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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

社会保障費支出の現状に関する会計検査の結果について


(3)地域格差の要因

 以上のように、保護率、支給済保護費等について地域格差がみられるが、特に保護率の高低に影響を与えている要因については、17年における厚生労働省の「生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会」等の議論において、特に相関が高いものとして、経済的要因では完全失業率等、社会的要因では高齢者単身世帯割合、離婚率等が挙げられている。このほかには、行政的要因として各福祉事務所における現業員の標準配置数に対する充足率等も挙げられているが、一方で相関がないとの意見もあるなど十分な結論に至っていない。

ア 福祉事務所に対する調査

 保護率の地域格差については様々な要因が考えられることから、北海道ほか26都府県管内で保護率が全国平均と比較して高くなっている福祉事務所等において、保護率が高い要因としてどのようなものが考えられるかについて、意見を聴取したところ、次のような要因を挙げた福祉事務所が多く見受けられた。
〔1〕 経済的要因として、大規模な雇用先がないこと及び平均所得が低いこと
〔2〕 社会的要因として、無年金者が多いこと、高齢者や単身高齢者が多いこと、母子家庭や核家族が多いこと及び公営住宅等の低家賃住宅が多いこと
〔3〕 行政的要因として、現業員1人当たりの被保護世帯数が多いこと、経験年数の短い現業員が増加したこと及び処遇が困難な被保護世帯が多いこと
〔4〕 その他の要因として、親族を扶養する意識が希薄化したこと及び権利意識が増大したこと
 一方、保護率が全国平均と比較して低くなっている福祉事務所では、その要因として、親族等から被保護者を出すことを恥ずかしいと思う風潮があること、行政に頼らないことを良しとする地域的な気質が強いことなどの意見が多く見受けられた。

イ 各要因と保護率との相関

 上記の調査等を参考にして、保護率の地域格差に影響を与えると思料される経済的要因、社会的要因及び行政的要因について、各年度の都道府県別の保護率との相関関係を分析した。

(ア)経済的要因との相関

 都道府県別の経済的要因と保護率との相関関係は、表4—35のとおりとなっていた。

表4—35 経済的要因と保護率との相関
項目
相関係数
完全失業率と保護率(H16)
0.7658
有効求人倍率と保護率(H16)
-0.4971
1人当たり県民所得と保護率(H15)
-0.1934
年間所得が200万円未満の世帯の割合と保護率(H14)
0.5777

a 完全失業率

 完全失業率との相関は図4—34のとおりであり、強い正の相関がみられた。保護の開始理由としては稼働収入の減少が傷病に次いで2番目で、保護の廃止理由としても稼働収入の増加は死亡、傷病に次いで3番目であり、定期的な収入の有無が保護率に影響を与えていると思料される。

図4—34 完全失業率と保護率との相関(16年度)

図4—34完全失業率と保護率との相関(16年度)

(注)
 総務省「労働力調査」を基に作成


b 1人当たり県民所得

 1人当たり県民所得との相関は図4—35のとおりであり、ほとんど相関はない。しかし、年間所得が200万円未満の世帯の割合との相関をみると、図4—36のとおり中程度の正の相関がみられた。

図4—35 1人当たり県民所得と保護率との相関(15年度)

図4—351人当たり県民所得と保護率との相関(15年度)

(注)
 内閣府「県民経済計算年報」を基に作成


図4—36 年間所得が200万円未満の世帯の割合と保護率との相関(14年度)

内閣府「県民経済計算年報」を基に作成

(注)
 総務省「就業構造基本調査」を基に作成


(イ)社会的要因との相関

 都道府県別の社会的要因と保護率との相関関係は、表4—36のとおりとなっていた。

表4—36 社会的要因と保護率との相関関係
項目
相関係数
高齢化率と保護率(H12)
-0.0460
高齢者単身世帯割合と保護率(H12)
0.7538
3世代世帯率と保護率(H12)
-0.6680
年金受給率と保護率(H16)
-0.6419
持家率と保護率(H15)
-0.6306
離婚率と保護率(H16)
0.7000

a 高齢者単身世帯割合

 高齢化率と保護率との間にはほとんど相関はないが、一般世帯数に占める65歳以上の単身世帯の割合(以下「高齢者単身世帯割合」という。)との相関は図4—37のとおりであり、強い正の相関がみられた。また、図4—38のとおり、3世代世帯率(注5) と保護率との間には中程度の負の相関がみられた。他の世帯員と同居している高齢者は扶養を受けることが多いのに比べ、単身の高齢者は同居者の扶養がないため保護が必要となる場合が多いのではないかと思料される。

(注5)
 3世代世帯率 世帯主との続き柄が、祖父母、世帯主の父母(又は世帯主の配偶者の父母)、世帯主(又は世帯主の配偶者)、子(又は子の配偶者)及び孫の直系世代のうち、3つ以上の世代が同居している世帯の一般世帯数に占める割合


図4—37 高齢者単身世帯割合と保護率との相関(12年度)

図4—37高齢者単身世帯割合と保護率との相関(12年度)

(注)
 総務省「国勢調査」を基に作成


図4—38 3世代世帯率と保護率との相関(12年度)

