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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成18年10月

地方財政の状況に関する会計検査の結果について


(2)職員の福利厚生事業への支出状況

ア 福利厚生事業費

 地方公共団体における職員の福利厚生事業費は、その性質から人件費の中に含まれると思われるが、地方公共団体に係る決算統計などでは福利厚生事業費として区分された数値は示されていない。ただし、地方公共団体の福利厚生事業費において大きな割合を占める職員互助組合等に対する補助金の額は、普通会計については性質別歳出決算の人件費の内訳として示されており、16年度は全国で計602億6786万円となっている。この普通会計の職員互助組合等補助金の昭和62年度から平成16年度までの推移は図2—2のとおりとなっており、9年度をピークとして10年度以降は減少している状況がみられる。

図2—2 普通会計の職員互助組合等補助金の推移

図2—2普通会計の職員互助組合等補助金の推移

 総務省では、17年3月に「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」を策定し、地方公共団体に対して、職員に対する福利厚生事業については、「住民の理解が得られるものとなるよう、点検・見直しを行い、適正に事業を実施すること」及び「人事行政運営等の状況の公表の一環として福利厚生事業の実施状況等を公表すること」などの指針を示し、各地方公共団体において、より一層積極的な行政改革の推進に努めるよう通知している。そして、18年度には、この指針を受け、各地方公共団体において福利厚生事業の見直しがどのように行われたかについて総務省は調査を実施している。

イ 職員互助組合等

 実地検査の対象とした15道府県及び342市町村における職員互助組合等の状況については、次のとおりである。
(ア)道府県では、一般の知事部局の職員、学校教職員、警察職員などの別に複数の職員互助組合等が設置され、各職員は該当する職員互助組合等に加入している。
 なお、学校教職員互助組合等には、道府県の学校教職員のほか市町村の学校教職員が加入している場合が多い。

職員の福利厚生事業への支出状況の図1

(イ)政令指定都市を含めた市町村では、様々な形態となっているが、おおむね次のような類型に分類される。なお、職員互助組合等の加入がみられない市町村もある。
〔1〕 各市町村に一つの職員互助組合等が設置され、職員が加入している。

(イ)政令指定都市を含めた市町村では、様々な形態となっているが、おおむね次のような類型に分類される。なお、職員互助組合等の加入がみられない市町村もある。〔1〕各市町村に一つの職員互助組合等が設置され、職員が加入している。

〔2〕 各市町村に一般部局のほか、学校教職員、交通局、水道局などの部局別に複数の職員互助組合等が設置され、各職員は該当する職員互助組合等に加入している。

〔2〕各市町村に一般部局のほか、学校教職員、交通局、水道局などの部局別に複数の職員互助組合等が設置され、各職員は該当する職員互助組合等に加入している。

〔3〕 各市町村には職員互助組合等が設置されていないが、道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。

〔3〕各市町村には職員互助組合等が設置されていないが、道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。

〔4〕 各市町村に職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。また、職員は道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等にも加入している。

〔4〕各市町村に職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。また、職員は道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等にも加入している。

(ウ)市町村職員のうち学校教職員については、市町村に設置される職員互助組合等には加入しないで、道府県の学校教職員互助組合等に加入している場合が多い。

 これらの職員互助組合等に対しては、各地方公共団体から補助金が交付される場合がほとんどであり、職員互助組合等は、主に職員による掛金と地方公共団体からの補助金を財源として事業を行っている。事業の内容は、後述する職員個人に対する給付事業のほか、職員のための食堂、独身寮等の運営の事業などを行っている職員互助組合等もある。
 実地検査の対象とした15道府県が職員互助組合等に対して16年度に交付した補助金額は、表2—10のとおりであり、100万円(千葉県)から49億円(大阪府)となっている。

表2—10 15道府県の職員互助組合等補助金16年度交付額
(単位:千円)

