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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 特に掲記を要すると認めた事項

道路管理者が整備した有料駐車場が低利用となっているなどのため、駐車場の利用方法の改善等について検討することが必要な事態について


第3 道路管理者が整備した有料駐車場が低利用となっているなどのため、駐車場の利用方法の改善等について検討することが必要な事態について

検査対象
国土交通省(平成13年1月5日以前は建設省)
会計名及び科目
道路整備特別会計
(項)有料道路整備等資金貸付金
(項)道路事業資金貸付金
(項)道路環境整備事業費
(平成12年度以前は、(項)道路事業費)
(項)北海道道路環境整備事業費
(平成12年度以前は、(項)北海道道路事業費)
部局等の名称
国土交通本省(平成13年1月5日以前は建設本省)
貸付け及び補助の根拠
道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号)
日本電信電話株式会社の株式の売却収入の活用による社会資本整備の促進に関する特別措置法(昭和62年法律第86号)
交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年法律第45号)
融資事業及び補助事業の概要
路上駐車を解消し、周辺道路の安全かつ円滑な交通を確保するため、有料駐車場を整備するもの
事業主体
融資事業
東京都ほか16府県の市33、道路公社5、計38事業主体
補助事業
東京都、大阪府及び愛知県、東京都ほか12道府県の市19、計22事業主体
事業の効果が十分発現していないなどの駐車場
融資事業
45駐車場
補助事業
28駐車場
上記に対する貸付金及び国庫補助金
融資事業
549億0190万円
(昭和50年度〜平成12年度)
補助事業
286億8800万円
(平成3年度〜14年度)

1 制度の概要

(1)貸付金の概要

 国土交通省では、地方生活圏中心都市等において、駐車需要の増大に対処するとともに、無秩序な路上駐車を解消し、周辺道路の安全かつ円滑な交通を確保するため、道路備特別措置法(昭和31年法律第7号)に基づく無利子の有料道路整備資金貸付金又は日本電信電話株式会社の株式の売却収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法(昭和62年法律第86号)に基づく無利子の道路事業資金収益回収特別貸付金(以下、これらを併せて「貸付金」という。)を有料の自動車駐車場(以下「有料駐車場」という。)を整備する道路管理者(地方公共団体又は地方道路公社)に貸し付けている(貸付率は貸付対象事業費の15%から50%、以下、貸付金を受けて有料駐車場を整備する事業を「融資事業」という。)。
 そして、昭和48年度から平成12年度までの間に、融資事業を実施する道路管理者に対して、計1027億余円の貸付金を貸し付けており、道路管理者からは17年度末までに計471億余円の償還を受け、同年度末現在の貸付金残高は555億余円となっている。
 道路管理者は、融資事業を実施する場合には、道路整備特別措置法に基づき、工事方法、収支予算の明細等を記載した許可申請書に推定利用量及びその算出の基礎等を記載した書面等を添付して国土交通大臣に提出することとなっている。そして、国土交通大臣は、有料駐車場の利用者がその利用により利益を受けるものであること、許可申請書に記載された料金の額及びその徴収期間、資金の調達及び償還の計画等の事項が同法の要件に適合することを確認して許可することとなっている。

