15年度から19年度までに国から補助金や委託費の交付を受けて技術協力を実施している公益法人について検査したところ、海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約を締結しているのは、水産庁から補助金の交付を受けて技術協力を実施している農林水産省所管の財団法人海外漁業協力財団(以下「財団」という。)のみであった。一方、財団の予算により被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約は見受けられなかった(表22 参照)。
施設の建設 | 資機材の調達等 | ||
被援助国が実施 | 財団が実施 | 被援助国が実施 | 財団が実施 |
× | ○ | × | ○ |
財団は、海外漁場の確保を図るため、入漁協定を締結するなど我が国との関係が深い国に対して、水産業の開発振興に寄与することを目的として海外漁業協力事業によるプロジェクトタイプの技術協力を実施しており、それらの国に水産技術専門家を派遣するとともに必要に応じて資機材を供与している。そして、水産庁は、国際漁業振興協力事業費補助金交付要綱等により、海外漁業協力事業の事業実施主体を財団と定め、財団に対して事業に要する経費の一部を補助している。
(1) 財団法人海外漁業協力財団における契約入札手続等
財団は、国の会計法令に準じて財団法人海外漁業協力財団会計規程(昭和48年6月2日適用)及び財団法人海外漁業協力財団会計規程細則(昭和48年6月2日適用。以下、これらを「財団会計規程等」という。)を定めている。契約の方式については、原則一般競争入札によることとし、契約の性質又は目的が一般競争入札に付することに適さないときなどは指名競争入札又は随意契約とすることができるとしている。そして、随意契約によることができる場合として、国の基準に合わせて予定価格が250万円を超えない工事若しくは製造又は予定価格が160万円を超えない加工、修正若しくは物件の購入をする場合のほか、外国で契約をする場合等の要件を挙げている。
財団が15年度から19年度までに締結した海外での施設の建設や海外向けの資機材の調達等の契約のうち、財団会計規程等で契約書を作成しなければならないとされている150万円(外国で契約するときは200万円)を超える契約件数及び契約金額は、表23のとおりとなっている。
表23 海外での施設の建設及び海外向けの資機材の調達等に係る契約件数、契約金額等
(単位:件、円)
年度 (平成) |
施設の建設(現地調達) | 資機材の調達等(本邦調達+現地調達) | 計 | |||||||
件数 (A) |
件数割合 (A)/(E) |
金額 (B) |
金額割合 (B)/(F) |
件数 (C) |
件数割合 (C)/(E) |
金額 (D) |
金額割合 (D)/(F) |
件数 (E) |
金額 (F) |
|
15 | 4 | 11.7% | 66,706,514 | 18.2% | 30 | 88.2% | 299,376,625 | 81.7% | 34 | 366,083,139 |
16 | 1 | 3.3% | 7,147,428 | 2.2% | 29 | 96.6% | 311,403,018 | 97.7% | 30 | 318,550,446 |
17 | 2 | 6.0% | 7,588,689 | 2.2% | 31 | 93.9% | 329,031,735 | 97.7% | 33 | 336,620,424 |
18 | 1 | 2.8% | 6,644,220 | 1.4% | 34 | 97.1% | 462,029,524 | 98.5% | 35 | 468,673,744 |
19 | 1 | 2.8% | 14,668,933 | 3.6% | 34 | 97.1% | 389,060,717 | 96.3% | 35 | 403,729,650 |
計 | 9 | 5.3% | 102,755,784 | 5.4% | 158 | 94.6% | 1,790,901,619 | 94.5% | 167 | 1,893,657,403 |
調査の対象とした契約167件の約95%が資機材の調達等に係る契約であり、施設の建設に係る契約はすべて現地調達であった。これらのうち資機材の調達等に係る契約を本邦調達と現地調達に分けると、表24のとおり、件数で約64%、契約金額で約85%が本邦調達であった。
(単位:件、円)
年度 (平成) |
本邦調達 | 現地調達 | 計 | |||||||
件数 (A) |
件数割合 (A)/(E) |
金額 (B) |
金額割合 (B)/(F) |
件数 (C) |
件数割合 (C)/(E) |
金額 (D) |
金額割合 (D)/(F) |
件数 (E) |
金額 (F) |
|
15 | 19 | 63.3% | 255,957,267 | 85.4% | 11 | 36.6% | 43,419,358 | 14.5% | 30 | 299,376,625 |
16 | 21 | 72.4% | 278,267,512 | 89.3% | 8 | 27.5% | 33,135,506 | 10.6% | 29 | 311,403,018 |
17 | 16 | 51.6% | 252,489,790 | 76.7% | 15 | 48.3% | 76,541,945 | 23.2% | 31 | 329,031,735 |
18 | 22 | 64.7% | 418,284,795 | 90.5% | 12 | 35.2% | 43,744,729 | 9.4% | 34 | 462,029,524 |
19 | 23 | 67.6% | 322,552,777 | 82.9% | 11 | 32.3% | 66,507,940 | 17.0% | 34 | 389,060,717 |
計 | 101 | 63.9% | 1,527,552,141 | 85.2% | 57 | 36.0% | 263,349,478 | 14.7% | 158 | 1,790,901,619 |
財団は、本邦調達における業者の選定に当たって業者登録制度を設けており、財団本部が行う一般競争入札に参加するためには、財団の競争参加資格者名簿に登録する必要があるとしている。そして、登録に必要な手続等については、財団のホームページ等において公示している。また、指名競争入札においては、競争参加資格者名簿に登録されている業者から指名することにしている。
(2) 契約の競争性・透明性の向上に向けた取組の状況
財団は、予定価格を類推されるおそれがあることから、予定価格や入札結果を公表していないが、本邦調達における一般競争入札の実施に当たっては、より多くの入札参加者を確保するため、我が国で広く発行されている業界紙に競争入札の公告を行うとともに、20年7月から財団のホームページにおいてすべての競争入札の公告を行うことにして、より多くの企業へ情報の提供を行っている。
財団は、海外駐在員事務所等による現地調達の場合は、必要な機材を取り扱う業者が少ない上、前払金を請求されたり、納期が守られなかったりなどするため、信頼できる業者との随意契約によらざるを得ないとしている。これらの事情に加え、海外で施設の建設を行う場合は、設計図書の作成、予定価格の設定、信頼できる業者の選定等の作業が生じるため、海外駐在員や専門家しか配置していない海外駐在員事務所等においては入札会が実施できる体制にないことも随意契約によらざるを得ない理由であるとしている。
しかし、財団は、施設の建設に当たり、過去に相手国政府等の協力を得て指名競争入札を実施したことがあり、今後も比較的大規模な施設の建設を行う場合には、条件が整えば同様の手法により指名競争入札を導入するなどして、契約の競争性・透明性を高めていきたいとしている。