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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

水田農業構造改革対策の事務処理に使用するプログラムの開発委託契約に係る会計経理が適正を欠くと認められるもの


(285)水田農業構造改革対策の事務処理に使用するプログラムの開発委託契約に係る会計経理が適正を欠くと認められるもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業生産振興費
部局等の名称
農林水産本省
契約名
(1) 平成16年度水田農業構造改革対策電算処理システム開発委託事業
(2) 平成17年度水田農業構造改革対策電算処理システム開発委託事業
契約の概要
水田農業構造改革対策の事務処理に使用するプログラムの開発を行うもの
契約金額
(1) 11,957,000円
(2) 10,698,000円
計 22,655,000円
契約の相手方
株式会社インテック
契約
(1) 平成16年5月 随意契約
(2) 平成17年5月 随意契約
支払
(1) 平成17年4月
(2) 平成18年4月
適正を欠くと認められる契約金額
(1) 11,957,000円
(2) 10,698,000円
計 22,655,000円

1 契約の概要

 農林水産省では、米の過剰基調に対応した施策の一環として、その生産調整を円滑に行うため、地域の特性に応じた水田農業を地域自らが主体的かつ戦略的に展開することなどを目的として、水田農業構造改革対策(以下「構造改革対策」という。)を実施している。この構造改革対策においては、米の生産調整に協力している農業者等に対し助成金を交付していて、助成金の交付及びこれに係る事務処理は、市町村の区域を基本に設置される地域水田農業推進協議会(以下「地域協議会」という。)が行うこととされている。
 そして、同省は、この事務処理の合理化・省力化に資するため、水田農業構造改革対策電算処理システムのプログラム(以下「プログラム」という。)の開発を随意契約により、株式会社インテック(以下「会社」という。)に委託して行わせている。
 この契約では、委託費として、委託費の実支出額と委託費の限度額のいずれか低い額を会社に支払うこととしている。そして、同省では、平成16、17両年度において、会社から提出された実績報告書等に基づき、委託費の実支出額が両年度の限度額をそれぞれ上回っていたことから、限度額と同額の16年度11,957,000円、17年度10,698,000円、計22,655,000円を会社に支払っている。
 また、この契約により取得した著作権は、同省が取得するものとされている。

2 検査の結果

 契約書、実績報告書等により検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)契約について

 農林水産省では、会社との打合せにおいて、プログラムの開発等に約2億円の経費が必要とされ、同省からの委託費だけでは多額の経費が不足することを承知した上で、会社がプログラムを製品化して全国の地域協議会等に販売し、その売上額を委託費の不足額に充当することを認めていた。
 しかし、同省が会社との契約により取得したプログラムの著作権は、国の財産である。
そして、財政法(昭和22年法律第34号)第9条第1項の規定によれば、国の財産は、法律に基づく場合を除くほかは、これを支払の手段として使用してはならないとされている。これは、国の財産を支払手段として使用すると、歳出予算に計上して支出すべきものを予算を通さずに支払うことになるからである。
 したがって、16、17両年度の契約は、必要とされるプログラムの開発等の経費を大幅に下回った額で契約し、その不足額については、国の財産であるプログラムの著作権を無償で使用させて、製品販売の売上を充当することを前提として締結されたもので、これは国の財産を支払手段として使用していることになり、財政法第9条第1項に反していて、適切とは認められない。

(2)国有財産の管理について

 国有財産法(昭和23年法律第73号)の規定によれば、国の負担において国有となった著作権は、国有財産になるとされている。そして、金銭的価値を有することが客観的に明白な著作権は、国有財産として管理すべきものである。
 しかし、農林水産省では、この契約により取得したプログラムの著作権は、前記のように、プログラムを製品化して販売することによって金銭的価値が発生するのに、これを国有財産として認識していなかった。そして、会社に対して正規の手続によらずにプログラムを製品化して全国の地域協議会等に販売することを認めていた。
 したがって、同省は、16、17両年度の契約に基づき取得したプログラムの著作権を、国有財産として管理する必要があるのに適正に管理しておらず、適切とは認められない。
 以上のとおり、16、17両年度の契約(16年度11,957,000円、17年度10,698,000円)に係る会計経理は、財政法等に反していて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、農林水産省において、財政法等に則した適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠如していることなどによると認められる。