科目
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独立行政法人農畜産業振興機構(畜産勘定)
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平成15年9月30日以前は、
農畜産業振興事業団(畜産助成勘定) (項)畜産助成事業費
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部局等の名称
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農林水産本省
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独立行政法人農畜産業振興機構(平成15年9月30日以前は農畜産業振興事業団)本部
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補助の根拠
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独立行政法人農畜産業振興機構法(平成14年法律第126号)
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平成15年9月30日以前は、
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農畜産業振興事業団法(平成8年法律第53号)
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補助事業者
(事業主体)
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財団法人学校給食研究改善協会(平成15年7月17日以降)
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日本体育・学校健康センター(平成15年7月16日以前)
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補助事業
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学校給食用食肉流通・消費改善対策
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補助事業の概要
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学校給食用牛肉の安定的な供給が著しく困難となる状況を回避し、学校給食の安定と改善を図るため、基金を造成し、輸入牛肉の使用を条件として、学校給食用輸入牛肉等の配送、貯蔵等に必要な設備の整備経費等を補助等するもの
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事業の終了に伴い機構に返還させた基金残額
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1億6560万円
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農林水産省では、学校給食用牛肉の安定的な供給が著しく困難となる状況を回避し、学校給食の安定と改善を図るため、学校給食用食肉流通・消費改善対策事業を、独立行政法人農畜産業振興機構(平成15年9月30日以前は農畜産業振興事業団。以下「機構」という。)に、機構の畜産業振興事業の一環として実施させている。
学校給食用食肉流通・消費改善対策事業は、3年の牛肉の輸入自由化に伴い、学校給食用輸入牛肉の特別割当が廃止され、関税率が25%から70%へと引き上げられたことにより、学校給食用輸入牛肉の価格が上昇し、安定的な供給が著しく困難となることなどが予想されたため、実施されているものである。本事業は、機構が定めた「学校給食用食肉流通・消費改善対策事業実施要綱」(平成15年15農畜機第48号。以下「要綱」という。15年9月30日以前については農林水産省が定めた「学校給食用食肉流通・消費改善対策事業実施要綱」(平成3年3畜A第768号農林水産事務次官依命通知)。)等に基づき、財団法人学校給食研究改善協会(以下「改善協会」という。15年7月16日以前は別組織である日本体育・学校健康センターが実施。)が事業主体となって、次に掲げる事業(以下「基金事業」という。)の実施に要する経費に充てるため、機構の補助を受け、食肉流通・消費改善基金(以下「基金」という。)を造成するものである。
〔1〕 食肉流通施設改善事業
都道府県の学校給食会等(以下「給食会」という。)に対し学校給食用輸入牛肉等の配送、貯蔵等に必要な設備を整備する経費を補助する事業
〔2〕 輸入牛肉安定供給推進事業
学校給食用輸入牛肉の一律価格での供給を図るため、給食会に対し一定の保管経費及び給食会から給食実施校までの配送経費を補助する事業
〔3〕 食肉給食普及促進事業
食肉給食の普及のため、輸入牛肉を含む献立の開発・普及、調理講習会等を行う事業
〔4〕 食肉供給安定確保緊急対策事業
16年度に新設された事業で、米国産牛肉の輸入停止措置等による食肉の価格の高騰時に、学校給食用食肉の安定的な調達を確保するため、給食会に対し一定の輸入牛肉等の購入経費を補助する事業
そして、事業主体では、輸入牛肉の使用を条件として基金事業を実施することにしている。
農林水産省では、3年度に造成した基金31億6876万余円を運用元本としてその運用益を基金事業の実施に要する経費に充てることとしていた。しかし、金利の低下による運用益の減少を踏まえて基金の運営方法について見直し、14年度に基金の規模を3億2829万余円とし、同年度以降順次基金を取り崩すことにより、基金事業の実施に要する経費に充てることとした。
そして、14年度から17年度までの事業主体から給食会に対する補助金等の支出額は、表1のとおり、計1億7166万余円となっており、17年度末時点の基金残高は、1億6557万余円となっている。
表1 年度別基金管理及び補助金等支出の状況
