社会保険庁では、社会保険業務センターに設置されたホストコンピュータ等と各社会保険事務所等に設置された専用端末機を専用の通信回線で接続した社会保険オンラインシステムの運用に当たり、データ通信サービス契約を締結している。
データ通信サービス契約は、同庁が、ハードウェア、ソフトウェア等の各種システムサービスを利用し、その対価として使用料を毎月支払うものであり、翌年度以降にわたり役務の提供を受ける長期継続契約としている。
データ通信サービス契約に係る使用料のうち、ソフトウェア使用料の毎月の支払額(月額使用料)は、ソフトウェアの開発に係る人件費などの費用(以下「ソフトウェア開発費」という。)に減価償却費率、利子相当額率等から構成されている年経費率を乗ずるなどして算出されている。この年経費率は、契約相手方と協議の上、使用料算定の基礎となる基本的な事項(以下「基本的事項」という。)として毎年度決定されており、このうち、利子相当額率については、ソフトウェア開発費を10年間の分割払で支払うことに伴って生じる利子負担に相当する額を算出するためのものとして設定され、長期プライムレートの直近2年分の加重平均値(以下「長期プライムレート平均値」という。)が用いられている。
そこで、ソフトウェア使用料における利子相当額が適正に算出されているかについて検査したところ、同庁では、ソフトウェア使用料の算出に当たって、その月額使用料を一定額とするため、月額使用料における元金と利子がそれぞれ一定の額になるアドオン方式を採用しているにもかかわらず、借入利子率を一定の算式により変換して算出した率(以下「アドオン率」という。)を用いることなく、長期プライムレート平均値をそのまま利子相当額率として用いていて、本来負担すべき額を超える利子相当額が算出されている事態が見受けられた。
このような事態が生じているのは、同庁においてソフトウェア使用料を算出するに当たり、利子相当額の計算方法についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
社会保険庁において、基本的事項として決定される年経費率のうちの利子相当額率の協議に当たっては、借入利子率として適切な率を設定した上で、アドオン方式による場合の利子相当額率を適切に設定するなどして、ソフトウェア使用料における利子相当額を適正に算出するよう、社会保険庁長官に対し平成17年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
社会保険庁では、本院指摘の趣旨に沿い、18年3月に契約相手方と合意書を交わして、17年10月以降新たに使用を開始したソフトウェアの使用料について、アドオン率を用いて利子相当額を算出する処置を講じた。