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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農地情報管理システム整備事業等を適切に実施させるとともに、農地情報管理システムの活用を図るため、当該システムに入力された情報を適時適切に更新するよう改善させたもの


(5)農地情報管理システム整備事業等を適切に実施させるとともに、農地情報管理システムの活用を図るため、当該システムに入力された情報を適時適切に更新するよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)農業経営対策費
農業経営基盤強化措置特別会計
(項)農地保有合理化促進対策費
部局等の名称
農林水産本省、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、沖縄総合事務局(平成13年1月5日以前は総理府沖縄開発庁沖縄総合事務局)
補助の根拠
予算補助
補助事業者
北海道ほか27府県
間接補助事業者
(事業主体)
市60、町174、村32 計266事業主体
補助事業
農地情報管理システム整備、農地流動化地域総合推進、農地調整円滑化対策等
補助事業の概要
農業委員会が整備している農地基本台帳等の情報を電子化して管理し、さらに、この情報を地図上で表示することなどができる農地情報管理システムの整備等を行うもの
事業を適切に実施していなかったなどしていた事業主体数
(1)
事業を適切に実施していなかった事業主体数
81事業主体
(2)
農地情報管理システムの情報を適時適切に更新していなかった事業主体数
231事業主体
上記に係る事業費
(1)
2億0192万円(平成12年度〜16年度)
(2)
13億1771万円(平成12年度〜16年度)
上記に対する国庫補助金相当額
(1)
1億2279万円
(2)
11億1983万円
   

1 事業の概要

(1)農地情報管理システム整備事業等の概要

 農林水産省では、農業委員会等補助事業実施要領(昭和42年42農政A第958号農林事務次官依命通知。以下「実施要領」という。)等に基づき、優良農地の確保及びその有効利用等の推進、農地の流動化の促進等を図るため、平成8年度から15年度までは農地情報管理システム整備事業、12年度から16年度までは農地流動化地域総合推進事業、16年度は農地調整円滑化対策等事業(以下、これらの事業を「農地情報管理システム整備事業等」という。)をそれぞれ実施している。
 農地情報管理システム整備事業等は、市町村が事業主体となって、農業委員会が農業委員会交付金事業実施要領(昭和60年60農経A第1141号。以下「交付金実施要領」という。)等に基づいて整備している農地基本台帳を電子システム化してその情報を管理し、さらに、地図上で表示することなどができるシステム(以下「農地情報管理システム」という。)の整備等を実施するものである。

(2)補助金の交付手続等

 農林水産省では、農地情報管理システム整備事業等の実施に要する経費について都道府県が市町村に対して補助する場合に、その経費の一部又は全部について都道府県に対して国庫補助金を交付している。
 この補助金の交付申請に当たって、市町村では、都道府県から交付する補助金の限度額の通知(以下「内示通知」という。)を受けた後、補助事業の目的、内容、経費等を記載した交付申請書を作成して都道府県に提出し、都道府県ではこれを審査した上、補助金の交付決定を行っている。
 そして、補助の対象となる経費については、農地情報管理システムの導入に要する経費等とされていて、導入後に要するシステムの保守料等は補助の対象とされていない。

(3)農地情報管理システムの入力情報の更新

 農地情報管理システムに入力する情報の内容は、農地・農家等に関する「世帯員及び就業(氏名、年間農業従事日数等)、営農の状況(主要農機具の台数、農用施設の種類等)、土地総括表(経営面積、貸付地面積等)、経営農地等の筆別表(所有者氏名、所在、作付状況等)、貸付地の筆別表(借受人等)」などである。
 これらの情報のうちには、農業委員会が農地法(昭和27年法律第229号)に基づいて農地に係る権利の移転や利用関係の調整等の業務を行う際に必要な情報が含まれており、交付金実施要領等において、この情報に変更があった場合には、毎年必ず更新し、常に使用できる状態にしておくこととされている。そして、農林水産省では、毎年度、事業主体のこの更新に要する経費等を負担している。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 農林水産省では、従来から、農地情報管理システム整備事業等を実施しており、引き続き17年度以降も担い手総合緊急支援事業等により同種システムの整備を進めていて、今後もその整備が見込まれる。また、市町村や農業委員会が各種農業施策を実施するに当たって、整備した農地情報管理システムを活用するためには、入力された情報が更新され、常に使用できる状態にあることが必要である。
 そこで、合規性、有効性等の観点から、農地情報管理システム整備事業等は実施要領等に基づき適切に実施されているか、また、農地情報管理システムの情報が適時適切に更新されているかなどに着眼して検査を実施した。

(検査の対象及び方法)

 北海道ほか27府県(注) において、12年度から16年度までに農地情報管理システム整備事業等を実施した296事業主体、事業費20億6233万余円(国庫補助金相当額15億2187万余円)を対象に、実績報告書等により検査を実施した。

(検査の結果)

 検査したところ、農地情報管理システム整備事業等の実施や農地情報管理システムの情報の更新について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1)農地情報管理システム整備事業等を適切に実施していなかったもの (下記のア、イ、ウの事業主体には重複しているものがある。)

