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  • 平成17年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

外国産米の在庫及び損益の状況について


第8 外国産米の在庫及び損益の状況について

検査対象
農林水産省
会計名
食糧管理特別会計(輸入食糧管理勘定)
外国産米の売買及び保管の概要
ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、平成7年度から毎年度一定数量の外国産米を輸入して、主に加工用、援助用に販売するとともに、販売されるまでの間、営業倉庫等において在庫として管理する業務
外国産米の買入数量及び買入金額の合計額
651万t、4173億円(平成7年度〜17年度)
外国産米の在庫数量及び保管料
181万t(平成17年度末)、170億円(平成17年度)
外国産米に係る決算上の損失金
207億円(平成17年度)

1 検査の背景

(1)政府所有の外国産米の概要

ア 外国産米の買入れ及び売渡し

 農林水産省では、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号。以下「食糧法」という。)に基づき、国内産米及び外国産米の買入れ、売渡し等を行っている。そして、外国産米については、農林水産省が行う国家貿易の中で需給状況等に応じて必要量を輸入していたが、平成5年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意を受け、最低輸入量を設定して輸入機会を提供するミニマム・アクセス機会として、7年度から毎年度外国産米を輸入している(以下、ミニマム・アクセス機会として輸入した外国産米を「ミニマム・アクセス米」という。)。

イ ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意

 ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉(昭和61年〜平成5年)の結果、農産物の国境措置については、原則として、関税に置き換えることとされた。そして、関税化品目のうち基準期間(昭和61年〜63年)における輸入量が国内消費量の5%未満のものについては、最低輸入量を実施期間(平成7年〜12年)の1年目に基準期間の国内消費量の3%相当量とし、その後毎年0.4%ずつ拡大させて、6年目に5%相当量となるよう設定することとされた。

ウ 関税化の特例措置

 我が国の米穀については、輸入量が国内消費量の3%未満であること、効果的な生産制限措置が実施されていることなどの条件を満たしていたことから、外国産米の輸入については、上記の農業合意による関税化の特例措置として、次のように取り扱うこととされた。
〔1〕 関税化を行わず、国家貿易等を維持すること
〔2〕 最低輸入量は関税化の場合に比べて加重され、実施期間の1年目の輸入量を基準期間の国内消費量の4%相当量である42.6万玄米t(注1) とし、毎年0.8%ずつ拡大し、6年目は8%相当量の85.2万玄米tとすること

 玄米t 玄米の重量。実際に輸入されるミニマム・アクセス米は玄米のほかに、精米及び砕精米があり、精米等の重量は玄米よりも1割程度減じて換算される。玄米t以外の重量の表記については、実際に輸入された玄米、精米等の重量を合計したものである。


エ 関税措置への切換え

 農林水産省では、上記のとおり、関税化の特例措置により7年度からミニマム・アクセス米の輸入を開始した。その後、関税化すれば最低輸入量の増加量を0.8%から0.4%に半減できることから、11年度に関税措置への切換えを行った。
 その結果、実施期間最終年度(12年度)における米穀の最低輸入量は76.7万玄米tとなり、13年度以降の米穀の輸入についても、世界貿易機関(WTO)農業交渉において新たな農業合意が得られるまでの間は、12年度の最低輸入量を維持することとされている。

(2)ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意時の国内事情

ア 国内産米の生産調整

 農林水産省では、国内産米が過剰基調にあることから、生産調整を昭和46年度から本格的に実施しており、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意時の生産調整面積は71万ha(作付面積は213万ha)となっていた。このような状況の中で、上記の農業合意の受入れに当たっては、ミニマム・アクセス米が国内産米の需給にできるだけ影響を与えないようにする必要があったため、「ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う農業施策に関する基本方針」(平成5年12月17日閣議了解)を定め、生産調整面積の算定にはミニマム・アクセス米の需給状況を考慮しないことなどとされた。そして、平成17年度現在においてもなお、国内産米の生産調整は実施されている。

イ ミニマム・アクセス米の運用方針

 農林水産省では、上記の基本方針を受けて、次のようにミニマム・アクセス米を運用している。
〔1〕 ミニマム・アクセス米については、国内産米の需給にできるだけ影響を与えないよう、価格等の面で国内産米では対応し難い用途(主として加工用)に向けて販売する。販売されなかったミニマム・アクセス米は、毎年一定量を食糧援助に充てるほか、政府が在庫として管理する。
〔2〕 ミニマム・アクセス米が主食用に消費される場合には、それに見合う数量の国内産米を主食用以外の用途(加工用、援助用等)に振り向ける。

(3)ミニマム・アクセス米の売買等の実施

ア ミニマム・アクセス米の輸入方法

 農林水産省では、輸入業者と買入委託契約を締結し、輸入業者が輸出国において買い付けた米穀を国内の輸入港所在の倉庫(以下「港頭倉庫」という。)まで搬送させて、そこで引渡しを受ける方法によりミニマム・アクセス米を輸入している(以下、この輸入方法を「一般輸入」という。)。また、一般輸入とは別に、輸入業者と買受者が連名で農林水産省に売買の申込みを行い、3者間で特別売買契約を締結して輸入業者からの買入れと買受者への売渡しを同時に行う売買同時方式(Simultaneous Buy and Sell)によりミニマム・アクセス米を輸入している(以下、この輸入方法を「SBS輸入」という。)。

