ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成18年10月

成田国際空港株式会社における空港施設等の整備事業に係る入札・契約の実施状況等について


3 検査の状況

(1)入札・契約事務の執行状況

ア 入札・契約方式

 空港公団及び成田会社の工事請負契約に係る入札・契約方式は、工事の予定価格に応じて定められており、表3のとおり、16年4月の成田会社移行後、公募型指名競争契約に代えて、公募型競争契約を導入し、併せて従来型指名競争契約の適用範囲を縮小した。そして、18年4月以降、従来型指名競争契約を廃止し、公募型競争契約の適用範囲を拡大した。

(注2)
 公募型指名競争契約 あらかじめ発注者より競争に参加できることの認定を受けた有資格者から入札参加者を募り、その応募者の中から技術、能力等を審査して入札参加者を決定し、発注者が一定数の範囲内で入札者を指名し、入札して契約する制度
(注3)
 公募型競争契約 あらかじめ発注者より競争に参加できることの認定を受けた有資格者のうち、応募資格がある者がすべて競争に参加でき、これら応募資格のある者から見積書を徴取して、原則として契約制限価格の範囲内で価格交渉後に契約する制度

表3 工事請負契約に係る入札・契約方式の推移

表3工事請負契約に係る入札・契約方式の推移

注(1)
 1500万SDR SDRはIMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)であり、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの加重平均方式により決定されている。邦貨換算額は2年ごとに見直されており、平成13年度は25億円、14、15両年度は22.2億円、16、17両年度は24.3億円となっている。
注(2)
 1億円以上の工事においても、特殊な技術条件により、施行できる者が少数(10人以内)に限られることが明らかな工事を施行する場合等は従来型指名競争契約の方法を適用することとされていた。

イ 入札・契約方式の適用状況

 成田会社では、前記のとおり、適正化策において総合評価方式を拡大することとしており、具体的には公募型競争契約の対象事案について20年度までに金額ベースで5割に達することを目標としている。そして、18年4月に総合評価方式実施要領を策定しているが、同年5月の会計実地検査時点では、契約実績はない。
 空港公団及び成田会社において、13年度から17年度までの間に入札・契約した工事の件数及び金額を、適用した入札・契約方式ごとに示すと、表4のとおりであり、成田会社では、16年度から導入された公募型競争契約が、従来型指名競争契約に代わり、多数を占めるようになってきている。

表4 入札・契約方式の適用状況
表4—1 契約金額1億円以上の建築、土木等工事
(単位:件、千円)
入札・契約方式
空港公団
(13年度〜15年度)
成田会社
(16、17両年度)
(13年度〜17年度)
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
一般競争
12
50,686,524
12
50,686,524
公募型指名競争
57
52,045,560
57
52,045,560
公募型競争
59
34,816,120
59
34,816,120
従来型指名競争
111
22,733,118
12
4,706,625
123
27,439,743
随意契約
25
8,384,775
21
12,150,690
46
20,535,465
205
133,849,977
92
51,673,436
297
185,523,414

表4—2 契約金額1000万円以上の受変電設備工事
(単位:件、千円)

入札・契約方式
空港公団
(13年度〜15年度)
成田会社
(16、17両年度)
(13年度〜17年度)
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
一般競争
公募型指名競争
3
1,608,600
3
1,608,600
公募型競争
6
2,058,000
6
2,058,000
従来型指名競争
11
1,422,225
3
2,116,485
14
3,538,710
随意契約
14
3,030,825
9
4,174,485
23
7,205,310

ウ 入札への参加状況

(ア)入札への参加状況

 工事種別ごと、入札・契約方式ごとの入札者数については、表5のとおりであり、建築、土木等工事と受変電設備工事とを比較すると、受変電設備工事における入札者数の平均は空港公団発注工事では5.9者、成田会社発注工事では5.8者で、建築、土木等工事における入札者数の平均の8.1者(空港公団発注工事)又は8.4者(成田会社発注工事)の7割程度となっていた。
 さらに、これを建築、土木等工事のうち、受変電設備工事と同種の工事である電気設備工事における入札者数の平均の9.8者(空港公団発注工事)又は20.8者(成田会社発注工事)と比べると6割又は3割程度となっていた。
 以上のように、受変電設備工事における入札者数は建築、土木等工事や電気設備工事における入札者数と比べると少数となっていた。

表5 入札者数等の実績
(単位:件、者)

