会計名及び科目
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一般会計 (組織)林野庁 (項)林業振興費
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部局等の名称
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林野庁
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補助の根拠
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予算補助
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補助事業者
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全国森林組合連合会
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補助事業
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緑の雇用担い手育成対策
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補助事業の概要
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森林整備の担い手の確保及び育成を図るとともに、山村地域を活性化することなどを目的として、林業就業希望者を対象に森林作業を現場で行う実地研修等を実施するもの
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検査した事業費
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85億0176万余円
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(平成15、16両年度 国庫補助金同額)
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(1)収益事業地で実施された実地研修に係る国庫補助金交付額
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11億2518万円
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(平成15、16両年度)
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(2)適切な謝金単価を用いることで低減できた国庫補助金交付額
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4911万円
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(平成15、16両年度)
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(3)手続上適切を欠いた物品・役務調達契約に係る国庫補助金交付額
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11億6521万円
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(平成15、16両年度)
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林野庁では、林業生産流通総合対策事業実施要領(平成10年林野政第241号農林水産事務次官依命通知)及び「林業担い手育成確保対策事業の実施について」(平成10年林野組第70号林野庁長官通知。以下「長官通知」という。)に基づき、雇用のセーフティネットの構築と森林整備の担い手の確保・育成及び山村地域の活性化を図ることなどを目的として、全国森林組合連合会(以下「全森連」という。)に国庫補助金を交付して資金を造成させ、平成14年度から17年度まで緑の雇用担い手育成対策事業を実施させている。
本件事業は、都市部からのU・Iターン者等で、厚生労働省の緊急地域雇用創出特別交付金事業(注1)
により就業した者のうち森林作業に従事し、本件事業の実施後に森林組合等に本格就業し地域に定着することが見込まれる者を対象に、林業就業に必要な専門的な知識・技能を習得させるために講義や実習を行う集合研修(20日程度)及び本格的に森林の整備等を担うことができる能力を習得させるために植栽、刈払い、間伐等の森林作業を現場で行う実地研修(180日程度)を実施するとともに、これらの者の募集を円滑に行うための林業就業相談会、広報活動等を実施するものである。
全森連では、林野庁の指導の下、本件事業の実施要領(以下「全森連実施要領」という。)を定めている。そして、長官通知及び全森連実施要領に基づき、集合研修と実地研修の監督・検査等業務を各都道府県の林業労働力確保支援センター、森林組合連合会等の取りまとめ団体(以下「取りまとめ団体」という。)に、実地研修を各森林組合等の林業事業体(以下「林業事業体」という。)に、それぞれ委託して事業を実施している。また、これらの研修に必要な教材、研修参加者の作業服等は、全森連が調達して各取りまとめ団体等に支給している。