区分
知事部局
学校教職員
警察
北海道
528,021
785,879
217,315
1,531,215
山形県
90,726
75,613
25,157
191,496
栃木県
184,629
393,250
73,381
651,260
千葉県
1,002
1,002
山梨県
134,932
143,612
64,336
47,850
390,730
長野県
199,258
468,809
85,655
753,722
静岡県
328,968
550,623
318,634
1,198,225
滋賀県
183,745
314,300
55,722
553,767
大阪府
796,645
2,663,255
1,522,929
4,982,830
兵庫県
449,265
1,236,112
269,481
1,954,858
鳥取県
56,919
86,959
28,726
172,604
岡山県
76,142
281,300
70,763
428,205
愛媛県
58,128
92,026
25,494
175,648
福岡県
275,451
951,370
296,951
1,523,772
宮崎県
92,063
151,074
34,800
277,937
(注)
 山梨県の学校教職員については、県教職員互助組合(小中学校教職員が加入)と県高等学校教職員互助会があり、上段の数値が前者、下段の数値が後者に対する補助金額である。


 また、実地検査の対象とした342市町村が職員互助組合等に対して16年度に交付した補助金について、交付額の区分別に市町村数を示すと表2—11のとおりである。職員互助組合等に職員が加入していなかったり、加入していても補助金を交付していない市町村もあるが、多くの市町村では職員互助組合等に対する補助金の交付が行われている。市町村のうち6政令指定都市は、補助金の支給額は1億円以上の区分に該当するが、特に大阪市は4職員互助組合等に対する補助金額の合計が73億4222万余円となっている。

表2—11 職員互助組合等に対する補助金額の区分別の該当市町村数
支給額の区分
0円
100万円未満
100万円〜
1000万円未満
1000万円〜
5000万円未満
5000万円〜
1億円未満
1億円以上
北海道管内
 
2
19
13
1
1
山形県管内
 
 
14
2
1
 
栃木県管内
6
1
3
3
 
1
千葉県管内
 
 
4
5
2
2
山梨県管内
2
4
5
1
 
 
長野県管内
1
9
15
2
1
 
静岡県管内
2
5
12
9
1
2
滋賀県管内
 
 
23
4
1
 
大阪府管内
 
 
 
1
2
9
兵庫県管内
 
 
 
3
3
5
鳥取県管内
 
 
26
2
3
 
岡山県管内
1
1
26
4
 
2
愛媛県管内
 
12
18
4
1
1
福岡県管内
 
 
9
7
 
4
宮崎県管内
2
7
7
2
1
 
14
41
181
62
17
27

 実地検査の対象とした15道府県及び342市町村において、職員が加入している職員互助組合等、各職員互助組合等に対する16年度補助金交付額、補助金負担率(職員互助組合等における職員の掛金と地方公共団体の補助金の収入合計額に対する補助金額の割合)、職員1人当たりの補助金額を示すと、巻末別表3のとおりである。職員互助組合等に対する地方公共団体の補助金については、条例等で負担率などが規定されていない場合が多く、補助金負担率及び補助金額は地方公共団体により差異がみられている。

ウ 個人に対する給付事業

 福利厚生事業は、職員の保健、元気回復その他厚生に関する事業であるが、その多くは職員互助組合等を通じて実施されている。そして、前記「平成15年度決算審査措置要求決議」において退職給付金や祝い金などの現金給付、旅行券や家電製品などの物品給付の指摘があったことから、職員互助組合等が16年度に実施している個人に対する給付事業について、地方公共団体を実地に検査したところ、現金給付のほか、商品券、旅行券、記念品等の物品給付など各種の事業が実施されており、多くの事業は地方公共団体からの補助金の対象となっていた。
 実施されている事業の種類は、各職員互助組合等により差異がみられるが、主な事業について、多くの職員互助組合等で共通的に実施されている事業、一部の職員互助組合等で実施されている事業を示すと表2—12のとおりである。

表2—12 職員互助組合等による個人に対する給付事業

[多くの職員互助組合等で共通的に実施されている事業]