81事業主体 事業費2億0192万余円(国庫補助金相当額1億2279万余円)

ア 事業計画時において、事業実施の前提となる現状の把握が十分でなかったため、適切に事業を実施していなかったもの

5事業主体 事業費1625万余円(国庫補助金相当額1295万余円)

<事例>

 A町では、平成12年度に農地流動化地域総合推進事業における農地情報管理システム整備の一環として、農地の耕作可能面積を把握するシステムを事業費3,251,263円(国庫補助金相当額1,571,611円)で整備したとしていた。
 この事業の計画に当たり、同町では、別途保有している地籍図の電子データを利用し、これを農地情報管理システムで使用可能なデータに変換することとしていた。
 しかし、実際には、地籍図の電子データには農地の耕作可能面積を把握するために必要なデータが欠けていたため、農地情報管理システム用のデータを作成することができず、農地の耕作可能面積を把握するシステムは整備されていなかった。

イ 補助の対象となる経費が明確に示されていなかったため、補助の対象とならない農地情報管理システム導入後の保守料等を補助対象事業費に含めていたもの

63事業主体 事業費9466万余円(国庫補助金相当額4984万余円)

ウ 補助金の交付申請書の提出に先立って道府県から示される内示通知の前に、当該事業に係る契約を締結し、事業に着手していて補助の対象とはならないもの

38事業主体 事業費9100万余円(国庫補助金相当額5999万余円)

(2)農地情報管理システムに入力された情報が適時適切に更新されていなかったもの (上記(1)の態様と重複しているものがある。)

231事業主体 事業費13億1771万余円(国庫補助金11億1983万余円)

 検査を実施した296事業主体のうち、248事業主体が整備した農地情報管理システム(事業費14億1700万余円、国庫補助金12億0117万余円)には、農業委員会が業務を行う際に必要となる情報が入力されており、この情報について、17年度における更新状況をみると、過去1年間に変更があった情報すべてについて更新していたのは17事業主体にとどまっており、残りの231事業主体(事業費13億1771万余円、国庫補助金11億1983万余円)については情報の全部又は一部の更新が行われていなかった。
 そこで、農地情報管理システムの主な情報別に、248事業主体のうち情報を更新していた事業主体の割合についてみると、次の図のとおりとなっている。

図 農地情報管理システムの主な情報の更新状況

図農地情報管理システムの主な情報の更新状況

 これをみると、農地情報管理システムを活用する上で重要な情報である農家の世帯員や農地の面積、貸借等の情報でさえも更新していない事業主体が見受けられた。また、例えば、農地法では、農業委員会が農地の所有権の移転を許可する要件として、権利を取得しようとする者がその取得後農地を耕作の用に供し、農作業に常時従事すると認められることなどを定めている。しかし、これらの要件を農業委員会が確認する際に必要となる情報のうち、営農の状況、作付状況、年間農業従事日数等の情報を更新している事業主体の割合は、14.7%から35.0%と著しく低いものとなっていた。
 以上のように、農地情報管理システム整備事業等を適切に実施していなかった事態や、農地情報管理システムの情報が適時適切に更新されていなかった事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 事業主体において
(ア)農地情報管理システム整備事業等の実施に当たり、事業計画等の適切な策定、補助対象経費の範囲及び事業の着手時期についての理解が十分でなかったこと
(イ)農地情報管理システムの情報の更新が必要であるとの認識が十分でなかったこと

イ 道府県において、補助事業の審査・確認及び事業主体に対する指導・監督が十分でなかったこと

ウ 農林水産省において
(ア)農地情報管理システム整備事業等の実施に当たり、事業計画等を適切に策定することについて道府県に対する指導及び周知徹底が十分でなかったこと
(イ)実施要領等において補助対象経費の範囲を明確にしていなかったこと、また、事業の着手時期について道府県に対する指導及び周知徹底が十分でなかったこと
(ウ)農地情報管理システムの情報を更新することについて、道府県に対する指導及び周知徹底が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、18年8月及び9月に、都道府県等に対して通知を発するなどし、今後も実施する同種の事業を適切に行い、また、農地情報管理システムの活用を図るため、次のような処置を講じた。
ア 事業主体に対し事業計画等を適切に策定させるとともに、補助対象経費の範囲及び補助事業の着手時期を明確にし、その指導及び周知徹底を図ることとした。
イ 事業主体に対し農地情報管理システムの活用を図るため、速やかにその情報を更新させることとし、適時適切な情報の更新について指導及び周知徹底を図るとともに、今後、同種のシステムを整備するに当たっては、農地基本台帳の情報を適時適切に更新していることを事業採択の条件とすることとした。
ウ 都道府県等に対し、補助事業の審査・確認及び事業主体に対する指導・監督を徹底させることとした。

 北海道ほか27府県 北海道、京都府、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、富山、福井、長野、静岡、愛知、三重、和歌山、鳥取、岡山、山口、徳島、愛媛、高知、福岡、佐賀、大分、宮崎、沖縄各県