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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年9月

独立行政法人中小企業基盤整備機構(旧・中小企業総合事業団)の実施する高度化事業に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

 上記第2で記述してきたとおり、高度化事業に対する新規の貸付けが減少する一方で繰上償還が高水準で推移して余裕金が増加するとともに不良債権の処理が遅れている事態は、高度化事業に対する貸付制度が中小企業者の経営環境に十分対応できておらず、健全な姿になっているとはいえない状況にあると認められる。
 機構では、現在、高度化事業に対する貸付制度について事業要件の緩和をはじめとする制度改正や貸付手続の簡素化等の運用改善を行って利便性の向上を図り、業界団体等に対する説明会の開催等により潜在需要の喚起に努めるとともに、各種の出資事業を設けることにより、中小企業者の多様な資金ニーズに対応しようとしている。また、近年、環境保全の設備投資や異分野業種間の事業連携の必要性が高まってきたことから、今後は高度化資金を活用した環境保全や異分野連携のための施設整備を促進することとしている。
 しかし、上記の方策については、共同事業に対する中小企業者の意識の変化などもあり、これまで行われてきたような事業要件の緩和などの制度の見直しだけでは、貸付実績が急激に減少している現状からみて貸付実績の大幅な改善にはつながらない。また、債権管理に要する事務負担の増加などに伴い、機構とともに事業を推進する立場にある都道府県の多くが高度化事業への取組に消極的となっている現状のままではその効果の十分な発現は見込めない。
 したがって、機構では、制度利用者の立場に立った貸付手続の一層の簡素化を図ることはもとより、機構が都道府県を介さず直接中小企業者等に貸付けを行う方式(B方式)の適用拡大を検討するなどして、制度の利用促進に努めるとともに、都道府県の取組が消極化しないようにするための支援体制の整備が可能か否かを含め、都道府県の担うべき役割を検討していくことが必要である。加えて、債権管理態勢のより一層の整備を図り、多額に上っている不良債権の処理を促進することが急務である。
 そして、余裕金については、機構は、高度化事業等についての前記の方策及び先般18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」を受けて機構が新たに実施する地域経済活性化のための事業への活用などにより解消するとしているが、なお解消が困難と見込まれる場合には、事業の実施状況に見合った財源の規模とするような措置を執ることも必要である。
 経済産業大臣は、通則法に基づき、機構の業務運営に関する中期目標を定め、その期間(16年7月に策定された中期目標の期間16年7月〜21年3月)終了時において、業務を継続させる必要性など業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講ずることとされている。
 ついては、中期目標の期間において、機構が講ずる方策がどのような効果を上げ、ひいては余裕金の解消につながっていくかなど、高度化事業に対する貸付制度の運営状況等について引き続き注視していくこととする。