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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

地籍簿の数値情報化経費の積算に当たり、既存の電磁的記録を利用することにより、経費の低減を図るよう改善させたもの


(1)地籍簿の数値情報化経費の積算に当たり、既存の電磁的記録を利用することにより、経費の低減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)国土調査費
部局等の名称
国土交通本省
北海道ほか18都県
国庫負担の根拠
国土調査法(昭和26年法律第180号)
補助事業者
北海道ほか18都県
間接補助事業者
(事業主体)
市46、町31、村6、計83事業主体
国庫負担対象事業
地籍簿等の数値情報化
国庫負担対象事業の概要
地籍調査後の土地の異動等について継続的に補正するなどのため、地籍簿等の情報を電磁的に記録するもの
事業費
163件 9億1874万余円
(平成15年度〜17年度)
上記に対する国庫負担金交付額
4億5937万余円
 
数値情報化経費の積算額
7億7341万余円
(平成15年度〜17年度)
上記に対する国庫負担金相当額
3億8670万余円
 
低減できた積算額
1億1390万円
(平成15年度〜17年度)
上記に対する国庫負担金相当額
5690万円
 

1 事業の概要

(1)数値情報化事業の概要

 国土交通省では、国土調査法(昭和26年法律第180号)等に基づき、地籍簿等の数値情報化事業を実施する市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対し、都道府県を通じて、毎年度多額の国庫負担金(事業費の2分の1)を交付している。
 この数値情報化事業は、市町村が実施した地籍調査(注1) 終了後の土地の異動等について、電磁的記録を用いて継続的に補正を行うなどのため、地籍調査で作成した地籍簿等について、地籍簿等に記載されている土地の所有者等の情報や境界点等の情報を電磁化し、所定のフォーマットに変換するなどして磁気記録媒体に記録するもので、平成14年度から実施されている。そして、市町村は、この数値情報化作業を専門の業者に請け負わせるなどして実施している。

 地籍調査 国土調査法に基づき、市町村等が地籍の明確化を図るなどのため、一筆ごとの土地について、その所有者等の調査及び境界等に関する測量を行い、その結果に基づき地籍簿等を作成するもので、この地籍調査を実施する市町村等に対して、国は国庫負担金を交付している。


(2)数値情報化事業の実施経費の積算

 数値情報化事業の実施経費は、国土交通省土地・水資源局制定の「地籍調査費算定要領」等(以下「算定要領」という。)に基づき、数値情報化作業に係る直接経費、打合せ経費等を合算した経費(以下「数値情報化経費」という。)の額に、消費税相当額を加えて積算することとされている。
 このうち、直接経費の積算は、土地一筆当たりの単価(以下「単価」という。)に筆数を乗ずるなどして行うこととされている。単価は、地籍簿等の情報が簿冊等の紙媒体に記録されているアナログ形式のものと、当該情報が電磁的に記録されているデジタル形式のものとで異なり、アナログ形式ではコンピュータに入力する作業が必要である一方、デジタル形式では地籍簿等の既存の電磁的記録を利用できることから、アナログ形式の単価に比べてデジタル形式の単価の方が安価となっている。

(3)地籍簿以外の既存の電磁的記録

 市町村の税務担当部門では、地方税法(昭和25年法律第226号)に基づき、土地等の固定資産の状況等を明らかにするため、所有者等の情報を固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録している。この課税台帳は、大半の市町村において、課税業務を効率的に実施するなどのためコンピュータ化されており、電磁的記録により情報を登録している。また、一部の市町村の地籍調査担当部門においては、土地行政に利活用するため、独自に土地の所有者等の情報を電磁的に記録しており、これを地籍簿の補助簿等として保有している。
 そして、これらの課税台帳等の電磁的記録には、地籍簿の数値情報化に必要な土地情報の大部分が含まれている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 上記のとおり、課税台帳等の電磁的記録には地籍簿の数値情報化に必要な土地情報の大部分が含まれている。そして、数値情報化作業に係る直接経費の単価は、アナログ形式に比べデジタル形式の方が安価となっている。
 そこで、経済性・効率性等の観点から、地籍簿の数値情報化作業に係る直接経費の積算に当たり、課税台帳等の既存の電磁的記録が十分に利用されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 北海道ほか23都府県(注2) の221市町村が15年度から17年度において実施した数値情報化事業に係る契約723件、事業費44億5298万余円(国庫負担金22億2649万余円)のうち、数値情報化経費に係る積算額12億0122万余円(国庫負担金相当額6億0061万余円)を対象として検査を実施した。
 検査に当たっては、検査の対象とした事業主体において、契約書、特記仕様書等に基づき、数値情報化作業の内容、地籍簿等の貸与の状況等について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、北海道ほか18都県(注3) の83市町村が実施した契約163件、事業費9億1874万余円(国庫負担金4億5937万余円)のうち、数値情報化経費に係る積算額7億7341万余円(国庫負担金相当額3億8670万余円)において、次のような事態が見受けられた(〔1〕、〔2〕の事態には、事業主体が重複しているものがある。)。