(2)補助金の概要

 また、同省では、路上駐車車両による交通機能の阻害を防止するため、交通安全施設等整備事業の推進に関する法律(昭和41年法律第45号)に基づく国庫補助金(以下「補助金」という。)を有料駐車場を整備する道路管理者に交付している(補助率は50%、以下、補助金を受けて有料駐車場を整備する事業を「補助事業」という。)。
 そして、3年度から17年度までの間に、補助事業を実施する道路管理者(地方公共団体)に対して計816億余円の補助金を交付している。
 補助事業は、多数の路上駐車のため安全で円滑な道路交通が阻害され、交通事故が多発するおそれが大きいと認められる都市内の道路において、緊急に整備が必要ではあるものの、採算性を考慮すると融資事業が困難である駐車場に対し実施するものである。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 国土交通省では、交通機能の阻害を防止するため有料駐車場を積極的に整備してきたところであり、有料駐車場の利用状況は、融資事業、補助事業の区別なく重要な事項となっている。
 特に、道路交通法(昭和35年法律第105号)の改正により18年6月から新たな違法駐車対策が実施されたことに伴い、駐車場に対する需要の高まりが見られたり、地方自治法(昭和22年法律第67号)の改正により公の施設の管理に、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(以下「指定管理者」という。)を活用する制度が導入されたりするなど、有料駐車場を取り巻く環境が変化してきている。
 そこで、有効性等の観点から、多額の資金を貸し付け、あるいは多額の補助金を投下して整備された有料駐車場について、次のような点に着眼して検査を実施した。
〔1〕 無秩序な路上駐車を解消し路上駐車車両による交通機能の阻害を防止するという事業目的に沿って有効に利用されているか。
〔2〕 有料駐車場の収支の実績について、特に融資事業においては貸付金等の償還計画に影響を及ぼすことからどのような状況になっているか。
〔3〕 道路管理者は有料駐車場を取り巻く環境の変化に対応してどのような対策を執っているか。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、北海道ほか25都府県(注1) において、昭和48年度から平成12年度までの間に融資事業により整備された71有料駐車場(貸付金額858億円(17年度末までに貸付金の償還を終了した17駐車場を含む。)、17年度末貸付金残高471億円)を、また、3年度から14年度までの間に補助事業により整備された66有料駐車場(補助金額755億円)を対象とした。
 検査は、有料駐車場の設置状況、供用開始以降の利用状況及び収支状況に関する調書を徴し、これらの調査、分析を行うとともに、上記の都道府県において有料駐車場の立地条件、利用状況、周辺の民間駐車場の状況を現地に赴いて検査するなどの方法により実施した。

 北海道ほか25都府県 東京都、北海道、大阪府、青森、宮城、秋田、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、石川、福井、長野、静岡、愛知、滋賀、兵庫、奈良、鳥取、広島、香川、高知、福岡、沖縄各県


(検査の結果)

(1)利用状況について

 有料駐車場が有効に活用されているかについて毎年度の利用台数及び修正回転率(注2) のデータを収集し、供用開始から17年度までの間の総計で計画と実績を比較した。その結果は表1のとおりとなっている。

 修正回転率 駐車場の利用状況の指標であり、1日1駐車スペース当たりの利用回数を回転率とし、これに1台当たりの平均駐車時間を乗じて算出した値を修正回転率としている。


表1 供用開始から平成17年度までの間の総計の利用台数及び修正回転率
(単位:箇所、億円)
実績/計画
 
100%以上
合計
 
小計
 
 
30%未満
30%以上
50%未満
50%以上
80%未満
80%以上
100%未満
融資事業
利用台数
箇所数
17
15
32
21
11
32
64
7
71
貸付金額
196
191
387
303
144
448
836
21
858
貸付金残高
106
110
217
169
74
243
460
10
471
修正回転率
箇所数
13
13
26
23
6
29
55
16
71
貸付金額
172
181
354
288
93
382
736
122
858
貸付金残高
103
99
203
166
50
216
419
51
471
補助事業
利用台数
箇所数
8
11
19
12
10
22
41
15
56
補助金額
96
99
195
128
118
247
443
200
643
修正回転率
箇所数
5
5
10
19
4
23
33
20
53
補助金額
60
33
93
193
39
232
326
291
618

注(1)  1日当たりの計画上の利用台数は、当該駐車場の整備台数に周辺駐車場の利用状況等を勘案して算出した回転率を乗じて、また、1日当たりの計画上の修正回転率は回転率に平均駐車時間を乗じて算定している。
注(2)  補助事業の合計が検査対象と一致しないのは、計画値が不詳となっているなどの理由から実績との比較が不可能なものを集計から除外したためである。

