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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年10月

各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成18年6月7日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月8日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、国会、裁判所、会計検査院

(二) 検査の内容

 各府省等が締結している随意契約についての次の各事項

〔1〕 随意契約を含めた契約全般の状況

〔2〕 随意契約の実施状況及び随意契約となった理由の妥当性

〔3〕 公益法人に対する随意契約の実施状況及び公益法人による再委託の状況

〔4〕 契約の透明性の向上に向けた体制整備の状況

〔5〕 随意契約先公益法人における所管府省退職者の再就職者数

〔6〕 再委託先への所管府省及び当該公益法人それぞれの退職者の再就職者数

〔7〕 〔5〕〔6〕についてそれぞれの公益法人及び再委託先の従業員に占める再就職者の比率、役員に占める比率


2 平成16年度決算に関する決議における内閣に対する警告の内容

 参議院では、18年6月7日に決算委員会において、検査を要請する旨の上記の決議を行うとともに、平成16年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月9日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
 この警告決議のうち、上記検査の要請に関連する項目の内容は、次のとおりである。

1 平成十六年度に中央省庁が実施した一件五百万円以上の工事の発注や、業務委託等の契約に占める随意契約の件数の割合が約七十パーセントと極めて高率になっており、中でも、国土交通省所管の各建設協会などを始め所管公益法人に発注した契約には、随意契約割合が百パーセント、あるいはそれに近い高率になっている例が少なからず見られ、さらに、これらの公益法人に多数のOBが天下っていることは、契約の公平性、競争性及び透明性の確保に疑念を抱かせ、看過できない。また、IT調達にあっては、民間企業を相手とする随意契約が金額の七割から八割を占めている省庁もある。
 政府は、随意契約の見直しに当たっては、相手方の官民を問わず一般競争入札を原則とし例外的に随意契約を認めている会計法の精神に照らして厳格な運用に努めるとともに、所管公益法人等への業務委託の実施に当たっては、天下りの状況も含め積極的に情報開示を行うなど、国民の不信を招くことのないよう厳正に対処し、公共調達の適正化に努めるべきである。


3 国の契約方式等の概要

(1) 国の契約方式と契約相手方の決定方法

ア 契約方式

 国の契約制度は、会計制度の一環として、公正かつ厳正に運用されなければならないが、さらに、支出の原因となる契約については、その支出が租税等国民の貴重な財源をもって充てられていることから最も効率的に使用されるように、契約相手方の選定は適切に行われる必要がある。会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)その他の会計法令等においては、この契約相手方の選定方法、すなわち契約方式を図表0-1のとおり定めている。
 これによると、国の契約方式としては、一般競争契約及び指名競争契約(以下、両者を合わせて「競争契約」という。)並びに随意契約の三つがあるが、機会の均等、公正性の保持、予算の効率的使用の面から、一般競争契約が原則とされている。
 このうち随意契約は、競争によることなく特定の者を選定してその者と契約を締結する方式であり、相手方を特定することにより資産、信用、能力の確実な者を選定することができるほか、競争契約の場合のように、通常入札への参加者を募るための公告が必要とされていないなど契約に要する日数と手続が少なく、契約事務の負担軽減が図れる最も簡便な契約方式でもある。しかし、これが安易に適用された場合には、契約の相手方が固定され公正性が確保されなくなったり、ひいては国にとって不利な価格で契約を締結することになったりすることも懸念されるため、その運用は適正に行われる必要がある。

図表0-1 国の契約方式
区分
要件
根拠条項
一般競争契約
(原則)
売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、以下の場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。
会計法第29条の3第1項
指名競争契約
指名競争に付するものとされている場合
〔1〕 契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合
〔2〕 一般競争に付することが不利と認められる場合
会計法第29条の3第3項
指名競争が付することができるとされている場合
〔3〕 契約に係る予定価格が少額である場合
a 予定価格が500万円を超えない工事又は製造をさせるとき
b 予定価格が300万円を超えない財産を買い入れるとき
c 予定賃借料の年額又は総額が160万円を超えない物件を借り入れるとき
d 工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が200万円を超えないものをするとき など
〔4〕 その他
予決令第94条第1項等
随意契約
随意契約によるものとされている場合
〔1〕 契約の性質又は目的が競争を許さない場合
〔2〕 緊急の必要により競争に付することができない場合
〔3〕 競争に付することが不利と認められる場合
会計法第29条の3第4項
随意契約によることができるとされている場合
〔4〕 国の行為を秘密にする必要があるとき
〔5〕 契約に係る予定価格が少額である場合(以下、この要件による随意契約を「少額随契」という。)
a 予定価格が250万円を超えない工事又は製造をさせるとき
b 予定価格が160万円を超えない財産を買い入れるとき
c 予定賃借料の年額又は総額が80万円を超えない物件を借り入れるとき
d 工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が100万円を超えないものをするとき など
〔6〕 その他
予決令第99条等