イ ミニマム・アクセス米の買入方針

 農林水産省では、食糧法に基づき、毎年、米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(15年度以前は米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画)により、米穀の輸入数量及びその種類別の数量に関する事項を定めることとなっている。
 16年度以降については、これを次のように定めている。
〔1〕 輸入数量については、WTO農業交渉において新たな合意ができるまでは76.7万玄米tとし、このうちSBS輸入については予定数量を10万tとする。
〔2〕 国別・種類別輸入方針については、国内の需要動向等を踏まえ、輸出国の輸出余力、国際相場等を勘案しながら適切に輸入を実施する。

ウ ミニマム・アクセス米の売買等の推移

 ミニマム・アクセス米の売買等の推移は、表1のとおりとなっている。

表1 ミニマム・アクセス米の売買等の推移

(単位:t、千円)


区分
年度
買入れ
売渡し
年度末在庫数量
保管料
数量
金額
数量
金額
7
408,287
31,368,367
29,091
5,266,942
379,195
605,215
8
466,016
36,532,978
206,708
32,975,838
622,930
3,889,672
9
471,548
40,016,122
352,963
37,811,942
713,967
6,035,918
10
598,060
43,895,969
417,537
52,265,882
614,884
5,938,675
11
621,255
34,576,297
418,792
56,204,752
750,114
6,567,218
12
683,562
32,063,426
565,884
50,189,904
856,326
7,510,437
13
585,035
28,868,735
485,333
47,236,629
937,779
8,739,104
14
670,962
34,861,970
412,413
33,655,729
1,181,354
10,271,244
15
724,988
46,663,618
494,995
50,548,522
1,448,878
12,432,965
16
548,527
36,159,158
451,262
43,023,628
1,529,137
14,718,671
17
733,768
52,321,542
431,723
41,663,668
1,818,686
17,001,262
合計
6,512,012
417,328,186
4,266,707
450,843,441
93,710,386

注(1)
 買入数量は、当年度に検収した数量であるため、当年度契約分のほか、前年度契約分を含む。
注(2)
 保管料は、政府倉庫及びサイロに係る運営費を含む。
注(3)
 当年度の年度末在庫数量は、売渡しに当たって玄米から精米へとう精する際に目減りするなどのため、前年度末在庫数量に当年度の買入数量を加え、当年度の売渡数量を差し引いた数量と一致しない。

 SBS輸入では売買が同時に行われるため在庫数量は発生しないが、一般輸入により買い入れたミニマム・アクセス米については、毎年度の売渡数量が買入数量を下回っていることから、在庫数量が年々増加してきており、17年度末現在の在庫数量は181万t、17年度の保管料は170億円に上っている。

エ 食糧管理特別会計におけるミニマム・アクセス米の経理

 ミニマム・アクセス米の買入れから売渡しまでに係る一切の経理は、一般会計と区分して、食糧管理特別会計によって行われている。同特別会計は、食糧管理特別会計法(大正10年法律第37号)により、国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理(以下、この3勘定を併せて「食糧管理3勘定」という。)、農産物等安定、輸入飼料、業務及び調整の7勘定に区分されており、ミニマム・アクセス米に係る経理は、飼料用を除く外国産麦に係る経理と併せて輸入食糧管理勘定で行われている。
 そして、17年度における輸入食糧管理勘定では、表2のとおり、578億円の利益が生じているが、ミニマム・アクセス米に係る損益は、売上高から売上原価を差し引いた売買損益が22億円の損失となっており、さらに売買損益から事業管理費及び一般管理費を差し引いた損益が207億円の損失となっている。

表2 輸入食糧管理勘定の損益(平成17年度)

(単位:百万円)


区分
売上高
(A)
売上原価
(B)
売買利益(△損失)
(C)=(A)-(B)
事業管理費
(D)
一般管理費
(E)
利益(△損失)
(F)=(C)-(D)-(E)
ミニマム・アクセス米
41,663
43,898
△2,234
17,001
1,540
△20,776
外国産麦
243,682
145,313
98,368
8,056
11,643
78,669
勘定計
285,346
189,212
96,134
25,058
13,183
57,892

注(1)
 売上原価は、前年度末在庫評価額に本年度の買入価額を加えた額から、本年度末の在庫評価額を差し引いて算出したものである。
注(2)
 事業管理費は、保管料、運送費等の業務に直接要する費用である。
注(3)
 一般管理費は、食糧管理3勘定及び輸入飼料勘定に共通する人件費、事務費等を各勘定ごとの年間買入高等の比率により割り掛けたものである。

2 検査の観点、着眼点及び方法

 農林水産省では、昭和46年度以降、国内産米の生産調整を本格的に実施している一方で、前記のとおり、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、平成7年度からミニマム・アクセス米の買入れを実施している。その買入数量は、7年度から17年度までに合計651万t(買入金額計4173億円)となっている。そして、ミニマム・アクセス米の売渡しについては、国内産米の需給にできるだけ影響を与えないよう加工用等の需要を中心に実施しているが、毎年度の売渡数量が買入数量を下回っていることから、ミニマム・アクセス米の17年度末現在の在庫数量は181万tに上っている。このため、年間の保管料が13年度に87億円であったものが17年度には170億円に倍増するなどにより、ミニマム・アクセス米に係る損益については、17年度に207億円の損失が生じている。
 そこで、ミニマム・アクセス米に係る損失の発生原因に留意しつつ、経済性・効率性等の観点から、在庫数量を削減して保管料を節減することができないかなどに着眼して、農林水産省からミニマム・アクセス米の売買等に関する資料を徴したり、売買、保管等の実施状況について聴取したりなどして検査した。