ア 利用台数

 利用台数の実績と計画を融資事業及び補助事業別に比較すると、次のとおりである。
(ア)融資事業においては、検査を実施した71駐車場のうち、供用開始から17年度までの間の総計の利用台数の実績が計画を下回っているのは、64駐車場(貸付金額836億円、17年度末貸付金残高460億円)である。このうち、実績が計画の50%を下回っていて低利用となっているのは、32駐車場(同387億円、217億円)であり、全体の約45%を占めている。
(イ)補助事業においては、56駐車場のうち、供用開始から17年度までの総計の利用台数の実績が計画を下回っているのは、41駐車場(補助金額443億円)である。このうち、実績が計画の50%を下回っていて低利用となっているのは、19駐車場(同195億円)であり、全体の約33%を占めている。
 そこで、供用開始から17年度までの間の総計の利用台数の実績が計画の50%を下回っていて低利用となっている融資事業の32駐車場及び補助事業の19駐車場、計51駐車場を次のとおり、利用率(計画利用台数に対する実績利用台数の割合)により、大きく〔1〕供用開始から50%を下回った利用となっているものと〔2〕計画の50%を上回った年度のあるものに分類した。また、計51駐車場のうち、供用開始当初と比べ近年の状況が上昇又は下降傾向にあるものを〔3〕及び〔4〕に分類した。

〔1〕 供用開始から50%を下回った利用となっているもの

図1 融資事業24駐車場

(融資事業1)

(融資事業1)

(融資事業2)

(融資事業2)

 図1のとおり、昭和50年代に供用開始した2駐車場は、利用率の向上が供用後数年間見受けられるものの、近年は20%未満と低調に推移している。また、平成元年度以降に供用開始した他の駐車場も同様に利用率の向上が供用後数年間見受けられるものの、20%から40数%の範囲で推移しており、利用率に目立った動きはない。

図2 補助事業14駐車場

(補助事業)

(補助事業)

 図2のとおり、ほとんどの駐車場で供用年数は10年程度経過しているものの、利用率に目立った特徴は見受けられない。

〔2〕 計画の50%を上回った年度のあるもの

図3 融資事業8駐車場

(融資事業)

(融資事業)

 図3のとおり、昭和の末期に供用開始した駐車場は、バブル期には50%を超える利用率となったものの、その後は利用率の低下に歯止めがかからない状況である。また、平成の初期に供用開始した駐車場は、供用後数年で50%超えのピークを迎え、近年は利用率が低下しているものが多く見受けられる。

図4 補助事業5駐車場

(補助事業)

(補助事業)

 図4のとおり、すべての駐車場で近年の利用率は50%程度で推移しているが、17年度は3駐車場で利用率の低下が見受けられる。

〔3〕 供用開始当初と比べ近年上昇傾向にあるもの

図5 融資事業7駐車場

(融資事業)

(融資事業)

 図5のとおり、すべて7年度以降に供用開始された比較的新しい駐車場であり、利用率は、供用開始当初よりも徐々にではあるが上昇傾向にある。

図6 補助事業3駐車場

(補助事業)

(補助事業)

 図6のとおり、すべて9年度以降に供用開始された比較的新しい駐車場であり、利用率は、供用開始当初よりも徐々にではあるが上昇傾向にある。

〔4〕 供用開始当初と比べ近年下降傾向にあるもの

図7 融資事業5駐車場

(融資事業)

(融資事業)

 図7のとおり、利用率のピーク時がバブル期にあるものが多く見受けられ、近年の利用率はいずれも30%以下となっている。

図8 補助事業2駐車場

(補助事業)

(補助事業)