(注)

(注)
 総務省「国勢調査」を基に作成


b 年金受給率

 65歳以上の者を含む世帯のうち公的年金等の受給者を含む世帯の割合(以下「年金受給率」という。)との相関は図4—39のとおりであり、中程度の負の相関がみられた。支給される年金の額に格差はあるが、定期的な収入の有無が保護率に影響を与えていると思料される。

図4—39 年金受給率と保護率との相関(16年度)

図4—39年金受給率と保護率との相関(16年度)

(注)
 厚生労働省「国民生活基礎調査」を基に作成


c 持家率

 持家率との相関は図4—40のとおりであり、中程度の負の相関がみられた。居住地を確保することが生活基盤の安定につながり、保護を受けないで済むためではないかと思料される。

図4—40 持家率と保護率との相関(15年度)

図4—40持家率と保護率との相関(15年度)

(注)
 総務省「住宅・土地統計調査」を基に作成


d 離婚率

 人口千人当たりの離婚件数(以下「離婚率」という。)との相関は図4—41のとおりであり、強い正の相関がみられた。

図4—41 離婚率と保護率との相関(16年度)

図4—41離婚率と保護率との相関(16年度)

(注)
 厚生労働省「人口動態統計」を基に作成


(ウ)行政的要因との相関

 215 ページ以下で記述した行政的要因と保護率との相関関係をみると、表4—37のとおりとなっていた。

表4—37 行政的要因と保護率との相関関係
項目
相関係数
現業員の充足率と保護率(H16)
-0.5875
申請率と保護率(H16)(注)
-0.0774
開始率と保護率(H16)(注)
-0.1666
訪問格付が3箇月以内の被保護世帯割合と保護率(H16)
-0.2565
自立助長推進による目的達成率と保護率(H16)
0.0642
(注)
 申請率及び開始率と保護率との相関係数は、政令市及び中核市別に算出している。


a 現業員の充足率

 都道府県別に現業員の充足率と保護率との相関をみると、図4—42のとおりであり、中程度の負の相関がみられた。

図4—42 都道府県別にみた現業員の充足率と保護率との相関(16年度)

図4—42都道府県別にみた現業員の充足率と保護率との相関(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


 しかし、被保護世帯数の少ない福祉事務所については、交通の不便な地域が多く、標準数より多い現業員を配置する場合が多いことから、それらの影響を排除するため、市のうち標準数が4人以上の382事業主体を対象として、充足率と保護率との相関をみると、図4—43のとおりであり、ほとんど相関はみられなかった。

図4—43 標準数4人以上の事業主体別にみた現業員の充足率と保護率との相関(16年度)

図4—43標準数4人以上の事業主体別にみた現業員の充足率と保護率との相関(16年度)

 また、各都道府県の監査により現業員の訪問調査活動に問題なしと判断したものの割合と現業員の充足率との相関を政令市についてみると、図4—44のとおりであり、中程度の正の相関がみられた。

図4—44 政令市別にみた訪問調査活動の状況と充足率との相関(16年度)

図4—44政令市別にみた訪問調査活動の状況と充足率との相関(16年度)

(注)
 厚生労働省「生活保護の現況と課題」を基に作成


b 申請率

 政令市等及び中核市別に申請率と保護率との相関をみると、図4—45のとおりであり、ほとんど相関はみられなかった。また、同様に開始率と保護率との間にも、ほとんど相関はみられなかった。

図4—45 政令市等及び中核市別にみた申請率と保護率との相関(16年度)

図4—45政令市等及び中核市別にみた申請率と保護率との相関(16年度)

c その他

 前記の表4—37のとおり、都道府県別の訪問格付が3箇月以内の被保護世帯割合と保護率との間には弱い負の相関がみられた。また、都道府県別の自立助長推進による目的達成率と保護率との間にはほとんど相関はみられなかった。

(エ)生活保護関係経費の一般歳出に占める割合との相関

 事業主体の一般歳出に対する生活保護関係経費の割合との相関は図4—46のとおりであり、強い正の相関がみられた。保護の動向が自治体財政にも少なからず影響を与えているものと思料される。

図4—46 事業主体の一般歳出に対する生活保護関係経費の割合と保護率との相関(16年度)

図4—46事業主体の一般歳出に対する生活保護関係経費の割合と保護率との相関(16年度)

(4)地域格差と各指標との比較事例

 都道府県間、政令市間及び中核市間の区分ごとに、また、北海道内及び大阪市内の区分ごとに、保護率の上位と下位の集団の各指標を比較した。

ア 都道府県間の比較事例

表4—38 上位大阪府ほか4道府県と下位静岡県ほか4県の状況
 
保護率上位
保護率下位
 
 区分
大阪府
北海道
高知県
京都府
福岡県
静岡県
長野県
岐阜県
福井県
富山県
平均
被保護世帯数
 
141,237
 
85,474
 
11,676
 
31,668
 
61,690
 
11,410
 
5,309
 
4,978
 
1,734
 
2,084
被保護人員
 
204,150
 
129,505
 
16,016
 
48,313
 
91,453
 
12,063
 
6,783
 
6,427
 
2,181
 
2,419
保護率(‰)
*
23.2
*
22.9
*
19.9
*
18.3
*
18.1
 
4.0
 
3.1
 
3.0
 
2.6
 
2.2
11.1
世帯類型別構成比(%)
 