3 検査の状況

(1) ミニマム・アクセス米の買入れについて

ア 一般輸入による買入れの状況

 13年度以降の一般輸入による産地国別の買入数量は、図1のとおりとなっている。買入数量の合計は294万tで、このうち、米国産米が150万tと最も多く、次いでタイ産米が72万tとなっている。

図1 産地国別の買入数量(一般輸入分)の推移

図1産地国別の買入数量(一般輸入分)の推移

 買入数量は、当年度に契約した数量であるため、表1とは一致しない。


 そして、一般輸入による主要な産地国別の1t当たりの買入単価については、表3のとおりとなっている。17年度については、高価な順に豪州、米国、タイとなっている。

表3 産地国別の買入単価(一般輸入分)の推移

(単位:円/t)


年度
国名
13
14
15
16
17
米国
43,037
46,009
65,929
50,926
76,985
タイ
27,291
28,466
29,365
41,719
46,300
豪州
50,236
50,868
65,897
62,179
81,140
中国
25,157
25,997
61,446
48,426

 買入単価は、当年度に契約した平均単価である。


イ SBS輸入による買入れの状況

 13年度から17年度までのSBS輸入による買入数量の合計は44万t となっている。そして、米国産米の買入数量が多い一般輸入とは異なり、中国産米が30万tと最も多く、次いで米国産米が10万tとなっている。

(2)ミニマム・アクセス米の売渡しについて

ア 売渡しの状況

(ア)一般輸入分

 農林水産省では、一般輸入分のミニマム・アクセス米を国内においては主食用、加工用等に販売している。このほか、国際間の食糧援助規約により小麦換算で毎年30万tの穀物が年間最小拠出量とされたことから、これに相当する年間22万tの米穀(国内産米を含む。)を食糧不足に直面する被援助国等に対して無償援助(注2) するなど援助用途に活用することとしている。
 13年度から17年度までの一般輸入分の売渡数量の合計は183万tとなっている。このうち、米国産米の数量が85万tと最も多く、次いでタイ産米が59万tとなっている。
 用途別の売渡単価は、表4のとおりとなっている。このうち、加工用の1t当たりの売渡単価についてみると、13年度の103,789円から17年度は77,267円となっていて、下落傾向となっている。
 援助用の売渡単価は、13,486円から22,379円と推移しており、主食用及び加工用の売渡単価に比べて大幅に低くなっている。これは、売渡単価の算定において、被援助国等が一般的に国際市場から米を調達する場合を前提としており、米の国際取引の指標となっているタイ産米の市場価格が安価なためである。

 無償援助 実際の援助においては、外務省が行う無償資金協力により被援助国等に資金を供与し、これを基に被援助国等が援助物資を調達している。


表4 用途別の売渡単価(一般輸入分)の推移

(単位:円/t)


年度
区分
13
14
15
16
17
主食用
188,353
188,963
194,355
205,481
202,170
加工用
103,789
97,108
97,181
94,465
77,267
援助用
13,486
13,879
17,088
16,115
22,379
平均
57,448
52,703
56,182
61,158
52,592

(イ)SBS輸入分

 農林水産省では、食糧法に基づき、多様な外国産米の国内における適正な市場評価を得るため、SBS輸入による売買を実施している。SBS輸入は、輸入業者からの買入価格と買受者への売渡価格の差額である売買差額の大きいもの(上限額292円/kg)から順次契約予定数量に達するまで落札する方法で年4回程度行われており、合計10万t(玄米及び精米枠9万t、砕精米枠1万t)を輸入することとしている。
 SBS輸入は、売買が同時に行われるために在庫数量が発生しないこと、確実に買入価格よりも高く販売できることから、ミニマム・アクセス米に係る損益向上の要因である。
 しかし、13年度以降の玄米及び精米枠の売買差額についてみると、図2のとおり、16年度の第1回までは10万円/tを上回っていたが、16年度の第2回以降は10万円/tを下回っており、全体として縮小傾向となっている。

図2 玄米及び精米枠の売買差額等の推移

図2玄米及び精米枠の売買差額等の推移

イ 用途別の需要状況

 7年度から17年度までの買入数量651万tに対して、用途別の売渡数量は、表5のとおり、これまでに主食用77万t、加工用198万t、援助用149万t、その他2万t、計426万tが販売されている。

表5 用途別の売渡数量(一般輸入分及びSBS輸入分)の推移

(単位:t)


区分
年度
主食用
加工用
援助用
その他
合計
7
11,680
17,405
7
29,091
8
52,605
154,054
49
206,708
9
52,868
185,000
114,962
133
352,963
10
108,525
183,834
123,966
1,212
417,537
11
97,580
233,017
86,687
1,508
418,792
12
75,896
213,929
272,200
3,859
565,884
13
81,769
202,015
199,898
1,652
485,333
14
49,739
173,765
187,214
1,695
412,413
15
70,088
216,737
203,592
4,578
494,995
16
66,900
221,326
158,743
4,293
451,262
17
103,200
179,894
146,848
1,781
431,723
合計
770,850
1,980,976
1,494,110
20,767
4,266,707