(単位:千円)
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年度
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運用益
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戻入額
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補助金等支出額
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年度末基金残高
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||||
食肉流通施設改善事業
|
輸入牛肉安定供給推進事業
|
食肉給食普及促進事業
|
食肉供給安定確保緊急対策事業
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計
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||||
14
|
—
|
—
|
70,004
|
15,291
|
2,992
|
—
|
88,288
|
240,002
|
15
|
0
|
—
|
26,711
|
10,059
|
2,514
|
—
|
39,284
|
200,718
|
16
|
72
|
8,800
|
—
|
7,850
|
9,378
|
2,684
|
19,913
|
189,676
|
17
|
77
|
—
|
—
|
9,732
|
3,217
|
11,231
|
24,181
|
165,572
|
計
|
/
|
/
|
96,715
|
42,933
|
18,103
|
13,915
|
171,668
|
/
|
牛肉の輸入自由化から10年以上が経過し、輸入牛肉は国民生活の中に定着してきている。また、牛海綿状脳症(以下「BSE」という。)の発生等を契機とした消費者の食品に対する安全・安心志向の高まりなどにより学校給食を取り巻く環境も大きく変化してきている。そして、17年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、食料自給率の向上等のため、学校給食も活用した「食育」や、地元農産物の生産振興及び消費拡大を図る「地産地消」の推進等が重点施策とされている。
このような状況の中で、有効性等の観点から、学校給食用輸入牛肉を安定的に供給し、学校給食の安定と改善を図ることを目的に実施されている本事業が環境の変化を踏まえつつ適切に実施されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、輸入自由化が学校給食に与えた影響について、輸入自由化後の輸入牛肉の価格の推移を調査するとともに、事業主体から補助金等の交付を受けた財団法人北海道給食会ほか42給食会(注1)
における輸入牛肉の取扱状況、基金事業の実施状況等について、実績報告書と調査票の分析等により検査を実施した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
元年度以降の輸入牛肉の国内市場における卸売価格については、図1のとおり、3年の輸入自由化当初において高率の関税が賦課されたものの、輸入量が増大したこと、円高が進展したこと、漸次、関税率が引き下げられたことなどから輸入自由化以前と比較すると低価で推移している。そして、給食会では、給食会の連合体組織である全国学校給食会連合会が輸入し、スライスなどの製品に加工させた牛肉を学校給食用輸入牛肉として供給を受けているが、その価格は、図2のとおり、輸入自由化以前よりも低価で推移している。
図1 輸入牛肉の卸売価格の推移
(単位:円/kg、%)
図2 給食会に供給された輸入牛肉の価格の推移
(単位:円/kg)
このように、輸入牛肉の価格は自由化以前と比較すると低価で推移している状況であり、懸念された牛肉の輸入自由化に伴う学校給食の輸入牛肉の価格の高騰は生じていない。
給食会では、給食実施校からの発注に応じ、給食用物資を給食実施校に供給している。11年度から16年度までの給食会における給食用物資の取扱状況は、次のとおりとなっていた。
ア 給食会への輸入牛肉の供給量について
43給食会への輸入牛肉の供給量の推移についてみると、図3のとおり、輸入自由化以降大幅に減少しており、特に、13年度以降においては、輸入自由化以前と比較すると供給量が4分の1以下に減少している。これは、13年度に国内でBSEが発生したため牛肉に対する不安感が高まり、多くの給食実施校で輸入牛肉の使用を停止し、現在も使用を自粛している給食実施校があることなどによる。そして、牛肉の消費が回復してきた15年度には、米国及びカナダでBSEが発生したため、米国産及びカナダ産の牛肉が輸入停止になったことなどから、16年度は、輸入牛肉の供給量は約410tにまで落ち込む状況となっていた。
図3 給食会への輸入牛肉の供給量の推移
(単位:t)
イ 給食会から給食実施校への給食用物資の供給状況について
11年度から16年度までの43給食会から給食実施校へ供給された輸入牛肉の供給量の推移をみると、図4のとおり、12年度の842tを最高に16年度には294tと65%減少していた。さらに、輸入牛肉の取扱額についてみると、表2のとおり、16年度には4億0239万余円で、取扱額が最大であった12年度の7億4318万余円と比較すると45.9%減少していた。また、給食会が供給した給食用物資の取扱額に占める輸入牛肉の割合は、11年度から16年度において0.4%から0.7%と著しく低い状況となっていた。
一方で、43給食会のうち財団法人北海道給食会ほか28給食会(注2)
では、輸入牛肉のほか国産牛肉、豚肉、鶏肉等(以下「その他の食肉」という。)についても給食実施校へ供給しているが、輸入牛肉とは逆に、11年度以降の供給量は増加傾向にあり、15年度から輸入牛肉の供給量を上回る状況となっていた。同様に、取扱額についても、16年度の取扱額8億1520万余円は11年度の6億1333万余円と比較すると32.9%増加していた。