一方、林業就業相談会、広報活動等については、全森連が、民間事業者等とパンフレット等の物品や相談会の企画運営等の役務の調達契約を締結して実施している。
本件事業のうち実地研修は、長官通知により、管理不十分な公有林等を実施場所とすることとされている。
そして、全森連は、林業事業体が作成し全森連が適正と認めた事業計画に基づき、林業事業体に実地研修を委託し、林業事業体は、その事業計画に従って実地研修を行い、取りまとめ団体を通じて全森連に実績報告書を提出するとともに委託事業費の請求を行うこととなっている。この委託事業費は、全森連実施要領により、講師及び補助員の謝金、技術習得費(研修参加者に支給する手当)、チェーンソー等の各種林業機械経費等とされ、それぞれ標準単価が示されている。
林野庁では、全森連に対して、14、16、17の各年度にそれぞれ95億円、70億円、70億円、計235億円の国庫補助金を交付しており、全森連では、これにより資金を造成し、14年度から17年度までに203億余円を取り崩して本件事業を実施した。そして、このうち15、16両年度の研修参加者が研修を受託していた林業事業体に本格雇用され林業に本格就業した実績は、全森連が長官通知に基づき林野庁に提出した報告書によると、研修参加者計4,582人に対し、研修修了者は4,090人で、そのうち林業に本格就業した者は翌年度4月時点で3,581人(研修参加者の78.1%、研修修了者の87.5%)となっている。
そして、18年度から、本件事業の後継事業として、本件事業と基本的に同様の目的及び内容の緑の雇用担い手対策事業が実施されている。
本件事業について、合規性、経済性・効率性等の観点から、研修の委託事業費の算定は実態に即した適切なものとなっているか、全森連の本件事業に係る物品・役務調達契約の契約事務は適切に行われているかなどに着眼し、事業計画書、実績報告書等により検査を実施した。
14年度から16年度までに行われた88取りまとめ団体及び599林業事業体における研修(研修参加者計4,582人)並びに全森連における物品・役務調達契約のうち、15、16両年度に実施された北海道ほか20県(注2) の45取りまとめ団体及び319林業事業体における研修(研修参加者計2,427人、委託事業費計69億1696万余円(全額国庫補助金)。)並びに全森連における物品・役務調達契約のうち契約金額が100万円以上の契約72件(契約金額計15億8480万余円。これに係る国庫補助金同額。)を対象として検査を実施した。
検査したところ、実地研修に係る委託事業費の算定及び物品・役務調達の契約手続について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた((1)、(2)の事態には重複しているものがある。)。
長官通知では、実地研修について、管理不十分な公有林等を実施場所とすることとされている。これは、林業事業体が実地研修のために森林所有者から当該森林を借り上げるなどして実施場所を確保し、相当数の規模(30人程度)の研修参加者を対象に複数の職員及び作業員を配置して専ら研修を行うとともに、当該森林の整備にも役立てることを想定したものである。
そして、全森連実施要領においては、委託事業費として講師等謝金や林業機械経費等を計上できるとしていたが、研修で行う森林作業により収益が生じる場合の取扱いについては特に定めていなかった。
そこで、実地研修の実施状況についてみたところ、林野庁の想定とは異なり、林業事業体が森林所有者から造林事業等を請け負った作業地や立木を購入する契約を締結した作業地など、林業事業体が収益を得ることを目的とした作業地(以下「収益事業地」という。)において、少数の研修生を対象に実施されているものが、北海道ほか18県(注3)
の163事業体(収益事業地で実施された実地研修に係る委託事業費11億2518万余円)で見受けられた。そして、これら収益事業地に係る委託事業費の算定についてみると、借り上げるなどした公有林等で森林作業による収益が生じない作業地(以下「非収益事業地」という。)が実施場所の場合と同様となっていた。
しかし、収益事業地における研修は、林業事業体の職員や作業員が収益を目的とする通常業務として植栽、間伐等の作業を行いながら、併せて、講師や補助員として通常業務で使用する林業機械等を使用して研修を行っているのであるから、非収益事業地を想定して示されている講師等謝金、林業機械経費等の標準単価を基に算定された経費のすべてを収益事業地における研修においても同様に委託事業費の対象としているのは適切とは認められない。
各林業事業体は、委託事業費の算定に当たり、講師及び補助員の謝金について、全森連実施要領に示された標準単価を用いるなどして算出している。この標準単価は、講師の謝金については林業事業体の現場監督等の職員の、補助員の謝金については林業事業体の作業員の給与水準を踏まえるなどして、それぞれ20,000円、12,000円などと設定されていたが、その単価を適用する講師及び補助員の資格・条件については明記されていなかった。