注(1)
 その他は、カビの付着等による事故品の販売である。
注(2)
 用途別の売渡数量は、1t未満を四捨五入しているため、各年度の合計数量と一致しない。

 ミニマム・アクセス米の売渡しに当たっては、国内産米の需給状況等の様々な制約があることから、用途別に今後の需要の見通しについてみると、次のとおりとなっている。

(ア)主食用途の需要

 我が国の米の消費量は、長期的には減少傾向にあり、17年度では784万tとなっている。また、国民1人当たりの消費量は、最低輸入量の基準期間となった昭和61年から63年では71.0kgから73.4kgであったものが、平成17年度には61.4kgとなっており、基準期間の85%まで減少している状況である。
 国内産米の生産調整については、昭和46年度から本格的にその対策を実施しており、ミニマム・アクセス米の輸入を開始した当時の平成7年産の生産量が1074万t(作付面積211万ha、生産調整面積66万ha)だったものが、17年産では生産目標数量は851万tとなっている。このように、現在においても国内産米の潜在的な生産力が需要を大幅に上回っている状況下で、生産調整は米穀の需給の均衡を図るための重要な手段として位置付けられている。また、農林水産省では、米政策を抜本的に見直し、14年12月に決定した「米政策改革大綱」などにおいて、農業者や農業者団体が需要に即応した米づくりの本来あるべき姿の実現を22年度までに目指すなどとしている。
 このような状況において、主食用途への売渡しについては、国内産米の需給にできるだけ影響を与えないようにしているため、主に年間10万tを予定数量とするSBS輸入により行われている。
 したがって、米政策改革が推進され、農業者や農業者団体が主体的に需要に応じた生産に取り組む需給調整に移行している中で、在庫数量を削減するために主食用としてミニマム・アクセス米を販売することは、困難な状況となっている。

(イ)加工用途の需要

 焼酎用、味噌用、米菓用、米穀粉用等の加工用の需要量は、13米穀年度(注3) の128万tから17米穀年度の115万tと減少傾向となっており、ミニマム・アクセス米のほかに民間流通米、輸入米粉調製品等から供給されている。農林水産省では、毎月加工用の定例販売を実施していて、13年度以降、表5のとおり、年間17万tから22万tを供給しているが、今後、ミニマム・アクセス米の加工用途への売渡数量が大幅に増加することは見込めない状況となっている。

 米穀年度 前年の11月から当年の10月までの期間


(ウ)援助用途の需要

 農林水産省では、ミニマム・アクセス米の援助用途への活用については、被援助国等からの要望に配慮しつつ、国内産米の需給状況や財政状況等を踏まえて関係省庁と協議の上で決定し、13年度以降、表5のとおり、年間14万tから20万tを活用している。そして、ミニマム・アクセス米の運用方針により、ミニマム・アクセス米が主食用に消費された分については国内産米を援助用等に振り向けるなどとされていて、8年度から17年度までに政府所有の国内産米112万tが援助用途に活用されている。
 したがって、ミニマム・アクセス米の援助用途への売渡数量は、被援助国等の要望等により決定されること、国内産米についても援助用途に活用されることなどから大幅な増加が必ずしも望める状況となっていない。

(3)ミニマム・アクセス米の在庫状況について

ア 保管年数別の在庫状況

 ミニマム・アクセス米については、毎年度の売渡数量が買入数量を下回っていて、輸入年度が新しいものほど需要が多いことから、保管期間が長期化するものが増加しており、13年度以降の保管年数別の在庫数量は、図3のとおりとなっている。

図3 保管年数別の在庫数量の推移

図3保管年数別の在庫数量の推移

 13年度以降3年以上保管している在庫数量についてみると、13年度末6万t、14年度末8万t(対前年度比増加率31.9%)、15年度末20万t(同127.1%)、16年度末42万t(同112.0%)、17年度末66万t(同55.8%)と急増している。

イ 政府米の在庫状況

 農林水産省では、政府米として、ミニマム・アクセス米のほかに国内産米を買い入れている。そして、国内産米については、生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を備蓄していて、その備蓄水準を10年に1度の不作などの事態にも国内産米で対処し得る水準として100万t程度としている。13年度以降の政府米の在庫等の状況は、図4のとおりとなっている。

図4 政府米の買入れ、売渡し及び在庫の状況

図4政府米の買入れ、売渡し及び在庫の状況

 国内産米については、主食用への販売を行うとともに、保管期間が長期化している米穀のうち、品質劣化等により主食用として販売することが適当でないものについては、飼料用等の主食用以外の用途への供給を行うこととし、15年度から17年度までに国内産米63万tを飼料用として販売している。そして、13年度末の在庫数量198万tは、15年産の不作による大量の売渡し(15年度の売渡数量106万t)もあり、16年産及び17年産の買入れ(合計数量62万t)があったものの、17年度末には78万tと大幅に減少している。一方、ミニマム・アクセス米の在庫数量については、14年度末以降は国内産米の備蓄水準100万tを超える状況となっている。