 図8のとおり、利用率は低迷しており供用開始当初よりも減少傾向である。
 このように、供用開始当初から継続して低利用となっているものが多く見受けられた。

イ 修正回転率

 修正回転率の実績と計画を融資事業及び補助事業別に比較すると、次のとおりである。

(ア)融資事業においては、検査を実施した71駐車場のうち、供用開始から17年度までの間の総計の修正回転率の実績が計画を下回っているのは、55駐車場(貸付金額736億円、17年度末貸付金残高419億円)である。このうち、実績が計画の50%を下回っていて低利用となっているのは、26駐車場(同354億円、203億円)であり、全体の約36%を占めている。

(イ)補助事業においては、53駐車場のうち、供用開始から17年度までの間の総計の修正回転率の実績が計画を下回っているのは、33駐車場(補助金額326億円)である。このうち、実績が計画の50%を下回っていて低利用となっているのは、10駐車場(同93億円)であり、全体の約18%を占めている。

 したがって、前記アの利用台数及びイの修正回転率の値が共に、供用開始から17年度までの間の総計の実績が計画に比べて50%に満たず低利用となっているものは、融資事業で24駐車場(貸付金額333億円、17年度末貸付金残高187億円)、補助事業で8駐車場(補助金額84億円)となっていた。

<事例1>  利用実績が計画に比べて低利用となっているもの

 A市では、平成2、3両年度に、融資事業により事業費16億円(貸付金額4億円(貸付率25%))で、B駅から約300mの場所に、地上3階4層の鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)で整備台数389台(自走式261台、機械式128台)の有料駐車場を整備し、4年4月から供用を開始している。

 4年度以降の利用状況をみると、1日当たりの計画の利用台数1,118台に対し、実績は4年度39台、17年度158台となっており、最大でも10年度の188台(16.8%)にとどまっている。

 このような状況となっているのは、A市の説明によると、当該駐車場より駅に近い場所に新たな民間駐車場ができたことや大型店舗の移転、廃業により利用台数が伸び悩んだためであるとしている。

(2)収支の状況について

 駐車場の利用状況に加えて収支状況から駐車場の経営状況を見ると次のとおりとなっている。

ア 融資事業の収支

 融資事業における供用開始から17年度までの間の総計の収支の状況は、表2のとおりである。

表2 供用開始から平成17年度までの間の総計の収入と支出の比較
(単位:箇所、億円)
収入/支出の割合
合計
 
100%以上
 
小計
 
 
30%未満
30%以上
50%未満
50%以上
80%未満
80%以上
100%未満
融資事業
箇所数
19
12
31
24
6
30
61
10
71
貸付金額
208
185
394
379
50
429
823
34
858
貸付金残高
106
92
198
219
36
256
455
15
471

 検査を実施した71の有料駐車場のうち、供用開始から17年度までの間の総計の収入が支出を下回っているのは、61駐車場(貸付金額823億円、17年度末貸付金残高455億円)である。このうち、収入と支出の割合(収入/支出)が50%を下回っているのは、31駐車場(同394億円、198億円)であり、全体の約43%を占めている。そして、これら61駐車場では、収入不足を補てんするため、地方公共団体の一般会計等から資金を繰り入れるなどしている。
 さらに、供用開始から17年度までの間の総計の料金収入等と維持・管理費を比較したところ、表3のとおりとなっている。

表3 供用開始から平成17年度までの間の総計の料金収入等と維持・管理費の比較
(単位:箇所、億円)
料金収入等/維持・管理費
料金収入等で維持・管理費が賄えていないもの
料金収入等で維持・管理費が賄えているもの
合計
50%未満
50%以上
100%未満
100%以上
150%未満
150%以上
融資事業
箇所数
2
7
9
15
47
62
71
貸付金額
31
57
88
191
578
769
858
貸付金残高
16
30
47
103
319
423
471

 料金収入等で維持・管理費を賄えていないものは、9駐車場(貸付金額88億円、17年度末貸付金残高47億円)であり、全体の約12%を占めている。

イ 補助事業の収支

 補助事業は融資事業に比べ採算性が期待されていないことから、収支の比較は行わなかった。しかし、料金収入等で維持・管理費を賄うことは駐車場管理に必要なため、供用開始から17年度までの間の総計の料金収入等と維持・管理費を比較したところ、表4のとおりとなっている。