〔1〕 課税台帳等に電磁的に記録された情報を電子媒体で請負業者等に貸与していたことから、地籍簿の数値情報化作業に係る直接経費を安価なデジタル形式の単価で積算するべきであったのに、アナログ形式で積算していたもの

北海道ほか9県22市町 契約数32件
 
数値情報化経費に係る積算額
2億5553万余円
 
国庫負担金相当額
1億2776万余円


 これらの事業主体は、個人情報の保護等を行った上で、課税台帳等の電磁的記録から地籍簿の数値情報化に必要な情報を抽出し、地籍簿に代えて、これを請負業者等に電子媒体で貸与していた。そして、上記の各事業主体では、地籍簿が簿冊等の紙媒体であったことから、アナログ形式の単価を適用して数値情報化経費を計2億5553万余円と積算していた。
 しかし、事業主体において請負業者等に貸与した課税台帳等の電磁的記録には、地籍簿の数値情報化に必要な土地情報の大部分が含まれていた。
 したがって、事業主体において、請負業者等がこれらの電磁的記録に基づいた作業を行うこととしてデジタル形式の単価により積算するべきであった。

〔2〕 課税台帳等に電磁的に記録された情報を電子媒体で請負業者等に貸与することにより、地籍簿の数値情報化作業に係る直接経費を安価なデジタル形式の単価で積算することが可能であったのに、アナログ形式で積算していたもの

北海道ほか18都県64市町村 契約数131件
 
数値情報化経費に係る積算額
5億1787万余円
 
国庫負担金相当額
2億5893万余円



 これらの事業主体は、地籍簿の数値情報化に必要な情報として、紙媒体の地籍簿や、既に電磁的に記録されている課税台帳の情報を個人情報の保護等を行った上で紙に印字したものなどを請負業者等に貸与していた。このことから、上記の各事業主体では、アナログ形式の単価を適用して数値情報化経費を計5億1787万余円と積算していた。
 しかし、上記各事業主体の保有する課税台帳等は既に電磁的に記録されており、事業主体において、この課税台帳等から地籍簿の数値情報化に必要な情報を抽出して電子媒体で請負業者等に貸与することにより、請負業者等がこれらの電磁的記録に基づいた作業を行うこととしてデジタル形式の単価により積算することが可能であった。
 したがって、地籍簿の数値情報化作業に係る直接経費の積算に当たり、上記のとおり、課税台帳等の既存の電磁的記録を電子媒体で請負業者等に貸与していたり、貸与することが可能であったりしていることから、安価なデジタル形式の単価で積算することが可能であったのに、アナログ形式の単価を適用して積算している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記のことから、前記の163件における数値情報化経費をデジタル形式の単価により積算することとして修正計算すると6億5941万余円となり、積算額7億7341万余円を約1億1390万円(国庫負担金相当額約5690万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 各事業主体において、課税台帳等の既存の電磁的記録が数値情報化に利用可能な場合には、その作業内容は、地籍簿がデジタル形式である場合の作業内容とほぼ同様であるのに、その認識が十分でなかったこと
イ 国土交通省において、算定要領に、課税台帳等の既存の電磁的記録が利用可能な場合には、地籍簿の数値情報化作業に係る直接経費を安価なデジタル形式の単価で積算できることについて明示していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、18年9月に各都道府県に対し通知を発し、数値情報化経費の積算が経済的に行われるよう次のような処置を講じた。
ア 地籍簿の数値情報化に利用可能な既存の電磁的記録がある場合には、関係部署と調整し、個人情報保護等に留意の上、その電磁的記録を利用するよう事業主体に対して周知徹底を図った。
イ 算定要領において、数値情報化作業を上記アにより実施する場合は、デジタル形式の単価を適用して積算することを明示した。

 北海道ほか23都府県 東京都、北海道、大阪府、岩手、宮城、秋田、栃木、群馬、千葉、新潟、富山、福井、愛知、兵庫、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、福岡、熊本、大分、鹿児島各県
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