(4)ミニマム・アクセス米に係る損益について

ア 損益の推移

 ミニマム・アクセス米に係る損益について、7年度以降の推移をみると、図5のとおり、8年度から10年度まではほぼ損益が均衡し、11年度から13年度までは利益が生じている。しかし、14年度以降は損失が生じており、その主な要因を年度ごとにみると、次のとおりとなっている。
 14年度は売上高の大幅な減少により、15年度は売上高が増加したものの売上原価の大幅な増加及び事業管理費の増加により、16年度は売上高が減少し、かつ売上原価が大幅に増加したことにより、それぞれ損失が生じている。そして、17年度は、売上原価が減少しているものの、なお売上高を上回っているため、損失が生じている。

図5 ミニマム・アクセス米に係る損益の推移

図5ミニマム・アクセス米に係る損益の推移

 平成13年度の損益については、他会計より受け入れた163億円を除いている。


 また、売買損益についてみると、表6のとおり、14年度では、売買利益が生じているものの、売上高の減少により前年度と比べて大幅に減少している。そして、15年度以降では、売上原価がそれ以前に比べて大幅に増加しており、15年度では、売買利益が生じているものの、16、17両年度には売買損失が生じている。

表6 ミニマム・アクセス米に係る売買損益の状況

(単位:百万円、%)


区分
年度
売上高(A)
売上原価(B)
売買利益(△損失)
(A-B)
売上高
対前年度伸び率
前年度末在庫評価額
(a)
本年度買入価額
(b)
本年度末在庫評価額
(c)
売上原価
(a+b-c)
対前年度伸び率
売買利益
(△損失)
対前年度伸び率
13
47,236
△5.9
40,745
28,868
44,874
24,740
△16.9
22,496
10.2
14
33,655
△28.8
44,874
34,861
57,652
22,083
△10.7
11,572
△48.6
15
50,548
50.2
57,652
46,663
55,049
49,267
123.1
1,281
△88.9
16
43,023
△14.9
55,049
36,159
28,000
63,207
28.3
△20,183
△1675.4
17
41,663
△3.2
28,000
52,321
36,423
43,898
△30.5
△2,234
△88.9

イ 売上原価算出のための年度末在庫評価額

 15年度以降、売買損益の悪化要因となっている売上原価は、ミニマム・アクセス米の前年度末の在庫評価額に当年度の買入価額を加えた額から、当年度末の在庫評価額を差し引いて算出される。
 13年度以降の年度末在庫評価額等の推移をみると、表7のとおりとなっている。

表7 年度末在庫評価額等の推移

年度
区分
13
14
15
16
17
玄米及び精米
主食用又は加工用
数量(t)
682,358
903,399
759,782
216,090
258,398
評価単価(円/t)
52,569
53,127
58,723
51,154
58,897
評価額(千円)
35,870,884
47,994,913
44,616,697
11,053,896
15,218,917
援助用
数量(t)
200,000
201,000
616,000
1,244,823
1,153,308
評価単価(円/t)
12,408
11,170
11,170
11,170
11,170
評価額(千円)
2,481,600
2,245,170
6,880,720
13,904,683
12,882,454
飼料用
数量(t)
300,000
評価単価(円/t)
11,170
評価額(千円)
3,351,000
合計
数量(t)
937,779
1,181,354
1,448,878
1,529,137
1,818,686
評価単価(円/t)
43,518
45,362
37,994
18,311
20,028
評価額(千円)
40,810,374
53,589,087
55,049,203
28,000,736
36,423,908

注(1)
 合計は、玄米及び精米のほか、加工用に販売する場合に主食用への横流し防止のために精米を破砕した破砕精米及び砕精米を含む。
注(2)
 平成13、14両年度の合計評価額は、他機関に貸し付けている分が含まれていないため、表6の本年度末在庫評価額と一致しない。

(ア)援助用の評価数量

 農林水産省では、ミニマム・アクセス米の年度末の在庫評価については、主食用又は加工用、援助用等の用途別に行っている。援助用とした数量については、14年度までは実際の援助実績と同程度の20万tとしていたが、15年度以降は大幅に増加させている。これは、14年度までは援助用に売却する予定数量を除いた残り全数量を主食用又は加工用としていたが、15年度からは主食用又は加工用に販売可能な一定数量を評価した上でその残数量を援助用に充てるとして評価することにより、実際の販売状況をより一層損益に反映させることにしたためである。これにより、15年度には61万t、16年度には82万t、17年度には41万tをそれぞれ主食用又は加工用から援助用に振り替えている。
 そして、農林水産省では、18年度に新たに飼料用としての販売を予定(18年7月に販売を開始)していることから、17年度末に30万tを援助用から飼料用に振り替えている。

(イ)用途別の評価基準価格

 年度末在庫評価額の算出に用いる用途別の評価基準価格についてみると、食糧管理特別会計法施行令(大正10年勅令第224号)等に基づき、次のとおりとしている。主食用又は加工用については、取得価格が修正売価評価価格(翌年度において確実に予定できる売却価格から売却されるまでの間に生じる保管料等の経費を控除した価格)よりも低いことから、取得価格を評価基準価格としており、表7のとおり、1t当たりの評価単価は51,154円から58,897円となっている。そして、援助用については、外国産米の国際取引の指標となっている価格から荷役等に要する費用を差し引いた売却見込価格(原則として、当年度の1月から3月までの間における売却実績平均価格)が取得価格よりも低いことから、売却見込価格を評価基準価格としており、1t当たりの評価単価は11,170円から12,408円となっている。また、飼料用の1t当たりの評価単価は援助用と同額となっている。このため、援助用及び飼料用の評価単価の方が主食用又は加工用の評価単価より39,984円から47,727円も低い価格となっている。
 これらにより、ミニマム・アクセス米全体の1t当たりの評価単価は、18,311円から45,362円となっている。

