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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年10月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


第2 スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について

1 18年報告の概要

(1) 18年報告の検査の観点、着眼点、対象及び方法

 18年報告の検査の観点、着眼点、対象及び方法は、次のとおりである。

ア 18年報告の検査の観点及び着眼点

 会計検査院は、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

(ア) 16年12月26日に発生したスマトラ沖地震及びインド洋津波被害(以下「津波等災害」という。)に対する被災国及び国際機関からの要請に対して、我が国政府はどのようにして財政的支援の規模、方法を決定したか

(イ) 緊急援助物資供与及び緊急無償資金協力事業については、相手国においてどの ように受け入れられて実施されているか、供与された物資や資金は、その趣旨に 沿って使用されているか

(ウ) ノンプロ無償資金協力事業に供与された資金(以下「ノンプロ無償資金」という。)については、国別に、

a 相手国において援助がどのように受け入れられて実施されているか、被災地における需要の把握及び事業内容の決定がどのようになされているか

b 供与された資金は交換公文、附属文書等に従って使用されているか、各案件に係る契約手続や資金の支払は決定された事業内容に従って行われているか、契約手続や資金の支払が遅延しているものはないか

c 援助の対象となった施設及び機材は、当初決定された事業内容に即して被災地においてその趣旨に沿って使用されているか

イ 18年報告の検査の対象

 会計検査院は、津波等災害に際して、我が国が無償で供与することを決定した5億米ドルのうち、二国間供与分の緊急援助としてインドネシア共和国、モルディブ共和国、スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ共和国」という。)及びタイ王国の4か国(以下「4か国」という。)に供与した次の財政的支援2億5000万米ドル相当を対象として検査した。

(ア) 独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」いう。)が4か国に対して実施した緊急援助物資供与

(イ) 外務省が4か国のうちタイ王国を除く3か国(以下「3か国」という。)に対して実施した緊急無償資金協力事業及びノンプロ無償資金協力事業

ウ 18年報告の検査の方法

 会計検査院は、外務本省及びJICA本部において会計実地検査を行い、我が国政府の対応状況、援助の制度的枠組み、実施手順等について説明を聴取したほか、在外公館及びJICAの在外事務所からの報告資料等に基づき事業の実施状況について検査した。また、職員を3か国に派遣して、在外公館及びJICAの在外事務所において会計実地検査を行い、相手国事業実施機関等から提出された報告書等の関係書類に基づき事業の実施状況について検査した。
 また、会計検査院は、相手国の協力が得られた範囲で、事業の実施状況について相手国事業実施機関等から説明を聴取した。さらに、一部の案件については、外務省の職員等の立会いの下に、事業の進ちょく状況を確認するなど実地に調査した。

(2) 18年報告の検査の結果に対する所見

 18年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

 我が国は、4か国を始めとしてインド洋沿岸諸国が大規模な被害を受けた前例のない津波等災害に対して、相手国の要請及び緊急首脳会議における支援措置等の合意などを受けて当面の復旧・復興に必要となる支援額としての援助の規模を決定した。
 このうち4か国に対する緊急援助物資供与については、会計検査院は、我が国が援助の要請に応じて供与した物資が、災害発生直後の17年1月5日までに4か国に対してすべて引き渡されていたことを、関係書類等で確認した。そして、これらの物資は、被災地に届けられその趣旨に沿って使用されているとの説明を受けた。
 また、3か国に対する緊急無償資金協力については、我が国が援助の要請に応じて供与した資金は、使途報告書によれば、スリランカ共和国では17年4月、モルディブ共和国では同年6月までにその趣旨に沿って使用されたとしていた。そして、インドネシア共和国については、18年1月に提出された使途報告書によれば、17年2月1日に我が国から供与された資金は全額支出済みであるとしていたが、我が国以外から供与された資金も合わせた全体額について、津波等災害に関する援助のために使用されたとする報告となっており、我が国の供与した資金の具体的使途等を特
定することができない状況となっていた。
 3か国に対するノンプロ無償資金協力事業については、17年1月にインドネシア共和国に対しては146億円、モルディブ共和国に対しては20億円、スリランカ共和国に対しては80億円が供与されて以来、3か国とも交換公文に定められた使用期限である12か月以内に調達口座へ資金の移動がすべてなされ、我が国と各相手国との間における政府間協議会によって、分野の別に実施する案件の内容が決定されていた。
 そして、案件実施のために締結した契約の実績額について、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、18年3月末現在、モルディブ共和国及びスリランカ共和国では90%以上であるのに比べて、インドネシア共和国では58.4%となっている。
 ノンプロ無償資金による事業の内容は、3か国とも、施設の工事に係る契約が多く契約締結に先立って工事前の詳細設計等が必要であり時間を要すること、また契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっていることから、資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、インドネシア共和国では20.5%、モルディブ共和国では30.2%、スリランカ共和国では42.8%となっていた。
 また、3か国とも、供与されたノンプロ無償資金はすべて政府口座から調達口座に移動されていたが、調達口座における残高状況をみると、ノンプロ無償資金が供与されて1年2か月を経過した18年3月末において、インドネシア共和国では約116億円、モルディブ共和国では約14億円、スリランカ共和国では約46億円が残されていた。
 ノンプロ無償資金協力事業は、津波等災害に対する緊急援助として実施されたものであるため、相手国において、速やかに、必要な施設が建設され機材が調達されて、被災地等で災害復旧・復興のために使用されることが必要である。
 したがって、会計検査院としては、本件ノンプロ無償資金協力事業によって施設が建設され、機材が調達されて完了することとなる事業について、施設の建設や機材の調達のための資金の執行状況について引き続き検査を実施し、取りまとめが出来次第報告することとする。
 また、今回実施されたノンプロ無償資金協力事業は、従来のノンプロ無償資金協力事業と比べて大規模なものであり、対象となった事業のうちには、中長期的な事業効果が期待される施設の案件も含まれている。外務省においては、17年12月に中間評価を公表し、さらに、今後とも同様な評価を行うことにしている。
 そして、会計検査院としては、緊急援助の最終受益者である被災地の住民に援助が届き、また、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が行う本件ノンプロ無償資金協力事業に対する評価を踏まえた上で、今後の利活用の状況について注視していく。
 なお、会計検査院は、我が国を含めた各国等からインドネシア共和国政府に供与された津波等災害の援助資金による復興再建事業に対して同国会計検査院が行う会計検査活動を支援するための国際会議等に参加し、協力を行ってきている。