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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年10月

我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果について


1 無償資金協力の実施及び実施促進の体制

 外務省は、無償資金協力の実施に当たり、案件の採択、交換公文の締結、契約の認証、供与資金の支払等の必要な業務を行っており、被援助国政府は事業の実施に責任を有し供与された資金を使用して施設の建設や資機材の調達等を行うことになる。
 JICAは、独立行政法人国際協力機構法第13条第1項第2号でJICAの業務として規定されている無償資金協力に係る契約の締結に関し、調査、あっせん、連絡その他の必要な業務やその契約の実施状況に関し必要な調査を実施促進業務として行っている。
 そして、JICAは、無償資金協力実施促進業務実施要綱(平成16年規程(無)第8号)を定め、一般プロジェクト無償、人材育成研究支援無償、テロ対策等治安無償、防災・災害復興支援無償、コミュニティ開発支援無償、水産無償、文化無償、食糧援助、貧困農民支援等について実施促進業務を行っている。

(1) 無償資金協力実施のためのガイドライン

 無償資金協力の対象となる事業は、被援助国政府が実施するものであり、我が国の会計法令は適用されないが、基本的な考え方として、我が国の会計法令を参照して実施するとしている。そして、外務省及びJICAは、表3に示すとおり、分類ごとにガイドライン等を制定し、無償資金協力を実施している。
 このうち、JICAが作成している「無償資金協力ガイドライン(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)」(12年作成、16年改訂、以下「無償資金協力ガイドライン」という。)は、被援助国政府が一般プロジェクト無償及び水産無償により供与される資金を用いて施設の建設や資機材の調達等を行う際に必要な事項を一般規則として定めている。そして、交換公文と同時に署名される合意議事録で、事業は無償資金協力ガイドラインに基づいて実施されることが言及されている。また、一般プロジェクト無償及び水産無償以外の分類でも準用されることがある。
 外務省は、緊急無償資金協力としてイラクに直接資金供与した復興支援(以下「イラク復興支援」という。)について、イラクの実情を踏まえて無償資金協力ガイドラインを改訂した実施要領を定めている。これは、外務省がイラク復興支援を行う際、実施過程の公平性・透明性を確保するために案件の実施に関する手続を定めたものである。

表3 各種ガイドライン等の制定状況
(単位:百万円)
分類
ガイドライン等の名称
作成者
一般無償のうち
 一般プロジェクト無償
無償資金協力ガイドライン(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)
JICA
テロ対策等治安無償
無償資金協力ガイドライン(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)を準用
防災・災害復興支援無償
水産無償
無償資金協力ガイドライン(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)
JICA
文化無償のうち
 一般文化無償
(中小規模機材)一般文化無償資金協力に係る調達手続実施要領
外務省
(施設及び大規模機材)無償資金協力ガイドライン
(日本の一般プロジェクト無償資金協力及び水産無償資金協力にかかるガイドライン)を準用
イラク復興支援
イラク復興支援のための二国間無償資金協力に関する実施要領
外務省
食糧援助
食糧援助(KR)調達ガイドライン
JICA
食糧増産援助(〜15年度)
食糧増産援助(2KR)調達監理ガイドライン
JICA
食糧増産援助(16年度)/貧困農民支援
食糧増産援助にかかる調達ガイドラインⅡ
「貧困農民支援」に係る調達ガイドライン
JICA

(2) 無償資金協力の実施手順

 上記の無償資金協力ガイドラインによる一般プロジェクト無償及び水産無償の具体的な実施手順を示すと図6 のとおりである。

図6 無償資金協力の実施手順(一般プロジェクト無償及び水産無償)

図6無償資金協力の実施手順(一般プロジェクト無償及び水産無償)

ア 援助要請案件の検討

 外務省は、政府開発援助大綱(平成4年6月30日閣議決定。15年8月29日閣議決定で改定。)、政府開発援助中期政策(11年8月対外経済協力関係閣僚会議で決定の上、閣議報告)、国別援助計画等我が国の援助政策を踏まえ、開発途上国政府から提出される援助要請案件の内容の検討を行い、無償資金協力事業の対象案件について事前の調査である基本設計調査を行うようJICAに指示する。

イ 基本設計調査

 外務省の指示を受けたJICAは、技術提案書により競争的に契約の相手方を選定する方式(以下「プロポーザル方式」という。)で決定した我が国のコンサルタントと基本設計調査に係る業務実施契約を締結し、基本設計とこれに基づく概算事業費の積算を行わせている。当該コンサルタントは約1箇月間現地に赴くなどして、被援助国政府側の計画の基本構想、自然条件、最適案の基本設計、運営・維持管理体制の調査、検証等を行い、同計画の妥当性、必要性及び実現可能性を確認する。一方、被援助国政府は用地の確保、付随的な施設整備の経費負担等一定の措置を講じる必要があることから、当該コンサルタントは被援助国政府側の負担内容等も提案する。
 JICAは、基本設計調査における概算事業費の積算に関する基本的考え方、積算資料の仕様、表記方法等を明確に提示することにより、積算内容の平準化・適正化を図り、積算業務を効率化、簡素化することを目的として、「無償資金協力案件に係る概算事業費積算ガイドライン」の機材編、土木編及び建築編を10年に作成し、逐次改訂してきている。
 コンサルタントはこれらに基づいて概算事業費の積算を行うが、JICAのコンサルタントに対する業務指示書では、概算事業費について、施設の建設に関してはその後に実施される詳細設計の事業費との差がプラスマイナス10%以内に収まるような精度を、また、資機材の調達等に関しては予定価格としての精度を、それぞれ確保することを求めている。JICAは、積算が上記のガイドラインに従っているかという審査を行っている。
 コンサルタントは、設計監理費、施設の建設費、資機材の調達費等の金額を記載した基本設計調査報告書を取りまとめる。

ウ 実施決定

 外務省は、我が国の協力内容及び被援助国政府が講じる措置について両国政府間で実質的合意が成立すると、JICAから基本設計調査報告書を受理し、事業内容の最終審査等を行い、同報告書に記載されている概算事業費に為替の変動等を考慮して交換公文上の贈与の限度額を設定する。
 これにより援助の規模が確定し、我が国として無償資金協力を実施するため、援助の目的、内容、贈与の限度額等について閣議決定を行う。そして、通常、閣議決定から1箇月以内に、我が国の大使と被援助国政府の代表者が交換公文を締結することにより、被援助国政府が実施する事業に対し我が国政府が資金を供与するという国際約束が成立することとなる。
 交換公文では、贈与の限度額とともに、贈与の使用期限が定められており、我が国会計法令の規定により、通常、当該年度の年度末が使用期限とされる(交換公文例(抜すい)参照 )。

〔交換公文例(抜すい)〕

 日本国政府は、(相手国名)政府が(具体的計画名)を実施することに寄与するため、(相手国名)政府に対し、(金額)円を限度とする額の贈与を行う。

 贈与は、両政府の関係当局者の合意によって延長されない限り、この取極の効力発生の日から20XX年3月31日までの期間の使用に供される。