工事種別
入札・契約方式
空港公団
(13年度〜15年度)
成田会社
(16、17両年度)
件数
入札者数の平均値(初回)
件数
入札者数の平均値(初回)
建築、土木等
一般競争
12
6.8
公募型指名競争
57
7.2
公募型競争
59
9.0
従来型指名競争
111
8.7
12
5.4
180
8.1
71
8.4
上記のうち電気設備
一般競争
公募型指名競争
6
9.3
公募型競争
10
20.8
従来型指名競争
18
9.9
24
9.8
10
20.8
受変電設備
一般競争
公募型指名競争
3
5.7
公募型競争
6
5.7
従来型指名競争
11
5.9
3
6.0
14
5.9
9
5.8
(注)
 建築、土木等は、契約金額1億円以上、受変電設備は、契約金額1000万円以上


(イ)受変電設備工事における入札者数と競争参加条件

 従来型指名競争で実施した受変電設備工事14件における指名業者数についてみると、空港公団及び成田会社の規程では「なるべく10社以上を指名する」こととなっているにもかかわらず、このうち13件については受変電機器製造会社である6社(注4) 、1件については同6社のうちの5社が指名されていた。また、公募型指名競争(3件)又は公募型競争(6件)で実施した9件についても、各工事における指名業者又は応募業者は上記の6社又は5社となっていた。このように入札者が限定的となっているのは、「変圧器等の主要機器について自ら製作し、設置する工事を実施した実績があること」を受変電設備工事の競争参加の条件としていることによる。
 すなわち、「変圧器等の主要機器について自ら製作」している会社は少数であるため、受注能力、受注意欲を持つ業者であったとしても、入札に参加できない状況となっていた。
 しかし、他団体の同種の工事において、入札談合事件を契機に、主要機器について自社製作能力を有することの条件を除外した結果、入札者が増加したことなどを考慮すると、今後成田会社においても競争参加条件について見直しをするなどして競争参加者の拡大を図ることが十分可能であると認められる。

(注4)
 受変電機器製造会社である6社 株式会社東芝、日新電機株式会社及び富士電機システムズ株式会社(15年10月に富士電機株式会社の受変電機器製造部門を承継)のほか3社


(ウ)受変電設備工事における受注の状況について

 13年度から17年度までの間に実施された受変電設備工事23件の年度別会社別の受注状況は、図1のとおりとなっており、日新電機株式会社が10件、富士電機システムズ株式会社(15年9月以前の富士電機株式会社受注分を含む。)が6件、株式会社東芝が3件となっていて、今回の競売入札妨害事件に関与した3社の受注実績が他社に比べて多くなっていた。

図1 年度別会社別の受注状況

図1年度別会社別の受注状況

エ 落札率の状況

(ア)落札率の状況

 落札率(注5) の状況について、工事種別ごと、入札・契約方式ごとにみると表6のとおりであり、その平均についてみると、空港公団発注工事では95.7%、成田会社発注工事では95.0%となっていた。

(注5)
 落札率 落札価格の予定価格に対する割合


表6 落札率の状況
(単位:件、%)

工事種別
入札・契約方式
空港公団
(13年度〜15年度)
成田会社
(16、17両年度)
件数
平均落札率
件数
平均落札率
建築、土木等
一般競争
12
97.4
公募型指名競争
57
95.5
公募型競争
59
94.0
従来型指名競争
111
95.0
12
95.2
随意契約
25
97.8
21
96.1
205
95.6
92
94.7
上記のうち電気設備
一般競争
公募型指名競争
6
95.1
公募型競争
10
94.9
従来型指名競争
18
96.0
随意契約
1
97.0
6
96.5
25
95.8
16
95.5
受変電設備
一般競争
公募型指名競争
3
98.1
公募型競争
6
98.1
従来型指名競争
11
96.9
3
98.1
随意契約
14
97.1
9
98.1
合計
219
95.7
101
95.0
(注)
 建築、土木等は、契約金額1億円以上、受変電設備は、契約金額1000万円以上


(イ)落札率と入札者数の関係

 一般に、入札者が多いほど競争性が高く、その結果落札率も低減すると想定されたので、落札率と入札者数の関係について調査した(図2参照)
 建築、土木等工事は「4〜6者」以上については、入札者数が多いほど落札率が95%以上の高率な工事の割合が少なくなっている。一方、受変電設備工事については、前記のとおり、指名業者又は応募業者が限定的となっていたことから、入札者はすべて「4〜6者」となっていて、落札率が95%以上のものが大半を占めている状況であった。また、平均落札率も表6のとおり、空港公団発注工事では97.1%、成田会社発注工事では98.1%と高率となっていた。

図2 落札率と入札者数との関係

図2—1 建築、土木等工事
(単位:件)


図2—1建築、土木等工事

(注)
 随意契約46件を除く。


図2—2 受変電設備工事
(単位:件)


