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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成18年10月

各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について


(4)最適化の精度の確保とその課題

ア 機能情報関連図の整合性

(ア)機能情報関連図の作成

 策定指針では、業務・システムを統一的に体系化し、それを一定の書式により可視化するための標準的な記述様式(以下「標準記述様式」という。)を定めている。また、業務・システムが現状(現行体系)から将来あるべき姿(将来体系)となるよう、業務の運用面からの見直し、業務処理過程の重複等の徹底した排除、システムの一元化・集中化などを実施することにより最適化を図ることとしている。
 そして、業務・システムの現行体系における業務処理過程を可視化するに当たっては、最適化計画を策定する初期段階に、業務・システムにおける機能間の情報の流れを記した標準記述様式の一つである機能情報関連図(Data Flow Diagram。以下「DFD」という。)を作成し、これを基に重複した業務の排除等を行い、将来体系のDFDを作成することとしている。また、このDFDは、これを基にして他の標準記述様式も作成されるものである。
 DFDは、業務・システムを構成する機能を階層的に分解することにより、各機能の概念的範囲を整理することを目的とするもので、0階層、1階層、2階層と順次DFDの階層を増やしていくことで業務過程を可視化するものである。さらに、DFDは、各階層の機能間でやり取りする情報の流れを模式的に示すことで、対象とする業務・システムの機能と情報の流れを明確化している。

(イ)DFDの整合性の状況

 策定指針では、情報システムの設計を行うための仕様書において、情報システムがどのような業務を処理する機能を備える必要があるかという定義(以下「要件定義」という。)をDFDに基づくなどして行うこととなっており、業務・システムの最適化を実施していく上で、DFDは重要な図面となっている。
 そこで、87最適化計画のうち、DFDを作成している66最適化計画における将来体系のDFDの0階層図及び1階層図について、策定指針に従って機能間の情報の流れに不整合がないか検査した。その結果、DFDの作成過程において確認が十分でなかったなどのため、同一の機能であるにもかかわらず0階層図では情報の流れが記載されているが、1階層図ではこれが記載されていないなど(図表5—18参照) 、情報の流れの記載に不整合を生じている箇所が、図表5—19のとおり、47最適化計画の合計で831箇所と多数見受けられた。

図表5—18 DFDの不整合の模式図

図表5—18DFDの不整合の模式図

注(1)
 1階層図(予算)では「○○省」から「予算」へ情報の流れの記載があるが、0階層図では記載がないもの
注(2)
 0階層図では「原課」から「予算」へ情報の流れの記載があるが、1階層図(予算)では記載がないもの
注(3)
 1階層図(予算)では1階層図(支払)へ情報の流れの記載があるが、1階層図(支払)では記載がないもの