事業の種類
事業の概要
祝金
結婚祝金
結婚記念祝金
出産祝金
入学祝金
卒業祝金
特別給付金
職員の結婚時に給付
職員の結婚後25年目等の時期に給付
職員、その配偶者の出産時に給付
扶養親族の小中学校等の入学時に給付
扶養親族の小中学校等の卒業時に給付
結婚祝金等の各種祝金を受けていない職員に給付
弔慰金
死亡弔慰金
親族死亡弔慰金
職員の死亡時に給付
職員の親族の死亡時に給付
見舞金
災害見舞金
家屋、家財等に対する被害に対する給付
永年勤続
永年勤続表彰
職員の勤続10年、20年、30年等の時期に給付
退会
退会給付金
互助組合等の退会時に在会年数等に応じた給付
医療
医療費助成
入院・療養見舞金
人間ドック等助成
医療費の自己負担額に対する助成
傷病による入院等に対する給付
人間ドック、生活習慣病検診等の受診費用を助成
レクリエーション等
宿泊費助成
スポーツ・文化施設等利用助成
スポーツ観戦・芸能鑑賞等助成
各種講座受講助成
旅行による宿泊費を助成
施設の利用料金を助成
入場料金を助成、利用券等の配付
通信講座等による講座の受講費を助成

[一部の職員互助組合等で実施されている事業]
事業の種類
事業の概要
祝金
就職祝金
壮健・還暦等祝金
住宅建築祝金
成人祝金
子の結婚祝金
扶養親族が高校進学せず就職した時に給付
職員が55歳、60歳、70歳等になった時に給付
家屋を新築又は購入した場合に給付
職員、その扶養親族の成人時に給付
職員の子の結婚時に給付
見舞金
障害見舞金
傷病見舞金
特別見舞金
傷病による障害が残った場合に給付
傷病により退職した場合に給付
生活が困窮し救済が必要な場合に給付
医療
家政婦利用助成
鍼灸、マッサージ等助成
メガネ購入助成
入院時に家政婦を利用した場合に費用を助成
施術料を助成
メガネ等を購入した場合に費用を助成
レクリエーション等
リフレッシュ助成
研修旅行等助成
自己啓発活動助成
サークル助成
親睦会等助成
カフェテリアプラン等
職員が30歳、40歳、50歳等になった時に旅行券等を給付
職場で実施する研修旅行等に対する助成
自己啓発のための研修を行う職員に対する給付
職場のスポーツ・文化サークルに対する助成
忘年会等の職員の親睦に係る会合の開催に対する助成
毎年所定の金額の範囲内で、職員が多様な福利厚生メニューの中から選択して受ける給付
その他
遺児給付金
休職給付金
育児休業給付金
介護休暇給付金
介護給付金
職員死亡時に18歳未満の子がある場合に給付
職員の休職時に給付
職員の育児休業時に給付
職員の介護休暇取得時に給付
職員等が介護認定を受けた時に給付

 また、地方公共団体からの補助金を伴う個人に対する給付事業のうち退会給付金について、次のように多額の給付が行われている事例がみられた。

<事例1>

 大阪府市町村職員互助会は、大阪市を除いた大阪府内市町村の一般職員を対象とした職員互助組合等であり、市町村の補助金負担率は16年度は62.2%となっている。同互助会では、退職した会員に対して、退会給付金を「給料月額×1/30×在会年数に応じた所定の給付日数」により算出される額で支給しており、この退会給付金は16年3月31日に廃止されたが、16年4月1日以降も経過措置で継続して給付が行われた。また、同互助会では、退会給付金を廃止した代わりに、16年4月1日からは退職した会員に対して、退会餞別金を「給料月額×1/30×16年4月以降の在会月数に応じた所定の給付日数」により算出される額で、16年度は退会給付金と併せて支給された。そして、同互助会に係る市町村のうち実地検査の対象とした11市町の職員に対して16年度に支給した退会給付金は、1,597人(この受給者には15年度末の退職者が含まれる。)、65億5910万余円(1人当たり平均410万余円)、及び退会餞別金は、378人1789万余円(1人当たり平均4万余円)となっており、退職した職員に対して、各市町村から支給される退職手当とは別に同互助会から公費を財源とした給付金が支給されている。なお、退会給付金の経過措置と併せて退会餞別金は17年11月に廃止された。