図2—2受変電設備工事

(2)受変電設備工事の予定価格の積算について

 受変電設備工事の予定価格の積算についてみると、空港公団では、空港公団制定の「請負工事積算基準」及び「電気設備工事運用指針」(以下、これらを「積算基準」という。)等により行うこととしている。
 積算基準によれば、受変電設備工事を発注する場合の工事費の積算は、図3のとおり、変圧器等の受変電機器の工場製作費(以下「機器費」という。)及び機器の据付費・運搬費などの現場工事費を合算して工事価格とし、これに消費税相当額を加えて積算価格を算定し、この金額を基に予定価格を設定することとしている。
 また、成田会社においても、上記の方法で契約制限価格を設定している。

図3 受変電設備工事の工事費の構成

図3受変電設備工事の工事費の構成

 このうち、受変電設備工事における機器費は、各工事における工事価格の約90%を占めている。
 積算基準によれば、機器費の積算は、原則として、3社以上の機器製造会社に対して、設計図書、納期、場所等を明示して見積書の提出を求めることとしている。そして、見積書の内容に誤りのないことを確認し、合計額で最低の価格の見積書を基に、機器ごとに値引額(値引率10%を基本とする)を控除の上、各機器の価格を合算した価格を積算価格とすることとされている。
 空港公団及び成田会社では、受変電機器製造会社である6社から見積書を徴取していた。そして、実際に採用している値引率についてみると、機器の種類に応じて14年度までは10%から45%、15年度以降は30%から50%としていた。
 このように、15年度以降積算基準で基本とされている値引率10%を大きく超えた値引率を採用していることについて、空港公団及び成田会社は、設計コンサルタント等からヒアリングにより得た民間取引の実勢価格を積算に反映させた結果であるとしているが、根拠資料はないとしていて、実勢価格を反映した値引率となっているかについては確認できない状況であった。
 したがって、機器費についてはその根拠及び妥当性を明確にするため定期的に物価調査会社等に価格調査を依頼するなどして、適切に実勢価格を積算に反映させる要がある。

(3)入札談合等に対する対応策について

 入札談合等の不正行為があった場合の発注者に生じた損害の回復を容易にするとともに、不正行為の抑止効果を期待して、違約金条項を契約書に明記する国の機関等が増えてきており、入札談合等に対する対応策が進んできている。
 すなわち、国土交通省では、15年5月15日に、契約金額の10分の1に相当する額を違約金として徴収する旨の違約金条項を制定し、同年6月1日以降に入札手続を開始する契約に適用することとし、空港公団に対して、同年5月19日付けで「工事における違約金に関する特約条項の制定等について」を参考通知している。その後、同省では、同省発注の鋼橋上部工事に関して大規模な談合行為が発生したことを踏まえ、17年9月28日に、特に悪質性が際立っている事案については違約金の額を契約金額の15%に相当する額に引き上げるなどの違約金条項の強化を行い、これについても、成田会社に対し、同月30日付けで、「工事における違約金特約条項の強化について」を参考通知している。
 しかし、違約金条項の必要性についての認識が十分でなかったため、15年に上記の違約金条項の制定についての参考通知があった際、空港公団では違約金条項を契約書に明記する措置を執っておらず、さらに、17年に上記の違約金条項の強化についての参考通知があった際も成田会社においてこれに対応していなかった。
 前記の立件対象となった3件の工事のうち、15年11月及び12月に契約した2件については、同年6月1日以降に入札手続が行われていることから、同年5月の違約金条項の制定についての参考通知に基づき、違約金条項を契約書に明記する措置を執っていれば違約金を請求することが可能であったのにこの措置を執っていなかったため、違約金を請求できない状況となっている。
 また、違約金条項を契約書に明記していない契約について、国土交通省等では次のように取り扱うこととしている。
〔1〕 国土交通省では、違約金条項を契約書に明記する以前の工事で司法当局等により談合の事実の認定が行われたものについて、公訴時効等の範囲内で、違約金条項の適用がなくても損害賠償の請求を行うこととしている。
〔2〕 日本道路公団の事業等を承継した東日本、中日本及び西日本各高速道路株式会社並びに独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構では、17年6月の日本道路公団における鋼製橋りょう談合事件に係る公正取引委員会が行った18年3月の課徴金納付命令の対象工事のうち、違約金条項を契約書に明記していない契約については、損害賠償の請求を行うことを検討している。
 上記の状況を踏まえ、成田会社においては、立件対象となった3件(契約金額計7億6576万余円)の工事については、損害賠償の請求について検討することが必要である。
 なお、成田会社では、前記の適正化策に基づき、18年1月から違約金条項を契約書に明記する措置を講じている。