検査対象 |
成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団) |
成田国際空港株式会社の概要 |
成田国際空港の設置及び管理を効率的に行うことなどにより、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もって航空の総合的な発達に資するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与することを目的として設立された法人 |
検査の対象とした契約年度 |
平成13年度〜17年度 |
検査の対象とした空港施設等の整備事業に係る契約件数 |
320件 |
上記に係る契約金額 |
1927億円 |
成田国際空港株式会社(以下「成田会社」という。)は、成田国際空港の設置及び管理を効率的に行うことなどにより、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もって航空の総合的な発達に資するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与することを目的として、成田国際空港株式会社法(平成15年法律第124号)に基づき、平成16年4月1日、同法の規定により解散した新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)の一切の権利及び義務を承継して、全額政府出資の特殊会社として設立された。
成田会社では、空港の設置及び管理のために、滑走路、エプロン及び旅客ターミナルビル等の空港施設や航空灯火等の航空保安施設(以下、これらを「空港施設等」という。)の整備事業を実施している。そして、旅客ターミナルビル等の各施設や航空灯火等に電力を供給するなどのため必要となる受変電・配電設備、電源設備及び監視制御設備を設置する工事(以下「受変電設備工事」という。)を多数発注している。
空港公団及び成田会社においては、入札・契約制度に関して、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(平成6年1月閣議了解)、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号)等に基づき、一般競争入札等の導入、工事発注に関する情報公表の拡充等による透明性の向上等の入札・契約の適正化に資する措置が執られてきた。
このような状況にあって、17年12月5日、空港公団が15年度に発注した受変電設備工事に関し、東京地方検察庁(以下「地検」という。)は、当時発注等の業務に従事していた成田会社の社員2名を刑法(明治40年法律第45号)第96条の3第1項の規定による競売入札妨害罪の容疑で逮捕した。その後、地検は同月15日に、空港公団が15年7月に発注した「第1旅客ターミナルビル第5サテライト新築工事(受変電設備)」ほか2件の受変電設備工事(表1参照)
の入札に関し、上記2名の社員を競売入札妨害罪で東京地方裁判所に起訴した。
そして、18年3月8日に、上記2名に対しそれぞれ求刑どおりの有罪判決(懲役1年、1年6箇月。ともに執行猶予3年。)が下され、刑が確定した。
また、上記3件の工事を受注した株式会社東芝ほか2社の各営業担当者が東京簡易裁判所に略式起訴され、略式命令を受け、それぞれ罰金50万円が科された。
工事件名
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入札公告日
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入札日
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契約年月日
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契約金額(千円)
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落札業者
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当初
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最終
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第1旅客ターミナルビル
第5サテライト新築工事(受変電設備)
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15.5.21
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15.7.9
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15.7.10
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472,500
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477,225
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株式会社東芝
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南部貨物上屋第2期受変電設備工事
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15.10.30
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15.11.7
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15.11.10
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204,750
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209,790
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日新電機株式会社
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南部貨物官庁事務所受変電設備工事
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15.12.5
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15.12.15
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15.12.15
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78,750
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78,750
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富士電機システムズ株式会社
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合計
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756,000
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765,765
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成田会社では、上記の社員逮捕に先立ち、17年11月18日に地検の強制捜査を受けたことに伴い、12月6日に、各種工事の発注・契約に係る今後の不正防止策の確立を目的として、社外の有識者を構成員とする「工事発注不正防止委員会」を設置した。
その後、同月26日に、「工事発注不正防止委員会」から不正防止策についての提言を受け、成田会社では、「工事発注事務の適正化策」(以下「適正化策」という。)を策定し、公表した。
適正化策の主な内容は次のとおりである。
〔1〕 コンプライアンス教育の強化
〔2〕 総合評価方式(注1)
を拡大するとともに、従来、入札・契約方式の中心であった指名競争契約(以下「従来型指名競争契約」という。)を18年4月から廃止するなどの契約方式の改善
〔3〕 内部監査部門を拡充するなどの内部統制の強化と業務執行の改善
〔4〕 競争参加者、契約の相手方等を原則公表するなどの情報の公開
〔5〕 入札談合等の不正行為と認められる事実があったと公の機関により確定された場合に、一定の賠償金を支払うよう受注者に義務付ける旨の違約金に関する特約条項(以下「違約金条項」という。)を契約書に明記するなどの受注企業への対応