そして、一部の実地研修で林業事業体の作業員が講師を務めている場合が見受けられたことから、その場合の講師謝金の算定についてみたところ、作業員の給与水準を踏まえるなどして設定された標準単価を用いずに、林業事業体の現場監督等の職員の給与水準を踏まえるなどして設定された標準単価等を用いて講師謝金の額を算出し計上している事態が、岩手県ほか14県(注4)
の52事業体(これに係る委託事業費8億7720万余円)で見受けられた。
しかし、このような事態は、実地研修に従事した作業員の給与水準を上回る経費を委託事業費として算定しているもので、適切とは認められない。そして、作業員の給与水準を踏まえるなどして設定された標準単価12,000円を用いた場合、委託事業費を4911万余円低減できたと認められる。
補助事業者が、補助事業の実施に当たり、物品や役務に関する調達業務を実施する場合、自らの会計規程等に従って当該業務を実施することとなる。
そして、本件事業においては、全森連が多額の物品・役務の調達を多数行っているが、その契約手続についてみたところ、会計規程等が整備されておらず、次のとおり、補助事業の適正かつ経済的な執行を期する上で適切とは認められない事態が、前記72件の契約のうち64件の契約(契約金額11億6521万余円)で見受けられた。
〔1〕 調達契約に当たって、特定の事業者からのみ見積書を徴し、その事業者と随意契約をしていたもの
〔2〕 契約書を作成していないため、契約相手との間で契約内容について疑義や紛争を生ずるおそれがあるもの
〔3〕 契約の適正な履行を確認するための成果品の検収を行わないまま、契約代金を支払っていたもの
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 実地研修は、多くの場合、小規模な林業事業体によって少数の研修生を対象に実施されているが、このような林業事業体では、実地研修のために、管理不十分な公有林等を借り上げるなどして、相当数の規模の研修生に対し複数の職員及び作業員を配置して研修を行うのが困難な場合があること、地域によっては適当な公有林等がないことなどから、多くの林業事業体では林野庁の想定と異なり収益事業地において研修が実施されていたのに、同庁及び全森連において、この実態を把握しておらず、この場合の委託事業費の算定方法を示していなかったこと、また、取りまとめ団体及び林業事業体において、実地研修の実施方法についての理解が十分でなかったこと
イ 林野庁及び全森連において、講師及び補助員の資格・条件と適用されるべき謝金単価の区分について、明確に定めていなかったこと
ウ 林野庁において、全森連に対し、国庫補助事業に関する契約事務の事務処理体制を整備させるための指導及び監督が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、18年3月に、長官通知を改正するなどして、本件事業の後継事業として18年度から実施する緑の雇用担い手対策事業において、次のような処置を講じた。
ア 実地研修の実施場所及び委託事業費の取扱いについては、改正後の長官通知において、収益事業地での実施も想定した仕組みとし、その場合の講師等の謝金、及び講師等の使用する林業機械の経費等を補助の対象外とした。また、全森連が主催する会議等を通じて取りまとめ団体及び林業事業体に対して長官通知等の内容の周知を図った。
イ 講師等謝金の算定については、改正後の長官通知に基づき全森連に内規を定めさせ、その中で職種区分に応じた単価を設定することとした。また、全森連が主催する会議等を通じて取りまとめ団体及び林業事業体に対してその内容の周知を図った。
ウ 全森連が行う補助事業に係る物品・役務調達の契約手続については、全森連に対し事務処理体制を整備するよう指導を行った。これを受け、全森連においては、会計規程の制定及び組織の見直しを行い、契約事務の適正化のための体制を整備した。
緊急地域雇用創出特別交付金事業 厳しい雇用失業情勢にかんがみ、構造改革の集中調整期間中の臨時応急の措置として、都道府県に国庫補助金による基金を造成し、この基金を活用することにより、緊急かつ臨時的な雇用・就業機会の創出を図ることを目的として13年度から16年度まで実施された事業
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北海道ほか20県 北海道、岩手、宮城、山形、栃木、群馬、富山、石川、山梨、長野、岐阜、鳥取、岡山、山口、徳島、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎各県
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北海道ほか18県 北海道、岩手、宮城、山形、栃木、群馬、富山、山梨、長野、岐阜、鳥取、岡山、山口、徳島、高知、佐賀、熊本、大分、宮崎各県
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岩手県ほか14県 岩手、宮城、栃木、富山、石川、岐阜、鳥取、岡山、山口、徳島、高知、佐賀、熊本、大分、宮崎各県
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