 
 
 
高齢者世帯
*
48.4
 
44.4
*
52.0
 
46.5
*
51.9
 
46.5
*
49.5
*
57.4
*
53.6
*
55.1
46.7
母子世帯
*
11.0
*
14.0
 
6.5
*
13.4
 
7.6
 
6.6
 
3.9
 
4.0
 
3.1
 
1.5
8.7
障害者・傷病者世帯
 
31.6
 
32.5
*
36.9
 
30.5
 
30.1
*
39.0
*
40.0
*
35.8
 
34.0
*
39.2
35.0
その他世帯
 
8.8
 
9.0
 
4.4
*
9.4
*
10.2
 
7.8
 
6.3
 
2.7
 
9.1
 
4.0
9.4
経済的要因
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
有効求人倍率
*
0.84
 
0.54
 
0.46
 
0.79
 
0.65
*
1.04
*
0.96
*
1.03
*
1.08
*
1.00
0.83
完全失業率(%)
*
6.4
*
5.8
*
6.1
*
4.4
*
6.3
 
3.3
 
3.4
 
3.5
 
3.0
 
3.4
4.4
1人当たり県民所得(千円)(15年度)
*
3,042
 
2,545
 
2,238
 
2,839
 
2,629
*
3,226
 
2,737
 
2,851
 
2,898
*
3,024
2,958
所得200万円未満世帯の割合(%)(14年度)
*
22.5
*
22.0
*
28.0
*
24.5
*
24.3
 
15.1
 
17.4
 
16.6
 
17.5
 
16.7
19.1
社会的要因
 
 
 
 
人口(千人)
 
8,814
 
5,644
 
803
 
2,638
 
5,058
 
3,795
 
2,211
 
2,110
 
825
 
1,117
1世帯当たり人数
 
2.34
 
2.21
 
2.44
 
2.42
 
2.45
*
2.77
*
2.80
*
2.98
*
3.14
*
3.00
2.52
高齢化率(%)(12年度)
 
14.9
*
18.2
*
23.6
*
17.4
*
17.4
*
17.7
*
21.4
*
18.2
*
20.4
*
20.8
17.3
高齢者単身世帯割合(%)(12年度)
*
10.6
*
9.4
*
11.2
*
12.5
*
11.5
 
4.8
 
6.0
 
5.1
 
5.7
 
5.6
8.3
3世代世帯率(%)(12年度)
 
4.3
 
4.9
 
6.7
 
6.8
 
6.9
*
13.3
*
14.8
*
15.9
*
19.6
*
18.8
8.6
離婚率(‰)
*
2.5
*
2.5
*
2.2
 
2.0
*
2.3
 
2.0
 
1.8
 
1.7
 
1.7
 
1.6
2.1
持家率(%)(12年度)
 
50.4
 
55.0
*
65.6
*
59.8
 
53.3
*
63.9
*
68.9
*
71.7
*
73.6
*
77.8
59.6
年金受給世帯割合(%)(13年度)
 
84.6
 
88.8
*
90.9
 
89.0
*
89.4
*
92.0
*
93.7
*
91.1
*
92.4
*
92.2
89.2
行政的要因
 
 
 
 
現業員充足率(%)
 
66.5
*
99.1
 
95.2
*
108.0
*
100.1
*
108.0
*
183.6
*
131.4
*
168.0
*
167.9
97.8
申請率(申請件数/相談件数)(%)
 
29.3
 
30.1
*
37.7
 
30.1
*
36.7
 
26.8
*
34.7
*
45.1
 
19.7
*
36.1
30.6
開始率(開始件数/申請件数)(%)
*
93.6
*
92.9
 
78.4
 
86.9
 
87.1
*
91.4
 
87.3
 
89.1
 
83.4
 
89.0
89.5
相談・開始割合(開始件数/相談件数)(%)
 
27.4
*
28.0
*
29.5
 
26.2
*
32.0
 
24.6
*
30.3
*
40.2
 
16.5
*
32.2
28.0
平均保護受給期間(年.月)
 
6.05
*
9.03
*
11.02
 
7.07
*
11.10
 
6.03
*
9.00
 
7.05
*
9.07
*
11.01
7.08
注(1)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」等を基に作成
注(2)
 *印は全国平均を上回っている項目
注(3)
 申請率、開始率、相談・開始割合は、中核市及びその他市分の県平均を記載
注(4)
 平均保護受給期間は、その他市分及び県事務所分の県平均を記載
注(5)
 年度記載のない項目は16年度分を記載

