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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第6 文部科学省|
  • 平成16年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理について


国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理について

(平成16年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した改善の意見

(検査結果の概要)

 国立大学法人法(平成15年法律第112号)に基づき、平成16年4月、89国立大学法人が設立され、国立大学は国立大学法人が設置するものとなった。国立大学法人の会計は、原則として企業会計原則によることとされ、国立大学法人会計基準(平成16年文部科学省告示第37号)が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に優先して適用されることとなっている。
 国立大学法人は、法人化に伴って国の会計制度から企業会計原則による会計制度に移行している。そこで、会計処理の原則及び手続は毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならないとされていることから、財務諸表等に資産、負債、資本等が適正に計上されているかなどに着眼して検査した。特に、国立大学法人は、多数の法人が同種の業務を行うため、当該法人間における会計情報の比較可能性の確保を強く要請されることから、一定の事項については統一的な取扱いをする必要があるとされていることに留意した。

(1)賃借物品について

 賃借物品に係る会計処理については、ファイナンス・リース取引に該当する場合は、借り手は物件の取得価額相当額を資産として、賃借料の残存支払額から求めたリース債務を負債として計上することとなる。
 そこで、教育研究用等のコンピュータ機器の賃借物品の資産計上について検査したところ、これを計上している法人及び計上していない法人が見受けられた。これらは、契約の方法及び内容もほぼ同様のものであるのに、会計経理が統一的な取扱いとなっておらず、会計情報の比較可能性が確保されていないものと認められた。

(2)ソフトウェアについて

 ソフトウェアの資産計上の取扱いについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、無形固定資産として計上することとなる。
 そこで、教育・研究用ソフトウェアの資産計上について検査したところ、これをすべて計上している法人及び一部計上している法人を含め計上していない法人が見受けられた。これらは、利用目的が同じ教育・研究用ソフトウェアであるのに、会計経理が統一的な取扱いとなっておらず、会計情報の比較可能性が確保されていないものと認められた。

(3)診療報酬債権について

 附属病院の診療報酬は、患者負担分を除き、保険者等に毎月1回請求するが、請求書類の作成等に時間を要するなどのため請求を保留する場合等がある。診療報酬債権は実現主義の原則から診療行為を行った時に認識することとされているため、請求を保留するなどした未請求の診療報酬債権も資産及び収益として計上することとなる。
 そこで、未請求の診療報酬債権の資産等への計上について検査したところ、一部の診療報酬債権を計上していない法人並びに期末にのみ計上している法人及び毎月計上している法人が見受けられた。これらは、会計経理が統一的な取扱いとなっておらず、会計情報の比較可能性が確保されていないものと認められた。
 このような事態が生じているのは、文部科学省において、一定の事項については、会計情報の比較可能性の確保という視点から、各国立大学法人が会計経理を行うに際して統一的な取扱いを行うための指針等の整備及び企業会計原則等の理解の促進のための情報提供が必要であるのに、これらを十分に行っていなかったことなどによると認められた。

(検査結果により表示した改善の意見)

 国立大学法人は、業務実績の適正な評価を得るなどのため、正確な財務情報を開示することが求められていることから、一定の事項については必要に応じて統一的な取扱いが行われ会計情報の比較可能性を確保することとされている。「国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解に関する実務指針」(平成15年7月国立大学法人会計基準等検討会議)をより明確なものとするよう同検討会議に諮るなどして整備するとともに、統一的な取扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進するよう、文部科学大臣に対し17年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。

2 当局が講じた改善の処置

 文部科学省では、本院指摘の趣旨に沿い、会計情報の比較可能性を確保し、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進するため、同検討会議の了解を得て18年1月に上記の実務指針を改訂し、以下のように取扱いを明確にした上で、さらに説明会等を通じて、これを各国立大学法人に対して周知する処置を講じた。
ア 賃借物品については、対象となる物件ごとに所有方針や発注の前提等の諸要因を総合的に勘案した上で、ファイナンス・リース取引に当たるか否かを判断して資産に計上することとした。
イ 教育・研究用ソフトウェアについては、例外的なものを除き、資産には計上しないこととした。
ウ 診療報酬債権の保険者等への請求分については、基本的に月を単位として発生を認識し、資産等に計上することとした。