科目
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一般事務費
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部局等の名称
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日本銀行本店
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契約名
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現物関係機器保守契約
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契約の概要
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各店に設置された銀行券自動鑑査機等の日常保守及び定期保守を行うもの
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契約の相手方
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日本特殊機器株式会社
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契約
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平成15年4月
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随意契約
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平成16年4月
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随意契約
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平成17年4月
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随意契約
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保守料の支払額
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46億1008万余円
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(平成15〜17年度)
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節減できた保守料
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7280万円
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(平成15〜17年度)
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日本銀行では、日本銀行法(平成9年法律第89号)の規定に基づき銀行券(以下「日本銀行券」という。)を発行している。そして、本店及び全国の32支店(以下「各店」という。)において、取引先金融機関との間で日本銀行券の受入れ・支払を行い、受け入れた日本銀行券の真偽の鑑定、枚数の確認、汚損の度合い等再流通可能性の判別などを行う鑑査業務を行っている。
日本銀行では、鑑査業務を確実かつ効率的に行うため、鑑査機や排除券処理機等から構成される自動鑑査機、銀行券裁断片処理設備、銀行券裁断機等(以下「自動鑑査機等」という。)を各店に設置している。
このうち、鑑査機は日本銀行券の真偽等を鑑定する主要な機器であり、日本銀行では、各店が取り扱う日本銀行券の数量に応じた台数を設置した上で償却期間が終了した鑑査機を新規製作等により更新したり、偽札の検知能力向上や新様式の日本銀行券に対応するための改造作業を実施したりしている。
ア 保守作業の概要
日本銀行では、本店の戸田分館を除く各店に設置した自動鑑査機等の保守作業を行うに当たり、現物関係機器保守契約(以下「保守契約」という。)を保守対象機器の技術の特殊性から毎年度随意契約で日本特殊機器株式会社(以下「日本特殊機器」という。)と締結しており、平成12年度以降各店に保守員を常駐させ、日常保守及び定期保守を行わせている。
このうち日常保守は、日本特殊機器から派遣された保守員が営業日の8時40分から17時10分までの時間帯(以下「日常保守時間帯」という。)に、主として自動鑑査機の稼動状況を監視するほか、故障を未然に防ぐための調整、清掃、各店の操作担当職員に対する支援等を行うことになっている。
また、定期保守は、保守員が自動鑑査機等を停止させて定期的に保守・点検作業を実施することになっている。各店では、このような定期保守を、原則として自動鑑査機が稼動していない日常保守時間帯以外の時間に行っているが、日常保守時間帯に自動鑑査機を停止させても、受け入れた日本銀行券を支障なく処理することが可能な場合は、その間、定期保守を行うこともある。
そして、日常保守及び定期保守を各店で行う保守員は、17年度において、各店に設置した鑑査機の台数に応じて、本店及び6支店において2名から7名、26支店において各1名、計47名が配置されている。
イ 保守契約の内容
保守契約では、毎月支払う保守料として、保守員1人当たりの月額労務費等に相当する基本料金と、定期保守に係る労務費等に相当する加算金が定められている。
このうち基本料金は、保守員が日常保守時間帯に自動鑑査機等全体の日常保守を行うこととして、保守員の技術レベルごとに定められており、17年度では月額113万余円から126万円となっている。この17年度の基本料金は、16年度において前記のとおり日常保守時間帯に自動鑑査機を停止させて4,950時間定期保守が行われていたことから、17年度も同程度の定期保守が日常保守時間帯に行われると見込んで見直しがなされ、この時間数に見合う額の引下げが行われている。
しかし、保守契約には日常保守の実績に応じて基本料金を減額する条項が定められていないことから、日常保守時間帯に自動鑑査機を停止させて4,950時間以上の定期保守を行ったとしても、基本料金が減額されることはない。
ウ 新規製作した鑑査機の保守
日本銀行では、鑑査機を新規製作するための製作契約を自動鑑査機製作業者(以下「製作業者」という。)と締結しており、この製作契約により、鑑査機納入後1年間は製作業者が無償で当該鑑査機の保守を行うこととなっている。
近年、現金の還流が大都市に集中するなどの事情により、地方都市に立地する支店においては日本銀行券の受入量が減少し、日常保守時間帯に自動鑑査機等を停止させて定期保守を行っても支障がない支店が見受けられるようになった。また、各店では、16年11月に発行を開始した新様式の日本銀行券に対応するため、自動鑑査機を停止させて改造作業を実施している。
そこで、経済性・効率性等の観点から、保守契約が日常保守時間帯における日常保守の作業実績、新規製作鑑査機の製作業者による保守期間等を反映した適切なものとなっているかなどの点に着眼して検査した。
日本銀行が支払った保守料15年度17億5299万余円、16年度14億9281万余円、17年度13億6428万余円、計46億1008万余円を対象として、本店において契約書類、各店の履行状況を示す常駐保守日報、定期点検保守報告書等を精査したり、14支店において自動鑑査機等の保守作業の実態等について職員から聴取したりするなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
31支店では、17年度に保守員が日常保守時間帯に定期保守を行っており、その時間数は、前記の基本料金見直しの際に見込んだ4,950時間を大幅に上回る7,307時間となっていた。
また、26支店では、自動鑑査機が1台しか設置されていないことから、15、16両年度に行われた改造作業等により自動鑑査機が停止している期間に、保守員が主としてこの作業に関連した据付け、試運転等の作業に日常保守時間帯に従事しており、その日数は、15年度103日、16年度299日、計402日となっていた。
3支店では、16年度に鑑査機3台を新規製作により更新しており、日本銀行では当該鑑査機に係る相当額を含めた基本料金全額を支払っていた。しかし、製作契約により製作業者が1年間無償で保守を行うとされていることから、製作業者が日常保守と同一の内容の保守作業を日本特殊機器に委託していた。
このように、保守員が日常保守時間帯に前記の基本料金見直しの際に見込んだ時間数以上定期保守や改造作業等に関連した作業を行っていたり、製作業者による無償保守期間中の鑑査機に係る相当額を含めた基本料金全額を支払っていたりしていた。
したがって、保守契約が日常保守時間帯における日常保守の作業実績や鑑査機の製作業者による無償保守期間を反映していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
保守契約に、日常保守時間帯に保守員が定期保守、改造作業等に関連した作業を行った場合の基本料金の減額条項を定めていたとすると約4190万円、保守契約の対象機器に1年間保守が無償とされた鑑査機が含まれている場合の基本料金を定めていたとすると約3080万円、合計で約7280万円の保守料を節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
ア 保守員が日常保守時間帯に自動鑑査機の定期保守を行っていたり、改造作業等により自動鑑査機が停止している期間に別の作業を行っていたりしているのに、保守契約に作業の実績に応じて基本料金を減額する条項を定めていなかったこと
イ 製作契約により無償保守の対象とされている鑑査機が含まれている場合の基本料金を定めていなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、日本銀行では、次のような処置を講じた。
ア 保守員が日常保守時間帯に定期保守を行った時間数や改造作業等によって自動鑑査機が停止した日数に応じて基本料金を減額する条項を18年4月から適用されている保守契約において定めた。
イ 18年9月に18年度保守契約の確認書を作成し、製作契約により無償保守の対象とされている鑑査機等が日常保守の対象に含まれる場合の基本料金を定めた。