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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの


(125)医療費に係る国の負担が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省
(項)精神保健費
(項)生活保護費
(項)身体障害者保護費
(項)老人医療・介護保険給付諸費
(項)児童保護費
(項)国民健康保険助成費
(項)障害者自立支援給付諸費
厚生保険特別会計(健康勘定)
(項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
船員保険特別会計
(項)保険給付費
(項)老人保健拠出金
(項)退職者給付拠出金
部局等の名称
社会保険庁、北海道ほか25都府県
国の負担の根拠
健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、老人保健法(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)等
医療給付の種類
健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、老人保健法、生活保護法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、身体障害者福祉法等に基づく医療
実施主体
国、都道府県21、市386、特別区23、町351、村55、国民健康保険組合52、計889実施主体
医療機関及び薬局
医療機関171、薬局36
不適切に支払われた医療費に係る診療報酬等
入院基本料、在宅医療料、調剤報酬等
不適切に支払われた医療費の件数
211,461件(平成14年度〜18年度)
不適切に支払われた医療費の額
742,273,685円(平成14年度〜18年度)
不当と認める国の負担額
409,927,740円(平成14年度〜18年度)

1 医療給付の概要

(1)医療給付の種類

 厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
ア 老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者(注1) 又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
イ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人を除く。)に対して行う医療
ウ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法に基づき要保護者に対して行う医療、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づき精神障害者に対して行う医療、身体障害者福祉法に基づき身体障害者に対して行う医療等

 75歳以上の者 老人保健制度の対象年齢は、平成14年10月の老人保健法の改正により、原則として70歳以上から75歳以上に引き上げられたが、14年9月30日の時点において70歳以上である者については、その者が75歳以上の者に該当するに至った日の属する月の末日までの間は、その者を75歳以上の者とみなすこととされている。


(2)診療報酬又は調剤報酬

 これらの医療給付においては、被保険者(上記ウの要保護者、精神障害者、身体障害者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
 診療報酬の支払の手続は、図1のとおりとなっている。

図1 診療報酬の支払の手続

図1診療報酬の支払の手続

 調剤報酬の支払の手続についても同様となっている。

ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数又は調剤点数に単価(10円)を乗じるなどして算定する。
イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求し、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健法に係るものは市町村に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、公費負担医療制度に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
 このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
(ア)医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に診療報酬等の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ)審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定し、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。

(3)国の負担

 保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うものであるが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している(図2参照)
(ア)老人保健法により、老人医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担(注2) しており、残りの12分の6については各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ)国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ)健康保険法等により、国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。

 国、都道府県及び市町村が負担する割合の合計は、従来3割であったが、平成14年10月の老人保健法の改正により、段階的に引き上げられ、18年10月1日からは5割となっている。


図2 老人医療費の負担

図2老人医療費の負担

イ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕政府管掌健康保険等の被保険者である場合の医療費は保険者としてその全額を、〔2〕市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の43%(注3) を、〔3〕国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。

 国の負担割合は、平成16年度は50%であったが、17年4月の国民健康保険法の改正により、17年度は45%、18年度以降は43%に引き下げられている。


ウ 生活保護法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、身体障害者福祉法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。

2 検査の結果

(1)検査の着眼点

 国民医療費は平成11年度以降毎年30兆円を超えており、このうち老人医療費は16年度では約36%を占め、高齢化が急速に進展する中でその占める割合は高くなっている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院では従来から老人医療費を中心に診療報酬の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
 そして、近年では医療機関において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、必要な各種届出を行っていなかったりしているのにこれらを満たすことが要件とされている診療報酬を請求したり、介護保険制度の介護給付として行われるものを診療報酬として請求したりしている不適正と認められる事態が多く見受けられる。また、昨今の医薬分業の進展に伴い増加傾向にある調剤報酬についても、算定要件を満たしていないのに請求しているなど不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、これらの点を中心に検査をすることとした。

(2)検査の対象及び方法

 社会保険庁の26社会保険事務局(注4) 及び26都道府県(注5) において、市町村等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等により検査した。

(3)不適切な支払の事態

 検査の結果、旭川市ほか888実施主体が171医療機関及び36薬局に対して行った14年度から18年度までの間における医療費の支払について、211,461件、742,273,685円が適切でなく、これに対する国の負担額409,927,740円が不当と認められる。

 26社会保険事務局 北海道、青森、岩手、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、富山、福井、山梨、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、和歌山、鳥取、広島、福岡、大分、沖縄各社会保険事務局
 26都道府県 東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、富山、福井、山梨、愛知、三重、兵庫、和歌山、鳥取、広島、福岡、大分、沖縄各県