 保護率が高い5道府県(大阪、北海道、高知、京都、福岡)と低い5県(静岡、長野、岐阜、福井、富山)とを比較すると、表4—38のとおりであり、上位集団で母子世帯の構成比が高くなっている。
 経済的要因では、上位集団で有効求人倍率が低く、完全失業率が高くなっている。また、年間所得が200万円未満の世帯の割合は、上位集団が5道府県とも全国平均を上回っているのに対して、下位集団は5県とも下回っている。
 社会的要因では、上位集団で高齢者単身世帯割合及び離婚率が全国平均を上回っており、下位集団で1世帯当たり人数及び3世代世帯率が全国平均を上回っている。
 行政的要因については、現業員の充足率、申請率等で、上位集団と下位集団との間に明確な格差はみられない。

イ 政令市間の比較事例

表4—39 上位大阪市ほか2市と下位千葉市ほか2市の状況
 
保護率上位
保護率下位
 
 区分
大阪
札幌
神戸
千葉
仙台
さいたま
全国平均
被保護世帯数
 
75,738
 
32,048
 
26,036
 
6,982
 
6,715
 
5,490
被保護人員
 
100,390
 
48,910
 
39,240
 
10,179
 
9,952
 
8,009
保護率(‰)
*
38.1
*
26.1
*
25.8
 
11.1
 
9.7
 
7.5
11.1
世帯類型別構成比(%)
 
 
 
 
高齢者世帯
*
51.9
 
39.7
 
45.4
 
35.8
 
42.0
 
42.5
46.7
母子世帯
 
7.4
*
15.1
*
10.9
 
8.2
*
10.6
*
10.7
8.8
障害者・傷病者世帯
 
30.0
 
31.2
 
30.7
 
34.1
 
33.0
*
40.2
35.1
その他世帯
*
10.5
*
13.8
*
12.8
*
21.7
*
14.2
 
6.4
9.4
経済的要因
 
 
 
 
有効求人倍率
*
1.48
 
0.60
 
0.71
*
0.86
*
1.00
 
0.75
0.83
完全失業率(%)
*
9.1
*
5.7
*
6.4
*
4.5
*
5.2
*
4.4
4.4
1人当たり市民所得(千円)(15年度)
*
3,082
 
2,740
 
2,739
*
3,348
*
2,978
 
2,916
所得200万円未満世帯の割合(%)(14年度)
*
28.5
*
19.4
*
24.2
 
11.3
*
22.9
 
10.6
19.1
社会的要因
 
 
 
 
人口(千人)
 
2,634
 
1,868
 
1,520
 
918
 
1,026
 
1,065
1世帯当たり人数
 
2.06
 
2.09
 
2.28
 
2.41
 
2.33
 
2.49
2.52
高齢化率(%)(12年度)
 
17.1
 
14.4
 
16.9
 
12.6
 
13.1
 
12.7
17.3
高齢者単身世帯割合(%)(12年度)
*
9.4
 
6.0
*
9.0
 
5.0
 
4.2
 
4.4
6.4
3世代世帯率(%)(12年度)
 
3.2
 
3.6
 
4.3
 
3.7
 
6.8
 
5.6
9.7
離婚率(‰)
*
2.9
*
2.8
*
2.2
*
2.2
*
2.2
 
2.0
2.1
持家率(%)(12年度)
 
38.8
 
47.7
 
54.0
 
54.3
 
44.8
 
56.3
59.6
年金受給世帯割合(%)(13年度)
 
86.2
 
84.5
 
85.3
 
83.1
 
88.3
 
89.2
行政的要因(15年度)
 
 
 
 
現業員充足率(%)
 
53.7
*
106.7
 
90.2
 
85.7
 
96.1
 
86.2
97.8
申請率(申請件数/相談件数)(%)
 
28.5
 
28.5
 
21.9
*
71.1
*
38.0
*
42.9
30.6
開始率(開始件数/申請件数)(%)
 
88.2
*
92.7
 
89.4
*
98.0
*
95.4
*
93.2
89.5
相談・開始割合(開始件数/相談件数)(%)
 
25.1
 
26.4
 
19.6
*
69.7
*
36.3
*
40.0
28.0
平均保護受給期間(年.月)
 
5.08
*
7.10
*
7.11
 
5.05
 
6.11
 
6.05
7.08
注(1)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」等を基に作成
注(2)
 *印は全国平均を上回っている項目
注(3)
 年度記載のない項目は16年度分を記載

 保護率が高い3市(大阪、札幌、神戸)と低い3市(千葉、仙台、さいたま)とを比較すると、表4—39のとおりであり、世帯類型別構成比については個々に差はあるものの、保護率との関係で顕著な傾向はみられない。
 経済的要因については、完全失業率は6市とも全国平均より高くなっているが、上位集団が下位集団より高い傾向がみられる。また、年間所得が200万円未満の世帯の割合は、上位集団が3市とも全国平均を上回っているのに対し、下位集団で上回っているのは1市のみである。1人当たり市民所得等については明らかな差はみられない。
 社会的要因については、全国平均と比較した場合、全ての市において1世帯当たり人数、高齢化率、3世代世帯率等で下回っているが、上位集団と下位集団との間に差異があるものもあり、上位集団で高いのは高齢化率、高齢者単身世帯割合、離婚率であり、下位集団で高いのは1世帯当たり人数、3世代世帯率である。
 行政的要因については、都道府県間と同様に、ここでも上位集団と下位集団との間に顕著な差をみることはできない。

