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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年11月

独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況に関する会計検査の結果について


1 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成19年6月11日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月12日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一)検査の対象

 全独立行政法人

(二)検査の内容

 独立行政法人についての次の各事項
〔1〕  業務及び財務の状況
〔2〕  各独立行政法人における契約制度、落札率等入札、契約の状況

2 平成17年度決算審査措置要求決議の内容

 参議院決算委員会は、19年6月11日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成17年度決算審査措置要求決議」を行っている。
 このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。

1 特殊法人の独立行政法人化等に係る会計処理の透明性の向上について

 特殊法人が独立行政法人や株式会社に移行するに当たり、会計基準の変更に伴い発生した欠損金等について、法律に基づき、国からの出資金や貸付金を減少させるなどの会計上の処理が行われることがあるが、その結果として減少した国の資産の額は必ずしも明らかにはなっていない。また、特殊法人等の独立行政法人化により、運営費交付金の使途などに関する国会における財政統制が困難になっている。
 政府は、特殊法人の独立行政法人化等に伴い減少した国の資産の額及び減少した理由について法人別に明確にし、説明責任を果たすべきである。また、政策金融機関の整理・統合に当たっては、会計基準の変更に伴い発生する欠損金を国の資産により手当てすることに慎重であるべきであり、今後、これら欠損金について措置を講じた場合は、その内容を本委員会に報告すべきである。さらに、独立行政法人化により無償譲渡された政府資産の処分状況を始め、運営費交付金の使途及び剰余金の状況等については、その内容を厳しく精査し、情報公開に努めるべきである。

2 独立行政法人の業務発注に係る契約方式及び事務事業の見直しについて

 独立行政法人の業務発注に係る契約方式に関して、随意契約の限度額を国の基準よりも高く設定している法人が数多く見られるほか、一般競争入札方式でありながら落札率100%で発注している例も散見される。
 また、関連法人への天下りが多数に上るほか、それらの関連法人に対し、随意契約で業務を発注している実態が明らかになっている。
 政府は、101独立行政法人すべてを対象に見直しを行い、年内を目途に整理合理化計画を策定することとしているが、このような状況にかんがみ、その業務発注に係る契約方式及び事務事業について徹底した調査、見直しを行うべきである。

3 独立行政法人制度等の概要

(1) 独立行政法人制度の概要

 独立行政法人は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として設立される法人である。
 政府は、中央省庁等改革の一環として、13年4月に、国が直接行っていた事務・事業を実施させるために57の独立行政法人を設立して、その後、15年10月には、特殊法人等改革に伴い特殊法人等から移行するなどした31の独立行政法人を設立するなど、独立行政法人制度の導入を進めており、その数は、20年3月末現在で表1のとおり102法人となっている。
 独立行政法人の運営の基本、監督、職員の身分その他制度の基本となる共通的な枠組みは、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)において定められている。独立行政法人の制度を設けるに当たっては、独立行政法人を所管する主務大臣の監督、関与その他国の関与を必要最小限のものとすることとされており、独立行政法人の目標設定と評価については、通則法等において、次のような仕組みが定められている。
ア 主務大臣は、3年以上5年以下の期間において独立行政法人が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定めて、これを独立行政法人に指示する。そして、独立行政法人は、中期目標に基づき、当該中期目標を達成するための計画(以下「中期計画」という。)を作成して、主務大臣の認可を受ける。また、独立行政法人の事業年度(以下「年度」という。)は、毎年4月1日から翌年3月31日までとされており、独立行政法人は、毎年度の開始前に、中期計画に基づき、その年度の業務運営に関する計画(以下「年度計画」という。)を定めて、主務大臣に届け出る。
 主務大臣が独立行政法人に指示する中期目標においては、「中期目標の期間」、「業務運営の効率化に関する事項」、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」、「財務内容の改善に関する事項」及び「その他業務運営に関する重要事項」について定める。そして、中期計画においては、業務運営の効率化に関する目標を達成するため執るべき措置、予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画、剰余金の使途等の事項を定める。また、年度計画においては、中期計画に定めた事項に関して、当該年度において実施すべき事項を含めなければならない。
イ 独立行政法人の各年度及び中期目標の期間における業務の実績については、独立行政法人の主務省(当該独立行政法人を所管する内閣府又は各省をいう。以下同じ。)に置かれる独立行政法人評価委員会(以下「評価委員会」という。)が評価を行う。評価委員会による各年度における業務の実績の評価(以下「年度評価」という。)は、当該年度における中期計画の実施状況の調査をし、及び分析をし、並びにこれらの調査及び分析の結果を考慮して当該年度における業務の実績の全体について総合的な評定をして行う。また、総務省に置かれる政策評価・独立行政法人評価委員会(以下「審議会」という。)は、評価委員会の実施した評価の結果について意見を述べることができる。
 中期目標の期間の終了時において、主務大臣は、独立行政法人の組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その検討結果を業務運営の方法、組織の在り方等に反映させるよう所要の措置を講ずる。また、審議会は、独立行政法人の主要な事務・事業の改廃に関して、主務大臣に勧告することができる。