図表5—19 DFDにおける機能間の不整合の状況
省庁名
業務・システム名
不整合な情報の流れの数
内訳
1階層図には記載があるが、0階層図では記載のないもの
0階層図には記載があるが、1階層図では記載のないもの
1階層図同士で情報の流れが不整合のもの
その他
人事院
人事・給与等業務
48
23
6
19
0
内閣府
経済財政政策関係業務等に必要なシステム
2
0
1
1
0
警察庁
全国的情報処理センター用システム
9
7
2
0
0
運転者管理等のシステム
24
15
7
2
0
企画分析業務(警察)
3
1
2
0
0
防衛本庁
統合気象システム
8
0
1
7
0
6陸幕補給システム
43
24
4
15
0
防衛施設庁
特別調達資金に関する業務
4
4
0
0
0
金融庁
金融検査及び監督業務
76
53
7
11
5
証券取引等監視等に関する業務
疑わしい取引の届出に関する業務
2
2
0
0
0
有価証券報告書等に関する業務
7
5
2
0
0
総務本省
共通システム
2
0
2
0
0
恩給業務
6
3
2
1
0
電波監理業務
19
15
1
3
0
法務本省
出入国管理業務
15
15
0
0
0
外国人登録証明書調製業務
登記情報システム
13
13
0
0
0
地図管理業務
3
2
1
0
0
検察業務
23
23
0
0
0
矯正施設被収容者生活維持関連業務
35
22
6
6
1
矯正施設被収容者処遇関連情報の管理業務
更生保護情報管理業務
13
12
1
0
0
外務省
ホストコンピュータシステム
44
25
2
17
0
在外経理システム
39
27
3
8
1
領事業務
3
0
0
3
0
財務本省
共済業務
5
1
1
3
0
予算・決算業務
43
41
1
0
1
国有財産関係業務(官庁営繕業務を除く。)
3
2
1
0
0
共同利用電算機
8
6
2
0
0
国税庁
国税関係業務
17
15
2
0
0
文部科学本省
本省情報基盤システム
12
10
2
0
0
厚生労働本省
検疫業務
1
0
1
0
0
労働保険適用徴収業務
5
1
0
3
1
原爆死没者追悼平和祈念館運営業務
9
8
0
0
1
雇用均等業務
12
5
5
2
0
職業安定行政関係業務(雇用保険業務、職業紹介業務、職業安定行政システム)
5
5
0
0
0
社会保険庁
社会保険業務
28
23
3
2
0
農林水産本省
総合食料局(旧食糧庁)における情報管理システム
63
43
1
0
19
農林水産省共同利用電子計算機システム
9
4
0
5
0
生鮮食料品流通情報データ通信システム
7
3
1
1
2
林野庁
国有林野事業関係業務
54
51
0
1
2
経済産業本省
貿易管理業務
13
4
4
5
0
官房5業務
3
2
1
0
0
国家試験業務
27
14
3
10
0
工業標準策定業務(工業標準策定プロセス電子化事業)
24
23
0
1
0
特許庁
特許庁業務・システム
12
6
3
3
0
国土交通本省
公共事業支援システム(官庁営繕業務を含む。)
22
15
1
6
0
自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)
4
4
0
0
0
汎用電子計算機システム
4
4
0
0
0
合計
831
581
82
135
33
(注)
 不整合な情報の流れの数は、会計実地検査時点のものであり、既に修正されているものもある。


 このようなDFDにおける情報の流れの不整合は、仕様書の作成において情報システムの要件定義を不正確なものとするおそれがあり、また、将来体系が正確でないと、次期の最適化計画策定において現行体系の把握に影響を及ぼす可能性もある。さらに、策定指針によると、最適化計画は決定後、速やかに公表するとされており、これを参考として策定される関係省庁の最適化計画に影響することも考えられる。
 したがって、各省庁においては、今後、最適化を実施するに当たり、DFDを含め、標準記述様式を必要に応じて修正するなどの見直しを行う要がある。
 DFDの記載に不整合が生じている事例を示すと、次のとおりである。

(h)ホストコンピュータシステム

 外務省のホストコンピュータシステムには、日本国内に勤務する「本省職員」と在外公館に勤務する「在外職員」の人事情報管理、職員給与に係る俸給管理などを行う人事システム、給与システムなどが含まれている。
 同システムの最適化計画の策定に当たっては、DFD作成を含む業務を外部委託しているが、DFDの0階層図及び1階層図を会計検査院で検査したところ、不整合が44箇所見受けられた。このうち、人事・給与等業務に関する不整合は38箇所あったが、これは、外務省において、人事・給与等業務を利用する業務のDFD作成に際し、公表されている人事・給与等業務のDFD情報を利用し、当該DFDの不整合箇所をそのまま転記したためであるとしている。
 なお、人事院及び総務本省では、人事・給与等業務のDFDを、18年度において修正することとしている。

(ウ)DFD等の検証の実施状況

 最適化計画の中で作成することとなっているDFD等の成果品について、策定指針の内容に沿っているかどうかのレビューを実施することは、成果品の品質を確保するという点で重要である。そこで、最適化計画策定担当者によるレビューの実施方法についてみると、図表5—20のとおり、相対方式又は書面方式でレビューを実施しているものが81.6%、レビューを実施していないものが18.3%となっている。

図表5−20 DFD等のレビューの実施状況

図表5−20DFD等のレビューの実施状況

 DFDを作成している66最適化計画におけるDFDの不整合とレビュー実施の有無の関係についてみると、図表5‐21のとおり、レビューを実施した最適化計画におけるDFDの不整合は、56最適化計画のうち37最適化計画で66.0%であるのに対し、レビューを実施していない10最適化計画では、そのすべてでDFDの不整合が見受けられた。