ウ 中核市間の比較事例

表4—40 上位旭川市ほか3市と下位豊橋市ほか3市の状況
 
保護率上位
保護率下位
 
 区分
旭川
高知
鹿児島
豊橋
富山
豊田
岡崎
全国平均
被保護世帯数
 
6,993
 
6,728
 
11,702
 
7,002
 
993
 
909
 
729
 
650
被保護人員
 
10,693
 
9,368
 
18,239
 
10,037
 
1,282
 
1,058
 
1,095
 
827
保護率(‰)
*
29.5
*
28.1
*
22.9
*
18.0
 
3.4
 
3.2
 
3.0
 
2.3
11.1
世帯類型別構成比(%)
 
 
 
 
高齢者世帯
 
39.9
*
48.4
 
45.8
 
44.0
 
45.2
*
52.4
 
40.1
 
45.7
46.7
母子世帯
*
18.1
 
8.7
*
14.6
 
8.5
 
4.7
 
1.7
*
9.7
 
4.1
8.8
障害者・傷病者世帯
*
35.7
*
40.5
 
33.0
 
34.6
*
45.8
*
42.3
*
43.8
*
48.6
35.1
その他世帯
 
6.1
 
2.4
 
6.4
*
12.7
 
4.1
 
3.5
 
6.2
 
1.5
9.4
経済的要因
 
 
 
 
完全失業率(%)
*
5.4
*
6.0
*
6.1
*
6.5
 
3.9
 
3.5
 
3.3
 
3.6
4.4
所得200万円未満世帯の割合(%)(14年度)
*
27.1
*
22.3
*
19.8
*
27.9
 
13.2
*
19.8
 
14.6
 
9.6
19.1
社会的要因
 
 
 
 
人口(千人)
 
362
 
333
 
794
 
555
 
361
 
326
 
373
 
350
1世帯当たり人数
 
2.19
 
2.23
 
2.45
 
2.26
*
2.78
*
2.76
*
2.76
*
2.72
2.52
高齢化率(%)(12年度)
*
18.3
*
18.1
 
14.8
 
16.0
 
15.1
*
18.7
 
9.9
 
13.2
17.3
高齢者単身世帯割合(%)(12年度)
*
7.2
*
9.5
*
7.0
*
8.4
 
4.6
 
5.9
 
4.4
 
2.3
6.4
3世代世帯率(%)(12年度)
 
5.5
 
4.5
 
5.6
 
2.8
*
12.9
*
13.5
*
10.0
*
11.9
9.7
離婚率(‰)
*
3.2
*
2.9
*
3.1
*
2.4
*
2.1
 
1.9
*
2.2
 
1.9
2.1
持家率(%)(12年度)
 
57.6
 
50.6
 
52.4
 
48.9
 
59.4
*
66.2
 
55.2
*
64.2
59.6
行政的要因(15年度)
 
 
 
 
現業員充足率(%)
 
93.0
 
81.7
 
65.5
 
97.1
 
91.7
 
81.8
*
125.0
*
114.3
97.8
申請率(申請件数/相談件数)(%)
 
17.5
*
31.9
*
44.3
*
61.2
*
42.6
*
39.6
*
36.5
*
43.5
30.6
開始率(開始件数/申請件数)(%)
*
96.1
 
80.9
*
98.4
*
90.0
*
94.2
*
94.7
 
87.4
*
92.6
89.5
相談・開始割合(開始件数/相談件数)(%)
 
16.8
 
25.8
*
43.6
*
55.1
*
40.2
*
37.5
*
31.9
*
40.2
28.0
平均保護受給期間(年.月)
*
8.03
*
7.11
 
6.05
*
8.03
 
6.06
 
7.01
 
5.05
 
6.02
7.08
注(1)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」等を基に作成
注(2)
 *印は全国平均を上回っている項目
注(3)
 年度記載のない項目は16年度分を記載

 保護率が高い4市(旭川、高知、堺、鹿児島)と低い4市(豊橋、富山、豊田、岡崎)を比較すると、表4—40のとおりであり、下位の4市は全て中部地方で、うち3市は愛知県であることが特徴である。世帯類型別構成比については両者に顕著な差はみられない。
 経済的要因については、上位集団で完全失業率が高くなっている。また、年間所得が200万円未満の世帯の割合は、上位集団が4市とも全国平均を上回っているのに対し、下位集団で上回っているのは1市のみである。
 また、社会的要因については、上述した県間の比較と同様、上位集団で高齢者単身世帯割合及び離婚率が全国平均を上回っており、下位集団で1世帯当たり人数及び3世代世帯率が全国平均を上回っている。
 行政的要因については、平均保護受給期間などにおいて若干相違はみられるものの、集団間に顕著な差をみることはできない。

