平成15年度決算検査報告参照
平成16年度決算検査報告参照
外務省の大使館、政府代表部及び総領事館(以下「在外公館」という。)における会計機関については、原則として、歳入徴収官には在外公館の長(以下「館長」という。)がなり、また、出納官吏には、大使館及び政府代表部では館長の代理となる者が、総領事館では館長が、それぞれなっている。
館長は、在外公館会計規程(昭和27年決定)に基づき歳入徴収官や出納官吏等の事務を分掌又は補助させるため、会計担当者を1人又は複数定めることとなっていて、会計担当者は、歳入徴収官及び出納官吏の事務について、収納及び支払に係る関係書類の調査、現金及び預金の出納保管、帳簿への登記、証拠書類の整理並びに各種報告書の作成などの事務を担当している。そして、在外公館には、会計事務等を担当する官房班があり、官房班に属する現地採用職員等もこれらの会計事務を補助している(以下、この会計事務を補助する職員を「補助職員」という。)。
また、毎年3月31日に出納官吏の帳簿金庫の検査を行う検査員には、上記の規程により、原則として出納官吏の次席の者が任命されている。
この在外公館における出納事務の執行状況について検査したところ、歳入徴収官、資金前渡官吏及び検査員が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったり、補助職員の範囲及びその事務の範囲が明確でないまま公金が取り扱われていたり、会計法令等に従った会計事務の処理が行われていなかったりして、出納事務の執行において必要不可欠な内部統制や相互牽制が十分機能していない状況が見受けられた。
このような事態が生じているのは、外国において我が国と商慣習が異なることなどの事情はあるものの、外務省において、在外公館の出納事務に関する規定を十分整備していないこと、在外公館において、指揮命令系統としての内部統制及び出納官吏と検査員との相互牽制が十分機能するよう出納事務の執行体制を整備していないこと、また、外務省において、出納事務の執行に当たり、会計法令等の理解及び遵守に対する認識が十分でなく、在外公館に対する指導監督が十分でないことなどによると認められた。
外務省において、在外公館における出納事務の執行について、内部統制、相互牽制を十分機能させ、会計法令等に従って適切及び適正に出納事務を執行するよう、次のとおり、外務大臣に対し平成16年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア)在外公館における歳入徴収官、資金前渡官吏及び検査員が自ら行うべき事務の範囲を明確にして徹底を図ること、及び、代理官制度の運用を図るため、代理官の任命に関する運用細則等を定め、その徹底を図ること
(イ)補助職員の範囲及びその事務の範囲を明確にして、この徹底を図り、館長及び出納官吏が会計事務について適時、適切に指揮、監督を行うよう体制を整備すること
(ウ)外務省において、在外公館の出納事務に関する規定の見直しをするなどの整備を行うなどして、在外公館において適正に会計法令に従って出納事務を行えるよう適切に指導監督すること
(エ)歳入徴収官、弁償責任を負っている出納官吏、及び会計担当者等における会計法令等の理解及び遵守に対する認識の向上を図るため、外務省の指導、出納官吏及び会計担当者等への研修の実施等の措置を更に充実させ、会計法令等を遵守して、出納事務を適切及び適正に執行するよう周知徹底させること、また、査察時に、出納事務の執行状況をより詳細に把握して、改善を要する事項について提言、勧告するとともに、改善状況の事後確認を十分行い、その徹底をより一層図ること
外務省は、本院指摘の趣旨に沿い、17年10月までに所要の処置を執った事項以外の事項について、同月後18年10月までに次のような処置を執り、又は引き続き検討を行っている。
(ア)について
資金前渡官吏が自ら行うべき事務の範囲の明確化とその徹底に関しては、小切手の署名を資金前渡官吏又は資金前渡官吏代理が自ら行うことが厳格に運用されるよう、その具体的な取扱いについて引き続き検討を行っていくこととしている。
(イ)について
補助職員の範囲及びその事務の範囲の明確化に関しては、銀行からの預金の引出し等について、18年9月に外務大臣名で各館長あてに「在外経理(銀行からの現金の引出等に係る留意事項(ガイドライン))(訓令)」を発し、銀行からの預金の引出し等は会計担当者が行うことを原則としつつも、治安状況又は館務の状況等により、会計担当者が銀行に赴くことが困難であると館長及び出納官吏が判断する場合に、補助職員に行わせるための具体的方法を周知徹底する処置を執った。
また、前渡資金の支払を行う際の補助職員の範囲等の明確化について、在外公館における出納事務の実態を踏まえ、引き続き検討を行っていくこととしている。
(ウ)について
公金以外の資金(以下「非公金」という。)の出納保管をしている事態に関しては、18年6月に外務大臣名で各館長あてに「在外経理(在外公館における非公金口座の取扱いに係るガイドライン)(訓令)」を発するなどして、非公金の具体的な取扱方法を指示し、非公金が公金と厳格に区分して取り扱われるよう周知徹底する処置を執った。
また、実際の現金の出納が現金出納簿への登記と相違している事態に関しては、前渡資金で支払っているのに私金で立替払したこととしているものなどの改善策及び現金出納簿の書式の見直しについて、小切手振出しの帳簿が整理されていない事態に関しては、当該帳簿の導入について、それぞれ引き続き検討を行っていくこととしている。