会計検査院が確認したところ、ベトナム国でPMU18が実施機関となって我が国の一般プロジェクト無償により実施した事業は、4事業で供与限度額計101億9900万円となっており、前記の無償資金協力累計額903億9700万余円の約11%を占めている。外務省から提出された資料に基づき、この4事業に係る事業名、供与限度額等を整理して示すと、表1のとおりであり、事業概要については巻末別表1のとおりである。
表1 PMU18が実施機関となっている一般プロジェクト無償4事業
(単位:百万円、件) |
事業名
|
交換公文締結年月日
|
供与限度額
|
コンサルタント契約の件数
|
建設契約の件数
|
調達契約の件数
|
北部地方橋梁改修計画
|
8.1.29
|
248
|
1
|
-
|
1
|
8.7.27
|
3,512
|
1
|
1
|
-
|
|
メコンデルタ地域橋梁改修計画
|
13.6.1
|
3,734
|
1
|
1
|
1
|
中部地方橋梁改修計画
|
14.3.29
|
739
|
1
|
-
|
2
|
第2次中部地方橋梁改修計画
|
15.6.23
|
1,010
|
1
|
1
|
-
|
16.7.1
|
956
|
1
|
1
|
-
|
外務省及びJICAの説明によれば、上記の4事業は、基本的に図1のような手続を経て実施されたとしている。
(注)
|
平成15年10月以降の手続の例である。
|
外務省は、ベトナム国政府からの要請を受け、要請案件の中から選定を行い、当該選定案件の妥当性の検証等を行うため、調査案件採択の通知をJICAに行う。JICAは、基本設計調査をコンサルタントに委託して実施する。
一般プロジェクト無償による資金供与を行うことが適正であると確認された要請については、閣議決定を経た後、我が国の代表者とベトナム国の代表者との間で交換公文の署名が行われる。交換公文には、一般プロジェクト無償の目的及び内容、供与限度額、供与期限等が記載されている。そして、ベトナム国政府は、交換公文に基づき、供与された資金により施設の建設、資機材の調達等を、我が国の認証を得て、自ら行う。また、交換公文に付随して、JICAが一般プロジェクト無償の円滑、適正な実施を促進するための業務(以下「実施促進業務」という。)を行うこと、ベトナム国政府は、一般プロジェクト無償の実施に当たり、JICAが定めた無償資金協力ガイドラインに従うことなどが合意される。
交換公文の締結後、実施機関であるPMU18は、事業の実施に向けて、コンサルタント契約及び施設の建設や資機材の調達等の契約(以下「本体契約」という。)の手続を執ることになる。そして、PMU18は、事業における設計等や業務の監理をコンサルタントに委託し、本体契約に基づいて工事業者及び資機材調達業者(以下、これらを「契約業者」という。)に実施させる。また、上記のガイドライン及びこれに基づく詳細事項(以下、これらを「ガイドライン等」という。)では、被援助国及び実施機関が一般プロジェクト無償を実施する際に従うべき事項等が規定されている。
そして、JICAは、ベトナム国政府に対して、施設の建設等に係る入札、契約、契約内容の変更、完了等の各業務の段階に報告を求めており、この報告を通じるなどして実施状況を確認する。
ベトナム国政府は、我が国政府からの供与資金の受入れ、コンサルタント及び契約業者に対する対価の支払を、日本に所在する銀行(以下「本邦の銀行」という。)に開設した口座を経由して行う。
外務省は、一般プロジェクト無償等について、本体契約では、ベトナム国政府の同意を取り付け、6年度閣議決定案件から入札者名、落札者名、落札金額等を、また、11年度閣議決定案件からは入札者名、入札価格等を、さらに、15年度閣議決定案件からは予定価格を公表している。また、コンサルタント契約では、契約業者名、契約額等を公表している。
