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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

除雪工事において使用する凍結防止剤の購入費の積算を市場価格調査を行うなどして適切なものとするよう改善させたもの


(4)除雪工事において使用する凍結防止剤の購入費の積算を市場価格調査を行うなどして適切なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目
道路整備特別会計
(項)道路事業費
(項)北海道道路事業費
部局等の名称
北海道ほか7県
補助の根拠
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(昭和31年法律第72号)
補助事業者
(事業主体)
北海道ほか7県
補助事業の概要
除雪工事で使用する凍結防止剤を購入するもの
事業費
11億1406万余円
(平成16、17両年度)
上記に対する国庫補助金交付額
4億9907万余円
 
国庫補助対象とした凍結防止剤購入費の積算額
9億4354万余円
(平成16、17両年度)
低減できた凍結防止剤購入費の積算額
1億9790万円
(平成16、17両年度)
上記に対する国庫補助金相当額
1億3190万円
 

1 事業の概要

(1)除雪事業の概要

 国土交通省では、積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(昭和31年法律第72号)に基づき、積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域における道路の交通を確保することを目的として、除雪事業を実施しており、その一環として、一般国道及び地方道の除雪事業を行う地方公共団体に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。そして、除雪事業のうち除雪工事は、管理する道路の冬期間における交通を常時確保するとともに、路面凍結によるスリップ事故等の防止を図るなどのために、道路維持工事として、除雪機械により道路上の雪を排除したり、凍結防止剤を散布したりなどする作業を行うものである。
 そして、北海道ほか7県(注1) (以下「8道県」という。)では、除雪工事とは別途の契約により凍結防止剤を購入しており、平成16、17両年度に、凍結防止剤の購入契約を計139契約(購入額計11億1406万余円(国庫補助金計4億9907万余円))締結し、除雪基地等に納入させている。これらの契約により購入した凍結防止剤は、除雪工事の際に必要の都度、除雪工事業者に支給されている。

(2)凍結防止剤の種類

 凍結防止剤には、塩化ナトリウム(以下「塩」という。)、塩と塩化マグネシウムの混合物、塩化カルシウム、塩と塩化カルシウムの混合物等の種類がある。そして、除雪工事では、これらの凍結防止剤の中から、地域性、路面状況等を勘案して使用している。

(3)凍結防止剤の購入費の積算

 8道県では、前記の139契約において、凍結防止剤の購入費の積算に当たり、地域、規格別の1kg当たりの単価を、塩は15.0円から42.0円(国庫補助対象数量計29,585,646.8kg)、塩と塩化マグネシウムの混合物は25.0円から36.0円(同1,339,649.3kg)、塩化カルシウムは31.0円から44.0円(同3,997,347.4kg)、塩と塩化カルシウムの混合物は30.0円から36.0円(同571,023.5kg)と決定し、各単価にそれぞれの使用数量を乗ずるなどして、国庫補助対象とした凍結防止剤の購入費の積算額を計9億4354万余円と算定している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 除雪工事に使用する凍結防止剤として、塩が凍結防止効果の持続性が高いことや経済性に優れていることなどから、塩や塩の混合物が多く使用されている。
 塩事業法(平成8年法律第39号)により、14年度から、塩の取引が完全自由化されたことなどから、凍結防止剤として使用する塩についても、多数の業者が市場に参入したり、安価な輸入塩が流通したりすることなどによって、価格の低下が期待できる状況となってきている。
 そこで、14年度の塩の取引の完全自由化から数年経過したことなどから、経済性・効率性等の観点から、前記の8道県が締結した139契約における凍結防止剤の購入費の積算について、凍結防止剤の単価が市場の実勢を反映したものとなっているかに着眼して、予定価格の内訳書等により検査を実施した。

(検査の結果)

 8道県では、本件凍結防止剤の単価の決定に当たり、一般の物品購入等と同様に、それぞれの財務規則等に基づいて、複数の業者からの見積りにより決定していた(以下、見積りにより決定した単価を「見積単価」という。)。
 一方、国土交通省の各地方整備局及び北海道開発局(以下「地方整備局等」という。)では、8道県と同様に除雪工事とは別途の契約により凍結防止剤を購入しているが、凍結防止剤は道路維持工事に使用するものであることから、その単価については、同省制定の土木工事標準積算基準書に基づき、市場における実際の取引価格(以下「市場価格」という。)を、種類、地域等ごとにより的確に把握するため、特別調査(注2) を行って決定していた(以下、特別調査を行って決定した単価を「特別調査単価」という。)。
 そして、8道県が使用している凍結防止剤の純度、粒径等の仕様については、地方整備局等が同一の地域において使用しているものと同水準になっており、その期待する凍結防止効果についても違いがなかった。そこで、本件凍結防止剤の見積単価と、地方整備局等の特別調査単価を、種類、地域等ごとに比較したところ、1kg当たりの特別調査単価は、塩で13.0円から26.0円、塩と塩化マグネシウムの混合物で22.0円から27.0円、塩化カルシウムで30.0円から37.0円、塩と塩化カルシウムの混合物で23.0円から27.0円となっており、特別調査単価の方が見積単価より安価となっていた。
 このように特別調査単価の方が見積単価より安価になるのは、物価調査機関では、凍結防止剤の特別調査に当たり、専門業者等に見積りの提出を依頼し、これに加えてヒアリング調査等を行って収集したデータの分析をするなどして市場価格を把握するとしていることによると思料された。
 以上のことから、凍結防止剤の単価については、見積りにより決定するよりも、特別調査を行って決定した方がより市場の実勢を反映した経済的なものになると認められた。

(低減できた凍結防止剤の購入費の積算額)

 上記のことから、本件凍結防止剤の購入費について、同一の種類、地域等における地方整備局等の特別調査単価により修正計算すると、計7億4561万余円となり、前記の積算額9億4354万余円を約1億9790万円(国庫補助金相当額約1億3190万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、凍結防止剤の単価の決定に当たり、地方整備局等では市場価格をより的確に把握するために特別調査を行っているのに、8道県においては、業者からの見積りによっていて、市場価格の把握、検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、8道県では、18年6月以降、除雪工事に使用する凍結防止剤の単価の決定に当たり、市場価格をより的確に把握するために特別調査を行うこととする旨の通知を順次発し、各道県内の関係各機関に対して特別調査の活用等を周知することにより、凍結防止剤の購入費の積算が適切に行われるよう処置を講じた。
 また、国土交通省では、18年9月、除雪工事を実施している道府県等に対し、同省では凍結防止剤の購入費の単価の決定に当たり、市場価格をより的確に把握するために特別調査を行っていることを周知した。

 北海道ほか7県 北海道、青森、福島、石川、福井、長野、滋賀、兵庫各県
 特別調査 材料単価の決定に当たり、物価調査機関に特定の品目を指定して市場価格の調査をさせるものをいう。