  これを診療報酬等の別に整理して示すと、次のとおりである。

診療報酬等
実施主体(医療機関等数)
不適切に支払われた医療費の件数
不適切に支払われた医療費
不当と認める国の負担額
 
 
千円
千円
〔1〕入院基本料
旭川市ほか286市区町村等(39)
17,347
206,497
113,886
〔2〕在宅医療料
旭川市ほか80市区町村等(42)
8,332
112,002
62,601
〔3〕入院基本料等加算
札幌市ほか138市区町村等(21)
6,161
99,166
55,483
〔4〕初診料・再診料
旭川市ほか124市区町等(16)
17,758
70,238
37,689
〔5〕検査料
小樽市ほか101市区町村等(12)
15,429
39,327
21,538
〔6〕指導管理料
雨竜郡秩父別町ほか111市区町等(10)
6,769
29,731
16,451
〔7〕処置料
岩見沢市ほか56市区町村等(10)
4,101
24,634
13,768
〔8〕特定入院料等
虻田郡豊浦町ほか188市区町村等(21)
6,888
64,069
34,683
〔1〕—〔8〕の計
709実施主体(171)
82,785
645,668
356,103
〔9〕調剤報酬
函館市ほか374市区町村等(36)
128,676
96,605
53,824
〔1〕—〔9〕の計
889実施主体(207)
211,461
742,273
409,927

 複数の診療報酬について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多い診療報酬で整理した。
 計欄の実施主体数は、各診療報酬等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬等の実施主体数を合計したものとは符合しない。

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 医療機関等から不適正と認められる診療報酬等の請求があったのに、これに対する実施主体及び審査支払機関の審査点検が十分でなかったこと
 特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 地方社会保険事務局及び都道府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらずその活用が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方社会保険事務局及び都道府県における医療機関等に対する指導が十分でなかったこと

(4)各事態の詳細

上記の医療費の支払が適切でない事態について、診療報酬等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。

〔1〕 入院基本料

 入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。この入院基本料は、看護師及び准看護師(以下「看護職員」という。)の数並びに看護補助者の数が入院患者数に対して所定の割合以上であること、看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上であることなどの厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。
 また、療養病棟に入院している患者の身体障害の状態等が厚生労働大臣の定める基準に適合している場合に算定する日常生活障害加算等は、患者の身体障害の状態等を評価し、これを定期的に見直すことが算定要件とされている。
 検査の結果、旭川市ほか33市区町に所在する39医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが17,347件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 入院患者数に対する看護職員の数若しくは看護補助者の数又は看護職員の数に占める看護師の数が所定の割合以上となっていないのに、高い点数の区分の入院基本料の点数を算定していた。
イ 患者の身体障害の状態等の評価について定期的に見直し等を行っていないのに、日常生活障害加算等を算定していた。
このため、上記17,347件の請求に対し旭川市ほか286市区町村等が支払った医療費について206,497,879円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額113,886,509円は負担の必要がなかったものである。

〔2〕 在宅医療料

 在宅医療料のうち在宅患者訪問看護・指導料等は、医療機関が、居宅において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、看護師等を訪問させて看護又は療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。また、歯科診療の訪問歯科衛生指導料は、訪問歯科診療を行った患者に対して、歯科衛生士等が療養上必要な実地指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、これらの診療は別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問看護・指導料、訪問歯科衛生指導料等は算定できないこととされている。
 検査の結果、旭川市ほか23市町に所在する42医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが8,332件あった。その主な態様は、介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問看護・指導料又は訪問歯科衛生指導料等を算定していたものである。
 このため、上記8,332件の請求に対し旭川市ほか80市区町村等が支払った医療費について112,002,340円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額62,601,975円は負担の必要がなかったものである。

〔3〕 入院基本料等加算

 入院基本料等加算には、療養病棟療養環境加算、超重症児(者)入院診療加算等がありそれぞれ所定の点数が定められている。
 そして、これらの加算は厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、それぞれの届出に係る所定の点数を算定することとされている。ただし、これらの加算の多くは、医師等の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)を満たしていないなどの場合には算定できないこととされている。
 また、超重症児(者)入院診療加算等は、厚生労働大臣が定める超重症等の状態にある患者に対して算定することとされている。ただし、この加算は、一般病棟等に入院している老人の患者に対しては、算定できないこととされている。
 検査の結果、札幌市ほか17市区町に所在する21医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが6,161件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 医師等の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算を算定していた。
イ 一般病棟等に入院している老人の患者に対して、超重症児(者)入院診療加算等を算定していた。
このため、上記6,161件の請求に対し札幌市ほか138市区町村等が支払った医療費について99,166,596円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額55,483,164円は負担の必要がなかったものである。