PMU18が実施機関となっている前記の4事業に係るコンサルタント契約6件、本体契約8件、計14件の契約について各年度の公表状況に応じて入札、契約の状況を整理して示すと巻末別表2及び別表3(116ページ)のとおりである。
PMU18は、JICAの推薦を受け、基本設計調査を受託したコンサルタントと業務の監理等に係るコンサルタント契約を締結しており、また、一般競争入札により本体契約の落札者を決定していた。
資料の保存期間が経過している北部地方橋梁改修計画を除く各事業においては、ガイドライン等に基づき、本体契約に係る一般競争入札の入札前に、コンサルタントにより応札希望業者の事業実施能力を審査する事前資格審査が実施され、この審査結果報告がJICAに提出されていた。また、ガイドライン等に基づき、本体契約の発効条件として、外務省は契約認証を行うこととなっていて、これに先立つ審査として、JICAは契約認証前審査等を行っていた。
会計検査院は、この審査の状況について、契約認証前審査の関係書類の提出を受けて検査し、契約金額が交換公文の供与限度額を超えていないか、事業内容は交換公文の記述内容と整合しているかなどの所定の事項について審査が行われていたことを確認した。
18年5月の参議院決算委員会において、我が国を含むODA資金がPMU18において遊興費等に流用されているのではないかとの疑念がベトナム国国民の間に生じている旨が言及された。
前記の4事業における我が国からの資金は、外務省の説明によれば、図2のように供与されたとしている。
a 我が国政府から供与される資金の受入れ並びにコンサルタント及び契約業者に対する対価の支払のため、財政省から指定を受けたベトナム国の銀行(以下「指定銀行」という。)は、本邦の銀行とベトナム国政府名義の口座を開設する銀行取極を締結する(図2〔1〕)。
b 指定銀行は、本邦の銀行に対し支払授権書を発行し、我が国政府(外務省)から入金があり次第コンサルタント及び契約業者の口座へ送金する旨の支払授権を本邦の銀行に対し行う(同〔5〕)。
c コンサルタント及び契約業者は、所定の支払条件に従い、支払授権書に基づき、本邦の銀行に対し、支払請求書に外務省による契約認証書、PMU18が承認した完了証明書等を添付して呈示し資金の支払を請求する(同〔7〕)。
d 本邦の銀行は、支払授権書に基づき、ベトナム国政府の代理人として外務省に対し資金の支払を請求する(同〔8〕)。
e 外務省は、完了証明書の確認等を行った後、所要額を本邦の銀行にあるベトナム国政府の口座に送金し、本邦の銀行は、支払授権書に基づき、直ちにコンサルタント及び契約業者の口座へ送金することとなる(同〔9〕及び〔10〕)。
このように、PMU18が我が国から供与された資金を直接受領する仕組みとはなっていない。
前記の4事業14契約における資金供与の状況について、会計検査院は、提出を受けた証拠書類によるほか、外務省から説明を受けるなどして検査したところ、前記4事業の支出済額計100億9875万余円が、外務省から本邦の銀行に設けられたベトナム国政府の口座に支払われていたことを確認した。また、指定銀行が本邦の銀行に対し発行した支払授権書には、我が国政府から送金された資金を受領した後、本邦の銀行がベトナム国政府の口座からコンサルタント及び契約業者へ支払うことを許可する旨記載されていたことを確認した。
18年5月の参議院政府開発援助等に関する特別委員会において、メコンデルタ地域のロンビン橋の設計変更の内容や事業費の推移について言及された。
会計検査院が、外務省から提出を受けた資料に基づき確認したところ、ロンビン橋の建設は、メコンデルタ地域橋梁改修計画(以下「メコンデルタ計画」という。)において実施されていた。会計検査院は、メコンデルタ計画を中心に前記4事業の設計変更の内容、事業費の推移等を調査した。