このような状況は、国内外のBSEの影響等により、学校給食用食肉については、輸入牛肉に替えてその他の食肉の供給量を増加させていることを示している。
図4 給食会から給食実施校への輸入牛肉及びその他の食肉の供給量の推移 (単位:t)
表2 給食会の給食用物資の取扱状況
(単位:千円、%)
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年度
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輸入牛肉
|
その他の食肉
|
基本物資等
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計
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|||
取扱額
|
割合
|
取扱額
|
割合
|
取扱額
|
割合
|
||
11
|
648,329
|
0.6
|
613,339
|
0.6
|
102,708,021
|
98.8
|
103,969,689
|
12
|
743,182
|
0.7
|
762,880
|
0.8
|
99,274,477
|
98.5
|
100,780,539
|
13
|
425,815
|
0.4
|
704,640
|
0.7
|
99,825,523
|
98.9
|
100,955,979
|
14
|
378,245
|
0.4
|
763,305
|
0.8
|
98,245,523
|
98.9
|
99,387,074
|
15
|
414,882
|
0.4
|
824,726
|
0.8
|
98,287,788
|
98.8
|
99,527,397
|
16
|
402,394
|
0.4
|
815,204
|
0.9
|
94,621,300
|
98.7
|
95,838,899
|
11年度と16年度の増減
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△245,934
(△37.9)
|
/
|
201,864
(32.9)
|
/
|
△8,086,720
(△7.9)
|
/
|
△8,130,790
(△7.8)
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基本物資等とは、主として米、パン、加工食品等である。
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割合については四捨五入しているため、合計が100とならないものもある。
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以上のように、本事業により学校給食への安定的な供給を図ることとしている輸入牛肉は供給量が減少しており、給食用物資全体の供給量に占める割合も著しく低くなっている。
基金事業の実施状況について検査したところ、14年度以降、すべての事業が輸入牛肉の使用を前提に実施されていた。
しかし、前記(1)及び(2)のとおり、輸入自由化以降に輸入牛肉の価格の高騰は生じておらず、給食会における給食用物資全体の供給量に占める輸入牛肉の割合が著しく低くなっていることから、輸入牛肉の価格高騰により学校給食の安定と改善に著しい影響を及ぼす可能性は、ほとんどない状況となっている。
特に、補助金等の支出総額の過半を占める食肉流通施設改善事業の実施状況について検査したところ、同事業により整備した冷凍車等による物資輸送実績を有していた財団法人岩手県給食会ほか19給食会(注3)
のうち、11年度から16年度において、給食用物資輸送量に対する輸入牛肉の占める割合が最も高い県給食会でも年度別にみると最高の率は11年度の3.4%と著しく低くなっていた。
以上のとおり、輸入牛肉の使用を条件として実施されている本事業は、輸入自由化への対応策としての役割を既に終え、学校給食用輸入牛肉を安定的に供給し、学校給食の安定と改善を図ることを目的とする本事業は、学校給食を取り巻く環境が変化した現状では事業の終了を含めた抜本的な見直しを行う要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、農林水産省において、学校給食を取り巻く環境の変化を踏まえた事業の見直しの検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、本事業を17年度末をもって終了することとし、18年5月に機構に対して基金の閉鎖を要請する旨の通知を発した。この要請に基づき、機構では、同年同月に要綱を廃止して基金を閉鎖し、基金の残額1億6560万余円を改善協会から機構に返還させた。
財団法人北海道給食会ほか42給食会 東京都給食会、北海道給食会、京都府給食会、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県給食会、兵庫県体育協会の各財団法人
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財団法人北海道給食会ほか28給食会 北海道給食会、京都府給食会、青森、岩手、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、富山、石川、長野、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島各県給食会、兵庫県体育協会の各財団法人
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財団法人岩手県給食会ほか19給食会 岩手、秋田、福島、茨城、栃木、千葉、長野、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎、沖縄各県給食会、兵庫県体育協会の各財団法人
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