 また、近年、契約の内容によっては価格による競争を実施することが困難で随意契約によらざるを得ない場合においても、業者選定の公平性及び透明性を向上させるための取組も行われている。すなわち、契約手続の前段階において、複数の業者から企画書等を提出させるなどして、これらの内容や業務遂行能力が最も優れた者を選定する手続(以下「企画競争」という。)を経て、その者を契約相手方とする随意契約(以下、このような随意契約を「企画随契」という。)も行われるようになってきている。

イ 契約相手方の決定方法

 国の契約を競争契約により行う場合、支出原因契約にあっては、原則として予定価格以下で最低の価格の入札者を落札者とすることとされている。ただし、契約の性質又は目的から価格のみの競争により難い場合には、価格だけでなく、技術的要素等も併せて総合的に評価して落札者を決定する、いわゆる総合評価方式が認められている。そして、総合評価方式による場合には、各省各庁の長(衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣をいう。)が財務大臣と協議して定めるところによりこれを行うこととされている。

(2) 各府省等が実施した随意契約の点検

 近年、国が締結している随意契約に関して透明性、効率性の確保の面から問題があるとの指摘がなされている状況等を踏まえ、政府における随意契約の適正化に向けた取組の一環として、公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議において、18年2月に「公共調達の適正化に向けた取り組みについて」がまとめられた。
 そして、これを受けて、各府省等では、17年度に締結した随意契約のうち所管公益法人等との間で締結したものについて随意契約によることが適切かどうかの点検を行い、18年6月にその結果及び「随意契約見直し計画」を公表している。さらに、所管公益法人等以外が相手方となっている随意契約についても同様の点検(以下、上記の点検と合わせて「随意契約点検」という。)を行い、19年1月にその結果及び「随意契約見直し計画」(改訂)を公表している。
 この「随意契約見直し計画」(改訂)によると、17年度における国全体の随意契約(少額随契等を除く。)は、図表0-2のとおり、所管公益法人等及びそれ以外の分を合わせて10.1万件、契約金額3.8兆円となっている。そして、このうち、6.4万件(64.2%)、2.4兆円(63.1%)を一般競争契約、企画随契等の競争性のある契約方式等に移行することにしている。

図表0-2 各府省等の「随意契約見直し計画」(改訂)の状況(平成17年度)
 
 
 
上段:件数、契約金額(単位:件、億円)
下段:割合(単位:%)

府省等
競争性のある契約方式等に移行するもの
引き続き競争性のない随意契約とするもの
事務・事業を取りやめたもの
合計
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
件数
契約金額
内閣官房
72
(28.9)
30
(7.2)
116
(46.6)
321
(76.6)
61
(24.5)
68
(16.2)
249
(100)
419
(100)
内閣法制局
11
(78.6)
1
(100)
-
-
3
(21.4)
0
(0.0)
14
(100)
1
(100)
人事院
66
(57.4)
5
(71.4)
38
(33.0)
2
(28.6)
11
(9.6)
1
(14.3)
115
(100)
7
(100)
内閣本府
951
(57.0)
216
(46.0)
236
(14.2)
149
(31.7)
480
(28.8)
105
(22.3)
1,667
(100)
470
(100)
宮内庁
41
(23.6)
6
(30.0)
125
(71.8)
13
(65.0)
8
(4.6)
0
(0.0)
174
(100)
20
(100)
公正取引委員会
47
(67.1)
3
(75.0)
17
(24.3)
1
(25.0)
6
(8.6)
0
(0.0)
70
(100)
4
(100)
警察庁
219
(12.1)
39
(13.4)
1,572
(86.8)
252
(86.3)
21
(1.2)
1
(0.3)
1,812
(100)
292
(100)
金融庁
86
(49.4)
20
(62.5)
43
(24.7)
3
(9.4)
45
(25.9)
10
(31.3)
174
(100)
32
(100)
総務省
913
(67.7)
401
(74.7)
91
(6.7)
40
(7.4)
345
(25.6)
96
(17.9)
1,349
(100)
537
(100)
法務省
2,667
(64.8)
719
(74.4)
673
(16.3)
202
(20.9)
777
(18.9)
45
(4.7)
4,117
(100)
966
(100)
外務省
462
(52.0)
88
(62.0)
167
(18.8)
21
(14.8)
260
(29.2)
33
(23.2)
889
(100)
142
(100)
財務省
2,324
(62.6)
866
(64.8)
1,083
(29.2)
415
(31.0)
306
(8.2)
56
(4.2)
3,713
(100)
1,337
(100)
文部科学省
2,341
(77.0)
1,094
(58.6)
338
(11.1)
555
(29.7)
363
(11.9)
219
(11.7)
3,042
(100)
1,867
(100)
厚生労働省
5,761
(44.7)
2,947
(78.0)
6,160
(47.8)
739
(19.6)
967
(7.5)
92
(2.4)
12,888
(100)
3,778
(100)
農林水産省
6,115
(66.0)
1,231
(73.4)
2,133
(23.0)
220
(13.1)
1,015
(11.0)
225
(13.4)
9,263
(100)
1,676
(100)
経済産業省
1,568
(53.1)
1,214
(61.5)
316
(10.7)
281
(14.2)
1,068
(36.2)
480
(24.3)
2,952
(100)
1,975
(100)
国土交通省
19,490
(62.0)
4,487
(68.7)
7,615
(24.2)
1,678
(25.7)
4,317
(13.7)
366
(5.6)
31,422
(100)
6,531
(100)
環境省
847
(48.3)
220
(68.3)
480
(27.4)
46
(14.3)
426
(24.3)
56
(17.4)
1,753
(100)
322
(100)
防衛省
20,213
(85.7)
10,835
(59.4)
3,341
(14.2)
7,361
(40.3)
24
(0.1)
49
(0.3)
23,578
(100)
18,245
(100)
衆議院
40
(17.4)
7
(13.2)
142
(61.7)
38
(71.7)
48
(20.9)
9
(17.0)
230
(100)
53
(100)
参議院
61
(27.0)
15
(38.5)
72
(31.9)
10
(25.6)
93
(41.2)
15
(38.5)
226
(100)
39
(100)
国立国会図書館
19
(9.0)
17
(28.8)
151
(71.6)
33
(55.9)
41
(19.4)
8
(13.6)
211
(100)
59
(100)
裁判所
538
(47.2)
86
(68.8)
592
(52.0)
37
(29.6)
9
(0.8)
2
(1.6)
1,139
(100)
125
(100)
会計検査院
22
(31.0)
4
(10.3)
25
(35.2)
1
(2.6)
24
(33.8)
34
(87.2)
71
(100)
39
(100)
合計
64,874
(64.2)
24,550
(63.1)
25,526
(25.2)
12,416
(31.9)
10,718
(10.6)
1,970
(5.1)
101,118
(100)
38,937
(100)