表4 供用開始から平成17年度までの間の総計の料金収入等と維持・管理費の比較
(単位:箇所、億円)
料金収入等/維持・管理費
料金収入等で維持・管理費が賄えていないもの
料金収入等で維持・管理費が賄えているもの
合計
50%未満
50%以上100%未満
100%以上150%未満
150%以上
補助事業
箇所数
3
19
22
19
24
43
65
補助金額
30
198
228
234
292
527
755

 合計数65は、近接した2つの駐車場を1つの管理者が一体管理しているものがあるため検査対象箇所数66とは一致しない。


 上記のうち、供用開始から17年度までの間の総計の料金収入等で維持・管理費を賄えていないものは、22駐車場(補助金額228億円)であり、全体の約33%を占めている。そして、これら22駐車場では、収入不足を補てんするため、地方公共団体の一般会計等から資金を繰り入れるなどしている。

<事例2> 料金収入等で維持・管理費を賄えていないもの

 C市では、平成3年度に、融資事業により、事業費35億円(貸付金額14億円(貸付率40%))で、D駅北口に、地下2階4層の鉄筋コンクリート造で整備台数301台(自走式66台、機械式235台)の有料駐車場を整備し、4年5月から供用を開始している。
 17年度までの総計の収支状況をみると、料金収入は計画額の18%であり約27億円の不足となっていて、一般会計から約34億円を借り入れている。また、料金収入等と維持・管理費を比較すると、維持・管理費の49%しか賄えていない状況となっている。
 このような状況となっているのは、C市の説明によると、駅周辺の再開発に伴う駐車場需要の拡大を予想して当該駐車場を整備したものの、集客施設が計画どおりに整備されていないことなどによるとしている。
 前記(1)の利用状況及び(2)の収支状況についてみると、北海道ほか21都府県(注3) において、供用開始から17年度までの利用台数の実績が計画に比べ50%に満たないものは、融資事業32駐車場、補助事業19駐車場、修正回転率の実績が計画に比べ50%に満たないものは、融資事業26駐車場、補助事業10駐車場、収入と支出の割合が50%を下回っているものは、融資事業31駐車場及び料金収入等で維持・管理費も賄えないものは、融資事業9駐車場、補助事業22駐車場となる。そして、それぞれに該当しているもののうち、重複している分を除いて集計すると、融資事業で45駐車場(貸付金額549億0190万円、17年度末貸付金残高304億4470万余円)、補助事業で28駐車場(補助金額286億8800万円)となっている。
 なお、利用台数及び修正回転率の実績が計画に比べ50%に満たず、さらに料金収入等で維持・管理費も賄えないなどの駐車場は、融資事業で4駐車場(貸付金額29億円、17年度末貸付金残高12億円)、補助事業で6駐車場(補助金額56億円)となっている。

(3)有料駐車場と周辺の民間駐車場の利用時間等の比較等について

ア 利用時間と利用料金の比較

 民間駐車場の中には、道路交通法の改正により18年6月から違法駐車取締り関係事務の民間委託などの新たな違法駐車対策が強化された機会を捉えて、施設を増設したり、24時間営業を行うなど利用時間を拡大したり、利用料金を引き下げたり、基本料金の単位を数十分単位ときめ細かく設定したりするなど利用者の立場に立った使い勝手のよい利用条件の提供に努め、利用者に対するサービスの向上を図ったところもある。
 一方、表5のとおり、道路管理者の整備した有料駐車場には、供用開始以降、近隣の民間駐車場が24時間営業としていたり、いわゆるコインパーキング等における単位料金が低下していたりしているなどの状況を勘案して、利用時間を拡大したものが11駐車場(うち24時間営業としたもの5駐車場)、利用料金の見直しを行い近隣駐車場との格差の解消を図ったものが23駐車場あり、利用しやすい環境を整えつつあるものも見受けられるが、道路管理者の整備した有料駐車場は利用時間、利用料金等がそれぞれの地方公共団体の条例により定められている場合が多いため民間駐車場に比べ必ずしも柔軟な対応が採りにくいものとなっていると認められる。