(2) 独立行政法人整理合理化計画の策定

 政府は、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)において、現行の独立行政法人が制度本来の目的にかなっているか、制度創設後の様々な改革と整合的なものになっているかなどについて、原点に立ち返って見直すこととして、101独立行政法人(注1) について、民営化や民間委託の是非を検討し、19年内を目途に独立行政法人整理合理化計画(以下「整理合理化計画」という。)を策定することとして、19年8月には、「独立行政法人整理合理化計画の策定に係る基本方針」(平成19年8月10日閣議決定。以下「基本方針」という。)を定めている。そして、独立行政法人制度の導入後、人件費の削減、財政支出の削減、自己収入の増加、透明性の確保等の成果がある一方、一部でいわゆる官製談合の舞台となるなど、国民の信頼回復が喫緊の課題となっているなどとして、政府は、基本方針等に基づき整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定)を策定して、これを着実に実行することとしている。
 整理合理化計画では、各独立行政法人の事務・事業及び組織等について講ずべき措置として、事務・事業の見直し、法人の廃止・民営化等についての検討の基本的な考え方や各独立行政法人について講ずべき措置が定められているほか、独立行政法人の見直しに関して講ずべき横断的措置として、次のとおり、保有資産の見直し、随意契約の見直し、関連法人等との人・資金の流れの在り方等に関する事項等が定められている。

 会計検査院の検査に当たっては、平成19年10月に設立された独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構も含めて、102法人を対象とした。

ア 保有資産の見直し

 保有資産の見直しに関して、整理合理化計画では、各独立行政法人は、保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を着実に推進して、適切な形で財政貢献を行うこと、不要となった金融資産の売却やそれに伴う積立金の国庫返納を行うことなどが定められている。

イ 随意契約の見直し

 随意契約の見直しに関して、基本方針は、独立行政法人の契約について一般競争入札等(競争入札及び企画競争・公募をいい、「競争性のない随意契約」は含まない。以下同じ。)の導入、範囲拡大等を図るための見直しを行い、独立行政法人ごとに随意契約見直し計画を策定することとしている。そして、これに基づき、各独立行政法人が策定した随意契約見直し計画の概要は別表1のとおりであり、101独立行政法人全体で、18年度に締結した「競争性のない随意契約」約1兆円のうち、約7割を一般競争入札等に計画的に移行することとしている。
 また、整理合理化計画において、各独立行政法人の契約は、原則として一般競争入札等によることとして、各独立行政法人は、随意契約によることができる限度額等の基準について、国と同額の基準に設定するよう19年度中に措置すること、各法人が策定した随意契約見直し計画を着実に実施することにより、「競争性のない随意契約」の比率を国並みに引き下げること、契約が一般競争入札等による場合であっても、特に企画競争又は公募を行う場合には、真に競争性、透明性が確保される方法により実施することなどが定められている。

(以下、数値の記述は、表示単位未満を切り捨てている。)

ウ 関連法人等との人・資金の流れの在り方

 関連法人等との人・資金の流れの在り方に関して、整理合理化計画では、各独立行政法人は、関連法人との間における人と資金の流れについて透明性を確保するため、関連法人への再就職の状況及び関連法人との間の補助・取引等の状況について、一体としての情報開示を実施するとともに、関連法人への再就職に関連して不適正な契約の発生等がある場合には、その責任において、人と資金の流れについて適正化を図ることなどが定められている。

4 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 会計検査院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、各独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況を横断的に調査・分析するとともに、業務の実施状況や財務の状況はどのようになっているか、契約事務が適切に行われて、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して検査を実施した。
 検査は、全独立行政法人102法人(表1 参照)を対象とした。そして、検査の実施に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき各独立行政法人から会計検査院に提出された財務諸表等のほか、業務、財務、入札、契約の状況について会計検査院が作成及び提出を求めた調書等を在庁して分析するとともに、全独立行政法人の本部等102か所のほか、支部等1,320か所のうち132か所を抽出して会計実地検査を行った。
 会計実地検査の人日数及び実地検査箇所数は次のとおりであり、そのうち実地検査箇所数の内訳は表1に示すとおりである。

 ・実地検査人日数869.4人日

 ・実地検査箇所数234か所

表1 独立行政法人一覧(平成20年3月末現在)
主務省 検査対象法人 実地検査箇所数
内閣府 独立行政法人国立公文書館
1
 

独立行政法人国民生活センター
1
 

独立行政法人北方領土問題対策協会
1
 

独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構
1
 

総務省 独立行政法人情報通信研究機構
1
 

独立行政法人統計センター
1
 

独立行政法人平和祈念事業特別基金
1
 

独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構
1
 

外務省 独立行政法人国際協力機構
2
(1)

独立行政法人国際交流基金
2
(1)

財務省 独立行政法人酒類総合研究所
1
 

独立行政法人造幣局
3
(2)

独立行政法人国立印刷局
8
(7)

独立行政法人通関情報処理センター
1
 

独立行政法人日本万国博覧会記念機構
1
 

文部科学省 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
1
 

独立行政法人大学入試センター
1
 

独立行政法人国立青少年教育振興機構
1
 

独立行政法人国立女性教育会館
1
 

独立行政法人国立国語研究所
1
 

独立行政法人国立科学博物館
1
 

独立行政法人物質・材料研究機構
1
 

独立行政法人防災科学技術研究所
2
(1)

独立行政法人放射線医学総合研究所
1
 

独立行政法人国立美術館
6
(5)

独立行政法人国立文化財機構
4
(3)

独立行政法人教員研修センター
1
 

独立行政法人科学技術振興機構
2
(1)

独立行政法人日本学術振興会
1
 

独立行政法人理化学研究所
4
(3)

独立行政法人宇宙航空研究開発機構
4
(3)

独立行政法人日本スポーツ振興センター
1
 

独立行政法人日本芸術文化振興会
3
(2)

独立行政法人日本学生支援機構
1
 

独立行政法人海洋研究開発機構
2
(1)

独立行政法人国立高等専門学校機構
3
(2)

独立行政法人大学評価・学位授与機構
1
 

独立行政法人国立大学財務・経営センター
1
 

独立行政法人メディア教育開発センター
1
 

独立行政法人日本原子力研究開発機構
3
(2)

厚生労働省 独立行政法人国立健康・栄養研究所
1
 

独立行政法人労働安全衛生総合研究所
1
 

独立行政法人勤労者退職金共済機構
1
 

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
3
(2)

独立行政法人福祉医療機構
1
 

独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
1
 

独立行政法人労働政策研究・研修機構
1
 

独立行政法人雇用・能力開発機構
13
(12)

独立行政法人労働者健康福祉機構
2
(1)

独立行政法人国立病院機構
17
(16)

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
1
 

独立行政法人医薬基盤研究所
1
 

独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構
1
 

年金積立金管理運用独立行政法人
1
 

農林水産省 独立行政法人農林水産消費安全技術センター
1
 

独立行政法人種苗管理センター
1
 

独立行政法人家畜改良センター
4
(3)

独立行政法人水産大学校
1
 

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
11
(10)

独立行政法人農業生物資源研究所
1
 

独立行政法人農業環境技術研究所
1
 

独立行政法人国際農林水産業研究センター
1
 

独立行政法人森林総合研究所
1
 

独立行政法人水産総合研究センター
5
(4)

独立行政法人農畜産業振興機構
1
 

独立行政法人農業者年金基金
1
 

独立行政法人農林漁業信用基金
1
 

独立行政法人緑資源機構
1
 

経済産業省 独立行政法人経済産業研究所
1
 

独立行政法人工業所有権情報・研修館
1
 

独立行政法人日本貿易保険
1
 

独立行政法人産業技術総合研究所
1
 

独立行政法人製品評価技術基盤機構
1
 

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
1
 

独立行政法人日本貿易振興機構
1
 

独立行政法人原子力安全基盤機構
1
 

独立行政法人情報処理推進機構
1
 

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
1
 

独立行政法人中小企業基盤整備機構
9
(8)

国土交通省 独立行政法人土木研究所
1
 

独立行政法人建築研究所
1
 

独立行政法人交通安全環境研究所
1
 

独立行政法人海上技術安全研究所
1
 

独立行政法人港湾空港技術研究所
1
 

独立行政法人電子航法研究所
1
 

独立行政法人航海訓練所
1
 

独立行政法人海技教育機構
1
 

独立行政法人航空大学校
2
(1)

自動車検査独立行政法人
3
(2)

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
10
(9)

独立行政法人国際観光振興機構
 
1

独立行政法人水資源機構
3
(2)

独立行政法人自動車事故対策機構
1
 

独立行政法人空港周辺整備機構
2
(1)

独立行政法人海上災害防止センター
1
 

独立行政法人都市再生機構
13
(12)

独立行政法人奄美群島振興開発基金
1
 

独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
1
 

独立行政法人住宅金融支援機構
8
(7)

環境省 独立行政法人国立環境研究所
1
 

独立行政法人環境再生保全機構
1
 

防衛省 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構
9
(8)

102法人
234
(132)

注(1)
 「実地検査箇所数」欄の( )内は、支部等の箇所数であり、内数である。

注(2)
 独立行政法人農林漁業信用基金の主務省は財務省及び農林水産省、独立行政法人奄美群島振興開発基金の主務省は財務省及び国土交通省、独立行政法人住宅金融支援機構の主務省は財務省及び国土交通省であるが、便宜上、本表のように記載している。

注(3)
 独立行政法人平和祈念事業特別基金は平成22年9月30日までに解散することとされている。

注(4)
 独立行政法人通関情報処理センターは平成20年10月1日に輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社に移行している。

注(5)
 独立行政法人緑資源機構は平成20年4月1日に解散して、独立行政法人森林総合研究所及び独立行政法人国際農林水産業研究センターが事業の一部を承継している。

(以下、各法人の名称中「独立行政法人」は記載を省略した。)