注(1)
 本表は、各府省等が公表している「随意契約見直し計画」(改訂)に基づき、会計検査院において作成したものである。
注(2)
 「事務・事業を取りやめたもの」には、17年度限りの契約も含む。

4 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 会計検査院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、各府省等の契約全般の状況を把握するとともに、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して検査を実施した。

 検査は、各府省等の内部部局及び地方支分部局等における支出原因契約を対象とした。そして、契約の状況については、直近の18年度は随意契約を含めた契約全体、17年度は随意契約に絞り調書を徴して契約の実施状況、競争性の状況、再委託の状況等を分析するとともに、調書に該当契約があった内部部局40箇所のすべて及び地方支分部局等537箇所を抽出して会計実地検査を行った。また、国の随意契約の相手方である公益法人及び当該公益法人から再委託先への再就職者数については、所管府省及び当該公益法人の協力を得て提出された調査票等に基づき調査を実施した。
 会計実地検査の人日数及び実地検査箇所数は、次のとおりである。

 ・ 実地検査人日数 1,571.3人日
 ・ 実地検査箇所数 577箇所

(内訳)
検査対象機関
検査箇所
実地検査箇所数
内閣
内閣官房
内閣法制局
人事院
1
1
1
内閣府
本府
宮内庁
公正取引委員会
警察庁
金融庁
6(5)
3(2)
1
17(16)
1
総務省
本省
公害等調整委員会
消防庁
10(9)
1
2(1)
法務省
本省
公安調査庁
43(42)
3(2)
外務省
外務省
1
財務省
本省
国税庁
33(32)
18(17)
文部科学省
本省
文化庁
4(3)
1
厚生労働省
本省
中央労働委員会
社会保険庁
42(41)
1
29(28)
農林水産省
本省
林野庁
水産庁
55(54)
46(45)
1
経済産業省
本省
資源エネルギー庁
特許庁
中小企業庁
8(7)
1
1
1
国土交通省
本省
気象庁
海上保安庁
海難審判庁
119(118)
5(4)
8(7)
1
環境省
環境省
6(5)
防衛省
本省
防衛施設庁
81(80)
7(6)
国会
衆議院
参議院
国立国会図書館
1
1
1
裁判所
裁判所
14(13)
会計検査院
会計検査院
1
合計
 
577(537)
注(1)
 防衛省及び防衛本省は、平成19年1月8日以前は、それぞれ内閣府防衛庁及び防衛本庁である。また、防衛施設庁は、19年9月1日に廃止されている。
注(2)
 「実地検査箇所数」は、内部部局及び地方支分部局等の計であり、( )書きは、地方支分部局等の箇所数で内書きである。