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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の対象となる生徒等数の確認を適切に行うことにより、補助金の算定を適正なものとするよう改善させたもの


(1)私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の対象となる生徒等数の確認を適切に行うことにより、補助金の算定を適正なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計  
(組織)文部科学本省
(項)私立学校助成費
平成12年度は、
 
 
(組織)文部本省
(項)私立学校助成費
部局等の名称
文部科学本省(平成13年1月5日以前は文部本省)、岩手県ほか16都府県
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
補助事業
私立高等学校等経常費助成費補助
補助事業の概要
私立の小学校、中学校、高等学校等の専任教職員給与費等の経常的経費を補助する都道府県に対し、その一部を国が補助するもの
都府県において加算単価の対象として過大に報告していた生徒等数
(1)
岩手県ほか16都府県
延べ1,059,980人
(平成12年度〜17年度)
文部科学省において加算単価の対象として過大に算定していた生徒等数
(2)
246,322人
(平成13年度〜16年度)
上記に対する国庫補助金相当額
(1)
37億8101万円
 
(2)
3億8289万円
 

1 補助金の概要

(1)補助金交付の目的

 私立高等学校等経常費助成費補助金(以下「補助金」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、都道府県が、私立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園(以下「私立学校」という。)の専任教職員給与費等の経常的経費について補助する場合に、その一部を国が補助するものである。この補助金は、私立学校の教育条件の維持及び向上並びに私立学校に在学する児童、生徒又は幼児(以下「生徒等」という。)に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立学校の経営の健全性を高めることを目的として交付されるものである。

(2)補助金の額の算定方法

 補助金の額は、私立高等学校等経常費助成費補助金(一般補助)交付要綱(昭和51年文部大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、各都道府県において、小学校、中学校等の学校の区分及び全日制・定時制等の課程の区分(以下「学校等の区分」という。)ごとに次第の算式により算定した額の合計額となっている。

私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の対象となる生徒等数の確認を適切に行うことにより、補助金の算定を適正なものとするよう改善させたものの図1

 定員内実員 学則で定められた収容定員と当該年度の5月1日現在の生徒等の実員(ただし、幼稚園については、当該年度中に満3歳に達し5月2日以降に入園するなどの園児数を含んだ数)のうちいずれか少ない数をいう。


 上記算式の「生徒等1人当たりの国庫補助単価」は、次のア及びイを合算したものである。
ア 学校等の区分ごとの生徒等1人当たりの都道府県の助成額を基に算定した都道府県ごとの生徒等1人当たりの補助単価
イ 情報教育の推進を図るなど交付要綱に定められた特定の事由に該当する施策を行っている私立学校に対して都道府県が特別な助成を実施している場合に加算される、学校等の区分別、特定の事由別に算定した額(以下「加算単価」という。)の合計
 そして、この加算単価の制度は国が特定の事由の定着を政策的に誘導するためのもので、交付要綱及び「平成14年度私立高等学校等経常費助成費補助金(一般補助)の配分方法について(通知)」(平成14年文部科学省高等教育局私学部私学助成課長通知。以下「配分通知」という。)等によれば、加算単価の対象となる特定の事由は、平成14年度以降についてみると次表のとおりとされている。

加算単価の対象となる特定の事由
内容
レンタル又はリース方式による教育用コンピュータ等整備の推進
教育用コンピュータ等をレンタル又はリース方式により整備するもの
インターネット接続の推進
インターネットを利用した教育活動を実践するもの
教員の能力開発及び資質向上の促進
現職教員の大学院修士課程への派遣、各種研修事業への派遣(新学習指導要領への対応)等を行うもの
教員の情報教育に関する研修への派遣
情報教育を主とした研修への派遣を行うもの
ティーム保育の推進
幼稚園において複数の教員が学級の担任となるなどティーム保育の推進を図るもの
少人数教育等の推進
私立学校(幼稚園を除く。)において少人数教育等きめ細かな学習指導の推進を図るため教職員を配置するもの
情報処理技術者等の活用
授業の補助や教員の教材作成等に対して補助・助言等を行う情報処理技術者等を活用するもの
教育用コンテンツの研究及び開発
学校独自の教育用コンテンツを研究及び開発するもの
体験学習の推進
私立学校(幼稚園を除く。)において社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験学習の推進を図るもの

