科目
|
有形固定資産
|
||||
建物及び工具器具備品
|
|||||
部局等の名称
|
独立行政法人国立博物館
|
||||
財務諸表作成の根拠
|
独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)
|
||||
平成16事業年度の貸借対照表に計上すべきであった有形固定資産の額
|
2億0026万円
|
||||
|
独立行政法人国立博物館(以下「国立博物館」という。)は、独立行政法人国立博物館法(平成11年法律第178号)に基づき、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ることを目的として、博物館を設置して、有形文化財を収集し、保管して公衆の観覧に供するとともに、これに関連する調査及び研究並びに教育及び普及の事業等を行っている。
そして、国立博物館では、上記の事業等に用いるため、様々な資産を所有しており、このうち、有形固定資産である建物及び工具器具備品の平成16事業年度の貸借対照表に計上されている額(取得価額)は、建物456億8716万余円、工具器具備品22億9733万余円、計479億8449万余円となっている。
独立行政法人は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)により、毎事業年度、貸借対照表等の財務諸表を作成し、当該事業年度の終了後3箇月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならないとされている。また、主務大臣の承認を受けたときは、財務諸表を官報に公告し、かつ、各事務所に備えて置き、一般の閲覧に供しなければならないとされている。
そして、独立行政法人がその会計を処理するに当たっては、独立行政法人の会計に関する認識、測定、表示及び開示の基準を定める「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」(平成17年6月改訂。独立行政法人会計基準研究会等。以下「会計基準」という。)に従わなければならないものとされ、会計基準に定められていない事項については一般に公正妥当と認められている企業会計原則に従うものとされている。会計基準によれば、貸借対照表は、独立行政法人の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び資本を記載し、国民その他の利害関係者にこれを正しく表示するものでなければならないとされている。
会計基準によれば、独立行政法人がその業務目的を達成するために所有し、かつ、加工又は販売を予定しない財貨は、固定資産に属することとされている。そして、国立博物館では、上記の要件を満たし、かつ、耐用年数が1年以上の財貨を新たに取得した場合には、重要性が乏しいとして固定資産に計上しない1個又は1組の金額が50万円未満の償却資産を除き固定資産として認識し、貸借対照表に計上することにしている。
また、固定資産の製作に係る設計料は、固定資産の取得原価の一部を構成するものとして、当該製作した固定資産の取得原価に含めるのが企業会計における一般的な会計処理となっている。
会計基準によれば、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借り手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的便益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(以下「ファイナンス・リース取引」という。)については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととされている。
そして、会計処理を行うに当たり参考にすることとされている「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(平成6年日本公認会計士協会会計制度委員会。以下「実務指針」という。)によれば、リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借り手に移転することとされているリース取引は、ファイナンス・リース取引に該当するとされている。
独立行政法人は、制度の基本として国による事前関与・統制を極力排し、事後チェックへの重点の移行を図るため、主務大臣の監督、関与その他の国の関与を必要最小限のものとすることとされた。この事後チェックのためには業績評価が正しく行われるための情報が提供されなければならないとされており、このような目的に資するため正確な財務報告が求められるところである。
そこで、正確性等の観点から、国立博物館の財政状態及び運営状況が財務諸表に適切に表示され、財務諸表の真実性が確保されているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、本部事務局、東京国立博物館及び17年10月に開館した九州国立博物館に実地に赴き、総勘定元帳、契約書、見積書等の書類とともに現場の確認を行った。
検査したところ、次のとおり、適正を欠く事態が見受けられた。
国立博物館は、16事業年度に、東京国立博物館本館の展示スペースを改修するため、柱や梁を築造したり、展示用ウォールケースを設置したりなどする展示リニューアル工事を実施し、その工事費として1億7850万円を支払っている。そして、国立博物館では、当該工事費全額を費用(業務経費)として処理していた。
しかし、上記の展示リニューアル工事により取得した資産のうち、柱や梁、展示用ウォールケースなど計33点、取得原価計1億1268万余円については、耐用年数が1年以上でかつ1個又は1組の金額が50万円以上であり、これらについては、前記の固定資産として計上する基準を満たしていることから、有形固定資産(建物1億0291万余円、工具器具備品977万余円)として認識して貸借対照表に計上するのが適正であると認められた。
国立博物館は、14事業年度に、九州国立博物館の展示実施設計業務を委託し、その委託費として6759万余円を支払っている。そして、国立博物館では、このうち、展示室自体の設計に要した4000万円については固定資産の取得原価に含めて固定資産として計上し、常設展示場の展示映像システム・音声ガイドシステム等の設計に要した2759万余円については費用(業務経費)として処理していた。
しかし、上記の費用処理した設計料2759万余円は、当該設計に基づいて製作・取得して有形固定資産(工具器具備品)に計上した展示映像システム・音声ガイドシステム等に係るものであることから、前記の企業会計における一般的な会計処理に従い、当該展示映像システム・音声ガイドシステム等の取得原価に含めて有形固定資産(工具器具備品)として計上するのが適正であると認められた。
国立博物館は、17年3月に、九州国立博物館で使用する収蔵品管理システム(以下「管理システム」という。)の賃貸借契約を月額104万余円で締結した。そして、国立博物館では、16事業年度分の賃借料を費用(業務経費)として処理し、当該賃貸借契約に係るリース物件である管理システムを16事業年度の貸借対照表に有形固定資産として計上していなかった。
しかし、本件賃貸借契約は、契約書等によれば期間満了後は当該システムの所有権は国立博物館に帰属するとされており、実務指針によればファイナンス・リース取引に該当することから、通常の売買取引に係る方法に準じ、リース物件である管理システムを取得価額5997万余円で有形固定資産(工具器具備品)として貸借対照表に計上するのが適正であると認められた。
そして、上記(1)、(2)及び(3)のことから、貸借対照表に計上すべき有形固定資産計2億0026万余円(建物1億0291万余円、工具器具備品9734万余円)が16事業年度の貸借対照表に計上されていないと認められた。
このような事態が生じていたのは、国立博物館において会計基準等に準拠した会計処理に対する理解が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国立博物館では、17事業年度決算において次のような処置を講じた。
ア 展示リニューアル工事のうち耐用年数が1年以上で取得価額が50万円以上の柱や梁、展示用ウォールケースなど計33点、取得原価計1億1268万余円については、有形固定資産(建物又は工具器具備品)として認識して貸借対照表に計上した。
イ 展示映像システム・音声ガイドシステム等に係る設計料2759万余円については、当該設計に基づいて製作・取得した展示映像システム・音声ガイドシステム等の取得原価に含めて有形固定資産(工具器具備品)として貸借対照表に計上した。
ウ リース物件である管理システムについては、取得価額5997万余円で有形固定資産(工具器具備品)として貸借対照表に計上した。