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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年9月

日本放送協会における不祥事に関する会計検査の結果について


4 検査の結果に対する所見

 協会では、16年7月に芸能番組担当CPによる番組制作費不正支出問題が発覚したことに端を発して、相次いで不祥事が発覚したことにより、国民・視聴者の信頼を大きく失墜させ、受信料不払い急増など受信料制度の根幹を揺るがしかねない事態を招いた。
 会計検査院では平成15年度決算検査報告に「職員の不正行為による損害が生じたもの」を掲記しており、これらの不正行為の発生原因は、〔1〕職員において適正な会計経理に対する認識が欠如していたこと、〔2〕番組制作の業務実態を的確に把握した上での経理審査が行われていなかったことなどにあると認められるとしたところである。
 協会では、16年9月に会長を長とする「コンプライアンス推進委員会」を設置し、職員の倫理に関する基本理念を定めて、職員研修をはじめ職員啓蒙活動の強化に取り組むなどして、不正行為の再発防止に努めてきたとしており、会計検査院においても、協会における再発防止策の実施状況等について注視してきたところである。
 しかし、18年4月に新たな架空出張の事態が発生したことは、それまでに実施してきた経理適正化策等の再発防止に向けた取組が不十分であることが判明したものであると認められた。
ア 今般、会計検査院は、番組制作費等の経理の実施状況について、前記の15部局において、不正経理や不適切経理が行われていた放送料等の各経費を対象として、会計実地検査を行った。検査は、経理適正化策が執られた前後の15年度から18年度までの間に支払われたものの中から、主として同一の者が複数回にわたり起票しているもの、CP以上の職員が起票しているものなどを抽出して、会計実地検査の時点で各部局に保存されていた書類を照合したり、関係者から業務実態を聴取したりするなどの方法により行った。
 その結果、会計検査院が今回検査した範囲では、現時点で特に架空請求や架空出張等の不正な事態は見受けられなかった。
 また、協会が実施した全部局業務調査等の各調査についても、検査した15部局における調査内容について、業務調査報告書等の書類や関係者から調査実態を聴取するなどの方法により検査を実施した。さらに、不祥事の再発防止に向けた体制整備の状況について、前記15部局における経理の実施状況の検査の過程で放送料や旅費等の各費目ごとの経理適正化策の遵守状況を検査するとともに、経理審査担当管理職員や監査室の職員等の関係者から、各費目に共通する経理適正化策の遂行状況を聴取するなどの方法により検査を行った。
 その結果、会計検査院が今回検査した範囲では、上記の協会が実施した各調査結果に、現時点で特に不備な点があるとは認められず、経理適正化策についても、現時点で特に不適切な事態は見受けられなかったが、委嘱業務の事前審査の徹底を更に図る必要があるものも見受けられた。
イ 協会では、現在、19年度「コンプライアンス推進のアクションプラン」に基づき、〔1〕コンプライアンス月次点検を実施して、業務管理・経理管理の徹底を図ること、〔2〕出張旅費をはじめとした経費処理のモニタリング活動を強化し、適正経理の一層の徹底を図ること、〔3〕反面調査の活用や抜き打ち監査を実施するなど監査の実効性の向上に努めること、などの不正防止機能の強化に取り組んでいるとしているが、上記の項目を確実に実施していくことが必要である。

 会計検査院としては、今後とも、協会における不正防止機能の強化に係る施策の実施状況や、番組制作費等経理全般の実施状況について、引き続き検査していくこととする。