図表5−21 レビューの実施の有無とDFDの不整合
区分
最適化計画数
うちDFDの不整合があった最適化計画数
(割合%)
レビューを実施している
56
37(66.0)
レビューを実施していない
10
10(100)
合計
66
47(71.2)

イ 業務・システムの最適化へ向けての調整

(ア)最適化計画策定に当たっての調整

 共通業務・システムは、関係する複数の省庁の業務やシステムをまとめる必要があり、また、他の業務・システムと互いに情報のやり取りを行う必要があるものもある。このため、それぞれの業務・システムの開発に手戻りが生じないように最適化計画を策定するためには、関係省庁間の調整が必要であると考えられる。
 そこで、21共通業務・システムにおける16最適化計画(注7) の策定時における関係省庁との調整状況をみると、図表5−22のとおり、関係省庁会議による調整を行っているものが多いが、その開催頻度は区々となっていた。

(注7)
 21共通業務・システムにおける16最適化計画 複数の業務・システムを併せて1つの最適化計画を策定しているものがあるため、16最適化計画を対象として関係省庁間の調整状況を検査した。


図表5−22 共通業務・システムにおける関係省庁間の調整

図表5−22共通業務・システムにおける関係省庁間の調整

(イ)システムの設計・開発に当たっての調整

 最適化計画の策定時期は、業務・システムによって区々となっていることから、互いに連携する必要のある業務・システムであっても、先行して策定された最適化計画の方には、当該業務・システムと後で最適化計画を策定する業務・システムとの連携の必要性が不明なため、その業務・システムとの連携について記述がなされていない場合がある。このような場合、後で構築する情報システムは、先に構築された情報システムと接続するように設計・開発がなされるが、先に構築された情報システムには後で構築されるものと接続するインターフェースが存在しないため、設計の手戻りや二重投資が発生するおそれがある。そのため、最適化計画策定後の設計・開発段階において、各業務・システム間で調整が必要となる。
 そこで、各業務・システムの最適化計画の中で、特に連携の必要性が高いと考えられる「人事・給与等業務」、「官房5業務」及び「予算・決算業務」の3業務・システムと、これら各業務・システムと連携する必要がある旨が最適化計画に記載されている業務・システムとの間の設計・開発段階における調整状況を調査した。

〔1〕 人事・給与等業務(人事院・総務本省・財務本省)

 最適化計画は16年2月に策定され、15年度から17年度にかけて設計・開発が行われている(図表5—23参照)

図表5—23 人事・給与等業務等の設計・開発の工程

(年度)


(年度)

(注)
 工程スケジュールについては、現在担当省庁において見直しているものもある。(以下の表も同じ。)


 人事・給与等業務についてシステム開発に当たり作成されたシステム概要設計書を確認したところ、他の業務・システムとの接続が確認できたのは、共済業務と国有財産関係業務だけであり、研修・啓発業務ほか6業務・システムについては、接続が確認できない状況となっていた。
 人事・給与等業務で運用する人事・給与関係業務情報システム(以下「人給情報システム」という。)は、既に開発まで終了しているため、4共通業務・システムについては、要求する情報や接続方法によって、人給情報システムの改修が必要となり、また、3個別業務・システムについては、今後、人給情報システムとの調整を要する場合がある。
 なお、人事院及び総務本省では、関係する4共通業務・システムへの対応について、その進ちょく状況に応じて今後具体的な調整を進めていくこととしている。

〔2〕 官房5業務(経済産業本省)

 最適化計画は16年9月に策定され、17年度から19年度にかけて設計・開発が行われる予定になっている(図表5—24参照)

図表5—24 官房5業務等の設計・開発の工程

(年度)


(年度)