コンサルタントが詳細設計を行う際に、ボーリング調査等の追加調査に基づき検討した結果、基本設計の内容を変更すること(以下、この変更を「詳細設計時の設計変更」という。)がある。ガイドライン等によれば、建物又は施設の明らかな外観の変更、建物又は施設の主要な構造や強度の変更等は、大幅な変更とみなされることとなっている。
そして、この大幅な変更とみなされる場合には、メコンデルタ計画実施時のガイドライン等によれば、詳細設計時の設計変更の手続において、JICAの事前の確認、外務省の承認を必要とすることとなっていた。コンサルタントは事前にJICAに設計変更を報告し変更理由等詳細な説明を行うこととなっており、JICAはこれを基に変更の内容を確認し、外務省が承認したときは、承認結果を被援助国政府に通知することとなっていた。なお、13年11月以降にJICAは、ガイドライン等の見直しを行い、設計変更の手続を変更し、また15年10月以降は、JICAがこの承認を行うこととなっている。
また、契約後に詳細設計の内容を変更すること(以下、この変更を「契約後の設計変更」という。)があり、メコンデルタ計画実施時のガイドライン等によれば、契約後の設計変更の手続においても上記と同様に、JICAの事前の確認及び外務省の承認を必要とすることとなっていた。
会計検査院が、メコンデルタ計画の基本設計調査報告書の提出を受け、その内容を確認したところ、基本設計の主な内容は以下のとおりであった。
一定の選定基準により、ベトナム国政府から要請のあった60橋りょうから38橋りょうを援助対象として選定した。そして、軟弱地盤対策を要し施工が困難なものなどについては、我が国の援助により下部工から上部工まで一貫して施工する施設建設型(21橋りょう)で実施することとしていた。また、ベトナム国側で施工が可能なものについては、我が国の援助により鋼桁を調達し、ベトナム国側で下部工、桁の架設等を施工する資機材調達型(17橋りょう)で実施することとしていた。
このうち、施設建設型における橋りょうの構造等については、ベトナム国の橋りょう基準等を適用し、次のように設計を行った。
〔1〕 橋りょうの桁下高については、対象橋りょうごとに収集した洪水時の水位データと船の通行を考慮するとともに、桁下に道路がある場合には、桁下高4.5mを確保する。このため、橋りょうの桁下高は高くなり、橋りょう部と現道との取付けのための取付道路が必要になる。
〔2〕 架替えの場合、旧橋の長さなどから橋長を決定し、交通量に応じて、橋りょうなどの幅員(4.5又は5.5m)、縦断方向の勾配(最大8%)等を決定する。
〔3〕 上部工の桁については、4種類の長さの桁(33.0m、24.5m、18.6m、12.5m)が調達可能であることから、〔2〕で決定された橋長に対し、これら4種類の桁を適宜組み合わせる。
〔4〕 下部工の軟弱地盤対策については、RC杭又は鋼管杭を使用する。
メコンデルタ計画について、JICAは、13年8月にガイドライン等に基づいて、基本設計と詳細設計との比較表等を基にその内容を確認し、13年9月に外務省の承認を得た上でベトナム国政府に通知していた。会計検査院は、ベトナム国政府の協力を得て、JICAから基本設計と詳細設計との比較表等の提出を受け、詳細設計時の設計変更について調査したところ、その主な内容は以下のとおりであった。
〔1〕 ベトナム国政府からの申出により、1橋りょうを計画から除外する。
〔2〕 施設建設型20橋りょうのうち、ロンビン橋を含む16橋りょうの橋長及び取付道路長を変更する。
〔3〕 取付道路の軟弱地盤対策として押え盛土工法(注)等を採用する。
押え盛土工法 軟弱地盤の上に盛土をするとき、盛土本体がその自重で地盤にめり込んで沈下し、法尻部付近の地盤が盛り上がってくることを防ぐため、盛土本体の側部に別途盛土をする工法
|
JICAは、14年4月に実施促進のための調査団を派遣し、報告書を作成している。会計検査院は、その報告書の提出を受け検査したところ、契約後の設計変更の経緯及び内容は次のとおりであった。