(ウ)評価損の発生

 主食用又は加工用から援助用に振り替えた場合には、評価損が発生することになる。17年度についてみると、売買損益には41万tに係る評価損が含まれている。これは、年度首における主食用又は加工用の評価単価が取得価格である1t当たり51,154円に対し、年度末における援助用の1t当たりの評価単価が売却見込価格である11,170円であるためで、164億円が評価損として売上原価に含まれていることになる。
 したがって、国内需要の増加が見込めない状況のままでは、今後も年度末の在庫評価において、年間の輸入数量と国内の売渡数量との差に相当する分が新たに援助用及び飼料用として評価されることになり、多額の評価損が生じることになる。

ウ 損益における管理費の状況

 ミニマム・アクセス米に係る管理費は、事業管理費と一般管理費からなっている。事業管理費は、保管料や運送費等の業務に直接要する費用である。一般管理費は、食糧管理業務等に共通する人件費、事務費等であり、食糧管理3勘定及び輸入飼料勘定の年間買入高等の比率を基に割り掛けて算出されるものである。管理費は、表8のとおり、保管料の大幅な増加にもかかわらず、毎年その増加額相当程度の一般管理費が減少していることにより、171億円から185億円とほぼ横ばいで推移している。

表8 管理費の推移

(単位:百万円)


区分\年度
13
14
15
16
17
管理費(〔1〕+〔2〕)
18,549
(100)
18,527
(100)
17,172
(93)
18,206
(98)
18,542
(100)
 事業管理費〔1〕
11,024
(100)
11,709
(106)
13,636
(124)
15,649
(142)
17,001
(154)
  うち保管料
8,739
(100)
9,859
(113)
12,024
(138)
13,674
(156)
15,653
(179)
 一般管理費〔2〕
7,525
(100)
6,818
(91)
3,535
(47)
2,556
(34)
1,540
(20)
  うち一般事務費
7,148
(100)
7,070
(99)
3,529
(49)
1,964
(27)
1,683
(24)
  うちサイロ・倉庫運営費
0
411
(100)
408
(99)
1,044
(254)
1,347
(328)

注(1)
 事業管理費には、保管料のほかに運送費、加工費、流通業務取扱費がある。
注(2)
 一般管理費は、消費税の還付等があるため、一般事務費及びサイロ・倉庫運営費の合計額と一致しない。
注(3)
 平成13年度のサイロ・倉庫運営費は、政府倉庫跡地の売払収入があったため少額となっている。
注(4)
 ( )書きは、平成13年度(サイロ・倉庫運営費は14年度)を100とした場合の指数である。

 一般管理費は、主に人件費等の一般事務費と政府倉庫を運営するためのサイロ・倉庫運営費からなっている。このうち、サイロ・倉庫運営費については、ミニマム・アクセス米の在庫数量が増大したことなどにより急増しているが、一般事務費については15年度から激減している。これは、15年7月に食糧庁を廃止して組織改編を実施し、食糧管理特別会計に所属する人員の一部を一般会計に振り替えたことにより、同特別会計が負担する一般事務費が減少したためであり、17年度の一般事務費は13年度の4分の1まで減少し、保管料の1割程度となっている。この結果、保管料の増加にもかかわらず、一般管理費が減少し、管理費は横ばいで推移しているが、15年度では、一般事務費の対前年度減少額が35億円と保管料の対前年度増加額21億円を大幅に上回っていたのに対し、17年度では、一般事務費の対前年度減少額が2億円と保管料の対前年度増加額19億円を大幅に下回っている。
 したがって、ミニマム・アクセス米の在庫数量の増加に伴い、保管料が毎年度大幅に増加している状況をみると、今後は、保管料の増加額に見合う一般管理費の減少は見込めないことから、管理費全体が増加することによる損益の悪化が予想される。

エ 評価損を除いた損益の推移

 損益は、13年度に39億円の利益となっていたが、14年度から17年度までは損失となっている。損益には、前記のとおり、年度末の在庫評価における評価損が含まれている。評価損は、将来の販売時に見込まれる損失をあらかじめ当年度に計上したものであり、当年度のミニマム・アクセス米の実際の売買から生じる損益とは、直接には関係のない損失である。そこで、実際の売買から生じる損益の状況をみるため、評価損を除いた売上原価に基づいて、13年度以降の損益を試算すると、表9のとおりとなっている。

表9 評価損を除いた損益の推移

(単位:百万円)