 官房5業務のDFDを確認したところ、予算・決算業務との機能間の情報の流れは記載されているものの、官房5業務の最適化計画の策定が研修・啓発業務ほか7業務・システムよりも早かったため、それらの業務・システムとの機能間の情報の流れは記載されていない状況となっていた。
 そこで、システムの設計・開発段階における調整状況についてみると、予算・決算業務及び公共事業支援システムとは調整を行っているが、その他連携が見込まれている研修・啓発業務ほか6業務・システムは具体的な調整をする段階にまで至っていないとして、これらの業務・システムとは仕様書等の調整を行っていない状況であった。
 これら7業務・システムについては、官房5業務のシステムに合わせてインターフェースを構築することが必要になると想定されることから、二重投資等が発生しないよう、今後、官房5業務との調整が必要になると考えられる。

〔3〕 予算・決算業務(財務本省)

 最適化計画は、18年3月に策定され、その設計・開発については、予算編成支援システムは23年度に、官庁会計システムは20年度に終了することとなっている(図表5—25参照)

図表5—25 予算・決算業務等の設計・開発の工程

(年度)


(年度)

(注)
 人事・給与等業務については、19年6月を目途に最適化計画を見直しているところである。


 官庁会計システムと連携の必要がある国有財産関係業務ほか2共通業務・システムについては、20年度の運用開始に向けて調整を行っている状況である。また、特別調達資金に関する業務は、20年度以前に運用を開始する場合、最適化計画に基づき構築される官庁会計システムに対するインターフェースの構築に加えて、現在稼動しているシステムに対するインターフェースの構築も必要となることから、官庁会計システムの本格運用と同時に新システムを運用することとしている。

(ウ)共通業務・システムにおける調達に当たっての調整

 人給情報システムは、17年度にシステムの設計・開発が終了していることから、同システムの今後の調達及びそれに係る他省庁との調整等の実施状況についてみると、次のとおりとなっている。
 同システムに係る最適化計画は、16年2月に策定されている。これによると、15年度に最適化計画策定と並行してシステム設計を行い、16年度にはシステム開発を終了し、16年度半ばからシステムの試行運用等をシステム開発と並行して行って17年度半ばまでに完了し、その後新システムの運用を開始することとしている。そして、最適化に当たっては、ソフトウェアである人給情報システムを人事院及び総務本省が開発して、パッケージとして各省庁に配布し、各省庁は、ハードウェアの調達、ソフトウェアのインストール、システムの運用管理を行うという分散運用方式で実施することとなっていた。
 一方、「e—Japan重点計画—2004」では、各省庁は16年6月末を目途に人給情報システムの導入計画を策定して、19年度末までに順次自省庁にあるシステムを更新することとなっており、各省庁は、これを受けて図表5—26のとおり、導入計画を作成していた。これによると、多くの地方支分部局を持つ省庁は、全国展開に先立ち18年度に内部部局への導入を完了し、19年度末までに全国に導入するとしている。

図表5—26 各省庁の人給情報システムの導入計画
(18年7月末現在)

省庁名
当初導入予定年度(機器調達)
変更後導入予定年度(注)
内閣官房
19年度
内閣法制局
19年度
人事院
16年度
内閣本府
19年度
宮内庁
19年度
20年度
公正取引委員会
19年度
20年度
警察庁
19年度
金融庁
18年度
20年度
総務本省
17年度(10月)
17年度(3月)
法務本省
19年度
外務省
18年度
20年度
財務本省
18年度
国税庁
18年度
文部科学本省
19年度
厚生労働本省
18年度
農林水産本省
18年度(6月)
18年度(11月)
経済産業本省
18年度
19年度
国土交通本省
18年度
未定
気象庁
19年度
未定
海上保安庁
19年度
未定
会計検査院
19年度
未定
(注)
 変更後導入予定年度が当初導入予定年度と変わっていないものは「—」を記入している。


 各省庁は、人給情報システムの導入に当たり、必要となる各種設計書等(以下「設計書等」という。)により調達するハードウェアを決定し、予算要求を行うこととなる。そして、人事院及び総務本省では、設計書等を16年7月から18年5月にかけて数回にわたり各省庁に開示している。しかし、各省庁では、開示された設計書等では自省庁の人事・給与システムとして使用するには不十分であると判断したことなどから、予算要求を見送っている省庁も見受けられた。
 なお、人事院及び総務本省では、パッケージ配布による分散運用方式を進めてきたが、内閣官房において、18年8月に、最適化計画に示された運用経費の削減効果が確実に見込まれる状況にないことから、より一層効果が上がるよう必要な見直しを行うべきであると判断し、人事院、総務本省及び各省庁と調整した結果、システムの集中管理方式への移行を始めとした、現行計画の見直しを行うこととした。
 人給情報システムの設計書等の内容や分散運用方式から集中管理方式への変更の影響により導入計画を変更した省庁の事例を示すと、次のとおりである。

