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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年9月

独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施しているスポーツ振興くじに関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

ア 会計検査院は、センターが実施しているスポーツ振興投票について参議院から検査の要請を受け、〔1〕 スポーツ振興くじに係る制度や運営の見直し状況、〔2〕 スポーツ振興くじの売上げ、債務、繰越欠損の推移、〔3〕 販売システムの運用経費及び開発規模、〔4〕 繰越欠損の解消に向けての取組の状況について検査した。
 検査の結果は、次のとおりである。

(ア) スポーツ振興くじに係る制度や運営の見直し状況

 第A期(12年10月28日〜17年12月2日)においては売上げが低迷し、スポーツ振興投票の目的とするくじ収益からのスポーツ振興事業への助成も少額にとどまっていた。
 このような状況を打開するため、文部科学省は、スポーツ議員連盟によるスポーツ振興くじをより魅力のあるものとするための改善方策の提言等を受け、17年度以降、政省令の改正等を行って、多様なくじの発売が可能となるように組合せの総数の制限の廃止や販売方法等の見直しを行った。
 また、運営面については、第A期においては、センターがスポーツ振興くじの売りさばきなどの業務を一括してりそな銀行に委託し、りそな銀行は、JSALに再委託して業務を行っていたが、第B期(17年12月3日〜25年3月31日)においては、センターが民間企業のノウハウを得て直接運営することにした。そして、経営管理業務及び情報処理システム開発運用管理業務について、日本ユニシスに委託した。

(イ) スポーツ振興くじの売上げ、債務、繰越欠損の推移

 スポーツ振興投票が本格的に開始された13事業年度は642億円を売り上げたが、14事業年度以降は売上げが減少し続け、18事業年度の売上金額は134億円まで減少した。
 また、りそな銀行への委託料には、りそな銀行が負担した初期投資額の償還部分が含まれており、14事業年度以降は売上金額から払戻金額を控除した額では委託料を支払うことができなくなり、支払不能な委託料は翌事業年度以降へ支払を繰り延べざるを得なくなった。この結果、17事業年度末におけるりそな銀行に対する未払金は292億円にまで膨れ上がり、センターは292億円もの多額の繰越欠損金を計上していた。この繰越欠損金の発生原因は、〔1〕 売上金額が低迷して損益分岐点に達しなかったこと、〔2〕 実効性を持った改善策を早期に執ることができなかったことによるものと考えられた。

(ウ) 販売システムの運用経費及び開発規模

 第A期においては、文部科学省は、アンケート調査による市場規模の推計に基づき年間発売総額を2000億円と想定し、これに対応可能な販売システムを開発することを前提に、スポーツ振興投票の運営を実施するために必要な運用経費を算定し、初期投資額を365億円、年間固定費額を110億円及び変動費を発売総額の9.55%としていた。
 センターは、りそな銀行、JSAL及び中核7社とともに、スポーツ振興投票業務の運営に必要な事項の協議機関として運営協議会を設置しているが、運営協議会では、スポーツ振興投票の年間実施回数等から発売総額1200億円に対応可能な販売システムを開発することにした。
 しかし、第A期の実際の売上金額は、文部科学省やセンター等の想定をはるかに下回り、運用経費及び開発規模が相対的に大きなものとなって、欠損金が多額に上る結果となったと考えられる。
 また、センターは、販売店の限られたスペースに端末機をオフシーズンも含め設置してもらうために必要との判断で、スポーツ振興くじの販売とは直接の関係がない販売システム等の開発費の全額3億円をセンターが負担することとして、初期投資額に含めることを承認していた。しかし、端末機普及のために必要な経費負担であったという面を否定できないとしても、同システムの受益者との間で適正な負担割合についての交渉等をすべきであったと認められ、センターが、これらの開発費の全額を初期投資額に含めることを承認していたことは適切とは認められない。
 第B期においては、センターは、発売総額を600億円と想定し、それに対応可能な販売システムを開発することとした。第B期の販売システムの運用経費を含む運営費の額は、第A期と比べ大幅に減少し、売上金額に対する運営費の比率も、90%を超えることもあった第A期と比べ売上金額が急増したことによる要因もあるものの、19事業年度には20%を下回っている。
 また、損益分岐点も第A期の421億円に対して、第B期の18事業年度には213億円、19事業年度には187億円に低下している。

(エ) 繰越欠損の解消に向けての取組の状況

 センターは、多額の繰越欠損金の発生及びこれに関する会計検査院の指摘等を踏まえ、17年8月に収支計画(案)を策定したものの、18事業年度の売上金額は計画値の半分にも達しなかった。また、18年9月にみずほ銀行を幹事銀行とするシンジケートローンにより190億円を借り入れ、その借入金等をもってりそな銀行に対する未払金を一括して支払うとともに、借入金の返済計画を裏付ける収支計画(案)を策定した。
 そして、18年9月から発売開始した新たなくじ「BIG」の売上げが19事業年度に急激に増加したことで、19事業年度のスポーツ振興くじの売上金額は637億円と大幅に増加した。これにより、19事業年度には、上記借入金のうち95億円を返済し繰越欠損金の残高も95億円となった。さらに20年5月に追加で43億円を繰上返済した結果、6月現在の借入金の残高は52億円となっている。

イ 上記の検査の結果を踏まえ、センター及び文部科学省は、今後の事業の実施に当たって、以下の点に留意することが必要である。

(ア) センターは、販売システムの運用経費について、受託者との契約の中に、基礎資料により実績等を確認・検証する規定を定めておらず、また、販売システムの開発規模について、一般的に用いられている手法による妥当性の検証を行っていなかった。
 したがって、センターは、今後、販売システムの運用経費及び開発規模について、事後的に、自ら、又は第三者を介して、確認・検証できるような規定を契約に明記するなどして事後の確認・検証を可能とする体制を構築し、事後的検証を行う必要があると認められる。

(イ) 当初の制度設計の段階で、損益分岐点を下回るほどの売上金額の低迷を想定しておらず、制度上、損失及び欠損金の発生を想定していなかったことにより、実際に損失が発生した場合の措置に係る制度上の整備がなされていなかった。
 現状では、売上金額が損益分岐点を上回る状態まで回復しているものの、今後、損失が発生する場合も想定し、その措置に係る制度上の整備を検討することも課題になると考えられる。

(ウ) 20事業年度の「BIG」の売上げは、20年4月から7月までのところ、毎回15億円から30億円程度とセンターの想定を上回る売上げとなっているが、センターは、19年12月に閣議決定された独立行政法人整理合理化計画を踏まえ、繰越欠損金をできる限り早期に解消するとともに、今後とも、青少年に悪影響を及ぼさないよう販売方法等について十分留意しつつ、投票法第22条に定める国庫納付を引き続き着実に行いながら、スポーツ振興のために必要な資金を確保し、もってスポーツの振興に寄与するという制度本来の目的の達成に努めることが肝要である。

 以上のとおり報告する。
 そして、会計検査院としては、今後とも、スポーツ振興投票の運営が経済的、効率的に行われて、上記の投票法の定める目的が達成されているかなど多角的な観点から、引き続き検査していくこととする。