PMU18が契約業者と本体契約を締結した後も、ロンビン橋を含む6橋りょうの用地確保が進んでいなかった。そのため、JICAは上記の調査団を派遣し、PMU18と交渉した結果、2橋りょうについては同月末までに、ロンビン橋を含む4橋りょうについては同年7月までに、それぞれ用地の確保を済ませること、用地の確保ができない場合は当該橋りょうの工事を中止とすることなどの取決めを行った。その後、ロンビン橋を含む4橋りょうについては、用地の確保ができなかったが、PMU18は工事を中止せず、コンサルタントとともに地元の省又は郡の人民委員会と協議を行い、地元の意見を反映して、橋長等を変更する設計変更を行うこととした。そして、その設計変更について、JICAが内容の確認を行い、外務省が承認した。また、4橋りょうについては設計変更に基づいて施工され、その他の2橋りょうについては用地の確保ができ、詳細設計どおりに施工された。このうち、事例としてロンビン橋について設計変更の経緯及び内容を示すと次のとおりである。
会計検査院は、ベトナム国において、ロンビン橋について、現地のティエンヤーン省の人民委員会から設計変更の経緯、内容について説明を聴取した。その説明によれば、変更の経緯は次のとおりであった。
当初は、旧橋の橋長が38mであったことから、橋長を38mで援助の要請をし、基本設計で2径間橋長37.19mとした。詳細設計に当たって、コンサルタントが現地の地質を詳細に調査したところ、橋台を設置することとしていた箇所の地盤が軟弱であったことから、設計を変更し詳細設計で3径間橋長58.20mとした。しかし、この詳細設計では、左岸側において、〔1〕橋台が住宅街の中央に位置することとなっていて、46世帯と電話会社を兼ねる郵便局の移転が必要となり、影響が大きくなること、〔2〕橋りょうと省道87号線が平面交差することとなっていて、交通安全上問題があることとされた。そこで、コンサルタント、PMU18、人民委員会及びティエンヤーン省交通運輸局で協議し解決方法を検討した結果、契約後に、次のように設計を変更した。
a 平面交差をやめて、橋りょうが現状の省道87号線の上をオーバーパスするように設計する。
b aの変更に基づき、橋長を約40m延伸し、3径間橋長58.20mから4径間橋長98.41mとする。
c 橋りょうが省道87号線の上をオーバーパスする部分の桁下高は、3.50mであり、4.50mを下回るため、ベトナム国の負担で迂回路を設置する。
ロンビン橋について、基本設計、詳細設計時の設計変更及び契約後の設計変更における橋長等の変更は表2及び巻末の参考図2のとおりである。
会計検査院は、外務省及びJICAの職員の立会いの下でPMU18の協力が得られた範囲内で、ロンビン橋の桁長等を計測するなどして、出来形が設計どおりとなっていることを確認した。
表2 ロンビン橋における設計内容の変更状況 |
設計 |
会計検査院現場確認 |
||||
基本設計 |
詳細設計時の設計変更 |
契約後の設計変更 |
|||
構造形式等 |
上部工 |
プレストレストコンクリート桁 |
設計図面に基づき、目視により確認 |
||
下部工 |
RC逆T式橋台(鋼管杭基礎) |
||||
川幅(m) |
22.90 |
現地計測時 |
|||
橋長(A)(m) |
37.19 |
58.20 |
98.41 |
桁長等を計測して確認 |
|
取付道路延長(B)(m) |
177.81 |
156.80 |
135.16 |
||
合計(A+B)(m) |
215.00 |
215.00 |
233.57 |
||
有効幅員(m) |
5.50 |
幅員を計測して確認 |
|||
縦断勾配(%)
|
8(橋りょう部)、6(取付道路部) |
縦断勾配を計測して確認 |
メコンデルタ計画の交換公文が締結されたのは13年6月であり、当時外務省は予定価格を公表していなかった。
会計検査院は、メコンデルタ計画の事業費について、JICAから資料の提出を受け、JICAから、また、現地でPMU18から説明を聴取した。