エ 北海道内における比較事例

表4—41 上位三笠市ほか3市と下位富良野市ほか3市などの状況
 
保護率上位
保護率下位
 
 区分
三笠
歌志内
釧路
函館
富良野
千歳
石狩
北広島
札幌
旭川
道平均
被保護世帯数
 
356
 
155
 
4,665
 
7,098
 
156
 
473
 
208
 
227
32,048
6,993
被保護人員
 
564
 
251
 
7,499
 
10,744
 
213
 
657
 
373
 
373
48,910
10,693
保護率(‰)
*
45.9
*
44.9
*
40.0
*
38.0
 
8.3
 
7.2
 
6.6
 
6.2
26.1
29.6
22.9
世帯類型別構成比(%)
 
 
 
 
 
 
高齢者世帯
*
50.6
 
39.6
 
40.1
 
44.0
*
45.5
*
46.0
*
45.0
*
49.0
39.8
46.1
44.4
母子世帯
 
7.3
 
12.1
*
17.9
*
15.8
 
5.1
 
9.1
*
20.6
*
20.3
15.1
20.9
14.0
障害者・傷病者世帯
*
34.3
*
36.9
*
34.8
 
30.1
*
45.5
*
37.5
 
28.7
 
24.0
31.3
25.9
32.5
その他世帯
 
7.8
*
11.4
 
7.3
*
10.1
 
3.8
 
7.4
 
5.7
 
6.8
13.8
7.1
9.0
経済的要因
 
 
 
 
 
 
完全失業率(%)
*
7.0
*
7.8
*
6.5
*
6.7
 
3.0
 
4.3
 
5.1
 
4.8
5.7
5.4
5.8
社会的要因
 
 
 
 
 
 
人口(千人)
 
12
 
5
 
187
 
282
 
25
 
91
 
56
 
602
1,868
361
1世帯当たり人数
 
2.00
 
1.99
 
2.15
 
2.12
*
2.40
 
2.20
*
2.53
*
2.53
2.09
2.20
2.21
高齢化率(%)(12年度)
*
34.0
*
32.6
 
16.6
*
19.9
*
21.5
 
11.7
 
14.7
 
15.1
14.4
18.3
18.2
高齢単身者世帯割合(%)(12年度)
*
16.7
*
16.5
*
7.2
*
9.7
 
6.8
 
4.6
 
4.8
 
4.7
6.0
7.2
7.0
3世代世帯率(%)(12年度)
 
4.6
 
3.8
 
4.6
 
4.4
*
10.1
 
4.1
*
7.3
 
5.2
3.6
5.5
5.6
離婚率(‰)
 
1.6
*
2.9
*
3.0
*
3.0
 
2.3
*
2.9
*
3.1
 
2.3
2.8
3.1
2.6
持家率(%)(12年度)
 
54.5
 
40.0
 
51.3
 
48.8
*
58.0
 
50.8
 
22.1
*
71.5
47.7
57.5
55.0
行政的要因
 
 
 
 
 
 
現業員充足率(%)
*
100.0
*
100.0
 
84.5
 
91.9
*
100.0
*
100.0
*
133.3
*
100.0
106.4
93.0
93.3
申請率(申請件数/相談件数)(%)
*
62.7
*
55.6
*
103.7
*
30.4
 
29.6
 
27.8
 
19.0
*
34.5
28.5
17.5
30.1
開始率(開始件数/申請件数)(%)
*
100.0
*
100.0
 
90.1
*
95.6
*
91.7
*
92.7
 
85.7
 
84.3
92.7
96.2
90.7
相談・開始割合(開始件数/相談件数)(%)
*
62.7
*
55.6
*
93.4
*
29.1
 
27.2
 
25.8
 
16.3
*
29.1
26.4
16.8
28.0
注(1)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」等を基に作成
注(2)
 *印は道平均を上回っている項目
注(3)
 年度記載のない項目は16年度分を記載

 北海道内32市のうち、保護率の高い4市(三笠、歌志内、釧路、函館)と低い4市(富良野、千歳、石狩、北広島)を比較すると、表4—41のとおりであり、世帯類型別構成比では、その他世帯において下位4市が全て道平均を下回っているなどの特徴もみられるが、顕著な違いはみられない。
 経済的要因については、完全失業率において上位4市が全て道平均を上回っているのに対し、下位4市は全て下回っている。全体としても依然として厳しい雇用情勢が続いている北海道内において、三笠、歌志内市等の旧産炭地域の特に厳しい雇用情勢が保護率の高い一因になっていると思料される。
 社会的要因については、高齢者単身世帯割合において上位4市全てが道平均を上回っているのに対し、下位4市は全て下回っている。
 行政的要因について、下位4市では現業員の充足率が100%を超えているが、上位4市においても2市が超えており、集団間に顕著な差をみることはできない。

オ 大阪市内における比較事例

 大阪市における16年度の保護率は、38.1‰と政令市中最も高く、被保護実人員は100,390人で全国の7.0%を占めている。また、大阪市はホームレス数も多く、15年に実施された「ホームレスの実態に関する全国調査」では6,603人と、全国の26.1%を占めている。大阪市内で保護率が高い5区と低い2区について比較すると、表4—42のとおりである。