区分\年度
13
14
15
16
17
一般輸入
売上高(A)
23,305
19,223
23,606
23,905
17,632
売上原価(B)
17,381
16,324
38,683
52,680
26,836
評価損(C)
8,032
8,433
29,292
39,083
16,447
評価損を除いた売上原価(D)=(B)-(C)
9,349
7,891
9,391
13,597
10,389
評価損を除いた売買利益(△損失)(E)=(A)-(D)
13,956
11,332
14,215
10,307
7,243
SBS輸入
売上高(F)
23,930
14,431
26,942
19,118
24,031
売上原価(G)
7,358
5,758
10,584
10,527
17,061
評価損(H)
評価損を除いた売上原価(I)=(G)-(H)
7,358
5,758
10,584
10,527
17,061
評価損を除いた売買利益(△損失)(J)=(F)-(I)
16,572
8,672
16,357
8,591
6,969
評価損を除いた売買利益(△損失)計(K)=(E)+(J)
30,528
20,005
30,573
18,899
14,212
管理費(L)
18,549
18,527
17,172
18,206
18,542
評価損を除いた利益(△損失)(M)=(K)-(L)
11,978
1,478
13,400
692
△4,329
評価損(N)=(C)+(H)
8,032
8,433
29,292
39,083
16,447
決算上の利益(△損失)(O)=(M)-(N)
3,946
△6,954
△15,891
△38,390
△20,776

 平成13年度の「評価損を除いた利益」及び「決算上の利益」については、他会計より受け入れた163億円を除いている。


 評価損を除いた損益についてみると、13年度から16年度までは利益が生じている。しかし、17年度では、一般輸入の売渡単価が低くなったり、SBS輸入の売買差額が小さくなったりなどして売買利益が減少し、また、管理費において保管料が増加したことなどにより、評価損を考慮しなくても43億円と多額の損失が生じている。
 ミニマム・アクセス米に係る決算上の損益は、14年度から17年度までは多額の損失が生じている。これは、評価損の増加によるところが大きいが、評価損を考慮しなくても、17年度には多額の損失が生じている。ミニマム・アクセス米の国内需要の増加が見込めない状況からみると、今後も、多額の評価損による損失が生じていくことが懸念される。また、在庫数量の増加が見込まれることから、それに伴う保管料の増こうなどによる更なる損益の悪化も懸念される。

(5)倉庫別の保管状況について

 農林水産省では、ミニマム・アクセス米の保管については、自ら所有する政府倉庫のほか、倉庫業法(昭和31年法律第121号)に基づき登録を行った倉庫(以下「営業倉庫」という。)等のうち、米穀の安全性及び品質を保持することができる倉庫で農林水産省が指定した倉庫(以下「政府指定倉庫」という。)に寄託して行っている。そして、政府指定倉庫は、その所在する場所により港頭倉庫と内陸倉庫に区分され、その標準収容力については、13年度から17年度までの間379万tから393万tで推移している。

ア 港頭倉庫の保管状況

 農林水産省では、ミニマム・アクセス米を輸入する船舶の受入れに当たり、円滑な需給操作の確保及び合理的かつ経済的な輸入業務の実施のため、収容余力等の状況を的確に把握し、港頭倉庫を確保することとしている。
 港頭倉庫の収容余力等は、表10のとおりとなっている。

表10 港頭倉庫の収容余力等の推移

(単位:千t、%)


年度末
標準収容力〔1〕
政府米在庫数量
収容余力〔3〕
収容余力〔3〕/〔1〕
国内産米
ミニマム・アクセス米
合計〔2〕
在庫率〔2〕/〔1〕
13
1,996
401
889
1,291
64.7
303
15.2
14
2,119
288
1,041
1,330
62.8
360
17.0
15
2,160
325
1,119
1,445
66.9
224
10.4
16
2,309
246
1,185
1,432
62.0
483
20.9
17
2,438
143
1,498
1,630
66.9
466
19.1

注(1)
 倉庫内に民間物品も保管されているなどのため、政府米在庫数量の合計に収容余力を加えても標準収容力と一致しない。
注(2)
 収容余力は、当年度末のおおむね2箇月前に農林水産省が倉庫業者から聞き取りした見込みの数値である。

 港頭倉庫の標準収容力は、新たに倉庫の指定を行うなどして増加していることから、在庫率は62%から66%で推移している。しかし、収容余力をみると、民間物品の在庫等の影響により22万tから48万t(収容余力率10%から20%)となっており、15年度末の収容余力は22万t(同10%)となっていて、ひっ迫した状況となっていた。港頭倉庫は、ミニマム・アクセス米を受け入れていくための重要な買入倉庫であるが、17年度末では16年度末と同程度の収容余力を確保しているものの、今後、在庫数量が増加していくことにより、収容余力がひっ迫する可能性がある。

イ 政府倉庫の保管状況

 農林水産省では、17年度末現在、9箇所の政府倉庫(注4) を所有しており、標準収容力は15万tとなっている。
 政府倉庫の運用方法については、政府倉庫が米穀を安定的に供給するための倉庫であり、不作時や地震等の災害時に対応する備蓄倉庫であるとして、国内産米を優先して備蓄することとしている。また、ミニマム・アクセス米の受入れに当たっては、在庫率がおおむね60%以下で、かつ、早期出庫が見込まれる場合に限り、買入倉庫として活用することができるとしている。
 そして、作柄が不作であった15年度に国内産米の政府米が大量に販売されたことから、倉庫内に空き面積が生じた15、16両年度には、ミニマム・アクセス米が国内産米よりも多く保管されていた。その後、16年産及び17年産の国内産米を買い入れて備蓄したため、17年度末の在庫数量は11万t(うち国内産米6万t)となっている。このように、政府倉庫には国内産米を優先して備蓄していることなどから、今後も国内産米の在庫状況を考慮してミニマム・アクセス米を保管していくことになる。