a 基本設計における建設費
前記のメコンデルタ計画の基本設計調査報告書によれば、事業費は37.34億円であり、このうち施設建設型の橋りょうの建設費は、29.42億円である。JICAは、この施設建設型の建設費の積算について、次のように説明している。
土工や機械損料等の工種ごとに、基本設計時で選定された21橋りょう全体の直接工事費を算出し、その工種ごとの直接工事費を合計するなどの方法で建設費を算出しており、個別の橋りょうごとの直接工事費は、把握できないものとなっていた。
また、JICAの説明によれば、仮にロンビン橋について、杭等の単価が示されている工種の直接工事費を算出して合計すると、直接工事費は0.37億円程度になり、橋りょう1m2当りの直接工事費を算出し、これにロンビン橋の橋りょう部の面積を乗ずると直接工事費は0.59億円程度になるとしている。
b 詳細設計における建設費
JICAの説明によれば、メコンデルタ計画の事業費は、基本設計では37.34億円であったが、詳細設計では37.17億円であり、基本設計に比べて0.17億円の減額となったとしている(表3参照)。
表3 基本設計と詳細設計との事業費等の比較
(単位:億円) |
\
|
基本設計(a)
|
詳細設計(b)
|
増減額(b)-(a)
|
1.施設建設型
〔1〕 建設費
〔2〕 設計監理費
|
29.42
2.25
|
29.66
2.23
|
0.24
△0.02
|
計(A)
|
31.67
|
31.89
|
0.22
|
2.資機材調達型
〔1〕 機材費
〔2〕 その他
|
5.11
0.56
|
4.72
0.55
|
△0.39
△0.01
|
計(B)
|
5.67
|
5.27
|
△0.39
|
合計(A)+(B)(事業費)
|
37.34
|
37.17
|
△0.17
|
このうち、施設建設型の詳細設計における建設費について、JICAは、次のように説明している。
施設建設型の建設費は、詳細設計では29.66億円であり、基本設計と比べて、為替変動により1.94億円の増額、前記の1橋りょうの建設取止め、橋りょう及び取付道路の設計内容の見直しなどにより1.70億円の減額、差引合計0.24億円の増額となっていた。為替変動による増額は、基本設計時において、1米ドル=107.58円だったものが、詳細設計時においては1米ドル=119.46円と円安になったことによるものであった。また、詳細設計時においては、個別の橋りょうごとの土工等の数量及び単価が記載されておらず、個別の橋りょうごとの直接工事費は把握できないとしている。
会計検査院はこの点について、PMU18から現地で説明を聴取したが、同様の回答であった。
c 契約後の設計変更における建設費
JICAの説明によれば、契約後の設計変更時に、変更に係る橋りょうの工事費の見直しが行われており、合計で約8万円の増額となるが、この増額分は契約業者の負担とし、契約金額の変更は行われなかったとしている(表4参照)。そして、ロンビン橋を含む各橋りょうの直接工事費については、増減額だけが記載された増減表がコンサルタントから提出された書類に添付されており、当該橋りょうの直接工事費は、把握していなかったとしている。
表4 契約後の設計変更における直接工事費の増減額について
(単位:千円) |
橋りょう名 |
増額分 |
減額分 |
計 |
摘要(増減工種) |
ロンビン橋 |
19,135 |
△4,901 |
14,234 |
増:上部工、下部工、杭基礎工 |
減:軟弱地盤対策工、盛土工、舗装工 |
||||
ホアティン橋ほか2橋 |
48,731 |
△62,879 |
△14,148 |
増:上部工等 |
減:軟弱地盤対策工等 |
||||
計 |
67,866 |
△67,780 |
86 |