(3)加算単価の算定方法

 文部科学省は、毎年度、都道府県に対して「私立高等学校等経常費助成費補助金(一般補助)の事業計画書の提出について(通知)」(文部科学省高等教育局長通知)を発しており、この通知に基づき、都道府県は、上記各事由の実施の有無、各事由に該当する学校名、生徒等の定員内実員数等を記載した事業計画書を文部科学省に提出している。
 そして、文部科学省は、各都道府県の事業計画書に記載された生徒等の定員内実員数等に基づき、学校等の区分別、加算単価の対象となる特定の事由別に、年度ごとに定めた全国一律の生徒等1人当たりの配分単価を基に、各都道府県ごとに次のとおり加算単価を算定することとしている。

私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の対象となる生徒等数の確認を適切に行うことにより、補助金の算定を適正なものとするよう改善させたものの図2

 上記の算式における「学校等の区分ごとの加算単価の対象となる生徒等数」は、加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っている私立学校に対し、都道府県が特別な助成をしている場合の当該私立学校の生徒等数とされている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 本院は、昨年次、本件補助事業について検査し、4道県において加算単価の対象とならない私立学校の生徒等数であるのに、これらを含めていたため補助金が過大に交付されていた事態を、平成16年度決算検査報告に掲記したところである。
 そこで、本年次においては、合規性、有効性等の観点から、他の都府県においても同様の事態がないか、また、文部科学省において審査が十分行われているか、再発防止のための措置を講じているかなどについて着眼して検査した。

(検査の対象)

 岩手県ほか17都府県(注2) において、12年度から17年度までの6箇年度に本件補助金の加算単価の対象(17年度までに終了した加算事由に係る分を除く。)になると事業計画書で報告した生徒等数延べ8,479,614人(国庫補助金相当額222億0943万余円)について、事業計画書等により検査した。
 また、文部科学省において、12年度から17年度までの6箇年度に本件補助金の加算単価の対象とした生徒等数延べ22,760,566人(国庫補助金相当額544億3537万円)を対象として事業計画書及び加算単価の配分のための基礎資料により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、岩手県ほか16都府県(注3) 及び文部科学省において、次のような不適切な事態が見受けられた。

(1)都府県において特別な助成をしていない私立学校の生徒等数や、加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っていない私立学校の生徒等数を加算単価の対象となる生徒等数に含めて報告していたため、加算単価が過大に算定されていたもの

17都府県
過大となっていた生徒等数
 1,059,980人
過大となっていた国庫補助金相当額
 37億8101万余円

<事例1>

 A県は、事業計画書において平成14年度から16年度までの教育用コンテンツの研究及び開発分の加算単価の対象となる高等学校等の生徒数を延べ9校の8,126人と報告し、文部科学省は、この加算事由に係る国庫補助金相当額を1億4249万余円と算定していた。
 しかし、上記のうち8校において教育用コンテンツとしているソフトウェアは、校内の事務処理を行うためのもので教育用コンテンツに該当しないものなどであった。
 したがって、上記8校の生徒数7,340人を除外してこの加算事由に係る国庫補助金相当額を算定すると1346万円となり、国庫補助金相当額1億2903万余円が過大となっていた。

(2)文部科学省において都府県から報告を受けた加算単価の対象となる生徒等数を配分のための基礎資料に誤って転記するなどしたことから生徒等数が過大になっていたため、加算単価が過大に算定されていたもの