表4—42 上位西成区ほか4区と下位西区ほか1区の比較
 
保護率上位
保護率下位
 
 区分
西成区
浪速区
平野区
生野区
住吉区
西区
福島区
市平均
被保護世帯数
 
21,261
 
2,694
 
5,659
 
4,375
 
4,453
 
517
 
417
被保護人員
 
23,719
 
3,485
 
9,272
 
5,932
 
6,553
 
676
 
535
保護率(‰)
*
175.9
*
65.7
*
46.1
*
42.5
*
41.1
 
9.5
 
9.0
38.2
 
うち外国籍被保護者(‰)
*
6.4
*
2.8
*
3.5
*
15.0
 
2.0
 
0.6
 
0.5
2.8
世帯類型別構成比(%)
 
 
 
 
高齢者世帯
*
61.0
*
54.0
 
46.0
*
52.8
 
50.0
 
47.0
*
56.7
51.9
母子世帯
 
1.9
 
5.8
*
16.0
*
7.6
*
12.3
*
7.9
 
4.6
7.5
障害者・傷病者世帯
 
29.6
*
31.6
 
24.0
 
26.8
 
24.8
*
32.1
 
29.3
30.0
その他世帯
 
7.4
 
8.6
*
14.0
*
12.8
*
12.9
*
13.1
 
9.4
10.6
経済的要因
 
 
 
 
世帯年間収入200万円未満世帯の割合(15年度)
*
64.6
*
38.4
 
35.6
*
43.0
*
36.9
 
32.3
 
28.6
36.7
社会的要因
 
 
 
 
人口(千人)
 
134
 
53
 
200
 
139
 
159
 
70
 
59
1世帯当たり人数
 
1.8
 
1.7
*
2.4
*
2.3
*
2.2
 
2.0
*
2.2
2.2
高齢化率(%)
*
25.9
 
17.2
*
19.3
 
18.9
*
19.9
 
14.4
 
18.8
19.0
高齢者単身世帯割合(%)(12年度)
*
15.1
*
9.9
 
8.4
*
11.5
*
10.1
 
6.7
 
9.0
9.4
持家率(%)(15年度)
 
28.1
 
11.9
 
30.2
*
45.8
 
33.7
 
37.0
*
41.8
39.1
借家平均家賃(15年)
 
42,250
*
55,111
 
45,108
 
51,175
*
54,322
*
71,378
*
65,573
54,161
家賃4万円以下の借家の割合(15年度)
*
41.4
 
23.1
*
48.4
*
34.3
*
32.0
 
11.5
 
14.7
31.8
行政的要因
 
 
 
 
現業員充足率(%)
 
42.9
*
56.3
*
59.4
 
45.3
*
54.5
*
66.7
*
60.0
52.5
申請率(申請件数/相談件数)(%)
 
23.8
 
11.1
 
25.5
*
54.4
*
29.4
*
39.5
 
23.1
28.5
開始率(開始件数/申請件数)(%)
 
104.0
*
155.0
 
88.3
 
95.9
 
75.2
 
100.8
 
105.7
107.9
相談・開始割合(開始件数/相談件数)(%)
 
24.7
 
17.3
 
22.5
*
52.2
 
22.1
*
39.8
 
24.4
30.8
注(1)
 厚生労働省「被保護者全国一斉調査」及び総務省「住宅・土地統計調査」等を基に作成
注(2)
 *印は市平均を上回っている項目
注(3)
 年度記載のない項目は16年度分を記載

 保護率では、全国平均を下回っているのは全24行政区のうち福島区ほか1区のみであり、保護率が最も高い西成区の175.9‰と最も低い福島区の9.0‰との間には20倍近い格差がある。
 西成区には、日雇労働者が低額の簡易宿所等に多く居住するあいりん地域があり、近年では日雇労働者の高年齢化が進んだこともあって、就労不能となって生活保護受給を希望する者が急増(保護開始件数は、12年度に比べて16年度は1.4倍に増加)している。大阪市では、あいりん地域におけるホームレスに対し施設入所等の措置を行うために更生相談所を設置するなどの対策を執っているが、依然雇用情勢が厳しいことなどにより保護率は上昇を続けている状況である。ちなみに、あいりん地域の被保護者を除いた西成区の保護率は35.8‰と大阪市の平均保護率程度となっている。
 経済的要因では、年間収入が200万円未満の世帯の割合について、上位集団が下位集団をいずれも上回っており、特に西成区は64.6%と市内でも突出した割合となっている。
 社会的要因では、高齢者単身世帯割合は概して上位集団の方が高くなっている。また、家賃4万円以下の借家の割合は、上位集団が下位集団及び市内平均に比べて高くなっている。
 行政的要因については、大阪市の特徴として総じて現業員の充足率が低いことが挙げられる。充足率は最も高い西区においても66.7%に留まっており、市平均では50%を若干超える程度である。大阪市としては、〔1〕高齢者世帯等の訪問に嘱託職員を充てることにより現業員1人当たりの被保護世帯数を抑え、母子世帯等のきめ細かい訪問指導を必要とする世帯に対して勢力を重点的に配分したり、〔2〕緊急入院保護業務センターを設置し、救急搬送された住居のない要保護者に係る業務を一括して取り扱うことにより各福祉事務所の業務の効率化を図ったりするなどの施策を講じているが、被保護者数の増加に苦慮しているのが実情である。