<事例2>

 静岡県磐田市は17年4月1日に市町村合併を行っているが、合併前の旧磐田市には、「磐田市外2組合職員互助会」が設置されており、市の補助金負担率は50%となっていた。合併に伴って互助会は新たな組織になり、旧互助会の会員資格は喪失することになることから、旧互助会では、16年度決算に当たり、災害発生、退職者増加、組織解散等の不測の事態に備えるため、発足時から積み立ててきた積立金約11億円のうち10億円を取り崩した資金を財源として、会員の退会に係る「脱退慰労金」として、17年3月に会員1,362人に総額10億9905万余円(平均80万余円)が支給された。なお、磐田市では、この脱退慰労金の支給を受けた全職員に対し、一時所得として確定申告をするよう通知を発している。

エ 健康保険組合の保険料負担

 地方公務員における医療給付等の短期給付は、地方公務員共済組合によって行われる場合がほとんどであり、地方公務員共済組合の短期給付に要する費用は、職員である組合員の掛金と地方公共団体の負担金でそれぞれ2分の1の割合で負担するとされている。
 一方、地方公務員等共済組合法公布前に健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく健康保険組合を組織していて当該健康保険組合を存続させない議決をしなかった一部の地方公共団体については、地方公務員等共済組合法の適用が除外され、健康保険組合が当該地方公共団体の職員に対する短期給付を実施することとされている。健康保険法では、健康保険事業に要する費用に充てるため徴収する保険料は、被保険者及び被保険者を使用する事業主がそれぞれ2分の1を負担することが原則とされているが、同法第162条では、健康保険組合の特例として、その規約で定めるところにより、事業主の負担すべき保険料の負担割合を増加することができるとされている。
 実地検査の対象とした地方公共団体のうち17市では、健康保険組合を設立して、短期給付の一部を実施している。これらの市がその健康保険組合に対して事業主として負担する保険料の16年度の負担割合は表2—13のとおりとなっており、すべての市で上記の健康保険組合の特例としての事業主の保険料負担割合の増加が行われ、市の保険料負担割合が50%を超えて60.0%から67.5%となっていて、市の支出により職員の保険料負担が軽減されている。

表2—13 健康保険組合の16年度保険料負担割合
団体名
(組合名)
健保組合員数(人)
保険料総額(千円)
市負担割合a(%)
市の保険料負担額b(千円)
bのうちa-50%に係る割増負担額(千円)
浜松市
(浜松市職員健康保険組合)
5,233
1,279,010
62.3
796,823
157,318
大阪市
(大阪市健康保険組合)
(大阪市交通局健康保険組合)
37,726
8,029
11,110,433
2,680,223
67.2
67.1
7,469,514
1,798,124
1,914,297
458,012
(大阪府市町村職員健康保険組合)
堺市
池田市
吹田市
高槻市
枚方市
松原市
門真市
摂津市
東大阪市
泉南市
7,689
1,794
4,397
3,309
3,782
1,397
1,335
964
5,070
845
3,982,148
859,569
2,274,899
1,741,964
1,979,846
770,395
722,593
497,798
2,744,026
374,209
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
66.7
2,654,765
573,046
1,516,599
1,161,309
1,319,897
513,596
481,728
331,865
1,829,350
249,472
663,691
143,261
379,149
290,327
329,974
128,399
120,432
82,966
457,337
62,368
神戸市
(神戸市健康保険組合)
20,711
10,340,257
67.0
6,927,972
1,757,843
西宮市
(西宮市職員健康保険組合)
3,571
1,713,092
60.0
1,027,855
171,309
岡山市
(岡山市職員健康保険組合)
7,482
3,061,945
60.0
1,837,167
306,194
北九州市
(北九州市職員健康保険組合)
12,749
6,067,438
67.5
4,095,521
1,061,802
福岡市
(福岡市職員健康保険組合)
12,585
6,432,747
65.8
4,232,747
1,016,374
注(1)
 堺市ほか9市に係る大阪府市町村職員健康保険組合は、大阪市を除く大阪府の市町村が連合して設立している。
注(2)
 堺市の数値は17年2月に合併した美原町の数値を含めたものである。