(i)総務本省
 総務本省における当初計画では、17年10月を目途に人給情報システムに係る機器を調達予定であったが、これを延期して18年3月に調達した。これに伴い廃止予定であった現行システムの延長運用が必要となった。


(j)外務省
 ホストコンピュータシステムは、18年度に人給情報システムを導入することに伴い19年4月に全面廃止の予定であったが、人事院から18年5月に設計書等を開示されたものの、特別職分についての情報が示されなかったため、そのまま導入すると支障があると判断した。そのため、導入は20年4月からとし、現行のシステムの賃貸借期間を1年間延長した。


(k)農林水産本省
 農林水産本省では、当初機器導入を18年6月に予定していたが、17年10月に開示された設計書等では、移行データの取込口となるインターフェースの機能、取込方法の情報が不明であったため、現行の給与計算システムから取り出したデータなどを人給情報システムに移行する作業が行えないと判断した。そして、それらの情報が18年4月以降に提供されるということで、機器調達は18年11月に延期した。


(l)国土交通本省
 人給情報システムの導入については、国土交通本省において決定した導入計画の方針に沿い、2箇年計画(〔1〕18年度にハード整備及び本省の内部部局での運用開始、〔2〕19年度に施設等機関及び地方支分部局への導入)による導入を目指していた。また、機器の調達については、所要の手続を踏み、18年5月24日に入札公告を行い、7月28日を開札予定日としていた。しかし、システムの運用方式について、事実上、分散運用方式から集中管理方式への方針転換が確認できたことから7月27日に入札公告の取消しを公告した。そして、7月末時点では、システムの導入予定年月は未定となっている。

 このように、多数の省庁に影響を及ぼす共通業務・システムにおいては、その最適化を円滑に進めるために、工程の管理や関係省庁間の連携、調整が特に重要である。

(5)レガシーシステム及びデータ通信サービス契約の見直しの方向性

ア レガシーシステム刷新に向けた計画

 策定指針では、レガシーシステムに関して、〔1〕汎用パッケージソフトウェアの利用、〔2〕オープンシステム化(注8) 、〔3〕ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル化(分離調達)、〔4〕随意契約から競争契約への移行、〔5〕データ通信サービス契約の見直し、〔6〕国庫債務負担行為の活用の6項目の可能性について、刷新可能性調査等を通じて検討した結果又は今後の検討方針を、見直し方針において明らかにすることとしている。

(注8)
 オープンシステム化 個々のメーカーが独自に開発してきたシステムに対して、広く公開された規格や仕様に従ってシステムを構築すること


 そこで、経済財政政策関係業務等に必要なシステムほか28業務・システムに含まれる36レガシーシステムの刷新可能性調査報告書並びにこれらのレガシーシステムを含む業務・システムの見直し方針及び最適化計画について、上記〔1〕から〔6〕までの各項目の記載の有無をみたところ、図表5—27のとおりとなっている。
 すなわち、すべての項目について記述しているものは、見直し方針では8レガシーシステム、最適化計画では13レガシーシステムにとどまっている。そして、見直し方針においては、〔2〕のオープンシステム化の記述をしているものは31レガシーシステム(96.8%)となっており、そのうち15レガシーシステムはオープンシステム化が可能としている。また、〔6〕の国庫債務負担行為の活用の記述をしているものは、11レガシーシステム(34.3%)となっている。さらに、最適化計画においては、〔4〕の随意契約から競争契約への移行について競争契約により調達すると記述しているものが31レガシーシステム(93.9%)となっている。

