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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について


 各府省等におけるコンピュータシステムについて、参議院からの要請に基づき、6項目に関して検査を実施した。  これらの検査結果は、次のとおりである。

(1)契約については、その競争性が低い状況となっており、また、随意契約としているものの仕様書をみると、作業項目別作業量等の具体的な項目の記載に欠けているものが多い。さらに、予定価格の算定においては、体系的な積算マニュアルが整備されておらず、採用単価は契約により相当の開きがあり、さらに、契約後の事後検証及び検証結果の反映は必ずしも十分行われていない状況となっている。
(2)システムの利用状況については、電子申請等関係システムの電子申請率は、全体では低くなっており、また、電子入札システムの電子入札率は、工事の入札では高いものの、物品・役務の入札では相対的に低い状況となっている。
(3)情報セキュリティについては、17年10月末現在では、データ及び私用PCに関するセキュリティ対策が十分でないなどの状況となっており、また、ポリシー遵守状況の確認をするなどのための監査班を設置している省庁は少ないなど管理体制が必ずしも十分でない状況である。
(4)業務・システムの最適化に向けた取組については、最適化計画で示されている効果を発現させるための課題が見受けられたり、DFD(機能情報関連図)において不整合な箇所が多数見受けられたり、共通業務・システムの中には必要な調整が残されているものがあったりなどしている。
 国の情報システム関係については多額の予算が執行されているが、上記のように、契約における競争性・透明性、システムの利用、情報セキュリティ、業務・システムの最適化それぞれについて、多くの課題が見受けられた。
 したがって、今後、以下のような取組を進め、もって国の情報システム関係予算の経済的、効率的、効果的な執行を図ることが必要と考えられる。

(1)情報システム関係の契約に当たり、各省庁は、次のことに努めること
ア 仕様書の記載内容をより具体化したり、業務内容を見直して競争可能な業務を別途契約にしたりなどして、随意契約から競争契約への移行を検討し、契約の競争性、透明性を向上させること
イ 予定価格の算定における体系的な積算マニュアルが整備されていない業務の契約については、SE等の人件費単価や作業時間等に係る事後検証を的確に行ってその検証結果を反映させるとともに、事後検証結果や各種資料を踏まえて統一的な考え方を整理するなどして、積算の合理性の向上を図ること

(2)システムの利用に関し、電子申請等関係システムについては、次のことを実施するなどしてシステムの利用の拡大を図り、もって利用者である国民の利便性の向上に努めるとともに、電子入札システムについても、各省庁のシステムで利用できる電子証明書の種類の拡大や、入札関係手続のオンライン化対象の範囲の拡大を検討するなどして、入札参加希望者の負担軽減と行政事務の簡素化・合理化に資すること
ア 各省庁においては、手続のオンライン化について、事務・事業の見直しも含め、その必要性、経済性を十分検討するとともに、利便性に対する国民の意見、要望も広く聴取し、そのニーズを的確に把握し、オンライン利用促進のための行動計画に沿った方策を着実に実行していくこと
イ 国全体としても、電子証明書の取得に必要な住民基本台帳カードやICカードリーダライタの普及に取り組むこと

(3)情報セキュリティ対策に当たって、次のことを実施するなどして、情報セキュリティ水準を更に高めること
ア 各省庁において、各セキュリティ対策の強化を図るとともに、情報セキュリティのPDCAサイクルの確実な実施を図ること、また、そのための管理体制の整備を図ること
イ 国全体としても、統一基準等に沿って各種セキュリティ対策を進めること

(4)業務・システムの最適化に向けて、各省庁は次のことを実施するなどして、最適化を円滑に進めるとともに、最適化計画が状況の変化に対応したものになっているかについても常に留意すること
ア 最適化計画で示された効果が発現されるよう、最適化の実施状況を的確に管理していくこと
イ DFDを含めた標準記述様式の記述に関しては、最適化の実施に当たり必要に応じて修正し、他の業務・システムとの連携の必要性が大きい業務・システムや多くの省庁に影響を及ぼす共通業務・システムについては、工程の管理や関係省庁間の連携、調整を密に図ること
ウ レガシーシステムについては、最適化計画に沿った見直しを進め、競争性、透明性を高めること
エ データ通信サービス契約については、残債やソフトウェアの著作権の帰属の課題に留意しつつ、現行の長期継続契約についても見直し、同種内容の調達を行うに当っては、必要に応じて国庫債務負担行為を活用することなども検討し、透明性を高めること

 会計検査院としては、最適化計画の実施に向けた政府の動きについて注視するとともに、国のコンピュータシステムについて、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととする。