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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年10月

政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について


5 検査の結果に対する所見

ア 会計検査院は、我が国が17年1月にインドネシア共和国に対して146億円、モルディブ共和国に対して20億円、スリランカ共和国に対して80億円の資金を供与したノンプロ無償資金協力事業の実施状況について、18、19両年次に引き続き20年次においても、施設の建設や機材の調達のために供与された資金の執行状況を中心に、有効性等の観点から検査した。
 案件実施のために締結した契約についてみると、表11のとおり、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、20年3月末現在、インドネシア共和国では98.7%、モルディブ共和国では92.9%、スリランカ共和国では98.8%となっていた。そして、資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、20年3月末現在、インドネシア共和国では91.3%、モルディブ共和国では87.7%、スリランカ共和国では89.4%となっていた。

表11 3か国の資金の執行状況の推移
国名
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約締結
支払
支払後の残高(無単位は円、$は米ドルを示す)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
インドネシア共和国
平成18年3月末
14,600,059,325
108
8,526,959,242
58.4
2,990,672,270
20.5
11,609,387,055
19年3月末
14,600,059,325
169
13,106,386,978
89.8
9,156,431,271
62.7
5,443,628,054
20年3月末
14,600,059,325
177
14,410,499,844
98.7
13,327,126,106
91.3
1,272,933,219
モルディブ共和国
18年3月末
2,000,002,235
20
1,956,669,286
97.8
604,208,723
30.2
136,066,407
$10,504,212.91
邦貨換算額計
1,396,571,956
19年3月末
2,000,002,235
21
1,891,686,658
94.6
1,617,101,824
80.9
5,633,264
$3,182,777.54
邦貨換算額計
387,566,568
20年3月末
2,000,002,235
20
1,858,914,573
92.9
1,754,557,496
87.7
0
$2,098,827.31
邦貨換算額計
251,859,277
スリランカ共和国
18年3月末
8,000,009,316
86
7,506,743,290
93.8
3,423,649,226
42.8
4,576,364,911
19年3月末
8,000,009,316
96
7,778,198,010
97.2
6,201,120,890
77.5
1,798,893,247
20年3月末
8,000,009,316
97
7,907,704,728
98.8
7,152,277,548
89.4
836,879,261
LKR9,802,259.89
邦貨換算額計
847,736,589
20年3月末
24,600,070,876
294
24,177,119,145
98.3
22,233,961,150
90.4
2,109,812,480
$2,098,827.31
LKR9,802,259.89
邦貨換算額計
2,372,529,085
注(1)
 契約締結件数にはJICSとの調達代理契約が含まれ、契約締結金額にはその概算額(上限額)が含まれる。
注(2)
 「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金のほかに、政府口座において発生して調達口座に入金された利息(インドネシア共和国59,325円、モルディブ共和国2,235円、スリランカ共和国9,316円)を含む。
注(3)
 モルディブ共和国及びスリランカ共和国における「支払後の残高」は、調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
注(4)
 「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は、小数点第2位以下を四捨五入している。

 このように、契約締結率に比べて支払率が低くなっているのは、ノンプロ無償資金による事業の内容は、施設の工事に係る契約が多く、契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要して、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっているためである。しかし、資金供与後3年余りが経過して工事が進ちょくしたことなどにより、3か国の合計で支払率が90.4%にまで上昇して、契約締結率との差がなくなってきている。また、調達口座における残高も、20年3月末において、インドネシア共和国では約13億円、モルディブ共和国では約3億円、スリランカ共和国では約8億円にまで減少している。さらに、その残高には、工事の進ちょくに応じて今後支払うこととなる額や瑕疵担保の保証期間が経過すれば支払うこととなる額等が含まれているため、残高は今後一層減少することになる。そして、外務省の説明によれば、3か国において、今後新たに締結する予定の契約はないとしている。
 ノンプロ無償資金協力事業の中には、表12のとおり、20年3月末において、契約は締結したが資材の調達や作業員の確保ができなかったこと、治安状況が悪化したこと、契約を解除して新たな契約を締結したことなどから、契約に基づく給付が完了していない案件が見受けられた。しかし、相手国事業実施機関等の説明によれば、これらの案件についても、20年12月までにはすべての給付が完了するとしている。

表12 給付完了率の状況
(単位:案件)
国名
給付完了率
100%
50%以上100%未満
50%未満
インドネシア共和国
平成
18年3月末現在
0
5
9
14
19年3月末現在
2
9
4
15
20年3月末現在
12
2
1
15
モルディブ共和国
18年3月末現在
0
1
2
3
19年3月末現在
1
2
0
3
20年3月末現在
2
1
0
3
スリランカ共和国
18年3月末現在
3
3
8
14
19年3月末現在
8
3
3
14
20年3月末現在
11
2
1
14
18年3月末現在
3
9
19
31
19年3月末現在
11
14
7
32
20年3月末現在
25
5
2
32

 また、当初の契約見込額と契約締結額との間に差額が生じたこと、治安状況の悪化等から事業を中止したこと、請負業者の不履行で契約を解除したことなどにより、最終的には供与額に未使用額が生ずることになる。外務省は、3か国が実施した津波復興事業の費用の一部にこの未使用額を充てる案等について、3か国政府と協議を行っているとしている。
 そして、外務省は、この状況を受けて、21年中に事後評価を実施することにしている。
 なお、3か国のうちスリランカ共和国については、同国の治安状況が悪化したため、会計検査院は同国における会計実地検査を実施することができなかったが、モルディブ共和国における現地調査に立ち会った在スリランカ日本国大使館の職員等からスリランカ共和国の状況について説明を聴取した。

イ 本件ノンプロ無償資金協力事業の実施に関して、外務省は、給付が完了していない一部の案件について、早期の完了を確実なものにするため、相手国政府と一層連携して、相手国政府に対する働きかけを継続して行う必要がある。
 また、中止又は解除した契約のうちに、請負業者に支払った前払金等が返還されていない事態が見受けられた。このまま前払金等が返還されない場合には、資金が有効に活用されないことになることから、外務省は、早期の返還が実現するよう相手国政府に対する働きかけを継続して行う必要がある。
 さらに、外務省は、供与額の最終的な使用額及び未使用額を明らかにするとともに、未使用額については、相手国政府と十分協議の上、資金の適切な活用方法を検討する必要がある。
 本件ノンプロ無償資金協力事業は、16年12月26日に発生した大地震及びそれに伴う大規模な津波による被害に対する緊急援助として実施されたものであるが、17年1月19日に3か国に供与された計246億円による施設の建設や機材の調達等の案件は、3年余りを経過して、給付が完了したものが着実に増加してきている。これらの施設や機材が、被災地等における災害復旧・復興のため、今後とも有効に活用されることが望まれる。

 以上のとおり報告する。
 そして、会計検査院としては、3か国への供与額の最終的な使用額及び未使用額について、外務省から報告を受けるとともに、同省が事業完了後に行うとしている本件ノンプロ無償資金協力事業に対する事後評価を踏まえた上で、未使用額の具体的な活用結果を含めて、中長期的な事業効果について引き続き検査していくこととする。