科目
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役務取引等収益
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部局等の名称
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商工組合中央金庫本店ほか84支店
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期限前弁済手数料の概要
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長期固定金利証書貸付を受けた貸付先が貸付金を繰上償還する際に支払うもの
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徴求した期限前弁済手数料の額
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14億3154万余円
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(平成16、17両年度)
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適正に徴求していない期限前弁済手数料の額
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6096万円
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(平成16、17両年度)
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商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)では、商工組合中央金庫法(昭和11年法律第14号)に基づき、中小企業等協同組合その他主として中小規模の事業者を構成員とする団体に対する金融の円滑化を図るため必要な業務を営むことを目的として、これらの団体のうち商工中金に出資を行っている団体又はその構成員等に対し、事業運営に要する運転資金及び設備資金の貸付けを行っている。そして、貸付けの実行額は、平成16年度12兆4862億余円、17年度12兆9231億余円、年度末残高は、16年度9兆5888億余円、17年度9兆4276億余円となっている。
一方、貸付金の回収には、約定償還と繰上償還があり、貸付金の回収額16年度12兆6714億余円、17年度13兆0530億余円のうち繰上償還された額はそれぞれ1987億余円、2395億余円となっている。
商工中金が貸付金の全部又は一部の繰上償還を受けた際、償還を受けた資金を再運用するときの利率が当該貸付金の約定利率を下回っていると、再運用を行っても当該貸付金の貸付時に期待した利益を得ることができず、逸失利益が生じることになる。
そこで、商工中金は、この逸失利益に対応するため、2年11月、「期限前弁済手数料の徴求について」(平成2年61業一融第98号(平成8年66業一融第372号により全部改正)。以下「通ちょう」という。)等により、貸付先から貸付金の繰上償還を受けるときには期限前弁済手数料(以下「手数料」という。)を徴求する制度を設けた。そして、貸付金の全部又は一部を繰上償還しようとする貸付先は、金銭消費貸借契約等により、繰上償還時に手数料を支払うことになっている。
手数料の徴求対象となる貸付金は、原則として長期固定金利証書貸付となっているが、このうち貸付金の原資の一部を地方公共団体からの預託金によっているなどの特性を有するものについては、徴求対象とならない。また、貸付先の状況により繰上償還による回収を必要とするなどの事情がある場合も、手数料の徴求対象とならない。
そして、手数料を徴求すべき貸付金の繰上償還を受ける場合には、通ちょう等に基づき、本店及び国内各支店(以下「本支店」という。)の担当者が繰上償還手数料計算システムを用いて手数料を計算し、手数料徴求に係るりん議書に計算結果等を添付して決裁を経た後に、貸付先から手数料を徴求している。
このようにして徴求した手数料の額は、16年度7億2645万余円、17年度7億0508万余円、計14億3154万余円となっている。
商工中金は、政府系金融機関の一つとして、貸付けや回収等の各業務を通じて収入及び支出の金額の正確性に十分留意し、適正な業務処理を行う必要があり、貸付先から徴求する手数料等についても、適正に徴求することが必要である。
また、近年、長期プライムレートなど市中金利が低水準で推移していることから、金利が高い水準にあったときに貸し付けた貸付金の繰上償還が増加する傾向にあり、徴求する手数料も多額に上っている。
そこで、合規性等の観点から、繰上償還を受けようとする貸付金が手数料徴求の対象であるか否かの確認が適切に行われているか、手数料が通ちょう等に基づき適正に計算されているかなどに着眼して、手数料を徴求した際のりん議書等を検査した。
17年11月から18年3月までの間に、5本支店において、貸付金の繰上償還に伴って徴求した16年度分の手数料について検査したところ、徴求が過大となっていたり、不足していたりしていて、5本支店すべてにおいて手数料が適正に徴求されていない事態が見受けられた。このようなことから、商工中金の全92本支店において、りん議書等が保存されている16年4月から18年3月までの2箇年度分の繰上償還事案に係る手数料の徴求状況を検査した。
検査したところ、85本支店において、次のような事態が見受けられた。
商工中金では、繰上償還を受ける貸付金が手数料の徴求対象となるか否かを判断した上で、徴求対象となると判断した貸付金について、りん議を行うことにしていた。
そして、貸付先の状況等を考慮して徴求しない場合についてもりん議を行うことにしていたが、貸付金の特性により徴求対象とならない貸付金については、それを確認するためのりん議を行うことにしていなかった。
このように徴求対象の確認体制が十分でなかったことなどから、徴求対象となるか否かの判断を誤っていた事態が281口座2711万余円の手数料についてあった。
手数料の計算に当たっては、担当者が、繰上償還手数料計算システムにおいて、計算方式を選択した上で、貸付金に関するデータを入力していたが、計算方式の選択及びデータの入力は、ホストコンピュータに保有している貸付金のデータ(以下「貸付金データ」という。)などを確認しながら行う手作業となっていた。
このように同システムが貸付金データを自動的に読み取る機能を有していなかったことなどから、計算方式の適用を誤っていた事態及び計算要素の入力を誤っていた事態がそれぞれ263口座2941万余円、225口座442万余円の手数料についてあった。
以上のように、手数料の徴求対象の判断を誤っていたり、計算方式の適用又は計算要素の入力を誤っていたりしている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
適正に徴求していなかった手数料を年度別に、過大又は不足の別に示すと、次表のとおりであり、計6096万余円が適正に徴求されていなかったと認められた。
表 適正に徴求していなかった手数料
(単位:口座、千円)
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16年度
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17年度
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計
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徴求過大
(78本支店)
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口座数
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267
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201
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468
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手数料
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19,153
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23,884
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43,038
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徴求不足
(69本支店)
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口座数
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174
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127
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301
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手数料
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10,336
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7,585
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17,922
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過不足計
(85本支店)
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口座数
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441
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328
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769
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手数料
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29,490
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31,470
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60,960
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このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
ア 手数料の徴求対象とならない貸付金についてはりん議を行わないことにしているものがあるなどしていて、手数料の徴求に対する確認体制が十分でなかったこと
イ 手数料の徴求担当者において、手数料の徴求対象や計算方式等に対する認識が十分でなかったこと
ウ 繰上償還手数料計算システムが、ホストコンピュータから貸付金データを自動的に読み取り、通ちょう等に規定されている計算方式の適用及び計算要素の入力を自動的に行うような機能を有していなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、商工中金では、手数料を適正に徴求することができるよう次のような処置を講じた。
ア 18年5月に、通ちょうを改正し、繰上償還を受ける貸付金のすべてについて、手数料の徴求の要否を確認するためのりん議を行うこととするなど手数料の徴求に対する確認体制を整備した。
イ 同年6月に、手数料の徴求担当者に対して研修を実施し、手数料の徴求対象や計算方式等を周知徹底した。
ウ 同年10月に、ホストコンピュータから貸付金データを自動的に読み取り、手数料を自動計算できる機能を有した新しい計算システムを稼動させた。
なお、商工中金では、手数料の徴求が過大となっていたものについては当該貸付先に返戻し、不足していたものについては商工中金の手数料の誤計算等により生じたものであることから徴求しないこととした。