 9箇所の政府倉庫 深川、立川、金沢、大江、茨木、松江、岡山、広島、福岡各政府倉庫


(6)農林水産省が実施している対応策について

ア 保管料の見直し

 農林水産省では、政府米の寄託に当たり、政府指定倉庫を経営する倉庫業者から委任を受けた倉庫業団体等と「政府所有食糧及び農産物等寄託契約」を締結している。営業倉庫の保管料は、この寄託契約に基づき、倉庫が所在する地域による級地区分別に算定されることになっている。
 農林水産省では、政府米の在庫数量が増大したことなどから、14年10月に保管料の見直しを実施している。その実施内容は、これまで級地区分を全体で3区分(甲、乙、丙)としていたが、このうち相対的に保管料の高い甲及び乙において、従来の保管料を2%、4%、6%引き下げた区分にそれぞれ細分化して全体で7区分とした。そして、倉庫業者ごとの判断により細分化した甲又は乙の中で保管料を選択させる競争原理を導入した。
 このような保管料の見直しにより、1t当たりの年間保管料は13年度の10,268円から17年度の9,499円に減少している。

イ 内陸倉庫の活用状況

 農林水産省では、14、15両年度に、保管料の節減及び港頭倉庫における収容余力の確保を図るため、倉庫業者が運送費等を負担する場合に限り、ミニマム・アクセス米を港頭倉庫から保管料の安価な内陸倉庫に移送している。その主な内容は、次のとおりである。
〔1〕 対象とするミニマム・アクセス米は、前年度及び当年度契約分のうち、早期に需要が見込まれないものとする。
〔2〕 内陸倉庫を活用する場合は、港頭倉庫からおおむね100km以内に所在し、倉庫業者が希望した場合とする。
 14、15両年度に内陸倉庫に移送した数量は計24万t(年間の節減保管料1億3900万円)となっており、一定の保管料の節減と港頭倉庫の収容余力の確保が図られている。しかし、16、17両年度については、移送した数量は計2万t(同1200万円)と大幅に減少している。
 これは、14、15両年度の内陸倉庫の活用により一定の港頭倉庫の収容余力が確保できたことと、運送費等は倉庫業者が負担していることから、県内の内陸倉庫への移送のみで、県外の内陸倉庫への移送が実施されていないためである。

ウ 新規用途のための無償交付の状況

 農林水産省では、加工用への需要開発を図るため、米穀を利用した新製品の開発を促進するための試験研究を実施する者に対し、ミニマム・アクセス米を含む政府米を無償で交付することとしている。このうち、ミニマム・アクセス米を無償交付した実績をみると、13年度は2件計10t、14年度は2件計3t、15、16両年度は実績がなく、17年度は2件計2tと非常に少ないものとなっている。国内産米の需給にできるだけ影響を与えないことを考慮すると、今後も新規用途の開発については、これまで米穀を原材料として使用していなかった分野への働きかけが重要となってくる。

4 本院の所見

 農林水産省では、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、国内における米穀の需給に関係なく、7年度から17年度までにミニマム・アクセス米651万t( 買入金額計4173億円)を輸入している。このうち、426万t(売渡金額計4508億円)を主食用、加工用等に販売しているものの、毎年度の売渡数量が買入数量を下回っているため、17年度末現在、在庫数量は181万tとなっている。その保管料は、17年度で170億円、7年度から17年度までの総額は937億円と多額に上っている。そして、新たな農業合意が得られるまでの間は、最低輸入量76.7万玄米tを維持することとされている。
 ミニマム・アクセス米の売渡しに当たり、主食用途としては、現在も国内産米の生産調整が行われていることから、国内産米の需給にできるだけ影響を与えないように販売している現状を変えることが困難な状況である。そして、加工用途については、毎年度20万t程度の売渡数量で推移しており、需要量の減少傾向にある中では今後大幅な売渡数量の増加が見込めず、また、援助用途についても、被援助国等からの要望等に基づいて決定されることなどから売渡数量の増加が必ずしも望める状況とはなっていない。
 このような需要状況の中、毎年現在と同じ数量のミニマム・アクセス米を輸入すれば、今後も在庫数量が増加することにより、港頭倉庫の収容余力がひっ迫し、また、保管料が増こうすることが予測される。そして、主食用又は加工用の需要が見込めないミニマム・アクセス米については、年度末の在庫評価に当たり、援助用等の評価単価で評価するため、買入単価を大幅に下回り、評価損が発生することになる。しかも、17年度には評価損を考慮しなくても多額の損失が生じている状況である。また、18年7月から飼料用に30万tを販売することとしていることから、在庫縮減策の一つとして効果を発現して在庫数量の増加に歯止めがかかることも期待されるが、損益上の課題は残ることになる。このように、ミニマム・アクセス米については、今後も多額の保管料を負担し、新たに評価損が生じることなどにより、損益の悪化が懸念される。
 したがって、農林水産省においては、今後もガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づくミニマム・アクセス米の受入れに当たっては、ミニマム・アクセス米に係る損益の悪化要因に対応して、保管料の節減、新規需要の拡大等損益の健全化に向けた更なる努力が望まれる。