文部科学省
過大となっていた生徒等数
 246,322人
過大となっていた国庫補助金相当額
 3億8289万円

<事例2>

 B県は、事業計画書において平成16年度の体験学習の推進分の加算単価の対象となる高等学校の生徒数を21,875人と報告していた。
 しかし、文部科学省は、誤ってB県のこの加算単価の対象となる生徒数を218,875人とし、これに基づき加算単価を算定し、この加算事由に係る国庫補助金相当額を1億1097万余円と算定していた。
 したがって、過大となっていた生徒数197,000人を除外してこの加算事由に係る国庫補助金相当額を算定すると1112万余円となり、国庫補助金相当額9985万余円が過大となっていた。
これらを加算単価の各事由別に示すと次表のとおりである。

加算単価の対象となる特定の事由
都府県等の別
過大となっていた生徒等数
過大となっていた国庫補助金相当額
レンタル又はリース方式による教育用コンピュータ等整備の推進
11都府県
77,613(人)
380,474(千円)
文部科学省
3,797
9,053
インターネット接続の推進
3県
31,684
7,089
文部科学省
515
120
教員の能力開発及び資質向上の促進
14都府県
838,695
2,897579
文部科学省
8,084
37,369
教員の情報教育に関する研修への派遣
1県
25,979
101,756
文部科学省
14,662
94,581
ティーム保育の推進
7都府県
28,389
83,531
少人数教育等の推進
6府県
8,478
13,893
情報処理技術者等の活用
3県
37,799
150,749
文部科学省
8,230
29,604
教育用コンテンツの研究及び開発
2県
7,940
139,463
文部科学省
14,034
112,312
体験学習の推進
5県
3,403
6,485
文部科学省
197,000
99,851
17都府県
1,059,980
3,781,019
文部科学省
246,322
382,890
1,306,302
4,163,909

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。

ア 文部科学省において

(ア)交付要綱、配分通知等で各加算事由を示しているものの、その内容が必ずしも明確でなかったこと
(イ)現行の事業計画書の様式では、各加算単価の生徒等数を記載している私立学校に対して都道府県が特別の助成を実施しているかなどの確認が十分に行えないものとなっていたこと
(ウ)加算単価の算定に当たり、計数の照合・確認が十分行われていなかったこと、また、各事由別の加算単価の算定結果等を都道府県に対して開示していないなど、加算単価の算定についての透明性が確保されていなかったこと

イ 都府県において

(ア)事業計画書に記載された数値が加算単価の算定に直接反映されることについての認識が十分でなかったこと
(イ)交付要綱、配分通知等に定められた加算単価の対象となる各事由についての理解が十分でなかったり、関係資料の確認が十分でなかったりしていたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省では、都道府県に対し、18年9月に、通知を発するとともに、同年10月に同省主催の会議を開催して同通知の周知徹底を図ることとするなどして、加算単価が適正に算定されるよう次のような処置を講じた。
ア 補助対象となる要件に該当する具体例を示すなどして加算単価の対象となる各事由の内容を明確に示した。
イ 加算単価の対象となる生徒等数の確認が適切に行えるよう事業計画書の様式を見直し、都道府県の特別な助成額の記載欄を新たに設けるなどした。
ウ 都道府県に対し、事業計画書に記載する各加算事由の生徒等数は、加算単価の算定額に直接反映される数値であることを十分認識し、その提出に当たっては、各事由の補助対象となる要件を十分理解し、かつ、関係資料を十分確認するよう指導を徹底した。
エ 加算単価の算定結果等について文部科学省内の複数の部署で十分確認作業を行うなどするとともに、補助金の内定通知の際に加算単価の算定結果等を開示することとし、その算定についての透明性を確保した。
 また、文部科学省は、国庫補助金が過大に交付されていた事態について既に一部の県に対し国庫補助金の返還措置を講じ、その他の都府県に対しても18年11月以降順次返還措置を講じることとした。

 岩手県ほか17都府県 東京都、大阪府、岩手、山形、茨城、千葉、新潟、長野、三重、奈良、和歌山、広島、山口、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各県
 岩手県ほか16都府県 東京都、大阪府、岩手、山形、茨城、千葉、新潟、長野、奈良、和歌山、広島、山口、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各県