(5)生活保護制度の見直し

 厚生労働省では、保護率が全国的に依然として増加傾向にあるなかで、生活保護制度が国民の最低限度の生活を保障する最後のセーフティネットとしての役割を果たし続けるため、その制度の在り方・運用について検討・見直しを行ってきている。

ア 自立支援プログラムの導入及びその推進

 17年度からは、生活保護制度について、経済的給付に加え、組織的に被保護世帯の自立を支援する制度に転換するため、その具体的実施手段として「自立支援プログラム」の導入を推進している。この自立支援プログラムは、実施機関が管内の被保護世帯全体の状況を把握した上で、被保護世帯の状況や自立阻害要因について類型化を図り、それぞれの類型ごとに取り組むべき自立支援の具体的内容及び実施手順等を定め、これに基づき個々の被保護世帯に必要な支援を組織的に実施するものである。17年度は、公共職業安定所との連携による生活保護受給者等就労支援事業等について実施している。個々の担当職員の努力により培われた経験や他の実施機関での取組の事例等を具体的な自立支援の内容や手順等に反映させていくことにより、こうした経験等を組織全体として共有することが可能となり、自立支援の組織的対応や効率化につながるものと考えられている。

イ 保護基準の改定

 保護基準については、一般国民の生活水準と均衡がとれたものとなるよう改定が行われており、17年度においては、そのうち母子加算の支給要件、多人数世帯の生活扶助基準、老齢加算(16年度から段階的に廃止)等の改定が行われている。

3 検査の結果に対する所見

 今般、参議院からの要請を受けて、生活保護の地域格差の状況について検査したところ、以下のような状況となっていた。

ア 保護率等の地域格差の状況

 被保護実世帯数及び被保護実人員は、近年、全国的に増加傾向にあり、これに伴って保護率が上昇し、支給済保護費及びこれに対する負担金等の国庫負担額も大幅に増加している。
 保護率等の地域格差については、保護率、1人当たりの支給済保護費、1世帯(又は1人)当たりの扶助別支給済保護費、被保護世帯の世帯類型別構成比、保護開始・廃止理由別構成比、就労世帯比率及び国民年金受給率に事業主体間で大きな格差や地域的な偏りがあるほか、次のような状況がみられる。
(ア)保護率については、概して、大都市地域が地方の市町村に比べて高くなっており、その地域格差が拡大している傾向がみられる。
(イ)支給済保護費のうち50%以上を占める医療扶助費については、医療扶助人員1人当たり医療扶助費と医療扶助人員に占める入院患者、精神科入院患者等の比率との間に正の相関がみられ、これらの比率の高い地域で医療扶助人員1人当たり医療扶助費が高い傾向がみられる。
(ウ)被保護世帯の就労世帯比率については、全体としては低位にとどまっており、世帯類型のうち就労世帯比率が高い母子世帯及びその他世帯において地域格差がみられる。また、被保護者の国民年金受給率については、一般世帯に比べ格差がみられる。

イ 保護の実施体制及び実施状況の地域格差

 保護の実施体制については、現業員の充足率、専任者割合、経験年数等に事業主体間で格差がみられる。特に、現業員の充足率については、配置数が標準数を上回る福祉事務所がある一方で、現業員が標準数に満たない福祉事務所も少なからず見受けられる。
 また、保護の実施状況についても、保護の申請率、保護の開始率、保護開始時の関係先調査等、被保護世帯の訪問調査活動、医療扶助の適正化の取組、自立助長の取組などに地域格差がみられる。

ウ 保護率の地域格差の要因

 保護率については、完全失業率等の経済的要因及び高齢者単身世帯割合、3世代世帯率、離婚率等の社会的要因との間に相関がみられたが、現業員の充足率、保護の申請率等の行政的要因との間に明確な相関はみられなかった。なお、現業員の充足率と保護率との相関については、分析の手法によっては相関があるとする見解もあり得るが、明確な相関があるとすることは困難であった。

 このような状況にかんがみ、厚生労働省は自立支援プログラム等の施策を実施、推進しているところであるが、今後は、以下のような点に留意することが重要である。
〔1〕 生活保護の地域格差については、経済的要因及び社会的要因の影響が大きいことから、その生活保護の動向に与える影響を踏まえて各種の施策を実施機関との十分な連携のもとに的確に講じていくことが望まれる。
〔2〕 保護の実施体制及び実施状況の格差については、保護率の地域格差との間に明確な関連は認められなかったが、事業主体間での地域格差があることは望ましいことではなく、自立支援プログラムの実施に対する影響も懸念される。したがって、国及び地方の財政状況が厳しいなどの事情はあるとしても、なお一層の制度の適正な運営を確保するため、事業主体間の格差について縮小することが望まれる。
 会計検査院としては、被保護実世帯数及び被保護実人員が、近年、全国的に増加傾向にあり、支給済保護費及びこれに対する国庫負担額も増加していることから、生活保護制度の見直しの状況を踏まえ、本制度の適正な運用はもとより、生活保護の動向について引き続き注視していくこととする。