図表5—27 レガシーシステムの刷新に向けた検討状況
担当省庁名
業務・システム名
レガーシステム名
左のうちデータ通信サービス契約を含むもの
刷新可能性調査
見直し方針
最適化計画
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕
〔5〕
〔6〕
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕
〔5〕
〔6〕
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕
〔5〕
〔6〕
1
内閣本府
経済財政政策関係業務等に必要なシステム
経済財政政策関係業務等に必要なシステム
 
 
 
 
 
2
警察庁
全国的情報処理センター用システム
全国的情報処理センター用システム
 
 
 
 
 
 
 
3
指紋業務及び掌紋業務(指紋業務用システム)
指紋業務用システム
 
 
 
 
 
 
 
4
運転者管理等のシステム
運転者管理等のシステム
 
 
 
 
 
 
5
防衛庁
統合気象システム
統合気象システム
 
 
 
 
 
 
 
 
6
航空自衛隊補給3システム
航空自衛隊補給3システム
 
 
 
 
 
 
 
7
航空自衛隊データ処理近代化システム
航空自衛隊データ処理近代化システム
 
 
 
 
 
 
 
8
海幕給与経理システム給与システム用入出力装置 注(1)
海幕給与、経理システム
 
9
6陸幕補給システム
6陸幕補給システム 注(2)
 
 
 
 
 
 
 
10
総務本省
電波監理業務
総合無線局監理システム
 
 
 
 
 
 
 
 
11
法務本省
登記情報システム
登記情報システム
 
 
 
 
 
 
 
 
12
出入国管理システム
出入国管理システム
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
13
外務省
通信機能強化システム
通信機能強化システム
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
14
財務本省
予算・決算業務
予算編成支援システム
 
 
 
 
15
官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)
 
 
16
財政融資資金関連業務
財政融資資金の運用事務等システム
 
 
 
 
 
 
17
輸出入及び港湾・空港手続関係業務
通関情報処理システム
 
 
 
18
税関手続申請システム
 
 
 
 
19
通関情報総合判定システム
 
 
 
 
20
国税庁
国税関係業務
国税総合管理(KSK)システム
 
 
 
 
21
文部科学本省
本省情報基盤システム
本省情報基盤システム
 
 
 
 
 
 
 
 
 
22
厚生労働本省
労災保険給付業務
労災行政情報管理システム
 
 
 
23
監督・安全衛生業務
労働基準行政情報システム
 
 
 
 
 
24
労働保険適用徴収業務
労働保険適用徴収システム
 
 
25
職業安定行政関係業務(雇用保険業務)
雇用保険トータル・システム
 
 
26
職業安定行政関係業務(職業紹介業務)
総合的雇用情報システム
 
 
27
社会保険庁
社会保険業務
社会保険オンラインシステム(記録管理システム)
 
28
年金相談に関するシステム 注(3)
 
29
基礎年金番号管理システム
 
30
年金給付の裁定及び支払等に関するシステム 注(3)
 
31
年金給付システム
 
 
32
農林水産本省
総合食料局(旧食糧庁)における情報管理システム
総合食料局(旧食糧庁)における情報管理システム
 
 
 
 
 
 
33
林野庁
国有林野事業関係業務
林野庁における改善分散処理システム
 
 
 
 
 
 
 
 
34
特許庁
特許庁業務・システム 注(4)
特許事務システム
 
 
35
国土交通本省
自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)
自動車登録検査業務電子情報処理システム
 
 
 
 
 
 
36
気象庁
気象資料総合処理システム
気象資料総合処理システム(Cアデス系)
 
 
 