表5 道路管理者の整備した有料駐車場の利用条件等の変更状況
(単位:箇所)
検査対象箇所数
利用時間を拡大しているもの
利用料金の見直しをしているもの
純計
見直しを全く行っていないもの
 
指定管理者制度の導入
融資事業
71
9
13
20
51
30
補助事業
65
2
10
12
53
34
合計
136
11
23
32
104
64

 補助事業の検査対象箇所数65は、近接した2つの駐車場を1つの管理者が一体管理しているものがあるため検査対象箇所数66とは一致しない。


 すなわち、利用料金については、道路法により、近隣の民間駐車場と著しく均衡を失しないように設定することとされていることから、民業圧迫につながるとのことから料金の引下げに慎重な道路管理者が多いと認められる。特に融資事業の場合は、利用料金の引下げは減収につながり、借入金等の償還計画に影響を及ぼすことが予想されること、また、利用料金の変更は国土交通省の許可事項であることなどから近隣の民間駐車場に比べて柔軟な対応が採りにくいものとなっている。

イ 指定管理者への委託

 地方公共団体等の有する公共施設等の管理・運営については、従来より、一定の要件を満たした第3セクターなどへの管理委託により実施しているところも多く見受けられた。しかし、前記のとおり、地方自治法の改正により、公の施設の設置目的をより効果的に達成するため、公共施設等の管理・運営に民間の資金、経営能力、技術的能力を活用し、効率的かつ効果的にサービスを提供するために必要があると認めるときは、当該施設の管理を条例の定めるところにより、指定管理者に行わせることができることとなった。
 道路管理者が整備した有料駐車場のうち地方公共団体が管理する119箇所については、本制度を導入することができる施設ではあるが、経費の節減を図ることなどを目的に、条例を改正し、18年4月までに本制度を導入しているのは、表5のとおり半数程度となっている。

ウ 路上駐車の実態

 道路管理者では、有料駐車場周辺の路上駐車状況を把握するために13年度から路上駐車の実態調査を実施している。その調査結果をみると、表6又は図9のとおり、調査開始年度と直近の調査年度を比較した結果、路上駐車台数が減少している箇所は多くあるものの、逆に増加傾向にある箇所も26駐車場の周辺で見受けられ、全体として駐車場への転換が必ずしも十分とは認められない。
 したがって、路上駐車を解消し、周辺道路の安全かつ円滑な交通を確保するため有料駐車場の積極的な利用促進が望まれる。

表6 路上駐車の実態調査の状況
(単位:箇所)
箇所数
調査実施箇所
直近の値が調査開始年度より増加しているもの
直近の値が調査開始年度より減少しているもの
未調査
融資事業
71
58
13
45
13
補助事業
65
39
13
26
26
合計
136
97
26
71
39

 補助事業の箇所数は、近接した2つの駐車場を1つの管理者が一体管理しているものがあるため検査対象箇所数66とは一致しない。


図9 路上駐車の状況

補助事業の箇所数は、近接した2つの駐車場を1つの管理者が一体管理しているものがあるため検査対象箇所数66とは一致しない。

 横軸に調査開始年度の路上駐車台数を、縦軸に直近の調査年度の路上駐車台数をとり、グラフ化したものである。したがって、実線より下側にポイントがある場合は路上駐車台数の減少を、実線より上側にポイントがある場合は路上駐車台数の増加を表している。なお、実線と破線に囲まれた部分にあるポイントは、路上駐車の減少率が5割に満たない箇所を表している。


