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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(211)—(228)国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称
厚生労働本省(交付決定庁)
福島県ほか12都府県(支出庁)
交付の根拠
国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先
市9、町8、村1、計18市町村(保険者)
療養給付費負担金の概要
市町村の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計
24,758,198,380円
(平成15、16両年度)
不当と認める国庫負担金交付額
159,217,849円
(平成15、16両年度)

1 負担金の概要

(1)国民健康保険の療養給付費負担金

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(2)国庫負担金の交付対象

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者(注1) 及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。そして、国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。
 そして、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除き、国庫負担金の交付の対象とされている。
 一方、退職被保険者等に係る医療費については、国庫負担金の交付の対象とはせずに、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費交付金等で負担されている。

 退職被保険者 被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に老人保健法による医療を受けるまでの間において適用される資格を有する者である。


(3)国庫負担金の算定方法

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

 保険基盤安定繰入金 市町村が一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額


 このうち一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額とされている。
 ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格が遡って確認された場合は、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

(4)交付手続

 国庫負担金の交付手続については、〔1〕交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、厚生労働省に提出し、〔3〕厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。
 そして、〔4〕当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出し、〔5〕これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出し、〔6〕厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 北海道ほか27都府県の376市区町村において、平成15年度又は16年度に交付を受けた国庫負担金について、実績報告書及びその基礎資料等により検査した。

(2)過大交付の事態

 検査したところ、福島県ほか12都府県の18市町村において、国庫負担金交付額計24,758,198,380円のうち計159,217,849円が過大に交付されていて不当と認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

ア 遡及して退職被保険者等となった者に係る遡及期間の医療給付費を控除していないもの

16市町村
153,007,919円


イ 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料からの転記を誤り過大に算定しているもの

2市町
6,209,930円


 このような事態が生じていたのは、上記の18市町村において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため、適正な交付申請及び実績報告を行っていなかったこと、また、これに対する前記13都府県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 前記の各態様を都府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

 
都府県名
  交付先
  (保険者)
  年度
国庫負担対象費用額
左に対する国庫負担金
不当と認める国庫負担対象費用額
不当と認める国庫負担金
       
千円
千円
千円
千円
 ア 遡及して退職被保険者等となった者に係る遡及期間の医療給付費を控除していないもの
(211)
福島県
双葉郡大熊町
16
481,658
192,663
6,149
2,459
(212)
茨城県
牛久市
16
2,087,204
834,881
3,992
1,597
(213)
茨城県
那珂郡東海村
16
960,241
384,096
17,001
6,800
(214)
千葉県
市川市
16
13,441,078
5,376,431
13,633
5,453
(215)
 同
長生郡睦沢町
16
327,374
130,949
18,596
7,438
(216)
東京都
西東京市
15
5,412,057
2,164,822
149,274
59,709
(217)
山梨県
甲府市
15
7,377,961
2,951,184
41,947
16,778
(218)
愛知県
海部郡佐屋町 (注3)
16
851,177
340,470
6,201
2,480
(219)
大阪府
富田林市
16
3,539,197
1,415,678
8,527
3,410
(220)
 同
箕面市
16
3,530,061
1,412,024
5,788
2,315
(221)
和歌山県
西牟婁郡串本町 (注4)
16
819,531
327,812
24,776
9,910
(222)
 同
東牟婁郡古座町 (注4)
16
309,857
123,943
3,916
1,566
(223)
岡山県
倉敷市
16
11,983,902
4,793,561
43,899
17,559
(224)
高知県
高岡郡中土佐町
16
321,888
128,755
22,982
9,193
(225)
福岡県
中間市
16
1,775,005
710,002
8,941
3,576
(226)
沖縄県
中頭郡西原町
15
1,271,161
508,464
6,889
2,755
 アの計
   
54,489,358
21,795,743
382,520
153,007

(注3)
 平成17年4月1日以降は愛西市
(注4)
 平成17年4月1日以降は東牟婁郡串本町

 上記の16市町村では、国庫負担金の交付申請等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費の一部又は全部を控除しておらず、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、計21,642,735,716円となり、計153,007,919円が過大に交付されていた。

イ 一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料からの転記を誤り過大に算定しているもの

(227)
神奈川県
中郡大磯町
15
948,603
379,077
9,274
3,709
(228)
大阪府
守口市
16
6,558,889
2,583,376
6,250
2,500
 イの計
   
7,507,493
2,962,454
15,524
6,209

 上記の2市町では、国庫負担金の交付申請等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、基礎資料から高額療養費の額を転記する際、誤って療養費等の額を転記したなどのため、高額療養費の額を過大に計算しており、その結果、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、計2,956,244,815円となり、計6,209,930円が過大に交付されていた。

 ア、イの計
   
61,996,851
24,758,198
398,045
159,217