記載項目
〔1〕汎用パッケージソフトウェアの利用
記載の有無
(%)
13(/32)
40.6
24(/32)
75.0
28(/33)
84.8
〔2〕オープンシステム化
29(/32)
90.6
31(/32)
96.8
32(/33)
96.9
〔3〕ハードウェアとソフトウェアのアンバンドル化(分離調達)
15(/32)
46.8
27(/32)
84.3
29(/33)
87.8
〔4〕随意契約から競争契約への移行
20(/32)
62.5
25(/32)
78.1
31(/33)
93.9
〔5〕データ通信サービス契約の見直し
9(/10)
90.0
9(/9)
100
10(/10)
100
〔6〕国庫債務負担行為の活用
6(/32)
18.7
11(/32)
34.3
19(/33)
57.5
注(1)
 「海幕給与経理システム、給与システム用入出力装置」については、共通業務・システムである人事・給与等業務及び官房5業務の導入を検討中であるため最適化計画等を策定していない。
注(2)
 「6陸幕補給システム」については、13年度に既にオープンシステム化していたため、刷新可能性調査を行っていない。
注(3)
 「年金相談に関するシステム」と「年金給付の裁定及び支払等に関するシステム」は、「記録管理システム」、「基礎年金管理番号システム」及び「年金給付システム」を利用した業務に共通的に利用される端末等である。
注(4)
 「特許庁業務・システム」については、見直し方針を作成する旨が記述された策定指針が策定される前に、経済産業省電子政府構築計画に刷新可能性調査及び最適化計画の策定方針を定めていたため「見直し方針」は策定していない。
注(5)
 「刷新可能性調査」、「見直し方針」、「最適化計画」の〔5〕欄の「—」は、データ通信サービス契約を含んでいないため、検討の対象外であることを示している。

イ データ通信サービス契約の検討状況

 データ通信サービス契約のうち、16年度の利用料金が1億円以上の9件について、16年度以降の契約をどのようにするのかについてみたところ、図表5—28のとおり、17年度中に契約を解消したものが1件、今後解消するとしているものが8件となっていて、最も遅いものでは23年12月に解消予定となっている。
 そして、8件のうち、料金算定期間の設定がない1件を除く7件について、今後の契約解消予定時期についてみると、16年度末時点で設定されていた料金算定期間終了前に解消するとしているものは4件、同期間終了時に解消するとしているものは2件、同期間終了後も契約を継続し、その後解消するとしているものは1件となっている。
 また、料金算定期間終了前に契約を解消するとしている4件について、16年度末現在の残債総額1538億円の処理方法をみると、一括処理するとしているものは3件、新たに算定した月額料金により処理するとしているものは1件となっている。

図表5—28 データ通信サービス契約の検討状況

(単位:百万円)

省庁名
契約対象のシステム名
16年度末現在における料金算定期間の終了年月
契約の解消予定年月
契約解消時期区分
16年度末現在の残債額
残債の処理方法
総務本省
恩給事務総合システム
22年3月
22年3月
〔4〕
1,309
当初の料金算定期間による月額払
財務本省
官庁会計事務データ通信システム
23年3月
20年12月
〔3〕
33,249
月額料金再算定による月額払
厚生労働本省
労働基準行政情報システム 注(2)
20年9月
〔2〕
労働保険ネットワークシステム
24年2月
22年3月
〔3〕
2,494
一括処理
社会保険庁
社会保険オンラインシステム
27年8月
23年1月
〔3〕
117,313
一括処理
農林水産本省
生鮮食料品流通情報データ通信システム
23年3月
22年3月
〔3〕
784
一括処理
経済産業本省
貿易管理オープンネットワークシステム
19年8月
21年10月
〔5〕
110
当初の料金算定期間による月額払
特許庁
特許庁電子出願・包袋事務処理データ通信システム
22年2月
(18年1月)
〔1〕
国土交通本省
自動車登録検査業務電子情報処理システム
23年12月
23年12月
〔4〕
9,010
当初の料金算定期間による月額払
8省庁
9契約
17年度中に契約を解消したもの
〔1〕
1
17年度以降、契約を解消する予定のもの
8
 
料金算定期間を設定していない契約
〔2〕
1
料金算定期間を設定している契約
7
残債総額
164,271
 
料金算定期間終了前に解消する契約
〔3〕
4
153,841
料金算定期間終了時に解消する契約
〔4〕
2
10,319
料金算定期間終了後も契約を継続し、その後解消する契約
〔5〕
1
110
注(1)
 「16年度末現在における料金算定期間の終了年月」及び「契約の解消予定年月」欄については、最終の契約変更による増設機器等に係る料金算定期間の終了年月及び解消予定年月を示している。
注(2)
 「労働基準行政情報システム」は、料金算定期間の設定がなく、残債が発生しない契約形態となっている。