<事例3>  利用時間を拡大していないもの

 E市では、平成5年度から7年度までに、補助事業により、補助対象事業費6億円(補助金額3億円)で、F駅前に地下2階2層の鉄筋コンクリート造で整備台数200台(機械式(一部自走式))の有料駐車場を整備し、8年4月から供用を開始している。
 近年の駐車台数の実績をみると、計画台数の約半分程度となっていた。
 このような状況となっているのは、E市の説明によると、F駅前西地区再開発計画で想定されていた商業系施設の規模が大幅に縮小され駐車需要が減少したこと、本件駐車場から約500mの所にE市の公共施設に附帯した無料駐車場(駐車台数883台、7年8月から供用)があること、また、周辺駐車場は24時間入出庫が可能であるのに対し、本件駐車場は深夜0時から午前5時までの入出庫はできないことになっており、利用者の利便性が劣っていることなどによるとしている。
 前記の利用台数及び修正回転率の実績が計画に比べ50%に満たず低利用となっていたり、料金収入等で維持・管理費が賄えなくなっていたりするなどの融資事業で45駐車場、補助事業で28駐車場について、利用時間、利用料金等の状況をみると、条件を変更していない駐車場は、融資事業で28駐車場(貸付金額355億円、17年度末貸付金残高171億円)、補助事業で20駐車場(補助金額202億円)となっている。

3 本院の所見

 上記のように〔1〕有料駐車場の利用台数及び修正回転率の実績が計画に比べて低くなっていたり、〔2〕有料駐車場の収支が悪化していて維持・管理費さえも料金収入で賄えていなかったり、〔3〕利用者の立場に沿った細やかなサービスの提供が図られていなかったりしている事態は、施設の有効利用という観点からみて適切とは認められず、ひいては、駐車需要の増大に対処するとともに無秩序な路上駐車を解消し、周辺道路の安全かつ円滑な交通を確保するという目的のために実施している有料駐車場の整備事業の効果が十分発現していないと認められる。
 このような事態が生じていた一因としては、次のことなどが考えられる。
ア 国土交通省において、融資事業の場合は、毎年度、道路管理者から事業実績報告書を徴していて有料駐車場の利用状況等を把握しているものの、低利用となっている有料駐車場の利用増進策あるいは収支の改善策等について、道路管理者に対する指導が十分でなかったこと
 また、補助事業の場合は、供用後の有料駐車場の利用状況等を把握することなく、低利用となっている有料駐車場の利用増進策あるいは収支の改善策等について、道路管理者に対する助言が十分でなかったこと
イ 道路管理者である地方公共団体等において、近隣の民間駐車場の利用料金等の状況を勘案して有料駐車場を取り巻く環境等の変化を的確に把握し、利用時間の拡大、駐車時間と単位料金が連動するよう料金を細分化するなど、利用者の要望に応えられるような利用条件の変更についての検討が十分でなかったこと
 上記の事態について、国土交通省では、地方整備局等に対して地方公共団体等に周辺の民間駐車場の利用時間、利用料金等の実態を把握させ、その結果を踏まえた改善計画を策定するなどを内容とする通知を発し、地方整備局等は地方公共団体等に対して指導・助言をすることとしたところである。
 しかし、利用状況等が十分でない有料駐車場が存在する背景には、大規模店舗の撤退による集客力の低下なども大きな要因となっている。したがって、国土交通省、地方公共団体等の取組のみでは有料駐車場の利用状況等を改善することが困難であると認められることから、道路管理者、交通管理者、地元商店街、駐車場利用者等の関係者が一体となって取り組み、一層の利用促進が図られることが必要である。また、道路交通法の改正による違法路上駐車対策の取組強化や地方自治法の改正による公共施設の指定管理者制度の創設など、有料駐車場行政を取り巻く環境が著しく変化してきていることから、これらの状況を的確に把握して利用向上のための改善策を講じていくことが必要である。

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