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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 住宅金融公庫|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

貸付金債権の償却に当たり、任意売却された建築物に付されている特約火災保険を解約し、解約返還保険料を残債権に充当するよう改善させたもの


貸付金債権の償却に当たり、任意売却された建築物に付されている特約火災保険を解約し、解約返還保険料を残債権に充当するよう改善させたもの

科目
(貸付金)個人住宅貸付等
部局等の名称
住宅金融公庫
貸付けの根拠
住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)
特約火災保険の概要
貸付金債権を保全確保するため、債務者等に対し、貸付金に係る建築物について付させる住宅金融公庫融資住宅等火災保険特約に基づく火災保険等
貸付金償却申請債権の件数及び未回収元金
5,081件、
370億4165万余円
(平成17年度)
上記のうち特約火災保険を解約し解約返還保険料を残債権に充当できた件数及び金額
961件、
6800万円
 

1 制度の概要

(1)特約火災保険

 住宅金融公庫(以下「公庫」という。)では、住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)に基づき、個人や事業者に対し、住宅の建設及び購入に必要な資金の貸付け等の業務を行っている。公庫では、貸付けを行うに当たり、住宅金融公庫業務方法書(昭和40年住公規程第19号)等に基づき、公庫から資金の貸付けを受けた者(以下「債務者」という。)等に対し、原則として、貸付金に係る建築物又は土地について、公庫を第1順位とする抵当権を設定させるとともに、貸付金に係る建築物について、貸付金の償還が完了するまでの期間中火災保険を付させ、その保険金請求権の上に公庫のために第1順位の質権を設定させることとしている。
 この火災保険について、公庫では、原則として公庫が火災保険会社との間に締結した住宅金融公庫融資住宅等火災保険特約に基づく火災保険を付させることとしている。また、火災保険の契約者である債務者等から、公庫が火災保険会社との間に締結した住宅金融公庫融資住宅等地震保険特約に基づく地震保険を付帯する旨の申し出があったときは、当該地震保険を付させることとしている(以下、上記の特約に基づく火災保険及び地震保険を併せて「特約火災保険」という。)。
 そして、債務者等は、特約火災保険の保険期間(最長36年)に応じた保険料を、特約火災保険契約の締結時に一括するなどして支払うこととなっている。

(2)解約返還保険料

 上記の特約によると、保険契約者は、保険金請求権に質権が設定されているときは、質権者の書面による同意を得た後でなければ保険契約の解除手続を行えないこととなっている。そして、保険契約を解除したときは、火災保険会社は保険契約者が支払った保険料のうち、特約火災保険の未経過期間に応じた未経過料率等により算出される保険料(以下「解約返還保険料」という。)を保険契約者に返還することとなっている。

(3)延滞債権の処理

 公庫では個人に対する貸付けを行うに当たり、平成17年3月までに申込みがあったものについては、連帯保証人があることを条件としていた。そして、公庫が保有する個人に対する貸付金債権のほとんどは、財団法人公庫住宅融資保証協会(以下「保証協会」という。)の保証した債権(以下「協会保証の債権」という。)となっている。
 公庫では、協会保証の債権の回収に当たり、割賦金の延滞が継続するなどして、その回収が困難とされるときには、保証協会に対し保証債務の履行を請求し、弁済を受ける(以下、この弁済を「代位弁済」という。)こととなっている。しかし、近年になって、公庫では、延滞債権の増加等に伴い、債務者等の任意による担保物件の売却(以下「任意売却」という。)を債務者の立ち直りを促すための支援策の一つと位置付けるとともに、不良債権の削減や回収の極大化を図るため、協会保証の債権についても公庫において任意売却を促進してきている。そして、任意売却による回収によっても債権が残存した場合に保証協会から代位弁済を受けていた。

(4)協会保証の債権の償却

 19年4月に独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)が公庫の既往の債権を引き継いで設立される際に、保証協会も主務大臣の認可を得て権利及び義務を機構に承継して解散することとされている。このことなどから、公庫では、17年度から、協会保証の債権について、任意売却により一部を弁済しその余について公庫の定める一定の基準に該当し回収できないと認められる場合には、保証協会に対して代位弁済を請求しないこととなった。そして、公庫の各支店等では、上記の回収できないと認められた残債権について本店に償却を申請し(以下、この申請した債権を「貸付金償却申請債権」という。)、本店では、貸付金償却申請債権について審査・認定の上、償却金額を確定し、財務大臣の承認を受けて償却することとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 公庫では、17年度から、協会保証の債権のうち、上記の回収できないと認められた残債権については、保証協会に対して代位弁済を請求せず償却を行うこととなり、今後、公庫における債権の償却金額は多額になるものと見込まれている。そこで、経済性・効率性等の観点から、償却に係る債権の回収が適切に行われているかなどに着眼し、貸付金償却申請債権に係る書類等を徴するなどして検査した。

(検査の対象)

 17年度の貸付金償却申請債権5,081件(これらに係る未回収元金370億4165万余円)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 公庫では、任意売却による回収に当たって、「受託金融機関が行う任意売却手続に係る事務処理等について」(平成17年住公債発第73—1号(管業)債権管理部長通ちょう)に基づき、債務者等から「任意売却に関する申出書」等を提出させている。この申出書等において、債務者等は、当該債務に係る担保物件を売却し、売却代金を返済に充てることなどを申し出るとともに、公庫が債権者代位権を行使して特約火災保険を解約し解約返還保険料を残債務に充当することについても同意している。
 しかし、公庫では、貸付金償却申請債権には特約火災保険が付されており保険期間の終期までに相当な期間を残しながら任意売却による回収に至った物件が多数見受けられるのに、特約火災保険の解約を行っておらず、解約返還保険料を残債権に充当していなかった。
 上記のように、任意売却による回収に当たり、債務者等の破産等により債権者代位権を行使できないなどの場合を除き、特約火災保険を解約すれば、解約返還保険料を残債権に充当できることが見込まれるのに、その解約手続を行っていない事態は適切とは認められず、是正改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、公庫において、協会保証の債権の償却に当たり、特約火災保険を解約し、解約返還保険料を残債権に充当して債権の回収を図ることについての認識が十分でなかったこと、特約火災保険を解約して解約返還保険料を残債権に充当する手続を定めていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公庫では、17年12月に、各支店等に対して、特約火災保険が付されている建築物が任意売却された後に償却を申請する協会保証の債権について、当該特約火災保険の解約手続及び解約返還保険料の回収の取扱いを定めた通ちょうを発し、特約火災保険を解約して解約返還保険料を残債権に充当することとする処置を講じた。
 そして、貸付金償却申請債権のうち債権者代位権を行使した961件について、特約火災保険を解約し、18年2月までに解約返還保険料6800万余円を残債権に充当した。