補助事業の実施マニュアル等に明確に定めることとした。
イ 事業主体に対し、補助事業により整備した設備等が市町村合併により当初の目的どおり使用されなくなった場合には、その利活用を図ること及び利活用する際の手続等を周知徹底した。

 無利子貸付金 日本電信電話株式会社の株式の売払収入を財源とする財務省所管産業投資特別会計社会資本整備勘定からの無利子貸付金。この無利子貸付金については、その償還時に償還額に相当する額の国の補助金が交付されることになっていることから、補助金と同様に取り扱われている。
 秋田県ほか12県 秋田、茨城、石川、山梨、愛知、島根、徳島、香川、愛媛、福岡、長崎、宮崎、鹿児島各県
 秋田県ほか11県 秋田、茨城、石川、山梨、愛知、島根、徳島、愛媛、福岡、長崎、宮崎、鹿児島各県