〔4〕 初診料・再診料

 初診料は、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があった場合に、再診料はその後の診療行為の都度それぞれ算定することとされている。
 ただし、特別養護老人ホームほか9施設(注6) (以下「老人ホーム等」という。)に配置されている医師(以下「配置医師」という。)がこれら施設の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。

 特別養護老人ホームほか9施設 特別養護老人ホーム、養護老人ホーム(定員111名以上の場合)、指定短期入所生活介護事業所、身体障害者更生施設(旧重度身体障害者更生援護施設)、身体障害者療護施設、救護施設(定員111名以上の場合)、知的障害者入所更生施設(定員150名以上の場合)、知的障害者入所授産施設(定員150名以上の場合)、乳児院(定員100名以上の場合)及び情緒障害児短期治療施設


 検査の結果、旭川市ほか14市町に所在する16医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが17,758件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していた。
イ 配置医師でない医師が、定期的に特別養護老人ホームの入所者の診療に当たっている場合、その医師は実質的には配置医師と認められるのに、初診料、再診料を算定していた。
 このため、上記17,758件の請求に対し旭川市ほか124市区町等が支払った医療費について70,238,754円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額37,689,886円は負担の必要がなかったものである。

〔5〕 検査料

 検査料には、血液化学検査等の検体検査料等があり、それぞれの検査の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、診療の具体的方針として、検査は診療上必要があると認められる範囲内において選択して行うこと、同一の検査はみだりに反復して行ってはならないこととされている。
 また、健康診断は、医療給付の対象として行ってはならないこととされている。
 検査の結果、小樽市ほか9市町に所在する12医療機関において、検査料等の請求が不適正と認められるものが15,429件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 特別養護老人ホーム等の多くの入所者に対して血液化学検査等を画一的に実施して検査料を算定していた。
イ 健康診断として行った血液化学検査等を診療報酬として算定していた。
このため、上記15,429件の請求に対し小樽市ほか101市区町村等が支払った医療費について39,327,733円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額21,538,250円は負担の必要がなかったものである。

〔6〕 指導管理料

 指導管理料のうち特定疾患療養指導料等は、生活習慣病等を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。ただし、前記〔4〕 と同様に、配置医師が老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、算定できないこととされている。
 また、歯科診療の老人訪問口腔指導管理料は、居宅等において療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して訪問歯科診療を行い、かつ、当該訪問歯科診療に際して、療養上必要な指導を行った場合に算定することとされている。ただし、前記〔2〕 と同様に、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては算定できないこととされている。
 検査の結果、深川市ほか9市区町に所在する10医療機関において、指導管理料等の請求が不適正と認められるものが6,769件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 配置医師が特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設等の入所者に対して行った診療について、特定疾患療養指導料等を算定していた。
イ 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して老人訪問口腔指導管理料を算定していた。
 このため、上記6,769件の請求に対し雨竜郡秩父別町ほか111市区町等が支払った医療費について29,731,518円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額16,451,881円は負担の必要がなかったものである。

〔7〕 処置料

 処置料には、一般処置料、皮膚科処置料等があり、それぞれの処置ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った処置は、処置料として算定できないこととされている。
 検査の結果、岩見沢市ほか7市区に所在する10医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが4,101件あった。その主な態様は、特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った皮膚科軟膏処置等を処置料として算定していたものである。
 このため、上記4,101件の請求に対し岩見沢市ほか56市区町村等が支払った医療費について24,634,468円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額13,768,682円は負担の必要がなかったものである。

〔8〕 特定入院料等

 特定入院料には、精神療養病棟入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その基準に定める区分に従い所定の点数を算定することとされている。そして、精神療養病棟入院料等は、医師等の数が標準人員を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
 注射料は、中心静脈注射等の注射の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、老人ホーム等の職員が入所者に対して行った注射は、注射料として算定できないこととされている。
 リハビリテーション料のうち言語聴覚療法は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、言語聴覚療法を行った患者に対して所定の点数を算定することとされている。
 検査の結果、伊達市ほか20市町に所在する21医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが6,888件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料を算定していた。
イ 特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った中心静脈注射等を注射料として算定していた。
ウ 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、言語聴覚療法の点数を算定していた。
 このため、上記6,888件の請求に対し虻田郡豊浦町ほか188市区町村等が支払った医療費について64,069,254円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額34,683,093円は負担の必要がなかったものである。

