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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成19年10月

我が国政府開発援助における無償資金協力及び技術協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

ア 我が国の政府開発援助は、前記のとおり毎年多額に上っており、4年度から18年度までのベトナム国に対する累計額は、無償資金協力、円借款及び技術協力の合計で1兆3130億7800万余円となっている。
 そして、ベトナム国における各国からのODAでPMU18が実施機関となって実施された事業において、不適切な設計や施工が行われ、我が国を含むODA資金が遊興費等に流用されたのではないかとの疑念がベトナム国国民の間に生じているとされた。
 会計検査院は、今回、PMU18が実施した無償資金協力4事業及び円借款7事業、計11事業について、我が国援助実施機関等から資料の提出、提示や説明を受け、また、ベトナム国に職員を派遣し、協力が得られた範囲内で、相手国実施機関等から資料の提出、提示や説明を受けるなどし、検査及び調査を実施した。合規性等の観点から、援助は交換公文、借款契約に則したものとなっているか、無償資金協力の資金の供与、円借款の貸付実行は法令、予算等に従って適正に行われているか、入札、契約等の事業実施の手続はJICA及びJBICが示している指針等に則して適切に行われているか、契約書に記載された仕様どおりの機材を調達しているかなどに着眼して検査及び調査を実施した。また、橋りょうの建設の工事において設計変更がある場合に手続等は指針等に則して適切に行われているか、道路の工事において設置された施設や使用された資材が設計どおりのものとなっているか、適切な施工監理が実施されているかなどに着眼し、実地に、無償資金協力事業の16箇所、円借款事業の23箇所、計39箇所で施工状況等の現場確認を行った。
 その結果、外務省及びJBICの説明によれば、無償資金協力の供与及び円借款の貸付実行の方法は、PMU18は我が国の資金を直接受領する仕組みとなっていないとしている。会計検査院は、検査した範囲では、無償資金協力により供与された資金については、本邦の銀行から直接契約業者等に送金される旨の支払授権書を確認し、また、円借款により貸付実行された資金については、その支払請求書に出来高証明書等所定の書類が添付され、出来高証明書等にはPMU18などによる確認の署名のあることなどを確認した。
 そして、無償資金協力事業においては、メコンデルタ計画の全体事業費は把握できるものの、ロンビン橋等の個別の橋りょうごとの建設費及びその推移は具体的に把握できないものとなっていたり、ロンミー橋について、コンサルタントがJICAに設計変更の所定の報告をしないまま取付道路等の形状変更が行われていたりしていた。
 円借款事業においては、道路の工事において設置された施設の状況を確認した。そして、当初の設計と相違した資材が使用された経緯等について説明を受けた。また、ベトナム国政府からの申出によりJBICに車両の購入資金の返還が行われた経緯の説明を聴取したところ、2事業2契約で仕様書に記載されていた車両とは異なる車両4台が購入されていた。

イ ODA事業では被援助国の政府関係機関等が契約、入札、設計、支払等を行っているが、その資金は我が国の財政資金で賄われていることにかんがみ、外務省、JICA及びJBICにおいては、事業の内容を把握し、事業の全般の執行について、納税者である我が国国民に対する説明責任をより一層果たす必要がある。
 無償資金協力事業において、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移が具体的に把握できないものとなっていたり、コンサルタントが設計変更についてJICAに所定の報告をしないまま取付道路の形状変更が行われていたりしていた。このような事態が生じたのは、JICAにおいて、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移を把握することとなっていなかったことによると認められる。また、設計変更の手続について主としてコンサルタントの理解が十分でなかったこと、JICAにおいてコンサルタントに十分に理解させていなかったことによると認められる。JICAにおいては、多数の橋りょうを建設する事業については、個別の橋りょうごとの建設費及びその推移を的確に把握するための資料の整備や完了報告時の出来形の確認の徹底をより一層図る必要があると認められる。また、JICAにおいては、コンサルタントに制度の一層の理解を促す必要があると認められる。
 また、円借款事業の実施において、仕様書とは異なる車両4台が購入された事態が生じたことは遺憾である。このような事態が生じたのは、主として、ベトナム国政府がガイドラインの趣旨等を十分に理解していなかったことによると認められる。したがって、ベトナム国政府はODAの事業実施体制の見直しに努めているところであるが、JBICにおいては、ベトナム国政府に対し、ガイドラインの趣旨等についてより一層理解を促したり、必要に応じて事業内容のより一層の的確な把握に努めるように求めたりする必要があると認められる。
 「ベトナムにおける、ベトナム交通運輸省第18事業管理局(PMU18)が関係する我が国の政府開発援助について」については、以上のとおり報告する。
 ベトナム国では、ODAの事業実施体制の見直しが行われ、PMU18の元職員に係る裁判が引き続き行われている。
 また、外務省は、ODAの実施に際して、企業及び関係者に対して注意喚起を行うとともに、不正に対する認識を共有し、モラルの向上を図る取組を行っており、また、再発防止対策等の着実な実施等について引き続きベトナム国政府に要請していくとしている。
 会計検査院としては、以上のような状況を踏まえ、ベトナム国における我が国のODA事業に関し、外務省、JICA及びJBICにおける説明責任をより一層果たすための方策及び上記の取組を通じた適切な事業の実施の確保について留意していく。