以上のとおり、基本設計、詳細設計時の設計変更及び契約後の設計変更において個別の橋りょうごとの直接工事費は把握できない状況となっていたため、ロンビン橋の直接工事費及びその推移について、確認できないものとなっていた。
しかし、土木構造物である橋りょうなどは、通常標準設計等に基づき同一の規格で建設されるものではなく、個別の橋りょうごとに建設される現場の形状等の条件に応じて構造諸元(橋長、幅員、基礎構造等)が異なるため、直接工事費も異なる。また、詳細設計時や契約後に、追加調査の結果等により、設計内容の見直しが行われ、直接工事費ひいては建設費が変更されることは、我が国の国内で実施される工事の例をみても、一般的なことである。
したがって、JICAにおいて、多数の橋りょうを建設する事業については、個別の橋りょうごとの直接工事費及びその推移を具体的に把握するため、直接工事費の内訳や材料等の数量に関する資料を整備するなどしてより一層説明責任を果たせるよう努める必要があると認められる。
会計検査院が、JICAから提出された資料に基づき確認したところ、中部地方橋梁改修計画(以下「中部計画」という。)では設計変更は行われていなかった。
また、第2次中部地方橋梁改修計画(以下「第2次中部計画」という。)のうち、第2次中部計画1/3期及び第2次中部計画2/3期の2契約では、詳細設計時及び契約後にそれぞれ設計変更が行われていた。
そして、JICAの説明によれば、その設計変更の内容は、追加で行ったボーリング調査の結果、杭長の見直しなどが行われたことによるものであり、また、基本設計の事業費の積算段階から個別の橋りょうごとに建設費を算出しているとしている。会計検査院は、詳細設計時の設計変更及び契約後の設計変更に係る事業費の比較表等の提示及び説明を受け、個別の橋りょうごとの建設費が把握できることを確認した。
また、北部地方橋梁改修計画(以下「北部計画」という。)については、JICAでは完了報告書及び瑕疵検査報告書のみを現在保管しており、会計検査院は、それらの提出を受け、内容を確認したが、完了報告書には基本設計からの設計変更についての記載がなかった。
会計検査院は、ガイドライン等に基づき、コンサルタントからJICAに提出された瑕疵検査報告書について、ベトナム国政府の協力を得た上で、その提出を受け、瑕疵検査の内容を確認した。4事業の瑕疵検査報告書によれば、工事の完了から瑕疵担保期間1年を経過した後に、次のように瑕疵検査を実施したとしている。
〔1〕 瑕疵担保期間経過後に、施主であるPMU18、各省の地域道路管理者及び契約業者が、瑕疵検査を実施し、補修の必要な箇所については、契約業者が補修を行う。補修後、又は補修の必要がなければ検査後、契約業者は、PMU18と地域道路管理者に対し瑕疵担保期間終了証明書の発行を要請する。
〔2〕 コンサルタントは、〔1〕の瑕疵担保期間終了証明書及び補修の写真により、補修状況の判定を行うとともに、現場における検査を抽出して実施し、橋りょうごとに瑕疵担保期間終了証明書を発行する。
〔3〕 すべての橋りょうの瑕疵担保期間経過後に、全橋りょうを対象として、コンサルタントは瑕疵検査終了証明書を、PMU18は承認証明書をそれぞれ発行する。
会計検査院が、瑕疵検査報告書の内容を確認したところ、瑕疵検査の結果行われた補修の主な内容は、軟弱地盤のため取付道路部分の盛土で工事完了後も引き続き沈下が進行し取付道路と橋台との間に段差が生じていたので、舗装の補修を行ったものなどであった。
JICAは、一般プロジェクト無償における実施促進業務を担う立場から、PMU18が実施した北部計画、メコンデルタ計画、第2次中部計画の3事業の橋りょうなどの建設について、その一部を対象として、技術的観点から検討を行うため無償資金協力調査員による技術調査を18年5月に実施した。会計検査院は、その報告書の提出を受け、技術調査の内容と結果を確認した。報告書によれば、北部計画における5橋りょうについて、コンクリートにひび割れはないか、橋りょうと取付道路部との間に段差はないかなどのチェック項目を設けて現地で調査したとしていた。そして、調査の結果、橋台前面の石張りの目地にクラックが2箇所あったこと、取付道路の沈下はみられないことなどについて報告がなされ、特に不適切な事態はないとしていた。
