協会は、昭和57年の放送法改正により、協会の出資範囲が拡大されて以降、順次、自ら出資して子会社を新設するとともに関連団体に対する業務委託を年々拡大するなどしていった。そして、協会の関連団体数は、平成9年の放送法施行規則の改正等の結果、10年度末現在で計65団体に上るに至った。一方、昭和57年の放送法改正以降これまでの間、関連団体や関連団体に対する業務委託の在り方等に関して、法令等の改正や様々な提言等がなされてきている。そして、協会は、平成11年度以降、関連団体の統廃合を進め、17年度末現在では、子会社21社、関連会社4社、関連公益法人等9団体、計34団体となっている。
ア 会計検査院は、今般、協会の関連団体の余剰金の状況について検査を実施した。
17年度末現在、日本放送協会健康保険組合を除く関連団体33団体の利益剰余金等の総額は886億余円に上っており、このうち、子会社21社の利益剰余金の合計は759億余円、関連会社4社の利益剰余金の合計は48億余円、関連公益法人8法人の内部留保額の合計は79億余円となっていた。
これら関連団体の利益剰余金の状況に関して、関連団体の決算の状況、協会と関連団体との取引の状況等をみると、次のとおりであった。
(ア) 協会が直接出資している子会社19社の17年度決算の状況をみると、営業利益率の平均は、おおむね標準的な水準と思料されるが、自己資本比率及び総資産に対する利益剰余金の割合の平均は、いずれも50%を超えているなど、子会社19社は、全体として財務面での健全性が高いと認められた。一方、19社の当座比率の平均も200%を超えていて、これらのことから、子会社の中には十分な財務上の余力がある会社が見受けられた。
協会は、子会社の配当に関する考え方について、16年度決算に基づく配当までは、子会社の健全な財務体質を図ることなどを目的として、利益に比して配当を抑制していたが、17年9月に、これまでの配当に関する考え方を転換し、17年度決算に基づく配当から、新たな考え方によることとした結果、子会社19社の17年度決算に基づく配当49億余円は、前年度に比べ総額で40億余円、配当性向で14倍の大幅な伸びとなっていた。これは、協会が3社に対して要請した特例配当計39億余円によるもので、特例配当を実施した子会社3社の18年度末利益剰余金の合計は、前年度末に比べ20億余円減少していた。そして、子会社19社の18年度末利益剰余金の総額は744億余円となっていて、わずかではあるが前年度末に比べ約3300万円、0.04%減少していた。
(イ) 協会と関連団体との取引状況等については、取引の大半は、協会職員の削減に伴い協会職員とともに業務が関連団体へ移行した経緯があることなどから、随意契約による業務委託がほとんどとなっていた。そして、関連団体との業務委託契約は、委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させて委託人件費を削減している事例が見受けられるものの、現在の協会の積算基準では、委託業務従事者に指定された出向者の人件費は協会職員と同等の水準であることから、当該出向者の人件費相当額については、職員給与等を業務委託費として支払っているものとなっていた。
関連団体との取引に関して、協会における業務委託額の妥当性の検証は、必要に応じて、見積書等を確認するにとどまり、支払証拠書類等により実際に関連団体が支払った金額の確認を行うまでには至っていなかった。
協会が関連団体から収納する副次収入のうち、二次使用料収入は、外部の利用者が関連団体に支払った額から当該関連団体における事務処理費用等を考慮し、これを控除した額となっているが、二次使用料率の適用条件が多岐にわたっており、個々の適用条件ごとの収支状況を確認できないことなどから、控除に適用する二次使用料率が実際に妥当なものとなっているかの判断は困難であると思料された。
関連団体を含めた外部との取引等に当たって適用される規程類は、その適用範囲が明確となっていないものなどが見受けられた。
イ 関連団体の利益剰余金等については、協会が直接出資している子会社は全体として財務面での健全性は高く、十分な財務上の余力が見受けられる会社もあることから、これらの子会社に対しては、今後も利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等を勘案して特例配当を要請するなどの必要があると考えられ、ひいては、これをもって協会の財政に寄与させることが望まれる。
関連団体との取引については、協会の主たる財源が受信料であることにかんがみ、取引を通じて関連団体に過剰な利益を与えることにならないよう、次のことに努める必要がある。
(ア) 取引の大半が随意契約による業務委託であることから、契約の競争性の確保を図る観点からも、一般調達への移行を含めた関連団体との業務委託の在り方を検討すること
(イ) 委託業務従事者に指定された出向者の委託人件費相当額については、職員給与等を業務委託費として支払っているものであることから、当面、関連団体と随意契約による業務委託を継続せざるを得ない場合であっても、例えば委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させるなどして、委託費を削減すること
(ウ) 業務委託額の妥当性の検証は、支払証拠書類等により実際に関連団体が支払った金額の確認を行うまでには至っていないことから、契約額の妥当性、透明性の確保に留意し、実績原価を確認する機会を増やすなど、関連団体の協会からの業務委託額の検証をより積極的に行うこと
(エ) 二次使用料率は、実際に妥当なものとなっているかの判断が困難であることから、料率の設定に当たっては、今後も算定基準をより合理的なものとしていくこと
(オ) 関係規程類の適用範囲が明確となっていないものなどが見受けられることから、関係規程の体系的な整理を推進すること
会計検査院としては、協会の子会社の配当及び関連団体の利益剰余金等の状況について検査していくとともに、協会の関連団体との契約及び協会の副次収入の収納、並びにこれらに係る協会の積算、確認体制、検証の状況について、今後も多角的な観点から、引き続き検査していくこととする。