〔9〕 調剤報酬

 調剤報酬のうち在宅患者訪問薬剤管理指導料は、薬局において、居宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行うなどした場合に算定することとされている。ただし、前記〔2〕 と同様に、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては算定できないこととされている。
 また、薬剤服用歴管理・指導料の特別指導加算は、処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録し、これに基づき薬剤の服用等に関し必要な指導を行った場合に算定することとされている。
 検査の結果、函館市ほか29市区町に所在する36薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが128,676件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた。
イ 薬剤服用歴の記録に基づき薬剤の服用等に関し必要な指導を行うなどの算定要件を満たしていないのに、特別指導加算を算定していた。
 このため、上記128,676件の請求に対し函館市ほか374市区町村等が支払った医療費について96,605,143円の支払が適切でなく、これに対する国の負担額53,824,300円は負担の必要がなかったものである。
以上を医療機関等の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名
実施主体(医療機関等数)
不適切に支払われた医療費の件数
不適切に支払われた医療費
不当と認める国の負担額
摘要
 
 
千円
千円
 
北海道
旭川市ほか106市町村等(23)
22,889
97,499
53,795
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔8〕〔9〕
青森県
黒石市ほか30市町村等(3)
7,605
11,872
6,609
〔8〕〔9〕
岩手県
一関市ほか37市町村等(5)
8,352
16,197
8,718
〔1〕〔2〕〔8〕〔9〕
山形県
鶴岡市ほか18市区町村等(2)
1,389
16,959
9,249
〔1〕〔8〕
福島県
会津若松市ほか34市町村等(1)
7,547
1,785
1,103
〔5〕
茨城県
古河市ほか121市区町等(9)
57,605
47,197
26,095
〔1〕〔3〕〔4〕〔8〕〔9〕
栃木県
芳賀郡茂木町ほか27市区町(3)
5,895
9,653
5,291
〔6〕〔9〕
群馬県
高崎市ほか48市区町村等(6)
1,837
13,981
7,929
〔1〕〔2〕〔3〕〔6〕〔8〕〔9〕
埼玉県
狭山市ほか74市区町村等(8)
4,607
41,280
22,169
〔1〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔8〕〔9〕
千葉県
松戸市ほか54市区町村等(10)
6,001
22,524
12,301
〔2〕〔3〕〔5〕〔6〕〔8〕〔9〕
東京都
北区ほか63市区町等
6,533
61,539
34,449
〔1〕〔3〕〔6〕〔7〕〔9〕
神奈川県
厚木市ほか33市区町等(5)
3,931
11,743
6,472
〔1〕〔2〕〔6〕〔9〕
富山県
富山市ほか11市町村等(1)
932
10,769
5,592
〔1〕
福井県
大野市ほか6市町等
530
7,866
4,322
〔8〕
山梨県
南巨摩郡身延町ほか13市町等(5)
2,263
19,150
10,667
〔1〕〔3〕〔8〕〔9〕
愛知県
知立市ほか52市町村等(8)
3,997
71,007
38,728
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔8〕
三重県
津市ほか5市等(2)
258
4,474
2,460
〔4〕〔7〕
京都府
京都市ほか22市町等(6)
7,276
17,815
10,362
〔2〕〔9〕
大阪府
大阪市ほか73市町村等
13,945
113,971
63,646
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔7〕〔8〕
兵庫県
神戸市ほか110市町等(28)
22,510
50,546
28,095
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕〔9〕
和歌山県
和歌山市ほか29市町村等(4)
913
14,494
7,480
〔1〕〔2〕〔8〕
鳥取県
東伯郡三朝町ほか52市区町村(3)
5,711
4,964
2,865
〔8〕〔9〕
広島県
広島市ほか1市(6)
716
14,703
8,027
〔2〕
福岡県
嘉麻市ほか45市町村等(11)
8,725
39,501
22,064
〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔8〕〔9〕
大分県
国東市ほか55市町村等(7)
8,982
13,435
7,467
〔1〕〔2〕〔7〕〔8〕〔9〕
沖縄県
石垣市ほか5市町村等(2)
512
7,333
3,961
〔3〕〔4〕
889市区町村等(207)
211,461
742,273
409,927
 

 計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない。
 摘要欄の〔1〕〜〔9〕は、本文(172ページ) の不適切な支払の事態の診療報酬等の別に対応している。