19年報告の検査の観点、着眼点、対象及び方法は、次のとおりである。
会計検査院は、18年報告において記述したノンプロ無償資金協力事業に係る検査の観点及び着眼点と同様に、有効性等の観点から次の点に着眼して検査した。
(ア) 相手国において援助がどのように受け入れられて実施されているか、被災地における需要の把握及び事業内容の決定がどのようになされているか
(イ) 供与された資金は交換公文、附属文書等に従って使用されているか、各案件に係る契約手続や資金の支払は決定された事業内容に従って行われているか、契約手続や資金の支払が遅延しているものはないか
(ウ) 援助の対象となった施設及び機材は、当初決定された事業内容に即して被災地においてその趣旨に沿って使用されているか
18年報告の検査の結果に対する所見で記述したとおり、会計検査院は、外務省が3か国に対して実施したノンプロ無償資金協力事業を対象として、この事業によって施設が建設されて、機材が調達されて完了することとなる事業に係る資金の執行状況について、19年次においても引き続き検査した。
会計検査院は、18年報告において記述した検査の方法と同様に、外務本省及びJICA本部において会計実地検査を行い、我が国政府の対応状況、援助の制度的枠組み、実施手順等について説明を聴取したほか、在外公館及びJICAの在外事務所からの報告資料等に基づき事業の実施状況について検査した。また、職員を3か国に派遣して、在外公館及びJICAの在外事務所において会計実地検査を行い、相手国事業実施機関等から提出された報告書等の関係書類に基づき事業の実施状況について検査した。
また、会計検査院は、相手国の協力が得られた範囲で、事業の実施状況について相手国事業実施機関等から説明を聴取した。さらに、一部の案件については、外務省の職員等の立会いの下に、事業の進ちょく状況を確認するなど実地に調査した。
19年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。
ア 会計検査院は、我が国が17年1月にインドネシア共和国に対して146億円、モルディブ共和国に対して20億円、スリランカ共和国に対して80億円の資金を供与したノンプロ無償資金協力事業の実施状況について、18年次に引き続き19年次においても、施設の建設や機材の調達のために供与された資金の執行状況を中心に、有効性等の観点から検査した。
案件実施のために締結した契約についてみると、表15のとおり、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、19年3月末現在、モルディブ共和国及びスリランカ共和国では18年3月末現在と同様に90%以上となっており、インドネシア共和国では18年3月末現在の58.4%から89.8%に上昇していた。
資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、19年3月末現在、インドネシア共和国では62.7%、モルディブ共和国では80.9%、スリランカ共和国では77.5%となっていた。これは、ノンプロ無償資金による事業の内容は、施設の工事に係る契約が多く、契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっているため、18年3月末現在に比べて工事が進ちょくし、3か国の19年3月末現在の支払率が上昇したことによるものである。そして、調達口座における残高は、19年3月末において、インドネシア共和国では約54億円、モルディブ共和国では約4億円、スリランカ共和国では約18億円に減少していた。
国名
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年月
|
政府口座から調達口座への受入金額(円)
|
調達口座での資金の執行状況
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契約
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支払
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支払後の残高(無単位は円、$は米ドル)
|
||||||
件数
|
金額(円)
|
契約締結率(%)
|
金額(円)
|
支払率(%)
|
||||
インドネシア共和国
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18年3月末
|
14,600,059,325
|
108
|
8,526,959,242
|
58.4
|
2,990,672,270
|
20.5
|
11,609,387,055
|
19年3月末
|
14,600,059,325
|
169
|
13,106,386,978
|
89.8
|
9,156,431,271
|
62.7
|
5,443,628,054
|
|
モルディブ共和国
|
18年3月末
|
2,000,002,235
|
20
|
1,956,669,286
|
97.8
|
604,208,723
|
30.2
|
136,066,407
$10,504,212.91
邦貨換算額計
1,396,571,956
|
19年3月末
|
2,000,002,235
|
21
|
1,891,686,658
|
94.6
|
1,617,101,824
|
80.9
|
5,633,264
$3,182,777.54
邦貨換算額計
387,566,568
|
|
スリランカ共和国
|
18年3月末
|
8,000,009,316
|
86
|
7,506,743,290
|
93.8
|
3,423,649,226
|
42.8
|
4,576,364,911
|
19年3月末
|
8,000,009,316
|
96
|
7,778,198,010
|
97.2
|
6,201,120,890
|
77.5
|
1,798,893,247
|
注(1)
|
契約件数にはJICSとの調達代理契約が含まれ、契約金額にはその概算額(上限額)が含まれる。
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注(2)
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「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金のほかに、政府口座において発生し調達口座に入金された利息(インドネシア共和国59,325円、モルディブ共和国2,235円、スリランカ共和国9,316円)を含む。
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注(3)
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モルディブ共和国及びスリランカ共和国における「支払後の残高」は、調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
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注(4)
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インドネシア共和国及びモルディブ共和国については、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものがあり、モルディブ共和国では、18年3月末現在と比べて、契約締結率は低下している。
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注(5)
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「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点第2位以下を四捨五入している。
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イ ノンプロ無償資金協力事業の中には、契約が締結されたが給付が完了に至っていない案件や、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものも見受けられる。これらの案件については、外務省において、被災地における需要等に応じた的確な実施や給付の早期完了に向けて相手国政府と一層連携し、また、相手国政府に働きかけを継続して行うことが必要である。
ノンプロ無償資金協力事業は、津波等災害に対する緊急援助として実施されたものであるため、相手国において、速やかに必要な施設が建設され機材が調達されて、これらの施設や機材が被災地等で災害復旧・復興のために使用されることが必要である。
したがって、会計検査院としては、本件ノンプロ無償資金協力事業によって施設が建設され、機材が調達されて完了することとなる事業に係る資金の執行状況について引き続き検査し、取りまとめが出来次第報告することとする。
また、事業が更に進ちょくし、ノンプロ無償資金協力事業が完了することとなった場合には、中長期的な事業効果が期待される災害復興のための施設の案件も含まれていることなどから、外務省においては、事業効果の評価を的確に行うことが必要である。
そして、会計検査院としては、緊急援助の最終受益者である被災地の住民に援助が届き、また、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が行う本件ノンプロ無償資金協力事業に対する評価を踏まえた上で、今後の利活用の状況について引き続き検査していくこととする。