会計名及び科目
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空港整備特別会計
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(項)空港整備事業費
(項)北海道空港整備事業費
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部局等の名称
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東京、大阪両航空局、近畿地方整備局、北海道開発局札幌、釧路両開発建設部
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工事名
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新千歳空港滑走路北側改良工事ほか15件
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工事の概要
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滑走路及び誘導路のアスファルト舗装を補修するもの並びに舗装内に埋設している管路等を撤去し新たに設置するもの
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工事費
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30億7020万円
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(平成14年度〜17年度)
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契約
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平成15年3月〜17年10月 公募型指名競争契約、指名競争契約
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節減できると見込まれる工事費
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1億0790万円
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国土交通省では、設置及び管理している空港のうちジェット機の定期便が就航している東京国際空港ほか19空港(注1)
において、航空機の航行を援助するための各種航空灯火を設置している。
これらの航空灯火の設置及び管理は、東京、大阪両航空局(以下「地方航空局」という。)が所掌しており、滑走路の滑走路中心線灯及び接地帯灯、誘導路の誘導路中心線灯の設置に当たっては、航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)等に基づき、航空機の離着陸等に支障のないよう滑走路及び誘導路の舗装内に埋め込む構造とされている。そして、上記の滑走路中心線灯等は、灯器、基台、電力ケーブル、電力ケーブルを収容するための管路(以下、基台、電力ケーブル及び管路を合わせて「管路等」という。)等から構成されている(参考図参照)
。
一方、滑走路及び誘導路のアスファルト舗装については、地方整備局、北海道開発局開発建設部、沖縄総合事務局(以下、これらを合わせて「地方整備局等」という。)等が所掌して、航空機の離着陸等に伴う損傷、経年劣化等に対処するための工事(以下「補修工事」という。)が実施されている。この補修工事の工法については、「空港舗装補修要領(案)」(平成11年運輸省航空局制定。以下「補修要領」という。)に基づき、既設のアスファルト舗装の破損の種類(わだちぼれ、ひび割れなど)やその程度により、空港の運用時間等による制約、経済性、将来計画等も考慮して、オーバーレイ工法(既設舗装上に新しい層を打ち足す工法)、切削・打換え工法(既設舗装の一部を切削し、その部分を再度舗装する工法)等のうちから総合的に判断して決定することとされている。
滑走路及び誘導路の補修工事においては、従来、オーバーレイ工法を採用することが一般的となっていた。しかし、平成12年7月に名古屋空港において、ブリスタリング現象(注2)
の発生によりアスファルト舗装の一部が剥離したために滑走路が使用できない事態が発生し、更に新千歳空港等においても同現象の発生と思われる状況が確認されたことから、13年度以降、補修要領に記載はないものの、オーバーレイ工法がその発生の一因とされていることを考慮するなどして切削・打換え工法を用いた補修工事が増加している状況となっていた。
そして、補修工事で切削・打換え工法を用いる場合は、既設のアスファルト舗装の切削が行われ、その切削深さについては舗装の破損の種類やその程度により決定される。そのため、アスファルト舗装内に埋設されている管路等が切削作業に支障を来す場合があり、その場合には、既設の管路等を撤去し、新たに設置する工事(以下、これらを合わせて「撤去・再設置工事」という。)が実施される。
滑走路及び誘導路の補修工事に当たっては、切削深さより管路等が十分深い位置に埋設されていれば撤去・再設置工事は実施する必要のないものであり、管路等は補修工事の実施に伴い撤去されなければ長期間使用できるものである。
そこで、経済性・効率性等の観点から、撤去・再設置工事の設計において管路等の埋設位置が、既設舗装の切削深さに対して適切なものとなっているかに着眼して検査した。
