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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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相続税に係る連帯納付義務者の財産調査等が十分でなかったため、租税債権が消滅したもの


(17)相続税に係る連帯納付義務者の財産調査等が十分でなかったため、租税債権が消滅したもの

会計名及び科目
一般会計
国税収納金整理資金
(款)歳入組入資金受入
 (項)各税受入金
部局等の名称
川崎北税務署
債権発生の原因となった国税の種別
相続税
納税者
1人
消滅した租税債権の額
6,883,100円

1 滞納処分の概要等

(1)滞納処分の概要

 税務署では、納税者がその納付すべき国税をその納付の期限までに納付せず、督促後も納付しない場合には、国税徴収法(昭和34年法律第147号)に基づき、滞納者の財産を調査し、差し押さえるなどの滞納処分を行っている。
 また、同法第153条によると、税務署長は、滞納者に滞納処分を執行することができる財産がないなどと認める場合には、滞納処分の執行を停止(以下「執行停止」という。)することができることとなっていて、その執行停止の状態が3年間継続したときなどには、滞納となっている租税債権は消滅することとなっている。

(2)相続税の連帯納付義務

 相続税法(昭和25年法律第73号)第34条によると、同一の被相続人から財産を相続したすべての者は、その財産に係る相続税について、当該相続により受けた利益の価額に相当第する金額を限度として、互いに連帯して納付する義務を負うこととなっている。

2 検査の結果

 川崎北税務署が行った執行停止について、その事績を記録した書類等により検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 滞納者Aは、平成2年1月に相続開始した被相続人Bの相続(相続人は滞納者Aのほか、被相続人Bの妻C及び子3人の計5名)により現金4000万円を取得したが、これを借入金の返済に充てたため、相続税6,883,100円(納期限2年7月の当初申告分5,681,900円、納期限3年12月の修正申告分1,201,200円)の納付が困難となり、全額滞納していた。
 川崎北税務署長は、滞納者Aに督促状等を発しても当該税額が納付されず、また、同人にはわずかな銀行預金のほかに差押え可能な財産がないことなどから、同人には滞納処分を執行することができる財産がないと判断し、他の相続人が滞納者Aの相続税の連帯納付義務を履行できる財産を有しているかなどについて十分に調査、検討しないまま、13年10月31日に執行停止を行っていた。そして、滞納者Aに対する相続税に係る租税債権6,883,100円は、執行停止から3年が経過した16年11月1日に消滅していた。
 しかし、被相続人Bの相続人のうち、土地及び建物等の財産すべてを相続した相続人Cは、川崎北税務署に提出された10年分以降の同人の所得税の確定申告書等によると、連帯納付義務の履行が可能な財産を有していたと認められた。
 したがって、同税務署において、少なくとも相続人Cが連帯納付義務の履行が可能な財産を有していたことは容易に把握できる状況であったにもかかわらず、同人に対してその履行を求めるなどすることなく、13年10月に執行停止を行ったことは、適切とは認められず、その状態が3年間継続したことにより滞納者Aに対する租税債権6,883,100円が消滅したことは、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同税務署において、執行停止を行うに当たり、連帯納付義務の履行を求めることについての調査及び検討が十分でなかったことによると認められる。