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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務における労務費の積算について、業務の実態に適合させるなどして適切なものとするよう改善させたもの


電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務における労務費の積算について、業務の実態に適合させるなどして適切なものとするよう改善させたもの

科目
(農業技術研究業務勘定) 研究業務費
部局等の名称
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(平成18年4月1日以降は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)中央農業総合研究センターほか3研究所
契約名
筑波農林研究団地(7号団地)電気設備及び機械設備等に係る運転保守管理業務ほか5件
契約の概要
電気設備、機械設備等の運転保守管理業務を行わせるもの
契約金額
10億1730万余円
(平成16、17両事業年度)
契約の相手方
財団法人農林弘済会
契約
平成16年4月、17年4月 随意契約
常駐技術者の労務費の積算額
7億9698万余円
(平成16、17両事業年度)
低減できた積算額
2780万円
(平成16、17両事業年度)

1 契約の概要

 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構(平成18年4月1日以降は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構。以下「機構」という。)では、各研究所等において農業に関する技術上の試験及び研究等を実施するため、電気設備、機械設備等を多数設置している。そして、筑波農林研究団地に所在する機構の中央農業総合研究センターほか3研究所(注) (以下、これらの研究所を「4研究所」という。)では、エネルギーの供給状況、温度等の状況を管理するため、電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務を、随意契約により財団法人農林弘済会に請け負わせて実施しており、16、17両事業年度の契約金額は計10億1730万余円となっている。
 4研究所が作成した仕様書によると、上記の業務は、いずれも管理業務、運転監視業務(異常対応を含む。)、点検及び保守業務の3つの業務に分かれていて、運転監視業務については、施設等の運転計画に基づき設備機器等の操作を行い、適切な制御を行うとともに、設備機器等が正常に作動しているかを監視し、異常が認められた場合は必要な操作又は連絡を行うこととなっている。そして、運転監視業務は午前8時30分から翌日午前8時30分までの24時間勤務とし、これらの業務のために常駐して業務を遂行する監督者、電気主任、機械主任及び技術員(以下、これらの技術者を「常駐技術者」という。)を配置することとなっている。
 4研究所では、運転保守管理業務の予定価格の積算に当たり、いずれも農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所(以下「筑波事務所」という。)が策定した「電気設備及び機械設備等に係る運転保守管理業務予定価格算出基礎」を参考にしている。
 これによると、運転監視業務は、24時間常時拘束による3交替制(日勤、夜間、深夜)勤務で行うこととしていて、常駐技術者1人当たりの単価は、積算参考資料を基に筑波事務所が監督者等の職種別に設定した基準日額を法定労働時間8時間で除して得た1時間当たりの労務単価に、年間労働時間(日勤勤務の場合2,080時間(40時間×52週)、夜間又は深夜勤務の場合2,920時間(8時間×365日))を乗じて算出した額とされている。また、深夜勤務の場合の単価は、上記の1人当たりの単価に、深夜勤務の割増率100分の25を乗じて得た額(以下、割増部分を「深夜割増額」という。)を加算した額とされている。
 そして、4研究所では、上記のとおり職種別等に算出された単価にそれぞれの配置人数を乗じて、常駐技術者の労務費を計7億9698万余円と積算している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点及び方法)

 4研究所において毎年行われている運転保守管理業務の契約金額は、毎事業年度多額に上っており、このうち常駐技術者の労務費が大部分を占めている。そこで、4研究所が16、17両事業年度に締結した運転保守管理業務に係る契約における常駐技術者の労務費(積算額7億9698万余円)を対象として、経済性・効率性等の観点から、積算が業務の実態に適合した経済的なものとなっているかなどに着眼して、予定価格の積算書、日報等により検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。

(1)運転監視業務に係る労務費等について

 4研究所では、深夜勤務の常駐技術者を2人から3人とそれぞれ算定し、これに前記のとおり24時間常時拘束により運転監視業務を行うこととして算出された単価を乗じて労務費を積算していた。
 しかし、実際の勤務体制をみると、4研究所に配置された深夜勤務の常駐技術者は、いずれも各中央監視室に隣接した部屋で4時間から6時間の仮眠をとっており、積算とは異なる勤務体制となっていた。また、4研究所では、従来から業務に支障が生じない範囲で常駐技術者が仮眠をとっていることを容認していた。そして、常駐技術者は、仮眠中に中央監視装置に警報が出た場合には現場に急行できることから、運転監視業務については、上記の勤務体制でも異常対応は十分可能であると認められた。
 したがって、深夜勤務の常駐技術者の労務費の積算においては、仮眠をとっている時間については仮眠という勤務の実態にふさわしい減額した単価を設定し適用すれば足りると認められた。
 このほか、果樹研究所では、ボイラー設備を単独で設置しており、エネルギーセンターとしての機能を有しているとして、常駐技術者のうちボイラーの点検等を行う機械主任の労務費の積算については、割高な大規模主任の単価を適用していた。しかし、ボイラーの容量が小さいことや業務の実態などを考慮すると、中小規模主任の単価を適用すれば足りると認められた。

(2)深夜割増額の算出について

 深夜割増額については、前記のとおり、1人当たりの単価に深夜勤務の割増率100分の25を乗じて算出されていたが、この1人当たりの単価の算出の基礎となる1時間当たりの労務単価には、基本給のほか、家族手当、通勤手当等の手当及び賞与が含まれていた。そして、割増しの対象とする労働時間は8時間としていた。
 しかし、深夜割増額の算出の基礎となる1時間当たりの労務単価については、労働基準法(昭和22年法律第49号)等において深夜割増しの基礎となる賃金に算入しないことが認められている家族手当、通勤手当等の手当及び賞与を除いた額とし、また、割増しの対象とする労働時間については、同法において深夜割増しの対象とされている午後10時から午前5時までの7時間とすれば足りると認められた。

(低減できた積算額)

 上記の(1)及び(2)により、業務の実態に適合させるなどして運転保守管理業務における労務費を修正計算すると計7億6912万余円となり、前記の積算額7億9698万余円を約2780万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、4研究所において、運転保守管理業務における労務費の積算に当たり、常駐技術者の業務の実態の把握等が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、18年4月に機構から業務を承継した独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構では、同年9月に4研究所に事務連絡を発し、これに基づき4研究所では、具体的な積算の指針を定め、運転保守管理業務における労務費の積算を業務の実態に適合した適切なものとし、19事業年度の契約から適用することとするなどの処置を講じた。

 中央農業総合研究センターほか3研究所 中央農業総合研究センター、果樹研究所、畜産草地研究所及び動物衛生研究所