検査に当たっては、管路等の撤去・再設置工事が切削・打換え工法を用いる補修工事の実施に伴い必要となる工事であることから、航空灯火に係る電気設備工事を実施している地方航空局と補修工事を実施している地方整備局等の双方に赴き、それぞれの設計書、図面等の提出を受け、管路等の埋設深さと補修工事における切削深さの考え方を聴取するなどして、それぞれの工事の実施状況を検査した。
14年度から17年度までの間に、関東地方整備局ほか7地方整備局等(注3) が東京国際空港ほか9空港(注4) で実施した滑走路及び誘導路の補修工事42件、契約額98億8823万余円及びこれらの工事の実施に伴い地方航空局が実施した航空灯火に係る電気設備工事34件、契約額16億6121万余円を対象に検査した。
検査したところ、滑走路及び誘導路の補修工事、管路等の撤去・再設置工事の実施状況は、次のような状況となっていた。
すなわち、上記の補修工事42件のうち、切削・打換え工法を用いた補修工事は、29件と多数を占めていた。このうち15件の工事では、管路等が切削作業の支障となることから、撤去・再設置工事が必要となり、地方航空局及び地方整備局等(地方整備局等では、補修工事を実施する際に管路の撤去工事を合わせて施工するなど、地方航空局と分担して撤去・再設置工事の一部を実施する場合がある。)において実施されていた。
そして、大阪国際空港ほか2空港(注5)
で実施した補修工事9件に伴う撤去・再設置工事についてみると、再設置した管路等は、埋設深さに関する特段の定めがなかったことから、基層下面直下に設置することなどとして、補修工事の切削深さと同程度の深さ又は浅い位置に埋設されていた。この撤去・再設置工事は、地方航空局及び3地方整備局等(注6)
が実施した航空灯火に係る電気設備工事及び補修工事(16件、契約額30億7020万余円)において、工事費相当額1億4287万余円で実施されていた。
このため、将来、今回と同程度の切削深さが必要となる補修工事が実施される際には、上記補修工事9件に伴い再設置した管路等が切削作業に支障を生じ、再び撤去・再設置工事を実施する必要が生じることとなる。
したがって、管路等の埋設深さについては、切削・打換え工法を用いる補修工事に対応した設計とするよう改善を図る必要があると認められた。
上記のことから、航空灯火に係る電気設備工事及び補修工事16件において、切削作業の支障とならない深さに管路等を設置していたとすれば、次回の切削・打換え工法を用いる補修工事において、管路等を撤去・再設置するための工事費相当額約1億4280万円が不要となり、本件工事で深く埋設することにより工事費相当額約3490万円が必要となるものの、差引き約1億0790万円が節減できると見込まれる。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 地方航空局等において、補修要領にブリスタリング現象についての記載がなかったため、同現象により切削・打換え工法を用いる補修工事が今後も引き続き実施されると見込まれることについて十分把握していなかったこと
イ 国土交通省において、管路等の埋設深さに関する特段の定めがなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省では、18年9月に、管路等の埋設深さを切削・打換え工法を用いる補修工事に対応した適切かつ経済的な設計とするよう、次のような処置を講じた。
ア 補修要領において、ブリスタリング現象に関する調査方法を示すなどの改定を行うとともに、補修工事の計画及び施工時に、管路等の埋設深さについて地方航空局と十分な調整を図るよう地方整備局等に対し通知文書を発した。
イ 管路等の埋設深さについては、切削・打換え工法を用いる補修工事に対応した設置位置とするよう地方航空局に対し通知文書を発した。
(注1) | 東京国際空港ほか19空港 東京国際、大阪国際、新千歳、稚内、釧路、函館、仙台、新潟、広島、高松、松山、高知、福岡、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇各空港
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(注2) | ブリスタリング現象 オーバーレイ工法により施工した場合等において、既設のアスファルト舗装面と新設した舗装面との間に付着していた水分が、蒸発する際に舗装内で膨張し表層を押し上げるなどして空隙が発生する現象
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(注3) | 関東地方整備局ほか7地方整備局等 関東、近畿、中国、九州各地方整備局、北海道開発局札幌、釧路両開発建設部、沖縄総合事務局及び東京航空局
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(注4) | 東京国際空港ほか9空港 東京国際、大阪国際、新千歳、釧路、広島、福岡、熊本、大分、宮崎、那覇各空港
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(注5) | 大阪国際空港ほか2空港 大阪国際、新千歳、釧路各空港
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(注6) | 地方航空局及び3地方整備局等 東京、大阪両航空局、近畿地方整備局、北海道開発局札幌、釧路両開発建設部
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管路等の概念図