会計検査院は、PMU18が実施機関となっている一般プロジェクト無償4事業における施設の建設に関して、JICAから基本設計報告書等の提出を受けて検査するとともに、外務省及びJICAを通じて、交通運輸省、PMU18などの協力が得られた範囲内で完了報告書やこれに添付されている図面等の関係書類の提出を受け調査した。
そして、会計検査院は、職員をベトナム国に派遣し、計画投資省、財政省、公安省、交通運輸省、PMU18、ベトナム国会計検査院等の政府関係機関から、各事業の内容等について説明を聴取し、協力が得られた範囲内で関係書類の提出及び提示を受けて、実地に調査した。
前記4事業の8契約のうち、7契約に係る16箇所(北部計画の3箇所、メコンデルタ計画の6箇所、中部計画の2箇所、第2次中部計画の5箇所。箇所名等は巻末別表4参照。)を選定して、外務省及びJICAの職員の立会いの下で、PMU18の協力が得られた範囲内で、現場確認を行い、完成した橋りょうの施設の施工状況を実地に調査した。16箇所の選定に当たっては、我が国の国会で工事の設計変更の内容及び建設費の推移について言及されたロンビン橋その他設計変更が行われた箇所、前記の技術調査で対象としていた北部計画の5箇所のうちの2箇所等を選定した。
現場確認に当たっては、JICAが行った技術調査のチェック項目も含めたチェックシートを作成し、これに基づき現場の状況を目視により確認した。会計検査院が現地確認した16箇所のうち、コンサルタントがJICAに所定の報告をしないまま、設計変更が行われた事例を示すと次のとおりである。
会計検査院は、メコンデルタ計画のうち、ロンミー橋について、外務省から説明を受け、現場確認を行い、その形状をJICAに提出されていた完了届に添付された図面と比較して調査した。その結果、巻末の参考図3-1、3-2のとおり、図面では、左右両岸の取付道路の両側に押え盛土を設置することとなっていたが、実際には、図面と異なり押え盛土が設置されていなかった。そして、コンサルタントは、JICAに、この設計変更について報告していなかった。
この設計変更について、現地でPMU18から説明を聴取し、また、後に外務省及びJICAを通じてコンサルタントから説明を聴取したところ、設計変更の理由、経緯等は以下のとおりであった。
ロンミー橋の押え盛土は、14年8月に設置された。しかし、その後、取付道路の用地確保が進まず、計画どおりの形状の取付道路を敷設することができなくなった。そのため、確保できた用地及び撤去する押え盛土の箇所に取付道路を敷設することとする設計変更案が、現地人民委員会から契約業者及びコンサルタントに示され、コンサルタントはPMU18にその設計変更案を報告し、変更が承認された。そして、PMU18は取付道路部の沈下及び押え盛土部分の隆起の状況を測定し、地盤が安定したことを確認できた15年4月に押え盛土を撤去した。また、事業費は、押え盛土の撤去費用による増額などにより約9千円の増額となっていた。
コンサルタントは、橋りょう自体の形状の変更ではなかったため、軽微な変更であると判断しJICAに報告しないまま設計変更し、契約業者はそれに基づいて施工を行った。しかし、前記のように、ガイドライン等によれば、建物又は施設の明らかな外観の変更に該当する事項であり、設計変更として、JICAに報告すべきであったと認められる。また、完了報告書に添付する図面についても、しゅん工時の図面を添付して提出すべきであったと認められる。
上記以外に、会計検査院が今回、目視等により現場確認した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。